ドラクエは5か6までしかしていません   作:send

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話を聞いた

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 奇怪な建物(モリーさん宅:仮称)の上へと上ると、いつも通り赤と緑のコントラストが激しい服装のモリーさんが居た。

 ところでモリーさんは一体この服を何着持っているのだろうか。まさか一着という事は無いと信じたいが、考え出すとちょっと近づくのに勇気が要るような……

 

「おおっ来たなボーイにガール」

 

 私とは違い、何の疑いもなく近づいたエイトさんに気付いてモリーさんが振り返った。

 

「今日ボーイとガールが来る事はわかっていたぞ。風がしきりに噂をしていたからな」

 

 いや、ちゃんと今日来ますよって昨日話したと思うんですけど……あの、エイトさん、私、ちゃんと話してますからそんな疑いの目を向けないでくださいませんか?

 

「わしの頼みを見事に片付けてくれたな。ありがとう、礼を言わせてくれ」

「いえ、僕らもモリーさんには聞きたい事があったので」

「そうかそうか。渡したメモはもはや不要だな。それはわしが処分しておこう」

 

 魔物探しをしているという情報自体、流れる事を嫌っているのだろうか? エイトさんの視線に気付かないふりしてメモを袋から取り出し、モリーさんに渡す。

 モリーさんは確かに三枚ある事を確認して懐に仕舞った。

 

「ボーイとガールの瞳の奥に眠るあふれる才能を感じとったわしの目に間違いは無かったようだ。約束通り、この建物の中に案内しよう」

「あの、お話を伺わせていただきたいのですが」

 

 まってくれと言ったらモリーさんはニヒルに笑って、いきなり後方宙返りをしつつ建物の下へと落ちた。

 

「………っ!」

「………っ!」

 

 私とエイトさんが硬直から復帰したのは同時で、慌てて縁へ寄って下を見た。そこには、しっかりと腕を組み地面を踏みしめるモリーさんの姿があった。

 

「な、なんなんだ……」

「びっくりする人ですね……」

 

 こっちだと言うように私達を見上げるモリーさんに、思わず呟いたら隣のエイトさんも溜息をついていた。

 いつまでも上から眺めていても埒が明かないので下に降りると、モリーさんは扉を親指で指した。

 

「この扉の先にはボーイとガールの知らない世界がある。今日がボーイとガールの記念日となるはずだ。さあ行こう」

 

 ……ちらりとエイトさんを見る。『行く?』と目で聞いてみると『それしか、無いかと』と返ってきた。そりゃそうだよな。この唯我独尊というかゴーイングマイウェイを見せつけられたらそう考えるしかないよな。後々話も聞きたいから穏便以外の手段は取れないし。

 大人しく開かれた扉の先へと二人で入っていくと、そこは一見すると掘っ立て小屋の酒場のような場所だった。

 

「きゃーっ! モリーさまぁ!!」

 

 耳をつんざく黄色い声に、何事かと見ればモリーさんに女性が駆け寄っていた。

 ちなみにその女性は黒とピンクの襟の空いた長い袖の服に、丈の短いスカート。お尻にはまんまるのふさふさな白い尻尾。頭には白耳のカチューシャ。つまり、バニーさんだ。

 

「中に入ってこられるだなんて今日はどういう風の吹き回しですの?」

「はっはっは。いいじゃないか。それよりミリー今日もきれいだね」

「もーっ。モリーさまってば相変わらずおじょうずなんだからぁ」

「はっはっは」

 

 ちょっと釣り目の金髪美人(バニー)さんはモリーさんの言葉に満更でもなさそうに照れてくねくねしている。

 完全に置いてけぼりだ。モリーさんは笑いながら奥へと行ってしまう。

 

「さあこっちだ。わしは下で待っているぞ」

 

 いささか空気についていけず、その場で棒立ちしていた私とエイトさんに、モリーさんは言って鉄格子を開けた。

 

 ……鉄格子?

 

「エイトさん、建物内に鉄格子が在る場所って」

「牢屋という雰囲気ではないですね。ここに居る人も罪人などという様子でもないです。身なりの良い方も居られますし」

 

 それは確かに。

 

「とにかく行ってみましょう」

 

 エイトさんが行くので、つられて私も足を動かす。

 酒場のような場所に無骨な鉄格子は似合うような似合わないような、けれどその場に居る人は誰もそれを異質だと感じていない様子だ。どこかの国の官職に就いていそうな人、吟遊詩人のような人、どこの田舎から出てきたのだろうかというようなご老人、斧を持った戦士のような人、そして神父さ……神父さんまで居るよ……

 まぁ何というか、ここまでいろいろな年齢層、職種が揃っていて、どーんと鎮座する鉄格子に反応していないとなると、戸惑うこちらが異質な人間のように思えてくる。

 モリーさんが開けた鉄格子の先には地下へと続く階段があり、慎重に降りていくとそこはすり鉢状の地下ドームとなっていた。

 一言で言うと、闘技場。下の戦闘スペースと思われるところを見れば、戦っているのは人ではなく、魔物。

 これは賭けカジノ? モリーさんが胴元という事は、戦わせるための魔物を集めているという事か?

 

「それにしては魔物に対する感情が違うような気がするけど……」

「リツさん?」

「いえ、なんでもありません。モリーさんは――あそこですね」

 

 仁王立ちで下で戦っている魔物たちを見下ろしているモリーさんが居た。

 近づくとモリーさんは口を開いた。

 

「どうだ、驚いただろう。これをボーイに見せたかったのだ。これこそがこの世界でもっとも熱くもっとも激しいゲーム!」

 

 段々口調が激しくなり、最期で言葉を切るといきなりよくわからないポーズをとりだした。あれだ、戦隊ものの変身ポーズのような、戦闘終了時の勝利のポーズのような、ちっちゃい男の子が喜びそうな、あれだ。

 

「ザ・モンスター・バトルロードだっ!!」

「……モリーちゃん。ザは付かないでしょ。勝手に付けないの」

 

 本人決め台詞であろう言葉を決めポーズであろう姿勢で言い切ったら、横に居たバニーさんが突っ込みを入れた。

 

「む? そ、そうだったか? じゃあもう一度行こう……」

 

 モリーさんは恥ずかしがる事なく、こちらが止める間もなく、リテイクに入った。

 先程と全く同じ溜めと決めのポージングを繰り出し、

 

「これこそが、モンスター・バトルロードだっ!!」

 

 今度は『ザ』が無いバージョン。思わずバニーさんを見れば、笑顔で拍手をしていた。よくわからないが、『ザ』の有無が重要なのだろう。人はそれぞれ重きを置いているものが違うが、『ザ』に対してここまで重きを置いている人はそうそう居ないだろう。

 

「ルールを簡単に説明しよう。

 モンスター・バトルロードとは三匹のモンスターで構成されたモンスターチーム同士の戦いだ。自分のモンスターチームで七つのランクに挑み勝ち上がるのだ。それだけでここではすべてを得られる。

 どうだボーイとガールも自分のチームを持ちたいだろう?」

 

 暑苦しいテンションに現実逃避していたら、妙な話をふっかけられた。エイトさんと視線を合わせ、こそこそと緊急会議。

 

「どうします」

「言われている内容はよくわかりませんが、この流れで『はい』以外の返答が有効でしょうか?」

「ごもっとも」

「悪い方という風にも見えませんから詐欺でもないでしょうし」

「それについても同意します」

 

 エイトさんが『詐欺』という可能性に思い至っているという事実に感動しつつ、緊急会議終了。

 エイトさんが素直に「はい」と言うとモリーさんは朗らかに笑った。

 

「はっはっは! ボーイなら必ずそう言うと思っていたぞ!

 だがここのルールでは自分のチームを持つためには二十万ゴールド必要なのだ。なぜここにいるのが金持ちばかりかわかるだろう。ボーイにそれだけの金が払えるか?」

 

 エイトさんの視線に、私は首を横に振った。

 実際のところ、二十万ゴールドは捻出可能だ。だが、それは今後の旅の資金であって、ここで情報を買う金額として即決する事は出来ない。

 強引にここまで私達を引っ張ってきたわりに、言ってる事が何というか、しみったれた御仁だ。

 

「ふっ……」

 

 エイトさんが否定の言葉を言うよりも早く、モリーさん(しみったれた御仁)は言うなというように手で制してきた。

 

「今のは意地の悪い質問だったな。すまない。許してほしい」

 

 目を閉じ静かな口調で謝罪するモリーさん。どうも芝居がかっているように見えて、ぼけーっと鑑賞しそうになる自分を律するのが大変だ。

 

「つまり、わしが言いたいのはこういう事だ。モンスターチームを持つために必要なその二十万ゴールド、代わりにわしが出そうではないか。

 だがもちろん無条件というわけではない。その代りボーイはわしの前でこう誓うのだ。

 このモンスター・バトルロードを勝ち上がり必ずや頂点に立ってみせる……とな。

 どうだ? わしの前でこのモンスター・バトルロードを極めてみせると誓えるか?」

 

 なるほど。単にしみったれた御仁というわけではなくて、物好きな御仁というわけだ。

 どうします? というエイトさんの視線に、お任せしますと返したらエイトさんはあっさりと頷いた。

 

「はい。誓います」

「よしっ! ならば決まりだ!! ボーイとガールはたった今よりモンスターチームのオーナーだっ!!」

 

 場を盛り上げるようにバニーさんが大きく拍手をした。

 

「……となればさっそく手続きを済ませなければならない。まずチームには名前が必要だ。チームの名前を決めてもらおう。いい名前が思い浮かばないならわしが代わりにつけてもいいがどうする? 自分で名前をつけるか?」

「えっと……リツさん」

「いやいやいや、ちゃんと自分で付けないと」

「でも一緒に魔物を集めて……というか、集めたのはリツさんですし」

 

 いや、私、この人とあんまり関わり合いになりたくないからエイトさんを前に押し出していたんだけど……って、それに気づかれた? ぬぅ。妙なとこで敏いの相変わらずか。だがしかし、

 

「うむ。ガールのチームでもあるのだ。共に考えるのがよいだろう」

 

 宣言したのはエイトさんだけだからと反論しかけた矢先、胴元に退路を断たれてしまった。

 

「何がいいでしょうか?」

「……えー……と」

 

 再度エイトさんに問われて迷う。どうしたものか。ネーミングセンスなんて私にあるわけが無い。五の主人公の名前をゾーマにしようとして、長男に止められた程だ。

 うーん……敵キャラは駄目らしいから。えっと、そうなったら味方側で個人名は何か人権侵害のような気がするから外すとして……

 

「……ラーミア?」

 

 不死鳥ラーミアならば人権侵害にもならないだろう。マスタードラゴンとかつけたらトーポさんが反応しそうだし。あ、そしたらドランゴでもよかったのか。プックルとかもありだし、ゲレゲレも……いや、周りがゲレゲレにして引いてたからゲレゲレは無いのか。

 

「ラーミア? どういう意味なんですか?」

 

 もういっそロトとかでもいんじゃね? とか考えていたら、ラーミアを口に出していたらしくエイトさんに聞かれた。

 

「不死鳥の名前です」

「ふしちょう?」

「不死、死なない、という意味です。死なない鳥、不死鳥。

 まぁ死なないというか何度でも甦るような感じですね。だから、勝負事には良い名前かと思ったんですが、ちょっと安直すぎかもしれませんね」

「いえ、いいと思います。何度でも甦るって、何度でも挑むって事ですよね?」

「ええまぁ」

「じゃあそれにしましょう。モリーさん、ラーミアでお願いします」

「『ラーミア』でよいのだな?」

「はい」

「う~む……。あまり強そうな名前ではないがまあいいだろうっ!」

 

 まぁラーミアは非戦闘員。強くなくても問題ないポジだ。設定上はいくらか強いのだろうけど。

 

「よしっ!! ボーイとガールのチームの名前はラーミアに決まりだ!

 では次はチームメンバーだ。こっちは話が早いぞ。最初のメンバーはボーイとガール自身が集めたジョーとスラリンとプチノンの三匹だ」

 

 まともに戦えそうなのってジョーさんだけでは?

 私の懸念に気付いてか、モリーさんは言葉を続けた。

 

「もちろんこのメンバーではモンスター・バトルロードを勝ち上がる事などまず不可能だろう。だからこそボーイとガールはチームを強化しなくてはならない。だがこれだけは覚えておいて欲しい。魔物の強さはそれを指揮するオーナーの強さにある程度は左右されるものだ。

 だが、だからと言ってオーナーが強くなるのを待っているだけでは、なかなかチームは強くならないだろう。しかも魔物は人間と違い戦いの経験を重ねて強くなるという事がないのだ。つまり、チームを強化するにはより強い魔物へとメンバーを入れ替えていくしかないということだ。

 世界から強い魔物を探すのだ! そして彼らを自分のチームに加えてどんどんチームを強化していくのだ!

 そしてかけ上がれぃっ!! 最強のチームでこのバトルロードを一気に駆けあがるのだぁっ!!!」

 

 途中から一人盛り上がり気炎を吐きだし始めたので、私とエイトさんは心持ち一歩下がって傍観してしまった。

 あ、バニーさんも特に拍手は無いらしい。

 無言の私達に気付いたのか、モリーさんはぼそっと言った。

 

「駆け上がれ……」

 

 ……人力エコーのつもりなのだろうか。

 

「モリーちゃん。最期に同じことボソっと言うのかっこ悪いっていつも言ってるでしょ?」

「う…うむ。すまない。どうも尻切れトンボな感じがしたのでな……」

 

 バニーさんの冷静な突っ込みに、さすがに居心地悪そうにモリーさんは咳払いをした。

 

「とにかくこれを受け取るといい」

 

 差し出されたものは鍵だった。エイトさんが受け取ると、モリーさんは鷹揚に頷く。

 

「それがあればいつでもこの建物に入ることができる。自由にバトルロードに参加できるだろう。バトルロードに参加するためのカウンターは三つあるカウンターのちょうど中央だ。だが、いきなり参加せずに周りの人からいろいろと情報を集めるのが賢いやり方だろう。

 わしはここでボーイとガールの健闘を祈っている。この期待に応えてくれよ」

 

 話がようやく終わりそうな雰囲気になったので、私は少しだけ空いた距離を詰めるように一歩前に出た。

 

「モリーさん、幾つか質問させてもらっても宜しいですか?」

「ん? あまりわしからアドバイスをしては不公平と言われてしまうが……そうだな……一つ、いや二つぐらいなら……」

「いえ、バトルロードの事ではなく、別の事です」

「別の事?」

「スラリンさんが居た、滅びたお城の近くという情報について。どうやって滅びたお城という情報を得られたのかと思いまして」

 

 あぁというようにモリーさんは一つ頷いた。

 

「ガールの先輩達だ。ここへ立ち寄った時に話を聞いた」

「確か、船は出ていなかったと思うのですが」

「いや船ではなくキメラの翼を用いていたようだな」

 

 なるほど。それなら移動可能か。

 

「あと二つ。宜しいでしょうか?」

「うむ。ボーイとガールの旅の助けになるのならば答えよう」

「ありがとうございます。一つは、最近道化師姿の長い杖を持った男を見かけたという情報は無いでしょうか?」

「道化師? ……海の上を歩く道化師という、どうにも怪しい話を聞いた事はあるが……すまない。他に聞いた事は無い」

「いえ、十分です。もう一つは、他の大陸に渡る方法、または船を入手する方法をご存知ないでしょうか?」

 

 なるほど、というようにモリーさんは腕を組んだ。

 

「ボーイとガールならば誰かと一緒にキメラの翼で飛ぶよりも、小型でも自分達で動ける船の方が良さそうだな」

「まぁ……探し物があるので、誰かと飛ぶとなると行先が限定されますからね。それはそれで別大陸に行けたらそこから動くまでですが……」

「今は小型とはいえ、船を所有している者は限られているからな……」

 

 言い淀む様子を見れば、入手が難しい事は知れた。

 

「とある方から、荒野にある船を利用出来ないかと言われていますが……」

「あぁあれか。確かに状態はおどろく程いいらしいが、海まで移動させる事は難しいだろうな」

 

 お。状態はいいんだ。それは意外だ。

 ひょっとするとひょっとするかもしれない。

 

「ありがとうございます。あの、もし道化師姿の男を見かけたという話を聞かれましたら、こちらを伺った時に教えていただけないでしょうか」

「そのくらいならばお安い御用だ」

 

 まかせておけと胸を叩かれ、私は頭を下げた。

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