と言っても今回は原作であった香織とハジメの密会に雫をプラスした話なんですがね。
タケルが眠っている間に何を話していたのか…
それでは、Ready GO!
タケルが眠りについた後、自身も寝ようと床に向かうハジメ。しかし、それを妨げる様にドアがノックされる。
「(誰だろう?こんな時間に……)はーい。」
ハジメが返答するとドアの向こうから2種類に声が聞こえて来る。
「あわわ!起きてたよ雫ちゃん!どうしよう、私髪変じゃないよね?ね?」
「落ち着きなさい香織。大丈夫だから。」
聞こえてきた声の正体に一瞬面食らうも、このままにするのもどうかと思いドアを開ける。
「あ!な、南雲君!ごめんね?こんな夜遅くに……」
「ごめんなさい、香織がどうしても貴方に話があるっていうから……」
ドアが開いた瞬間慌てる香織とあくまで冷静な雫。
対照的な反応を示しているが、今のハジメにそれを気にする余裕はなかった。
(何で2人とも、ネグリジェ姿なんだよおおおおお!!!!!!)
そう、2人に格好が余りにも際どく目にやり場に困っていた。
ただでさえ二大女神と称される程顔立ちの整った2人だというのに。それでも何とか平静を装って対応する。
「じゃあ、ここじゃ何だし……中に入る?」
「う、うん!」
「お邪魔します。」
中に入った直後、ふとベッドで眠るタケルが目に入る雫。
「あら、木場君はもう寝ちゃってるのね。」
「うん、昨日もアレの調整を夜遅くまでしてたみたいだから。」
そう言うと部屋の隅に立て掛けてあるメロンディフェンダーを指差す。
「あの時も思ったけれど、良くこんなのが作れるわね……」
「アハハ、それに関しては流石に僕も驚いたよ。」
そんな話を切り上げ、早速本題に入るハジメ。
「それで……話とは?」
「……香織。」
雫が香織に話すよう促すと、キュッと口を真一文字に結んで後、意を決して話し始める。
「明日の迷宮だけど……南雲君には町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから! お願い!」
身を乗り出してそう訴える香織。その様子にハジメは少々疑問を抱く。
自分が弱いとはいえ必死すぎないか?──と。
「えっと……確かに僕は足手まといとだは思うけど……流石にここまで来て待っているっていうのは認められないんじゃ……」
「違うの! 足手まといだとかそういうことじゃないの!」
ハジメの言い分を慌てて否定する香織。どういう事か聞こうとするが、話すのが辛いのか俯いてしまう。雫はそんな香織の手を握り、代わりに話し始める。
「香織は……どうも夢を見たそうよ。」
「……夢?夢ってあの寝てるときに見る夢?」
「ええ。さっき少し寝てたんだけど……突然跳ね起きて、どうしたのか聞いてみたら……」
「聞いてみたら?」
「夢の中に南雲君が出てきて、出てきたんだけれど……呼んでも無反応。いきなり走り出して、全然追いつかずに最後には……」
「最後、には?」
なんとなくその続きが予想できるハジメは恐る恐る聞き返す。
「……消えてしまうそうよ。」
「……そっか。」
其処まで聞くとハジメは未だに服の裾をギュッと掴んで俯いている香織に向き直る。
「夢は夢だよ、白崎さん。今回はメルド団長率いるベテランの騎士団員がついているし、天之河君みたいな強い奴も沢山いる。むしろ、うちのクラス全員チートだし。敵が可哀想なくらいだよ。僕は弱いし、実際に弱いところを沢山見せているから、そんな夢を見たんじゃないかな?」
そう、所詮夢は夢。
香織の見たそれが何を意味してようが、そんな不明確な理由で同行を拒否しようものなら今度こそクラスでの居場所を失うだろう。流石にそれは避けたいハジメは精一杯の言葉で香織を励ます。
それでも香織の表情が晴れないのを見ると、ある提案をする。
「それでも、どうしても不安が消えないなら……守ってくれないかな?」
「え?」
正直男としてはかなり恥ずかしい提案であり、香織も雫もキョトンとしている。
言ったハジメも顔から火が出るかと思うくらい内心羞恥心に悶えていたが、それでも耐えながら言葉を紡ぐ。
「白崎さんは“治癒師”だよね? 治癒系魔法に天性の才を示す天職。何があってもさ……たとえ、僕が大怪我することがあっても、白崎さんなら治せるよね。その力で守ってもらえるかな? それなら、絶対僕は大丈夫だよ。」
そう言うと、暫し沈黙が訪れる。そして香織はクスッと笑みを浮かべハジメの目を見る。
「変わらないね。南雲君は。」
「?」
「南雲くんは、私と会ったのは高校に入ってからだと思ってるよね? でもね、私は、中学二年の時から知ってたよ。」
「え?」
予想外の香織の言葉に必死に記憶を探るハジメ。しかしいくら探ってもそれらしい記憶はない。
「ごめん……何かあったかな?」
「アハハ、大丈夫。知らなくても無理ないよ。私が一方的に知ってるだけし……私が最初に見た南雲くんは土下座してたから私のことが見えていたわけないしね。」
「ど、土下座!?」
どんな状況だ!?と困惑するハジメに香織は昔を懐かしむ様に話す。
「うん。不良っぽい人達に囲まれて土下座してた。唾吐きかけられても、飲み物かけられても……踏まれても止めなかったね。その内、不良っぽい人達、呆れて帰っちゃった。」
「そ、それはまたお見苦しいところを……」
もういっそ殺してほしいと思うくらいハジメの顔は赤くなっていた。まさかそんな現場を見られているなんて想像もしていなかったのだろう。
しかし香織は馬鹿にするでも嘲笑うでもなくただただ微笑み続けた。
「ううん。見苦しくなんてないよ。むしろ、私はあれを見て南雲くんのこと凄く強くて優しい人だって思ったもの。」
「……は?」
「だって、南雲くん。小さな男の子とおばあさんのために頭を下げてたんだもの」
小さな男の子、おばあさん……そう言われてようやくハジメも思い出した。
男の子が不良連中にぶつかった際、持っていたタコ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。
男の子はワンワン泣くし、それにキレた不良がおばあさんにイチャもんつけるし、おばあさんは怯えて縮こまるし、中々大変な状況だった。
偶然通りかかったハジメもスルーするつもりだったのだが、おばあさんが、おそらくクリーニング代だろう──お札を数枚取り出すも、それを受け取った後不良達が更に恫喝しながら最終的には財布まで取り上げた時点でつい体が動いてしまった。
とは言うモノの、喧嘩とは無縁の生活をしていたハジメ。タケルと言い合いをする程度ならあるが、流石に殴り合いはしたことがなかった。その結果相手がドン引きするくらいの土下座で粘るというなんとも格好良いのか悪いのかわからない解決法をとるに至ったのだ
「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝君とかよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし……でも、弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。……実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」
「白崎さん……」
「だから、私の中で一番強い人は南雲君なんだ。高校に入って南雲君を見つけたときは嬉しかった。……南雲君みたいになりたくて、もっと知りたくて色々話し掛けたりしてたんだよ。南雲君直ぐに寝ちゃうし……起きてても木場君と話してて中々タイミング掴めなかったけど……」
「あはは、ごめんなさい」
苦笑し謝罪するハジメ。香織が必要以上に構う理由が発覚し、さらに予想外の高評価を受けていたことにむずがゆくなる。
「だからかな、不安になったのかも。迷宮でも南雲君が何か無茶するんじゃないかって。不良に立ち向かった時みたいに……でも、うん!」
香織は決然とした眼差しでハジメを見つめた。
「私が南雲君を守るよ。」
ハジメはその決意を受け取る。真っ直ぐ見返し、そして頷いた。
「ありがとう。」
そう言いしばらく見つめ合うと、どちらともなく「プッ!」と吹き出して笑う。そのまま暫し2人して笑っていると……
「……もう喋っても良いかしら?」
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
すっかり蚊帳の外に放り出されていた雫が声をかけると2人も思い出したように声を上げる。
「人がいること忘れてイチャついてくれちゃってまあ……」
「「い、イチャついてないよ!!」」
からかうように雫が言うと揃って顔を真っ赤にしながら否定する。ただその声が大きかったのに気付いたのか口を押さえタケルの眠るベッドを確認する香織。
「スー……スー……」
まるで意に介さないように眠るタケル。その様子に香織はホッとする。
「心配しなくても、この程度の音量じゃタケルは起きないよ?」
「そうなの?」
「うん、全然。」
断言するハジメ。流石に長い付き合いなので分るようだ。
「南雲君は、木場君との付き合いは長いのよね?」
「うん、小3の時に関西から引っ越してきて、家が隣同士だったからね。」
「そう……木場君ってどんな人なの?」
「え?」
突然の質問に困惑するハジメ。そんなハジメを見て雫も続ける。
「いえね?私も正直木場君への印象は良いか悪いかで言えば悪い方だと思うわ。授業中はボーッとしてるし、提出物も忘れる。真面目な生徒とは言えない行動が多いから……」
「まあ、それは……うん。」
ハジメもその点は否定できない、というかタケル自身否定しないだろう。現に教室で光輝に注意された時も、反論せずに甘んじて受け止めていた。
「けど昨日、光輝の言い分を真っ向から撥ね除けるあの姿、正直目を離せなかったわ。普段見せる姿とは全然違う、毅然とした態度……あれを見て、どちらが本当の彼なんだろうって……」
自分の素直な感想を述べる雫を見て、腕組みしながら考えるハジメ。
「うーん……何というか、“どちらが”と言うよりも“どちらも”本当のタケルとしか言えないかな?」
「どちらも……本当の木場君?」
「うん、確かに普段のタケルはボーッとしてるよ。正直付き合いの長い僕でも何考えてるのか分らない時もあるし。タケルはさ……興味がないんだよ。大抵のことには。」
「え?」
「興味の幅が極端に狭いんだ。そして興味の外に在ることには無関心、逆に興味のあることは徹底的にやる。ようは振れ幅大きいんだよ。本人も“自分のパロメーターは0と10しかない”って言ってたし。正直、クラスメイトに関しても炉端の石ころ程度にしか思ってないと思う。」
「そ、そう。そこまで極端なのね……」
「何か……凄いね。」
雫と香織はそろって驚愕している。ハジメも流石に本人に了承も取らずに障害の事を話すわけにもいかないので、掻い摘まんで話す。
「でも……だからこそ凄いんだよ。」
「「え?」」
「興味関心をもったモノへの探究心が凄まじいんだ。だれがなんと言おうと拘り抜いてみせるその姿勢、格好良いって思う。それにぶっきらぼうだけど、結構真面目で優しいところもあるよ?責任感もあるから頼まれた事任されたことは絶対にやりきるしね。」
「それは……確かにね。」
楽しそうに誇らしげに話すハジメを見て、昨日のことを思い浮かべる。ハジメを守るように立つタケル……普段はむしろハジメの後ろに隠れているイメージなのに。
「私も……彼のようになれればなぁ(ぼそっ)」
「え?」
「何でもないわ。さて、もう遅いしそろそろお暇しましょうか。」
「あ、うん!じゃあね南雲君!また明日、おやすみなさい。」
「お邪魔しました。おやすみなさい。」
「おやすみ……あ、八重樫さん!ちょっと……」
部屋を出て自室に戻るとする2人の内雫だけを呼び止めるハジメ。
「どうしたの?早く戻らないと香織に嫉妬されちゃうのだけれど。」
からかうように言うが、真剣な表情のハジメを見てすぐに切り替える。
「白崎さんにあんな事言った手前、当人の前では言い辛かったんだけど……もし僕に何かあったら、その時は、タケルの事を出来るだけ気にかけてあげてくれないかな?」
「……どういう事?」
「詳しくは言えない。それでも……万が一の時は、お願いします。」
そう言うと頭を下げるハジメ。慌てて頭を上げるように促す雫。
「……どうして、私なの?愛ちゃんや、メルドさんだっているのに……」
「メルドさんはいい人だと思う。でもそのバックにいる教会関係者が正直信用できないし……先生は色々忙しそうだから。八重樫さんなら周りの事をよく見てるから適任だと思って。負担をかける様なことを頼むけど、お願い。」
ハジメとしても同級生である彼女に頼むのは気が引けるが、もし自分に何か不幸がありタケルの側にいれなくなった時の事を考えると、身近な人物で頼れるのは雫以外にいなかった。
「……わかったわ。どれだけ出来るか分らないけれど、やるだけのことはやってみる。でも忘れないで……貴方も一緒に地球に帰るのよ?そうしないと、香織が怖いからね?」
「アハハ……うん。分ってる。」
お互いに苦笑しながら約束を取り付ける。
その後、雫とも別れ部屋に戻ると、床に入りすぐに寝息を立てて夢の中へと旅立つのだった。
はい。というわけで裏話でした。
ようやっとヒロインの雫をまともにしゃべらせることが出来た…相手タケルじゃないけど。まあ今回は原作の会話とタケルの事を駄弁っただけですがね。
最後に雫に頼みごとをするハジメ。実際原作でも雫に対しては一定の信頼を置いてましたからねぇ。
さて、次回は遂に大迷宮……タケル達の運命や如何に!
ではでは、チャオ〜