「…………ん」
吹き荒ぶ風と激しく打ち付ける雨の音で博麗霊夢は目を覚ました。普段は朝日が登ると同時に起きる習慣が根付いていた彼女は、異音で起こされた為かはたまた寝起きはいつもそうなのか不機嫌そうな顔をしている。
「……外、薄暗いわね」
昨日は快晴だったのにと怪訝しながら霊夢は障子を開く。すると開いた障子から凄まじい強風が彼女を襲い、霊夢は思わず尻餅を着いてあんぐりとする。
「………こりゃあまた随分と降ってるわね」
眼前に広がるのは雨に打たれる神社と激しく揺れる木々、そして黒雲に覆われて日光が一筋も見えない空。暫く呆然としていた霊夢だが、直ぐに何かに気付いたのか慌てて走り出す。
「さ、賽銭箱が吹き飛んじゃう!」
どうやら彼女、雨戸の事よりも賽銭箱の方が心配なようである。急いで向かうも悲しいかな、そこにあった筈の賽銭箱は影も形もなく霊夢はがっくりと肩を落とした。
「…こんな天気じゃおちおち探しにも行けないし、雨戸でもしめようかしら」
賽銭箱の行方を想像し気を落としつつも急いで引っ張り出した雨戸をしめていると、まだ雨戸をしめてないところからひょっこりと黒いとんがり帽子を被った少女が顔を出す。
「よっ、霊夢」
「あんた、この天気で外に出てたの?」
「こんなに激しい嵐はレアだろ?」
「レアなのと外出するのに何の関係があるのよ」
「レアな天気の時にはレアなアイテムが落ちてるからな」
「つまり、レアアイテムを探したはいいもののあまりにも嵐が激しいからここに避難したってわけね」
霊夢に図星を突かれたようでうぐっと声を漏らした霧雨魔理沙は、霊夢から手渡されたタオルで濡れた部分を拭きながら縁側に上がった。
それから暫くして、雨戸の設置やら着替えやらを済ませた二人は退屈そうにしていた。因みに霊夢はいつもの巫女服、魔理沙は長襦袢を着ている。魔理沙の魔女服は濡れたため干してある。
「何もすることがないし退屈だわ」
「せっかく二人いるんだから綾取りでもするか?」
「何で綾取りなのよ」
「この前香霖から外の世界の綾取りの本を貰ってきたんだ」
「ちょっと、霖之助さんのとこの物を盗るんじゃないわよ」
「失礼な、私は今まで一度も物を盗んだことはないぞ」
「どの口が言うんだか」
この口だ、と返しながら本に書いてある通りに指を動かして何かの形を作る魔理沙。霊夢は魔理沙がこちらに見せている物を見て何か分からないのか首を傾げていると、東京タワーって言うみたいだ、と魔理沙が本を見ながら言った。
「何よそれ」
「私にも分からん、タワーって付いてる位だから東京って名前の塔なんだろ」
「まぁそうなのかもね、でも中々面白そうじゃない」
「だろ?」
そんなこんなで綾取りを始めた二人。暗雲が空だけでなく時間も隠していたようで、二人は何時間ものめり込んでいた。しかし、最初は楽しくてもずっと続けていればその内飽きが来てしまうものである。つまり何が言いたいかと言えば、
「流石に綾取りだけじゃ一日は潰せなかったわね…」
「でもかなり時間は経った様な気がするぞ、これは私のお手柄だな」
「それにしても、止むどころか全然勢いが衰えてないわね」
「ここまで来ると、むしろ誰かが起こした異変なんじゃないか?」
雨戸を開けて外の様子を見た霊夢に対し、魔理沙は疑問をぶつける。確かにこんな長時間激しい嵐が続くというのは外の世界でもそうそうない、魔理沙が疑うのも無理はない。
「まぁ、その線もあり得るわね」
「だろ?こうしちゃおれん、さっさと準備をしなきゃ」
「でも、異変と決めるのもまだ尚早だと思うわ、たまたま長持ちする嵐が来ただけかも知れないし」
「た、確かに」
「嵐の中びしょ濡れになりながら犯人探しをしたのに只の自然現象でしたなんて、骨折り損にも程があるわ」
それに、あんたまだ服乾いてないでしょ、と言うと魔理沙はますます反論の余地を失った様である。元々あまり反論する気がなかったというのもあるが、やはり彼女も濡れるだけ濡れて骨折り損になるのは御免なのだろう。
「私としては、異変は早めに解決して欲しいのだけれど」
「「紫」」
「何で異変って分かるのよ」
「そんな事より、里の人間を優先したらどうかしら?」
「確かに、幻想郷にとって人里は必要不可欠だわ」
「でしょう?なら…」
「でも、自然の営みならそれは仕方のない事だと思っているわ」
正直な所、紫は少しばかり焦っていた。勿論異変の規模もそうだが、風披靡の力が自身の想定を上回っていたからである。紫とて万能ではない、幾らコンピューター並の計算能力を持っていたとしても、そこに意思が存在する以上無意識に自身の思考等と結び付けてしまうからだ。因みに風披靡自身も少しやり過ぎたんじゃないかと焦っているのは別の話。
「私の仕事はあくまで妖怪退治と異変解決であって、困ってる人間を助ける万事屋じゃないのよ」
「確かに、あなたの仕事は妖怪退治と異変の解決ね。でも、今回は紛れもなく異変よ」
「あんたの言う事を信じろってこと?そっちの方が嫌よ、あんた胡散臭いし」
「霊夢は変な所で頑固なんだから…分かったわ、今日は神社で時間を潰してても構わないわよ」
「そういうあんたはあっさりと引くのね」
「えぇ、元より霊夢の意見ももっともだと思うわ、どうせ明日になれば分かる話だし」
「それもそうね、魔理沙、他にも時間が潰せそうなものない?」
「三人いるから、花札なんかどうだ?」
「花札、良いわね。霊夢に負けてられませんわ」
「あんたらどっちもぶっ倒してやるわ」
その後は、三人で柄にもなく花札に熱中した後にどうやって時間を把握したのか、夜更かしは乙女の天敵ですわ、何て言いながら帰った紫を尻目に二人も床についたのであった。そして迎える朝。霊夢はバァンと雨戸を開け、外の様子を確かめる。
「これは…異変で間違いないわね」
空を覆うのは昨日と比べて赤みが増した暗雲で、嵐の勢いは昨日と同じか、それより強くなっていた。昨日紫が言っていた事もそうだが、何より霊夢の勘がそうだと言っているのだ。因みに、一晩中交代交代とは言え人里を守っていた烏天狗や河童等はクタクタになっている。紫は案外彼女達の事も気に掛けていたのかもしれない。
「こりゃあまた、一段と激しくなってるな」
「異変で間違いないわ、私の勘がそう言ってる」
「なら尚更だな、早く準備するぞ!」
「えぇ」
霊夢の言葉に、魔理沙は言われる前に干しておいた自分の服を取りに行く。せっかちだなと思いながら、霊夢も寝間着からいつもの巫女服に着替える。
異変は、これからが本番である。
重ね重ね言いますが、更新が遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。タグに不定期更新とあるけど、可能な限り早めに更新したいというのが私の本意です。
と言う訳で次回は霊夢達が風披靡ちゃんの山にカチコミに行く回です。時機組の三人目に当たる人物は入れようかまだ悩んでいます、ぶっちゃけなくてもいいかなと思ってたり。と言う訳で閲覧ありがとうございました、ご意見ご感想誤字脱字報告等は積極的にやって下さると嬉しいです。
タグにチートを付けるべきか
-
付けるべき
-
付けなくていい
-
その他(感想で書いてください)