実在するが到底不可能なコンボが成立するこの世界で俺は今日も決闘する 作:萌矢氏
思い立ったので。
今回は本当に酷い。
ハンバーガーを片手に公園をぶらぶらする。
穏やかで心地の良い風が吹き抜け、爽やかな気分になる。
ふと、ベンチを見つけた。たくさんの子供たちがベンチに集まって、座った子とその周りを囲って談笑しているようだ。
その風景もまた、心が安らぐ光景だった。
「おいクソガキども、そこのベンチは俺が座る。どけ」
俺の心の安らぎのが大事だから。
なんかざわついてる。そら見知らぬおっさんが絡んできたとしか思わないだろうな。せめて見知らぬお兄さんが絡んできたと思ってほしいが。
まあそんなことはどうでもよろしい。この世界ではつまりこうだ。
「俺と
子供からすればこのベンチは死守するものではないため、実質的に負けるデメリットは皆無だ。そして勝てばメリットとなれば乗らないはずもなく。
なのにこの男は、さらにもう一手をかましてきた。
「数多いし面倒だから俺VSお前ら全員でいいや。ライフはそれぞれ8000、手札も俺含め5枚スタート、あー面倒だから俺が先攻貰って、次のターンからバトルフェイズやっていいよ」
これには子供たちも勝ちを確信した。
先攻ではバトルフェイズがないためライフが減らされることもなく、万が一効果ダメージで削り切ったとしてもそれは誰か1人。そのまま他全員のターンを凌げるとは到底思えず、既に楽勝ムードであった。
「同意と見てよろしいですね?」
俺は一応確認を取り、全員が無言の肯定を示した。
「ロボト…………
「俺の先攻ー、スタンメインっと。モンスターセットしてカード2枚伏せて《太陽の書》を俺のセットモンスター対象に発動。
……なんかチェーンあったら口挟んでくれや。で、反転《メタモルポット》のそのまま効果発動、チェーンして手札から《月の書》で。んじゃ全員手札捨てて5枚引いてな。
次、セットしてた《鳳凰神の羽》を手札1枚捨てて発動、墓地の《太陽の書》をデッキトップに。で、手札1枚伏せて墓地の《ADチェンジャー》効果発動、自身を除外して再度《メタモルポット》反転して効果、チェーンして《皆既日食の書》でもっかいセット。ほい手札捨てて5枚引けよ。
次、さっき伏せた《浅すぎた墓穴》発動、全員墓地のモンスター1枚選んでフィールドにセットしてくれ。俺は《ニードルワーム》をセット。で、また1枚伏せてさっき仕込んだ《太陽の書》発動、《メタモルポット》反転で全員手札入れ替えよろしく。
次、さっき伏せた《闇の訪れ》を手札2枚捨てて発動、《メタモルポット》をセットに、カード1枚伏せて普通に引いた《太陽の書》でくるりんぱ。《メタモルポット》で入れ替え。
次、さっき伏せた《魔法石の採掘》を手札2枚切って発動、《月の書》回収。1枚伏せて、墓地から《ADチェンジャー》で反転、《メタモルポット》効果にチェーンして《月の書》、もっかいチェーンの《異次元からの埋葬》で。除外した《ADチェンジャー》を2枚墓地に戻して、裏返して、手札入れ替え。
次。デッキ残り半分になっちゃったねえ。さっき伏せた《魔法再生》で《鳳凰神の羽》回収、そのまま発動して《連続魔法》をデッキトップに、《太陽の書》発動で反転、《メタモルポット》で入れ替え。
次、というかラスト。
まず《皆既日食の書》で裏に、墓地の《ADチェンジャー》で《ニードルワーム》反転、効果でお前ら全員デッキから5枚墓地……全員対象か? やめとくか、適当にお前のデッキでいいや5枚捨てろ。で、最初に伏せてた《手札抹殺》発動、チェーンして《連続魔法》発動。最後にもう1枚の《ADチェンジャー》で《メタモルポット》反転して、お前ら全員デッキ0枚な。ターンエンド」
泣きながら走って逃げたガキどもを見送って、ベンチに座りハンバーガーを食らう。
うめえわ。
次回、「城之内死す」。
デュエルスタンバイ!