ドラクエは5か6までしかしていません   作:send

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占ってもらった

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 ヤンガスさんに頼んで武器屋に連れて行ってもらったが、そこでブーメランがいいか銅の剣がいいかでエイトさんは悩み店の主人と話し込んでしまった。

 暇なのでヤンガスさんも武器は大丈夫なのかと聞けば、『おおきづち』から大木槌を手に入れたようでそれ以上のものはここには置いてなさそうだと言われた。現地調達するとは、なんて懐に優しい男なんだ。

 

 

「お待たせしました」

 

 やっとこさエイトさんが決めた武器はブーメランだった。確かに私の記憶にもブーメランは武器に分類されていたとある。いつから導入されたのかははっきりしないが、ドラクエ5の子供時代に愛用していたような……。ゲームなら全体攻撃出来て便利な武器だと思ったが、いざ実物を見るとどうやってこれで全体攻撃を実現しているのか謎でしかない。一体にあたればそこで減速して落ちるんじゃないのだろうか。

 じーっと大振りのブーメランを見ていると、ぼやぁっとしたものがブーメランに纏わりついているような気がした。瞬きすると消えるが、またじーっと見ているとぼやぁっとしたものが見えてくる。何なんだと思って目を凝らすと見たことがあるような構築陣が浮かんでいた。

 ……ルーラ……っぽい? うーん。投擲者に戻るよう魔法がかけられていたりするのだろうか。ルーラはドラクエ5だと失われた魔法と言われていた。なのに子供の武器にその派系が使用されているというのは……謎だ。

 

「良かった。まだこちらでしたか」

 

 武器屋を出た所で声を掛けられ、見ればあの少女が駆け寄って来るところだった。

 

「気づいたら皆さんが居なくなっていたから探しちゃいました。お父さんが皆さんにお礼が言いたいって言ってるので来てもらえますか?」

 

 こちらとしても用はあるので否はない。少女に着いていく形で戻ると、もじゃ男が水晶玉を前に神妙な顔をして座っていた。

 

「その………まあ………なんだ。とにかく、おぬしらには礼を言わねばならん。おぬしらの持ち帰った水晶もほれ、このようにおさまるところにおさまったぞ」

 

 気恥ずかしげに礼を言うもじゃ男。ではなく、名前はなんだっけ。

 

「こうやって真剣に占うのは何年ぶりかのう……。これもおぬしらのおかげだ」

 

 誤魔化すように占い師の男が水晶玉に手をかざした途端、いきなり水晶玉が光った。

 

「こ、これはどうしたことかっ!? 見えるぞ! 見えるぞ! 道化師のような男が南の関所を破っていったらしい!」

 

 不思議現象に誰もが身構えた中、一人だけ何かのスイッチが入ってしまったようだ。パフォーマンスを始めたようにしか見えないが一体何を占おうとしたのだろう。

 

「むむ! むむむむ!ヤツこそがマスター・ライラスを手にかけた犯人じゃ! むむ! むむむむ!! こ、こいつはたしか……」

 

 固唾をのんで見守る空気の中『む』が多い人だなと思いつつ、ひょいと水晶玉を覗きこんでみるが何も見えない。占いの内容はマスター・ライラスの死因についてだとかだろうが、やけに詳細だ。犯人が居るにしても南方の方角に居るとか、白い服を着ているとか、もっと占いとか遠視とかでありそうな曖昧な表現ではないところがすごい。本当に見えているのなら。

 

「いや……だいぶ感じが違っているがその昔ライラスの弟子であった……ド! ドルマゲス!」

「ドルマゲス!?」

 

 ヤンガスさんが大声を出してエイトさんの腕を引いた。

 

「あ、兄貴! ドルマゲスっていや兄貴とトロデのおっさんが追っていた性悪魔法使いの名前じゃ!?」

「う、うん」

「んで、その先は? もっとくわしくわからねえのかっ?」

「くわしくか……。ちょっと待っておれ」

 

 身を乗り出すヤンガスさんに、占い師の男は逆に落ち着いた様子で姿勢を正した。

 

「ん? これは………。この水晶は確かに昔わしが持っていたものに違いないがここにちいさなキズのようなものがあるぞ。ふむ。相当かたい物にぶつけてしまったようだな」

 

 知らんがな。この人、性格は少女といい勝負かもしれない。

 

「ん? その傷の横に小さな文字で落書きがあるぞ……。なになに……あほうじゃと!? だ、だれがあほうじゃっ!? いったいどこの馬鹿がこんなことを!」

「ち、ちがうでがすよっ! アッシがもっとくわしくって言うのはそんなことじゃなくて……あ、兄貴~!」

 

 我慢しきれなくなったヤンガスさんがエイトさんに泣きついた。

 

「ふむ。なにやら事情がありそうだな。聞かせてくれるか?」

「えっと……」

 

 エイトさんがこっちを見てきたが、パス。水晶玉を取って来てほしいとお願いされたのはエイトさんで、持ってきたのもエイトさん。感謝されているのもそうだし、むろん今質問されているのもそうだ。私は金魚のフンでしかない。

 

「僕たちはある理由でドルマゲスを探しているんですが、どこを探せばいいのかもわからなくて。師匠であるマスター・ライラスという方なら何かを知っているんじゃないかと思っていたんですが」

「なるほど。おぬしたちはドルマゲスの手がかりをもとめてマスター・ライラスをたずねてきたと。そしてそのライラスはすでに亡くなっていたというわけじゃな……。しかしわしの占いではそのドルマゲスこそがライラスを手に掛けた犯人じゃ!」

 

 いやだから、改めて言わなくてもちゃんと聞いてるよ。

 

「自分を知る人物を消したかったのか? それともほかに理由があったのか? そこまではわからんがとにかくドルマゲスは関所を破り南にむかったようだ。南にはリーザスというちいさな村がある。と、わしがわかるのはここまでじゃ」

「方角だけでも分かれば追いかける事が出来ます。助かりました」

 

 折り目正しく腰を折って礼をしたエイトさんに、占い師の男は視線を明後日の方へと向けた。

 

「とにかくおぬしたちには世話になった。気を付けてゆくのだぞ」

 

 相当恥ずかしいらしい。早口で言ってさっさと行ってくれとこちらを見もせず手を振っている。その後ろで少女が口元を抑えて笑いを堪え、ぺこりと頭を下げた。

 まぁ、この少女にしてこの親ありというか……ちょっとゴーイングマイウェイなところがあるか、いい親子なんだろう。……最近実家帰って無かったなぁ……

 二人に見送られ、宿へ戻る道すがらそんな事を考えていて我に返った。

 

「エイトさん、すみませんが先に宿へ戻っていてもらえますか?」

「どうしたんです?」

「ちょっと忘れ物です。すぐに戻りますので」

「付き合いますよ?」

「いえ、出来れば馬車の準備をしていてもらいたいんです。たぶん陛下はすぐに出立したいと言われると思うので」

「あー…確かに。わかりました」

 

 エイトさんとヤンガスさんを穏便に宿へとやって、今来た道を急いで戻った。

 先程出て来たばかりのドアを叩いて開けると、驚いた顔の占い師の男が居た。

 そりゃまぁさっき見送ったばかりの相手が来れば誰でもそうなるか。

 

「おぬしはさっきの。どうした?」

 

 少女の姿は無く、一人水晶玉の前に座る男に私は近づいた。

 

「探して欲しいものが二つあるんです。お願い出来ますか?」

「探しもの? かまわんが……何を探しているのだ」

「一つは呪いを解く力を持つものです」

「呪いだと? おぬし呪われているのか」

「私ではありません。私の身近な人が呪いにかかってしまったんです」

 

 ドルマゲス本人に解かせる事が出来るなら、それが一番確実かもしれない。だが、素直に解くだろうか? おどしたところで解くだろうか? 次善策は備えてしかるべきだ。

 

「呪いを解くものか……」

 

 占い師の男は水晶玉に手を翳した。あの時のように激しく輝く事は無かったが、柔らかな輝きを放った水晶玉は中にうっすらと風景を映し出した。

 

「……森の中の泉が見えるな」

「ですね。水が虹色のように光って見えますが、そういう泉って多くはないですよね?」

「わしは聞いた事がないな」

「ではこの付近ではなさそうですね」

 

 となると、先々で情報を集めるしかない。

 

「おぬし……見えたのか?」

「はい?」

「水晶玉に映しだされた光景が見えたのかと聞いているのだ」

「はい。それが?」

 

 占い師の男はポカンとした顔をしたかと思うと、急に笑い始めた。

 

「面白いと思っておったが、なんと他人の占いを見る事が出来るとは……」

「覗き見は駄目でしたか。申し訳ありません」

「いや駄目というわけではない。見れるものでもないからな」

 

 ?

 

「おぬしには占いの素質があるようだ。もしかするとあの若者もそうかもしれんな」

「若者っていうと、エイトさん?」

「水晶玉が無くとも、顔を見ればその日の運勢ぐらいはわかるのだ。だがあの若者もおぬしもそれが見えなんだ。時折、そういう者がいるのだがその大抵が同業者というわけだ」

「はぁ」

「それでも他人の占い道具で内容まで見えるのは余程の事だぞ。誰かに師事でもしているのか?」

「していたら占いをお願いしたりしませんよ」

「……そういえばそうだったな」

 

 こほんと占い師の男は咳払いをして誤魔化そうとしていた。

 こちらも長々と話す予定ではないので素知らぬふりしてさっさと話を進める。

 

「もう一つは私の家………いいえ、私はどこへ行けば家に帰ることが出来るのか、見てもらえますか?」

「おぬし記憶でも無くしたのか」

「違います。単に帰り道がわからないんです」

 

 残念な子を見る目で見られた。そうなるのも判るけど、もうちょっと顔に出すのは控えて欲しい。

 

「地図なら宿屋が確か持っていた筈だ。それを見せてもらいなさい」

「それでわかるなら苦労しません。私はバシルーラでこの地方に飛ばされてきたんです。元居た場所がどこなのか地図を見ても判らなかったんです。だから……」

「わかったわかった。占ってやるから泣くな」

「泣いてません」

「わかったから」

 

 いや本当に泣いてないって。こっちを見ても無いのに何で泣いてるとか言うんだこの人。

 ひょっとして脳内で何かドラマが出来上がっていたりするのだろうか? バシルーラで飛ばされたというくだりで絶体絶命の危機を何とか脱したが、何処かもわからぬ場所で彷徨う事になったとか。

 あれだけ人前でドラマを繰り広げた人だ。思い込んだら一直線の人なのかもしれない。少女とこの人で互いに一直線。すれ違ったら激しくすれ違いそうな二人だ。今は噛みあったようだが、それまではずっとすれ違いっぱなしだったのかもしれない。

 

「影。大きな鳥の影が見える」

 

 あぁ占ってくれてた。

 水晶玉を覗くと、大地を疾走する鳥の影が見えた。

 

「………あの。影だけ見えるんですけど」

「………影しかないようだ」

 

 なんだそれは。

 

「い、いや、よく見ろ! この影はやたらと大きい!」

 

 ……で?

 

「こんなに大きな鳥はそうそういまい!」

 

 そうだろうか? ドラクエだったら『ごくらくちょう』とか、こんぐらいの大きさにならないか?

 

「と、とにかく。わしにわかるのはここまでだ」

 

 言い切られてしまった。そう言われてしまったらこう返すしかないじゃないか。

 

「ありがとうございました」

 

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