イベントに参加するため他県へと足を運んだ岸辺露伴は、そこで不思議な時計屋に入る。何とそこの店主は人の運命を見ることができ、その人の寿命が終わるまでの時計を作ることができるという。馬鹿馬鹿しいと信じようとしない露伴だったが、その時計によると露伴の寿命はあと5時間だという。露伴は、運命に勝つことができるのか。

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君たちは『運命』を信じるだろうか。巷では安っぽいB級恋愛映画などでよくこの言葉が使われているが、ハッキリ言おう。僕はまっったく信じていない。なぜなら、現実的じゃないからだ。こんなものは何とでも言えるもので、口で「これは運命だ!」と言ってしまえばそれで決まる。なんて馬鹿馬鹿しいんだ。僕はそう思いながら生きてきた。この怪異に出会うまでは。今回の話は、僕が運命というものの存在を少しだけ信じるようになった『奇妙な話』だ。



『運命の時計』

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漫画家は基本的にインドアな職業だ。終わりから始まりまで全てを家でこなす事ができる。打ち合わせはしょうがないがな。だが、そんな職業でもどうにも避けられない用事がある。そう、他県でのイベントだ。僕はこれがどうも嫌いだ。そもそも漫画家という職業を選んだのだって人付き合いが嫌いだからだ。なのにどうしてわざわざこっちから出向いてまで人と関わらなければいけないのか。全く意味がわからない。だが、プロの漫画家として活動している以上は、これも仕事の内だ。個人的な感情で無下にする訳にはいかない。そんな訳で、嫌々だが、こうやってM県の握手&サイン会会場まで来ていた。

新幹線で1時間半、そこからバスで30分。あまりの遠さに途中で帰ってやろうかとも考えたが、ファンのためだと自分に言い聞かし、何とか会場まで着いた。

 

「・・・・・・嘘だろ・・・・・」

 

会場にはざっと100人ほど来ており、これからここにいる全員の対応をしなければならないのかと考えるとゾッとするが、ここまで来たのだ、覚悟を決める。

 

数時間後、イベントは何とか何事もなく終了した。疲れた。自分の漫画を好きだと言ってくれるのは悪い気はしないが、それでもあの人数は堪えるものがあった。が、まあ良い。もう終わったことは考えない。イベントの関係者によると会場から徒歩10分ほどのところにホテルを取っているらしい。勿論、全て編集部持ちだ。せいぜい楽しませてもらおう。

教えてもらったホテルの場所をスマホで確認しつつ、ホテルに着く。明日から2日間、休みを貰っている。明日はネタ探しでもしようと思いながら、疲れからか9時には寝てしまった。

 

 

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目を覚ます。時間を確認すると8時20分を指している。良い天気だ。朝食をとった後は、ネタ探しの散歩に行く。

 

「しかしここの商店街は人が居ないな・・、まあ煩わしくなくて良いんだが・・」

 

そんなことを呟きながら散歩の末に行き着いた街の商店街を歩いていると、ふと、気になる店を発見する。

 

「ん・・・、何だここは・・・・、時計屋か?えらく寂れているが、何故か興味を惹かれるな」

 

そこは商店街の真ん中に建っている、小さな時計屋だった。店頭には数十種類にもなる時計が飾られており、全ての時計がコツ、コツと小さな音を立てながら時を刻んでいる。看板には、

『暁時計店』と書かれていた。

いつもならばこんな店は素通りしていただろう、だが、何故かわからないが、すごく目を惹かれたのだ。

 

「・・・・、せっかくだ、少し見ていこう。興味が無かったら黙って出ていけば良い」

 

店に入る。店内は決して広いとは言えないが、所狭しと多種多様な時計が置かれており、何とも言えない雰囲気を醸し出していた。

 

「・・・・・・いらっしゃい」

 

声が聞こえたので、そっちの方を向くと、店主と思われる40代ほどの男が立っていた。

 

「ああ、少し気になってね。見させてもらうよ」

 

「・・・・・・・・・あんた、漫画家の岸辺露伴だね」

 

「・・・・・僕を知っているのか?」

 

「知らない。だが、わかるんだよ。」

 

何だこいつは。くそ、変な店主の店に入っちまった。とっとと出ちまおう。

 

「・・そうかそうか、じゃあ、僕は行くとするよ。邪魔したな」

 

そう言い残し、出口へと向かおうとすると

 

「・・・・なあ岸辺露伴よ、あんた、自分の運命、知りたくないか?」

 

「・・・・・・・・何だと?」

 

今こいつは何と言ったんだ?運命?どういう事だ?

 

「だから、運命だよ。もし、『自分の寿命がわかるとしたら』、あんた、どうする?」

 

「馬鹿馬鹿しい、そんなものわかる訳がないだろ。それにだ、僕は運命なんてものは生まれてこのかた信じた事がないんでね」

 

「ははっ、そうか・・・。でもなぁ、俺にはわかるんだよ。あんたの運命が」

 

一体何なんだこいつは。スタンド使いか?敵意は感じないが・・

僕は警戒し、右手に力を込める。『天国への扉(ヘブンズドア )』で、こいつの中身を見てやろうとした時だった。

 

「やめとけ、それは俺にはきかねぇ。」

 

「!!!!!」

 

こいつ・・・・・、何者だ・・・!?

 

「別に俺はあんたを攻撃したい訳じゃねぇよ。ただ聞いてるんだ。どうだ、運命、知りたいか?」

 

「・・・・・・・」

 

露伴は考える、こいつの正体が全く掴めない以上こいつの言うことを聞くのは危険だ。だが、自分でも何故かわからないが、何故かこいつからは敵意だとか殺意なんてものを感じない。一体何なんだこの感覚は・・・、店内に静寂が流れる。

 

「・・・もし仮にだ、あんたが本当に僕の運命がわかるとして、こんなことをして何の得があるんだ?」

 

「俺はな、人間が決められた運命に立ち向かう姿が大好きなんだよ。岸辺露伴、あんたからは生きるということへのエネルギーを感じたんだ。」

 

「・・・そこまで言うのなら分かった。作ってもらおうじゃないか。僕の寿命の時計とやらを」

 

「あんたならそう言うと思ってたぜ。よし!ちょっと待ってろ!」

 

そう言い残し、男は店の奥へと消えていった。

 

「・・・・・、フン、馬鹿馬鹿しい・・・」

 

そこから10分後、男が片手に何かを持ちながら奥から戻ってくる。

 

「いやー悪いな、ちょっと時間掛かっちまった」

 

「いや・・・、ちょっと待て。時計なんて10分やそこらでできるものなのか?」

 

「まあまあ、そこは良いじゃねぇか。それよりほら、出来たぜ。金はいらねぇ。」

 

そう言って男は腕時計を見せてくる。その腕時計はシンプルな作りになっていて、決してお洒落とは言えないものだった。

 

「見た目は良いとは言えないな・・・、それで?僕の寿命はあとどれぐらい何だ?」

 

「あーーー、それがなぁ、いいか、よく聞けよ?」

 

「・・・何だよ。早く言えよ・・」

 

「今日だ」

 

「・・・・・・・何だと?、今日!?、今お前は今日と言ったのか!?」

 

「おいおい落ち着けって。ああ、今日だな。正確には今日の午後3時だ。今は午前10時ちょうどだから、今から5時間以内に何かが原因であんたは死ぬ。」

 

「貴様適当を言っているだろう!!僕が今日死ぬだと!!馬鹿馬鹿しい!!僕はもう行くからな!!」

 

「ああ待て待て、いいか?俺が見た運命は、このまま何もしなかった場合の運命だ。運命は行動で変えられる。ここからは常に周りに気を配れ。何があんたを襲って来るか分からないからな。全部跳ね返して、午後3時を超えた時、あんたの勝ちだ。」

 

「この岸辺露伴をバカにしやがって!!、良いだろう、今日の午後3時を超えたら、僕はもう一度ここに来る!そして、貴様が嘘をついていると証明してやるからな!!」

 

「・・ああ、良いだろう。あんたが勝つか運命が勝つか、俺に見させてくれよ」

 

✒️

「クソッ!あの男、僕が今日死ぬだと!?あり得ない、どうせ嘘を言っているだけさ!」

 

そう、普通で考えればこんなことはあり得ない。偶然行った町の、偶然入った店で寿命を知る?何も知らければ今日死んでた?どんな確率だ。こんなことはあり得ない。頭ではそう考えている。しかし、あの男には何か異様な説得力があった。そう、まるで本当に運命を見通したかのような・・・

 

「・・・・・あり得ない。絶対にあり得ないが・・、ムゥ・・」

 

まあ良い、何にせよ、今が10時半。あと4時間半だ。午後3時になればあの店に行って嘲笑ってやろう。そう思いながら歩いていると、ふと男の言葉が頭によぎり、何となく足を止める。

 

「・・・運命は変えられる、か・・・」

 

その時だった、露伴の前方数メートルのところに、上から鉄骨が落下した。耳を劈くような金属音が鳴り響き、近くを歩いていた女性が悲鳴を上げる。遅れて、全身がゾッとする。

 

「・・・・・・もしあのまま歩いていたら、僕は確実に死んでいた・・・・」

 

その時、もう一度あの男の言葉を思い出す。

 

『運命は行動で変えられる』

 

「・・・・・・・・・そう言うことか・・・・・」

 

確信する。あの男は嘘を言っていない。だとすると、このままだと僕は今日、死ぬ。

 

「・・・・・良いだろう。運命に勝ってやるよ。この、岸辺露伴が!」

 

これは勝負だ、だとしたら、僕は絶対に『負けない』

 

 

✒️

今の時刻は午前11時半、まだまだ気を抜けない。

 

「とにかく人混みは避けた方が良いな・・・。もし集団で何かが襲ってきたら一人では対処できない可能性がある・・。」

 

急いで商店街を抜け、少しでも安全な場所を探す。この間も常に周りに注意する。勿論上もな。とその時だった。悲鳴が聞こえた。急いでその方向を向くと、全身の血が引いた。4トンはあろうかという大型のトラックがこっちに向かって迫って来る。

 

「おいおいおいおいおいおいおい!!!!!!嘘だろ!!!!!!」

 

急いでその場から離れる。ここにいたら一瞬で肉塊だ。トラックはそのままのスピードで建物に突っ込み、あらゆるものを破壊しながら止まった。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・・」

 

全身から汗が噴き出る。これまでも死にそうになることはあったし、その度に生き残ってきた。だが、今回のは異常だ。

 

「と・・とにかくここも離れよう・・・・、ここにいたら何が起こるか分からない」

 

いや、もうすでに安全な場所なんてないのかもしれないが・・・

 

 

✒️

時刻は午後12時半、必死になって歩いていると、いつの間にか中華街に来ていた。こんな時でも体はエネルギーを欲する。何か食べようと思い、近くの店で肉まんでも買う。

 

「『天国への扉(ヘブンズドア ー)』、よしよし、この肉まんは安全だ」

 

食べ終わると、少し元気が戻る。大丈夫、後たったの2時間半だ。こんなもの余裕だ。大丈夫だ。僕は今までもどんな勝負も勝ってきたじゃあないか。自分に言い聞かせる。

 

 

✒️

時刻は午後2時50分、場所は最初の商店街に向かう街中。あれから何度も死にそうになった。そのどれもが、気を配っていないと間違いなく死んでいたであろうものだったが、何とか生きている。

 

「クソ!!何なんだ今日は!!」

 

悪態をつきながらも、あと10分ということに喜びを隠せない。

 

「あと10分、あと10分だ。イケる、イケるぞ!!」

 

今の僕はツキが来てる。何が来ようと大丈・・

 

後ろからの爆風と衝撃で体が吹っ飛ぶ。地面に体をぶつけ、鈍い痛みが走る。

 

「がぁぁぁぁ!!!、な・・なんだ・・・・!?」

 

衝撃がした方向を見ると、そこにあったであろう店が火を上げ、大破している。人が逃げ惑う。

 

「爆発したのか・・・・・・、あ、危なかった・・・」

 

あと少し遅かったら直に巻き込まれていたかもしれない。と、こうしちゃいられない!!僕も逃げなければ、次いつ爆発するか分からない。急いで逃げようとしたその時

 

「うぅ・・・・・」

 

後ろから何かが聞こえた。後ろを振り向くと、女性が倒れている。さっきの爆発に巻き込まれたのか・・?

 

「!?」

 

急いで助けに向かおうとする露伴だったが、足が止まる。時刻は2時55分。もしかしたら、あの女性を助けにいき、僕も死ぬ。最初からそういう運命だったんじゃあないかと考える。あと5分。ここから急いで逃げれば、5分なんてあっという間だ。僕は助かるだろう。そうだ、誰かのために死ぬなんてまっぴらごめんだ、僕にはやらなければいけない事が・・

 

「・・・・・・・・・・・・・ああクソ!!」

 

女性の元へ走る。クソ!クソ!

 

「おい!大丈夫か!」

 

「うぅ・・・あなた・・・」

 

「早くここから逃げるぞ!!」

 

嫌な音が聞こえる。何処かからガスが漏れてるのか・・・!?早く離れなければ・・!

 

もういつ爆発してもおかしくない。死が近づいてきているのがわかる・・・

 

「私は良いから・・・、逃げて・・!!」

 

くっ!・・・、これも運命だというのか・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・この岸辺露伴を舐めるなよ。」

 

そうだ。こんなことは僕にとって危険に入らない。

 

「これまでも!そしてこれからも!僕の運命は僕が決める!!」

 

女性の全身をしっかりと抱き抱える。

 

「痛いと思うが我慢しろよ・・、『天国への扉(ヘブンズドアー)!!』」

 

スタンドを発動し、僕自身にこう書き込む。

 

「後ろに吹っ飛ぶ!!」

 

女性を抱えたまま、僕の体は後ろに向けて数十メートル吹っ飛ぶ。そのわずか数秒後、店は大爆発を起こした。

 

 

✒️

午後3時18分、僕はあの時計屋に来ていた。

 

「まじか・・・、本当に運命に勝ったのか・・」

 

男は興奮と驚きが混ざった顔をしている。

 

「ああ、何とかね。」

 

「おいおいまじか!嘘だろ!すげぇよあんた!!!」

 

「それよりも教えてくれ・・、あんた、何者だ・・?どうして人の運命がわかる。」

 

「・・・・ああ、そうだな。実はな、俺は神なんだよ」

 

「・・・・・・・・は?」

 

「だから、俺、神なんだ」

 

「・・・・そうか」

 

「お?驚かねぇんだな?それか信じてねぇか?」

 

「・・・・まあこれまでにも神の化身と勝負したこともある。信じるさ」

 

「はっはっは!!あんたすげぇな!おもしれぇよ!いやな?神の世界っていうのはよ、人間が思っているほど良いもんじゃねぇんだよ。退屈なんだ。ずっとな。だからこうして下界に降りて来て、人間で遊んでるんだよ。」

 

「全く悪趣味な神様がいたもんだな・・」

 

「ははっ!まぁな!!」

 

「で、僕は運命に勝ったってことで良いんだな?」

 

「ああ、あんたは見事、運命に勝った!いやぁ、久しぶりに面白い人間に会えたよ。ありがとな」

 

「・・僕の方こそ、感謝する。今日あんたに出会ってなかったら、僕は死んでいた。ここであんたと出会ったのも、もしかしたら運命だったのかもしれないな・・・」

 

「違いねぇな。それは。あ!、何だったらよ、今からもう一度見てやろうか?あんたの運命」

 

「いや・・遠慮しておくよ。」

 

「そうか・・」

 

「それじゃあ僕は行くよ。邪魔したな」

 

「おう!達者でな!」

 




✒️
店を出る。商店街を歩く人々を眺めながら、僕は考える。

「確かに運命はあるのかもしれない。だが、結局は自分次第ということなのかもな・・」

柄にもなくそんなことを呟きながら、左手に巻いた3時ちょうどで止まった腕時計に触れた。

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