「柊くんっ!!」
「──お。柊、お呼びだぜ」
ライブが終わりそれぞれが余韻に浸りながらもCiRCLEから出ていく。そんな中、僕は背後から聞き覚えのある声で呼び止められた。
「倉田さん……」
「ど……どうだったかな、私達のライブ……っ」
振り向くと先程までステージに立っていた眩しい存在が目の前に居た。息を切らしてるのを見て、全力で僕を追いかけて来たというのが直ぐに分かった。
「凄かったよ。倉田さんは変われたんだね」
「!」
僕の言葉に疲れていた表情が一気に明るくなる。まるでその言葉を待っていたかのような反応だ。
でも僕の言葉は終わらない。
それはきっと、倉田さんが望まない言葉だとしても。
「うん、本当に凄かった。……嫌なくらいに」
「──え?」
自分の脆さを実感した。
倉田さんに背を向け僕は続ける。
「倉田さんは可能性の下に居る、それも無限の可能性の。散らばる星のように分岐点がとてもあり、そこに進める覚悟を持っている。……いや、進むことを恐れない覚悟がある」
当然だが卒業の瞬間から僕らは違う道を歩んでいたんだ。そしてその道というのは、停滞か変化か、と大きな分岐点の上で……。
「柊、くん……」
「僕は変化が怖い、それは倉田さんもよく知ってるよね。……大きすぎたんだよ、倉田さんの変化は。輝きすぎてる、人を照らし進む道標を示すほどに」
僕はそう言い捨て
「お、おい柊! 待てって!」
「ましろちゃん……」
「…………っ」
理人が僕を追いかけ、その後ろでは二葉さんが倉田さんを心配しているのが分かる。でも倉田さんは僕を追いかける事も引き止める事も出来ない。
その明確にされた線を越えることはある意味、倉田さんには難しいから。それを分かっているから。
「(ごめんなさい……)」
僕は臆病だ。弱い人間だ。駄々をこねる子供だ。
薄っぺらい覚悟はすぐに破れさる。言葉でどれだけ言っても、心でどれだけ思っても、一瞬の出来事でそれを全て諦めてしまう。
その場を去る僕は心の中で倉田さんに謝り続ける。僕は倉田さんの隣に居れないと、居る人間ではないと。
──そして、倉田さんを応援できない自分を許してくれ、と。
『ましろちゃん……大丈夫……?』
『うん。平気だから……一人にしてて、お願い……』
そうつくしちゃんに言って私は一足先に家に帰った。明日みんなに謝らないと、と考えながらも私の脳内は一つのことでいっぱいだった。
『うん、本当に凄かった。……嫌なくらいに』
心に、刺さった。
相容れない、拒絶のような言葉。
変わった私はダメだったのだろうか……。
「…………柊くん」
ベッドで仰向けになり手を伸ばす。白い天井に手を伸ばすが届く気はしない。
変わりすぎたのだろうか。昔のままが良かったのだろうか。それを教えてくれる人はここにはいない。
「ごめん、なさい……」
ふと、言葉が漏れた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……っ」
全てが分からなくなり誰に向けているのかも分からない言葉を呟く。
私は謝る。
誰にも届かずに消える言葉を。崩れ去った何かを留めたいように、何かが消えないように。そう、願いを込めて。