「うわっ、ホントだ……」
時間は変わり昼休み。僕は理人のとある疑問に答えていた。
「「うわっ」って何」
「い、いや……ごめん」
何に対して謝ってるのか分からないが、理人は僕の言葉で何度も納得したように頷いている。
というのも理人の疑問というのは、どうして僕がガールズバンドに興味を──基、Morfonicaに興味を持ったのか、という内容だった。
「それにしても……倉田なー。そういやいたなぁ、お前の彼女的なやつ」
「はぁ……。いつまでそれ引っ張るつもり?」
呆れたように聞く。
「ごめんって。冗談だよ冗談」
笑いながら言う理人を軽く睨む。理人は肩を竦め話を元に戻した。
「ま、そりゃあお前が興味を持つ訳だよな。半分はライブ、残り半分は倉田ってとこか?」
「あー……うん、そうだね」
ある程度倉田さんが占めてるんだけど、それは黙っておこう。
理人は携帯の画面を見る。そこには理人が今朝みんなに送ったURLを開いたページが表示されている。写っているのはMorfonicaのメンバーで、その真ん中には……。
「あの倉田がこんな堂々と、なぁ」
「やっぱり理人も信じれないよね」
「当たり前だろ。昔の倉田知ってるやつなら口を揃えて言うって」
理人の言う事はとても分かる。僕だって再会した日にそう思っていたのだから。
「一体どういう変化があったのやら……」
「本人曰く、変われる場所を見つけたから、らしい」
「へぇ〜。……何でお前が知ってんの?」
紙パックのジュースにストローを刺しながら答えてると、サラリと答えた事を謎に持つ。
そう言えばまだ会った事を言ってないな、と思い出した。
「少し前に会ったからね」
「ふーん」
聞いておいてとても興味無さそうに返事をする。立ち上がり、数秒した後に何かを思い出したように「そうだ」と再び聞いてくる。
「昔からの疑問なんだけどさ、何でお前って倉田と一緒に居たんだ? 自分でも周りからの噂とか知ってただろ、嫌じゃなかったのか?」
それは僕と倉田さんが中学時代、何故一緒に居たのか、という事だった。
確かに、今思えば誰にもその理由を話した事はなかったと思う。
ジュースを一口吸ってから僕は過去を遡り答えていく。
「最初に分かりやすく言うけど、意外と倉田さんは昔の理人みたいな人だよ」
「……俺?」
僕の言葉に困惑する。そりゃそうだ、これだけ言われてもそうなるだろう。
「僕がこんな性格になった時さ、理人はずっと今まで通りに接してくれてたでしょ。周りとの関係を壊したくないからって塞ぎ込んだ僕に、理人だけはずっと声をかけてくれた」
理人は「そんな事もあったなぁ」と懐かしむように呟く。
当時、クラス内で大きな喧嘩があった。その喧嘩は誰が見ても仲の良かった二人組が些細な事で起こしたものだった。
喧嘩する程仲がいい、とはよく言ったものか、その二人は小さな言い合いやら掴み合いはよくしていた。だからその時も直ぐに終わるとみんな思っていた。
だけど何かが片方の逆鱗に触れたらしくその喧嘩は収まらなかった。結局それは、担任の先生が仲介し収束した。
……その後、その二人は卒業するまでずっと口を聞かなかった。
そういう事があったから僕は必要以外の人とは関わらないように、と思った。
普通に冷静になってから考えると、極端すぎる考えだと思う。しかし、こうすることで色々な事から除外されて面倒事に首を突っ込まずに済んでいた。
「中学になってからもそれは同じ。必要以外の事を他人と話さなかった。だけど一人だけ僕に話しかけてきた人が居たんだ」
「それが倉田だった、と」
僕は頷く。
「倉田さんはたまたま最初の席が隣だっただけ。自己紹介で話をして……それからは何故かやたらと一緒に居た」
物好きな人。そういうイメージだったか徐々にそれは変わっていった。
「僕と倉田さんは比較的似たような性格なんだと思うんだ。不思議と、一緒に居て嫌にならなかった。波長が合う……みたいな感じかな」
いつも一歩引いて人と話してたり、目をあまり合わせてなかったり、ネガティブな思考を持ってたり……と、似たような別の自分を見ているようだった。
知らない内に僕は倉田さんにだけは自分の話や雑談をしていた。逆に倉田さんも僕に色々と話をしてくれていた。
……その時間はとても心地よくて、僕の心を満たしてくれていた。
「俺は倉田が何を思ってお前と関わり続けてたか分からないけどさ」
座る僕を見下ろしながら、理人は優しい声で言う。
「中三でお前らと同じクラスになった時さ、お前が楽しそうに倉田と話してるの見て少し安心してたんだぜ。昔の柊に戻った、って」
「そう?」
「あぁ。俺以外にも昔のお前を見せれるやつがいるのは何だか嬉しいよ」
確かに言われてみれば、基本的に理人と倉田さんにしか心を開いてない部分はある。理人はともかく、倉田さんの場合は先程の理由があるからだろう。
「よしっ。じゃあそろそろ教室戻るか」
言いながら理人は僕に手を伸ばしてくる。携帯で時間を確認すると、昼休みも終わりそうな時間だった。
僕はその手を掴み立ち上がった。
「……ありがと、理人」
「ははっ。どういたしまして、っと」