遥か極東のある国に、「幻想郷」なる場所があるらしい。そこは科学文明が発展し、妖怪や神等の「非常識な存在」が拒絶されたこの世界において、そんな彼らが暮らすことのできる地上唯一にして最後の楽園であると言う。そこには人間は勿論妖怪や神、妖精、仙人、神霊等、数えるのが無駄な程大勢の存在が住んでいて、今から百年ほど前に地上と幻想郷を隔てる「博麗大結界」を貼った「賢者」達によって管理されているのだそう…………
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ここはそんな幻想郷の一角。「そこ」の大体向かいの位置には天を貫く巨大な山(幻想郷の住民からは妖怪の山と呼ばれているらしい)があり、「そこ」の頂上はその山には劣るものの十分な高度があり、頂上から見える雲海はこの幻想郷には無い大海を彷彿とさせる。そんな山の麓には、青々とした葉に包まれた美しい渓流が、幻想郷の中心側にある麓を囲むように小規模に広がっている。
曰く、そこには天の神が住んでいると。曰く、そこには暴風と竜巻を従える龍が住んでいると昔から畏れられており、かつて周辺に住んでいた人々は「その者」を「嵐龍」と呼び、「その山」を「霊峰」と名付け畏れ、崇めていたという。
だが、そんなことも今は昔。霊峰も、その麓にある渓流ものんびりとした時間を過ごしていた。そんな渓流の昼下がりにて、一人の
そんな状況が数分続いたかと思えば、不意に少女が釣り竿を振り上げる。振り上げた釣り竿の先には、青や朱色の体に鰭の先が黄色く染まったカラフルな魚がかかっている。
「これだけ集まれば充分じゃな」
満足気に頷いた少女は、釣具を片付けて入れ物を持ち、ふわりと周囲に生えた少女の背丈の大凡二倍はある草を揺らしながら飛行し、
霊峰の頂上付近に付いた少女は平らな面が広がった場所に着地し、そのまま面の端(即ち断崖絶壁である)に腰をおろす。そして先のカラフル魚を入れた入れ物を自身の横に置き、そこから取り出した他の物より一回り大きいカラフル魚を、どこからか出したナイフでいくつかに切り分け、脂がのった非常に美味しそうなその一つを口に放り込んだ。尻尾をブンブン振りながら、誰が見ても美味しそうだと言わんばかりの百点満点の笑顔を浮かべた少女は、あっという間に切り分けた一尾を残さず食べきってしまった。
「うむ、やはりトロサシミウオは別格じゃのう」
サシミウオも上手いがの、と付け足しながら満足気に感想を独りごちると、少女は再びサシミウオを切り分けて口に放り込みながら、その角と同じ黄色い瞳で眼下に広がる幻想郷を眺めていた。
「向かいの山が妖怪の山、その麓にあるのが霧の湖で、その近くに建ってるのが……紅魔館じゃたか?いや、紅茶館だったような……うーむ」
つい最近神出鬼没で胡散臭い知り合いから聞いた幻想郷各地の目立った場所を一つづつ暗唱している。いや、ついさっき一つ間違えたが、どうやら彼女にとってあの二つは間違えやすいのだろう、片方は幻想郷に存在しないが。
「あれが迷いの竹林で、その近くに人里があって、一番東にあるのが博麗神社じゃな。そういえば、今代の博麗の巫女はどんなやつなんじゃろうか、紫の奴は才能はあるものの自由気ままで困り者の暢気な奴だと言っていたが……」
湧き水のように出てくる記憶を呟きながら、少女は楽しそうに時を過ごしていた……………
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