「……お前大丈夫か?」
「──え? 何が?」
突然理人に心配されて心当たりがない僕は聞き返してしまう。僕の反応に理人はため息をつき、手に持っている竹箒で僕の頭をコツンと叩いた。
「お前がここ一週間、ずっと上の空だから心配してんだよ」
上の空、と言われてもピンと来ないため首を傾げる。
すると再び理人はため息をついた。
「ライブが楽しみなのは分からなくもないが、生活に影響が出たら元も子もないだろ」
聞けばここ最近の僕は授業で先生に当てられても、他の生徒との挨拶や話でも反応をあまりしてないと教えてもらった。なんというか、いつも以上に素っ気ない、といった感じらしい。
僕自身そんな事は全くないのだが、事実そう言われてるのだからそうなのだろう。
それにライブが楽しみ、と言うよりは他に気がかりな事がある訳で……。
「楽しみ……なんだけど、なんて言えばいいんだろ。少し、心がモヤモヤするって言うか……」
「……はぁ?」
たどたどしい言い方に意味が分からないという反応をされる。
「ライブを観るのは楽しみだけど、その倉田さんの変化を見るのが怖くて」
先に進んでいる倉田さんの姿を目の当たりにして僕は素直に喜べるのだろうか。……いや、先に進んでしまった倉田さんをそのまま見続けれるのだろうか。そう考えてしまう。
「でもお前応援してんだろ?」
「そりゃしてるけどさ……」
僕は手に持ってる竹箒で落ち葉を集める。
因みにだが今は掃除中。僕と理人は外の掃除当番のため雑談しながら掃除をしている。
「倉田さんは変わった。ライブを観なくても分かるぐらいに変わってる。だけどライブを観たら僕の知ってる“倉田ましろ”じゃなくなる気がして怖いんだ」
「……変わってほしいけど変わってほしくない?」
小さく頷く。
自分でもそんなのわがままだって分かってる。だけど、それ以上遠くに行ってほしくない。
こんなのはただの矛盾だ。叶ってほしい事を叶わないでいてほしいと願い、変化を望んでいるのにその変化を否定していたい。
「あー、もー……」
理人は頭を掻き声を漏らす。
「じゃあお前も変われ!」
「……え?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
指を指され、突拍子もない事を言い放った理人は何かが吹っ切れてるように見えた。
「倉田は変わった、だけどお前はそのまま! じゃあお前も変われ! そうすれば同じ場所に並んでるだろ! 単純だ!」
「僕なんかが変われるなんて……」
再びため息。だけどその返事を予想していたかのように、理人は表情を緩めた。
「まぁ、お前が変化を恐れているのは何となく分かる。だけどそれとこれとは別だろ。多少お前が変わろうが、俺も倉田も変に距離は取らないさ」
「理人……」
「それに──」
何かを思い出すかのように理人は空を見上げ呟いた。
「お前がどう変わろうが倉田はお前を受け入れるはずだ。柊も今の倉田を受け入れてるんだろ?」
「……うん」
「じゃあ大丈夫だ。なぁに、俺が言うんだ間違いはない」
いつもの笑顔を理人は浮かべる。でもその根拠も何もない言葉がとても信頼出来る。
「ライブは二週間後らしいぜ。それまでに心の整理はしておけよ?」
そう言うと理人は「じゃあゴミ捨ててくるわー」と言い落ち葉の入った袋を持って行く。僕はというと、理人に渡された竹箒を道具箱へ持って行ってる。
「(迷ったらダメだよね。ちゃんと応援するって決めたから)」
一瞬の迷いでもそれは相手への思いを裏切る事となる。そんな事はもうしないと誓おう。
「……ライブまであと二週間、か」
こんにちは小鴉です。
再び誤字についての報告兼謝罪をしたく出てきました。
つくしちゃんの苗字を“双葉”と間違えていた事を教えてもらい修正しました。本当にすいませんでした。
誤字については優しく見守ってください、お願いします。
また、最近色々な感想を貰えて嬉しい限りです。これからもこの作品をよろしくお願いします。