次の日が休みでよかったと心の底から思える。だってそれほどまでに私は喪失感が大きかった。
携帯を開き時間を見る。
起きて、寝て、また起きて──とそんな事を繰り返しているうちに既に13時を過ぎていた。……確かに途中、親が心配して部屋に来た記憶がなくもない。
時間を確認した時に通知履歴が並んでいたので確認する。誰からだろう、というのは野暮というものか。つくしちゃんとおそらく話を聞いたのだろう七深ちゃんや透子ちゃんからも連絡が来ていた。
『大丈夫、心配しないで』
表情を歪ませながらそう全員に返事を送る。
こういう時に顔の見えない連絡手段というのは便利だ。こんなふうに躊躇わず平然を装える。
みんなに返信をした後、私は携帯を枕元に置き毛布を被る。暗い部屋、カーテン越しに微かに差し込む光が毛布によって遮断され、再び私は暗闇へと戻る。
「(どこで間違ったんだろう……)」
昨夜、あの後からずっと考えていた。
どこで柊くんの期待を裏切ったのか。どこで望まれない私になったのか。どこで──。
「……あぁ、なんだ」
たどり着かない答えを探す中一つのことにたどり着く。それは今の私を表すことで、夢から覚めるような感覚に陥る。
私は臆病な、あの頃の倉田ましろのままだと。
“いっそ、変わらない方がよかったのではないか?”
そんな言葉さえ浮かんでくる始末だ。
──ピコン。
そんな時、携帯の通知が突然鳴る。またつくしちゃん達からだろうか、と思いながら目を向けると確かにつくしちゃんからだったのだが、いつもの通知とは少し違った。
「? グループ……?」
『つくしちゃんからグループ “応援する会” に招待されています』
何となくグループに入ってしまう。すると突然グループ通話が始まった。
「え、え?」
『つくしちゃんと理人が通話に参加しています』
その文字が見えて何のグループだろうと尚更疑問に持ってしまう。きっと理人、というのは森川くんの事で……。
「……は、はい……?」
『お、来た来た!』
疑問を抱きつつ通話に参加する。
すると予想通り、森川くんの声が聞こえてきた。
『わりぃわりぃ、流石に心配でな。悪かったな柊が変な事言って』
「そ、そんな……ことないよ……」
どうして森川くんが謝るのだろう。別に言った本人でもないのに……いや、言った本人からも謝られる必要はないのだけれど……。
『ましろちゃん……』
そこにつくしちゃんの声が聞こえる。今の私のように弱々しく小さな声、心配されてるのだろう。
「ごめんねつくしちゃん。変な気を使わせちゃって、バレバレだったよね」
『え、あ……そ、そんな事ないよ! うん……』
「あはは。無理しなくていいよ」
言葉が自分に反響する。
誰よりも優しくて人の心に触れてくれるつくしちゃん。そんなつくしちゃんだからこそ、本来他人なはずの私のために落ち込んでくれるのだろう。
『ばーか。無理してんのはお前だ倉田』
「……む、無理なんて」
『言えるのか?』
「……言える、もん」
『……成程、な』
大きなため息が画面越しに聞こえた。
『強がるなよ。お前は元々弱いんだからさ』
「っ!」
『も、森川くん!!』
自分で分かっていても実際に言われると傷付くものだ。
『──ほら見ろ。倉田は結局変わってねぇんだよ』
「…………え?」
刺々しい言い方から一変、今度は優しく語りかけるように言ってくる。
『 “Morfonicaの倉田ましろ” は変わってるんだろうけど、“俺から見た倉田ましろ” は昔のままだぜ。変わったと思い込んでるんだよ、それこそお互いにな』
森川くんの言う事が分からない。どういう意味なんだろうか。
『本当に変わったんならぶつかってみろ。ま、本質的には変わってないんだから昔のようになるんだろうがな』
「わ……私用事あるから、抜けるよ。……ごめんね」
『あぁ。ごめんな急にかけてきて』
『えっ!? ちょ──森川く──』
止められることなくすんなりと通話から抜ける事が出来た。つくしちゃんが何か言おうとしてたが……悪いけど今は無視させてもらおう。
私はベッドから降りて机の目の前に立つ。
棚から卒業アルバムを取り出し思い返すようにある一枚の写真のページを開く。
「昔のまま……なのかな」