臆病な僕らは   作:小鴉丸

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20話 交錯する想い(後編)

 ──夢なら覚めてほしい。そう思いながらいつかのように暗い部屋で目を開ける。

 あのライブの後で柊くんに言われた言葉も、前の練習で私が自暴自棄になったのも、全部……全部嘘であってほしい。

 

 前回の中断された練習から一週間が経とうとしている。私はそれ以来練習に顔を出していなかった。その間つくしちゃんは声をかけてくれたり、連絡を送ってくれてる。

 だけど他の人達は学校で私が変な挙動をしても練習やライブの事を言うわけでもなく、ただ軽く挨拶をして通り過ぎていってしまう。……ななみちゃんもるいさんや透子ちゃんみたいに私に反応をあまり示してくれない。

 

 ……別に寄り添ってもらいたいわけじゃない。うん、そう。きっとそうだ。

 

 結局つくしちゃんからも距離を置いている現状。だけど今日の練習の連絡が携帯には届いていた。

 

「(そんな事しても……意味無いのに……)」

 

 通知を見て携帯を手放す。

 

 最近はこういう事ばかりな気がする。目的を……頑張る意味を失ってしまった。心にぽっかりと穴が空いたような、目の前の道が急に崩れ去ったような感覚。

 

『────』

 

 目を閉じてある人を思い出す。だけどその人の声は聞こえなくて、暗闇に落ちてゆく私を見ながら何かを話していた。

 

「(聞こえないよ柊くん……)」

 

 今までは心の中に残っていた言葉も曖昧になる。あの時の約束は本当は無かったんじゃないか、と。

 

「…………」

 

 抱き枕を顔に乗せる。視界がより一層暗くなり何となく落ち着く。

 

「……?」

 

 枕に顔を埋めていると携帯から着信音が流れてきた。「つくしちゃんかな……」なんて思いながら重い腕を動かし携帯の画面を見る。そこに表示されていたのは案の定つくしちゃんだった。

 

 暫く待とう。そうすれば切ってくれるだろう。なんて考えで結局放置する。

 だけど着信音は鳴り止まなかった。……いや、正確には鳴り止むには鳴り止むのだが直ぐに次の電話がかかってきて、絶え間なく鳴るという状況だった。

 

 つくしちゃんでもここまでするのか、と疑問に思ってしまった。流石に終わりが見えなかったから渋々私は通話に出る。

 

「…………もしもし」

 

 自分でも嫌そうな声だと分かる。それくらい低いトーンだった。

 

 そうして出た通話。しかし画面の向こうから聞こえてきた声は、私が想像もしていない人の声だった。

 

『──お。やっと出たな倉田』

 

「……? 森川、くん?」

 

 どうしてつくしちゃんの携帯で森川くんが出るのかは不思議だがそれよりも……。

 

「……それでどうしたの。森川くんが私に何か用事でもあるの?」

 

『用事も何もお前がくだらない事で落ち込んでるから声掛けに来てやったんだよ』

 

「くだらない?」

 

『あぁそうだ。くだらない、実にくだらない』

 

 言い切られた。というか吐き捨てられた、と言った方が近しいかもしれないその言い草に苛立ちを覚える。

 

 でも何でだろう、森川くんが少し怒ってるように聞き取れるのは……。

 

『この前二葉に柊の事で怒鳴ったんだってな。何が分かる、って』

 

「そうだけど……何でそんな話を──」

 

『じゃあ言うぜ。お前こそ柊の何が分かんだよ』

 

「ぇ」

 

 声が出なかった。思考が停止させられたかのように。

 

『確かにお前と柊は似てる、それは俺もそう思う。だけどなお前と柊は別だ。本当にただ似てるだけ、別人なんだぞ』

 

 森川くんの言葉は続く。

 

『なんならお前より俺の方があいつの事は知ってるぜ? なんせガキの頃から一緒に居るんだからな』

 

「そ、それは……」

 

 それはそうだ。そんな所を比べられたら言い返す余地もない。私はつくしちゃんよりは詳しいだけ、なのだから。

 

『……って俺はこんな事を言うためにお前に電話したんじゃねぇんだよ。とあるやつからの伝言だ』

 

 1回しか言わねぇから、と前置きを挟んで森川くんは話し始める。

 

『──────』

 

「────ぇ」

 

 その言葉は数秒だけだったが、時間が止まったかのように私には長く感じれた。

 

『……あいつも臆病ながらに頑張ってんだ。それは倉田、お前もよくわかる気持ちだろ』

 

 最後にそう言い通話は切られる。

 

 森川くんからの伝言を聞いた私は急いで服を着替え始めた。

 

「(きっと今がしっかりと向き合う時なんだ)」

 

 袖を通しながら意識を固める。

 

「待ってて……柊くん」

 

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