臆病な僕らは   作:小鴉丸

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8話 出会ってから

「みんな聞いてくれぇ!!」

 

 バンッ! と勢いよく扉を開け理人が教室へ駆け込んでくる。当然、その大きな音と理人の無駄に大きな声でクラス中の視線を集めた。

 

「今グループに送ったのを見てくれ!」

 

「(あ)」

 

 通知が来てたので僕はラインを開く。その通知はやはりグループで、そこには1枚の写真とURLが貼られていた。

 

「ガールズバンドの新星?」

 

「そう!」

 

 クラスの誰かが呟くと理人は指を鳴らしそちらを向いた。

 

 写真には最近見た事のある五人の少女が写っていて、大きな文字で『ガールズバンドの新星 Morfonica 現る!』と書かれていた。

 

「あのお嬢様高校である月ノ森女子学園の生徒で組まれた新バンドMorfonica! 未だ不明な点が多いバンドだが、そこは流石月ノ森と言うべきか技術はとても高い! それにバイオリンがいるっていうのもポイントだな。まだ俺はライブに行った事ないが、これは期待できるバンドだと思うぜ!」

 

 倉田さんが組んでいるバンドMorfonica。理人はそれをみんなに紹介していた。その理人の説明にクラスのメンバーはそれぞれが持っていた断片的な情報を組み合わせ、より正確さを持たせていく。

 

「最近噂されてるバンドか。五人揃ったんだな」

 

「? 前は四人だったのか?」

 

「あー、それ俺も知ってるぜ。誰かが「あそこにしては拍子抜けだよね」って言ってたのおぼえてる」

 

「それでも今また話題に上がってきてんだろ? 少し気になるな……」

 

 そんな会話が繰り広げられる中、理人は僕の机まで来て「どうだ?」と聞いてくる。

 何が「どうだ?」なのかは分からないが、僕の興味に叶ったかどうかを聞いているのだろうか。

 

 僕は再び写真に視線を落とす。

 そこには最近再会した倉田さんが見た事のない表情で写っている。

 

「……今一番興味のあるバンドかな、Morfonicaは」

 

 倉田さんは変わった。変われる場所を見つけた。

 僕はその姿を見てみたい。この写真のように、堂々と立ち振る舞う倉田さんの姿を。

 

「! 遂に柊もみんなと共通の趣味を……! くぅ〜〜っ! ほら、柊もこっちに来い!」

 

「え、ちょ──!」

 

 何故か僕に感極まったらしい理人は、僕の手を引いてクラスメイトが集まってる場所へ連れていく。

 クラスメイトは僕が来た事を意外に思いつつも何事もなく話に加わらせてくれる。

 

「(……こうして一つの輪に入ったのって、いつ以来だろ)」

 

 そんな事を思いながら、まだ緊張はしてるもののその会話に僕も参加したのだった。

 

 

 

 

 

「えへへ……」

 

「しろちゃーん、しろちゃーん? ……ダメだ。まだ上の空状態だよ」

 

「もう! ましろちゃん! ましろちゃんってば!」

 

 つくしちゃんの声が聞こえたと思うと急に視界が上下に揺れた。

 

「わっ、わわっ!? な、なになに!?」

 

「「なになに!?」じゃないよ! ましろちゃんずっとその調子だよ?」

 

「その調子……?」

 

 どの調子だろうか? 私はいつも通りにしているはずだが……。

 

 因みに今はお昼休み。今ではすっかり習慣となっている、モニカのみんなでお弁当を食べている最中だ。

 

「気付いていないの? 倉田さん、前の練習──あの男の子と会ってから、時間さえあれば顔を緩ませてるのよ」

 

「え?」

 

 るいさんに指摘される。

 しかし私としてはそんなに緩んでるとは……いや、確かに家に居る時とかは少しくらい……。

 

「ホントだよなー。二人きりで話してスタジオに戻ってきた時も、シロってばすっごい嬉しそうな表情だったしなー」

 

「そ、そうなの?」

 

「そうだよ!」

 

 思い出しても自分では分からない。でもそうなっても仕方ない事だと私は思う。

 

「だ、だって柊くんと会えたの嬉しかったから……」

 

 そう。柊くんに会えた事が嬉しかった。それもバンドという繋がりを持って再会出来た事が。

 

 そしてあの時と形は違うけど、変わろうとする私の背中を、柊くんが押してくれるから……。

 

「なんと言うかシロってさー」

 

 箸を置いて透子ちゃんが何気なく言う。

 

「ユイの事、大好きすぎじゃね?」

 

「すっ──!?」

 

 その言葉は私の思考を停止させるには充分な言葉だった。

 

「おっ、図星か〜? これが“恋する女の子”ってやつか」

 

 分かりやすく動揺した私をニヤニヤと笑いながら如何にも、な言葉を私に重ねる。

 

 私自身その気がない……事もないと思うが、私と柊くんはただの友達。それ以上の関係になる事は絶対にありえない。

 

 だから──。

 

「す、好きとかじゃなくて、柊くんは私の人生を変えてくれた人だから……えっと、だから……えっと……」

 

 人生を変えた、だなんて柊くんが聞いたら笑うだろうか。でも、あの時背中を押してもらってなかったら、今の倉田ましろは存在しない。

 

「……また何か、会って一緒に居れれば変われるかな……って」

 

 苦し紛れに言葉を紡ぐ。

 

「ふーん……ま、シロがそう言うならいっか」

 

 腑に落ちない様子だが身を引いてくれた透子ちゃんにホッとする。私に何かを聞こうとしていたつくしちゃんも、透子ちゃんを見て聞くのを諦めたようだ。

 

 私達が話してる間に、ななみちゃんとるいさんが二人で話し合っていた。

 

「話すのもいいけど時間なくなるよー?」

 

 何だったのか分からないが、その話自体すぐ終わったらしく、ななみちゃんが昼食を再び食べ始める。それにるいさん、私……といつものようにみんなで食べ始めた。

 

「(……今度から気を付けよ)」

 




初めまして小鴉です。
今回は少し報告……というか謝罪(?)したい事があったので出てきました。

内容は前回の『7話 再会』にて“再会”の漢字が“再開”になってた事についてです。サブタイから間違ってたのに投稿して誤字報告受けるまで気付きませんでした。読んでて「? 漢字違うくね?」って思った方もいると思います。その点について申し訳ないです。

現在は変更してます。誤字報告をしてくれた方、本当にありがとうございます。


それと感想や評価、とても嬉しいです。モチベに繋がりまくってます。

こんな鴉ですが、これからもこの作品や柊くんとましろちゃんをよろしくお願いします。
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