[完結済み] この素晴らしい田舎生活に祝福を!   作:Rabbit Queen

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10話です。


夏も終わりが近付いてきた頃。

和真は宮内家に訪れていた。

花火をやるという話を聞き、買い物組は街に出かける。


――そして、ひと夏の終わりが、近付いていた。




ここまで見ていただいて、本当にありがとうございました。


このひと夏の思い出に花火を!

 「いいか?行くぞ」

 

 「うっす」

 

 「うーい」

 

 楓さんが運転する車に乗り、俺とひかげは返事をする。

 そうして、三人だけにしては大きすぎるようなワゴンが動き出した。

 そういえば、こうして遠くに行くのはとても久々だ。

 れんげちゃんと初めて会った日から、俺はずっと、この田舎を駆け回った。

 

 彼女達にとっては見慣れた風景でも、俺には新鮮で。

 街に行くよりもずっと、ワクワクした。だからこうして久々に大きなスーパーに行くとなると、何故か変に緊張している自分がいるわけで。そんな俺とは違い、今から向かうスーパーが楽しみで仕方ないひかげの姿を見ると、俺はその無邪気さを分けてくれないかなと小さく呟いた――。

 

 

 

 

 いつも通りれんげちゃんと戯れていた――なんて事はなく、ひかげで遊んでいた俺は一穂さんに呼び出されてひかげ共々一緒に話を聞いた。ちなみにれんげちゃんが居ないのは、夏海達と一緒に遊びに行ったからである。なんでも、女子会やらをやるんだとか。ひかげが連れて行かれてないあたり、そういうことなのか。可哀想に。俺はそっとひかげの頭を撫でてやった。訳も分からず撫でられたひかげはお返しにと俺にアイアンクローをかましたのであった。

 

 

 というどうでもいい話は置いておいて、一穂さんの話はこうだった。

 女子会……というのは嘘で、実は今日の夜に花火をするという話だった。れんげちゃん達がいないのは、花火をする場所を提供してくれる越谷家にてついでに夜ご飯もご馳走になるとのことで、このみんと雪子さんを含めた食事組は山菜を取りに行くらしい。俺とひかげ、そして楓さんは花火を買いに遠くにある大型スーパーに向かうという話になった。一穂さんは少し遅れてから食事組に合流するらしい。

 

 「花火かぁ。いいですね!」

 

 「毎年やってるんだよね花火。今年はカズマも一緒か。一緒に線香花火で勝負しようぜ」

 

 「お前はほんと、勝負好きだな。まぁいいぞ。今回は乗ってやる」

 

 「うっし。そうと決まれば出かける準備するかぁー」

 

 「うんうん。それじゃ二人共、よろしくね」

 

 そうして少しして楓さんが車に乗ってやってきた。準備を終え花火用にと渡されたお金を持って俺とひかげは車に乗った。それが、今に至るまでの話だ。

 

 しかし花火か……何年ぶりだろうか。

 最後に見たのは確か、あいつがバカをやって、それで――ん?

 

 はて、確かに覚えているはずなんだが……あれは花火だっただろうか?それに、あいつって……誰だ?夏海やひかげとは勿論やったことはないし……あぁ、そうか。昔遊んだ学校のやつだ。確か、そうだった気がする。

 

 

 そんな事を考えながら車内の窓から外を見た。車が走る先に、1人の少女が歩いていた。

 それは、俺達がよく知る人物で――

 

 「あ、楓さん!止めてもらっていいですか!?」

 

 「ん?……あぁそういうことか。わかった、止めるぞ」

 

 「え、なになに、どったの?……って、あれ?」

 

 楓さんは車を止める。俺は窓を開けて、1人歩く少女に声をかけた。

 俺達のよく知る人物、一条蛍ちゃんに。

 

 「蛍ちゃーん!」

 

 「え、和真さん……?それに、楓さんに、ひかげさんも」

 

 蛍ちゃんは俺達に気付くと俺が座る助手席の窓の横まで駆け寄ってきた。膝に絆創膏が無いのと、駆け寄る姿を見て、足はもう大丈夫そうだと思った。俺は一安心しつつ、蛍ちゃんと話す。

 

 「蛍ちゃんもれんげちゃん達と一緒の食事組じゃなかったの?」

 

 「えっと、そうなんですけど、実は家の用事でちょっと遅れちゃって。これから向かおうと思っていたんです」

 

 「あれ、そうなの?でも確か、食事組は既に出発してたような……」

 

 「そ、そうなんですか?どうしよう……」

 

 「……楓さん」

 

 「あん?なんだ?」

 

 「蛍ちゃんも、このまま連れていきませんか?今からあっちに向かうのも大変だし、もし既に出発してたら蛍ちゃん1人になっちゃうし」

 

 「んー……まぁ、そうだな。いいぞ。蛍ちゃんもそれでいいかい?」

 

 「え?えっと……いいんでしょうか?」

 

 「駄菓子屋もカズマもこう言ってるしいいんじゃない?あたしも歓迎するよー」

 

 「蛍ちゃん、よかったら一緒に行かない?花火買いに」

 

 「そ、それじゃあ……お願いします」

 

 蛍ちゃんの返事に答えるように、ひかげが後部座席のドアを開けた。蛍ちゃんは失礼しますと言って助手席に座っている俺の後ろの席に座った。その間に楓さんは自分の携帯電話で一穂さんに電話をかけた。蛍ちゃんはこっちで預かると伝え電話を終えると、シートベルトを締めるのを確認した楓さんは、再び車を走らせた。

 

 

 それからは、ひたすら車を走らせながら車内は会話で賑わっていた。ひかげの都会での話や、蛍ちゃんが転校してくる前の話。俺が何で引きこもる事になったのか、その原因の失恋の話や楓さんが初めてれんげちゃんと会った時の話など、話題は尽きなかった。

 

 そうして話している内に、車は目的地へとたどり着いた。へぇー、こんな所にこんな大型のスーパーが会ったんだな。都会の街並みに慣れているはずの俺は、そんなに珍しくもないスーパーに何故か興味津々だった。その姿はまるで田舎から飛び出てきた田舎っ子みたいなもので、ひかげは俺を引っ張り、楓さんは呆れていた。蛍ちゃんは困ってる様子だったけど、楽しそうに笑っていた。

 

 

 店内に入ると俺の興味は尽きるどころか、ますます増えていき、興奮していた。気になる店が多すぎてあれこれ行きたくなったが流石に我慢した。ひかげはどうでもいいけど、楓さんが怒るかもしれないし、蛍ちゃんが居るから子供っぽい所を見せるのはちょっと恥ずかしい。まずはお目当ての花火。そして余裕があれば、他も回ろう。うん。

 

 

 無事花火を見つけた俺達は両手いっぱいにそれを抱える。同じように買い物に来ていた家族の子供達が羨ましそうに見てるのを感じ、ちょっと恥ずかしくなった。楓さんが自ら持たなかったのはきっとこういう事もあってだろう。蛍ちゃんは子供だから喜んでてもいいとして……ひかげや。お前……そんなに楽しみなのか。

 

 いや確かに俺も楽しみだけど、だからと言ってそんなにロケット花火いるか?というかお前、線香花火はどうした?さっきあんなに勝負だ勝負だって言っていたのに、線香花火は買わないのか?それで勝負するつもりか?駄目だこいつ、早く何とかしないと……と思った俺はひかげから大量のロケット花火を回収し元の場所に戻すと、代わりに線香花火を多めに買っておいた。

 

 

 目的であった花火も無事買えた俺達は一度車に戻り荷物を置いた。楓さんがまだ時間があるから、このまま帰るのももったいない、と言うので、再び店内に戻るとそれぞれが行きたいお店に行った。ひかげは東京に居る友達にお土産を。楓さんはれんげちゃんに何かお土産を。そして蛍ちゃんは、下着売り場に――って。

 

 「いやいやいや、入れない。俺入れない!」

 

 「なんだカズマ、恥ずかしいのか?」

 

 「まぁカズマが入る必要ないからねぇ。あたしは東京で買うし、ここで待つかな」

 

 「えっと……なんかごめんなさい」

 

 「いやいや!蛍ちゃんが謝ることじゃないよ!ただちょっと、俺にはまだ早いというか、刺激が強いというか……」

 

 「子供か。あ、いや、子供だったか。まぁいい、私が蛍ちゃんに付き添うわ」

 

 「ごめんなさい。すぐに決めてきますので」

 

 そう言って蛍ちゃんと楓さんは下着売り場の奥に入っていた。俺とひかげは二人が戻るまで店の前のベンチに座って待つことにした。隣に置いてあった自販機に俺はお金を入れ、缶ジュース三本、缶コーヒーを一本買った。ベンチに座り、隣に座るひかげにジュース一本を渡す。

 

 「ほれ、やるよ」

 

 「お、マジ?さんきゅー。てかこれ、あたしの好きなジュースじゃん」

 

 「前に飲んでたろ?多分好きなんじゃないかなと思ってさ」

 

 「ふーん?……まぁ、ありがとう」

 

 「おう」

 

 二人で同時に缶のジュースを開ける。ゴクゴクと喉に流し込み、一息つくと、俺はひかげに言った。

 

 「しかしあれだな、蛍ちゃんは、こういうところにもう通うもんなんだな」

 

 「ん~?まぁ珍しくはないと思うけど、あの体型じゃねぇ」

 

 「……だよな?小学生にしては、成長しすぎてる気がする」

 

 「東京で学校に向かう途中に小学生とか見るけどさ、全然いないもん、蛍ちゃんみたいな体型の小学生。マジであれは奇跡だわ」

 

 「何食べたらああなるんだろうなぁ……いや、ほんとに凄い」

 

 「……なんか発言が変態っぽいぞカズマ」

 

 「んなバカな。褒めてるだけで変なことは言ってないぞ」

 

 「最近じゃ褒めるだけでもセクハラになるんだぞー。蛍ちゃんが実際聞いたら、引くかもね」

 

 「おいやめろ。マジでやめろ」

 

 ひかげと蛍ちゃんの事で話していると、下着を買い終えたのか、蛍ちゃんと楓さんが戻ってきた。俺はさっきまでの会話が聞かれてないか内心焦りつつ、自然を装って蛍ちゃんに声をかけた。

 

 「おかえり。どう?欲しいものは買えた?」

 

 「はい。ちょっと悩んだんですけど、楓さんが一緒に選んでくれたおかげですぐに決めれました」

 

 「無難なやつを選んだだけだよ。もう少し成長したら、もっと派手なやつとか選んでもいいかもね」

 

 「は、派手なやつですか……」

 

 「あ、カズマが変な妄想してる」

 

 「カズマ……」

 

 「いや、何も!?何もしてないよ!?」

 

 「あ、あはは……」

 

 「いやほんとに、何も想像してないですって!もう……あ、これ、二人に」

 

 そう言って俺は持っていた開けてないジュース一本を蛍ちゃんに、缶コーヒーを楓さんに渡した。

 

 「なんだ、買ってくれたのか?別によかったのに」

 

 「あ、ありがとうございます!頂きますね」

 

 蛍ちゃんはお礼を言うとひかげとは反対の俺の隣に座ると、缶ジュースを開けて飲み始める。

 楓さんも缶コーヒーを開けつつ、ありがとな、とお礼を言って飲んだ。

 ジュースを飲み休憩を終えた俺達は後は適当にぶらついて、車に戻ることにした。

 車内では、それぞれのお土産と花火と、大きなぬいぐるみが蛍ちゃんに抱っこされていた。

 

 「あの、本当にありがとうございます。和真さん」

 

 「いいよいいよ。運良く取れただけだし、蛍ちゃん欲しそうだったからさ」

 

 「大事にしますね!」

 

 車に戻ろうと出口に向かい歩き始めていた俺達は途中でゲームセンターを見つけた。少しだけ立ち寄ったんだが、そこで蛍ちゃんがUFOキャッチャーの中に囚われている大きなぬいぐるみを見つける。とても欲しそうな目でそれをじっと見つめていた蛍ちゃんを見て、俺は自分の財布から500円を取り出すと、お目当てのぬいぐるみが囚われている機械に入れた。蛍ちゃんは俺がお金を入れた事に驚き、静かにじっと見守る。

 

 昔よくゲームセンターで遊んでた頃はよくぬいぐるみなど取っていたが、今は全然やってなくてカッコつけてやったのはいいけど果たして取れるのか不安だった。しかしそんな俺の不安は、たった500円で機械から無事ぬいぐるみを救い出した事により消えていった。ぬいぐるみを取り出し、俺は蛍ちゃんにそれを渡した。その時の驚きと喜んでいる顔といったら……ほんと、可愛かったなぁ。

 

 

 そうして買い物とぬいぐるみを救出した俺達は再び長く続く道を車で戻るのだった。道中、俺の後ろでずっとぬいぐるみを強く抱きしめてはえへへ……と喜びを表している蛍ちゃんに対しなんだこの子可愛すぎだろ今すぐ頭撫でてやりたい!という気持ちをどうにか抑えつつ楓さんと話をして紛らわせた。ちなみにひかげは寝ていた。こいつ、本当自由だな……。

 

 

 越谷家に着いた俺達は、丁度同じように山菜取りから帰ってきたれんげちゃん達と合流する。時刻は丁度おやつ時を迎え、全員で一度家に上がるとおやつを食べた。それからは、雪子さん達大人組は夕飯の準備を、女の子達はせっかくなのでこのままお泊り会にしようと言って部屋の片付けを。俺と卓は花火をする場所の安全確認と、買ってきた花火と水が入ったバケツを先に用意した。卓とこの前見たアニメの話で盛り上がっていると、雪子さんから二人して呼び出される。

 

 気付けば、外は夕焼け色に染まり、晩ごはんの準備が終わっていた。俺と卓は家に入り手洗いを済ませると、居間に向かう。既に用意されていたご馳走にお腹が空き始めると、頂きますと同時に食べ始める。どれもこれも美味しくて、沢山食べたらお腹はパンパンになっていた。少し休憩すると、一穂さんがそろそろ始めますかと言った。俺達は待ちに待った花火をするために、外に出た。

 

 

 花火が始まる。

 それからは本当に賑やかで、楽しかった。

 線香花火の勝負や、打ち上げ花火の連続発射。手に持った花火で皆思い思いに空中で絵を描く。

 最後は大きな打ち上げ花火を打ち上げて、小さな花火大会は幕を閉じた。

 

 

 

 そして、れんげちゃん達と遊び終えた俺は、一穂さんと楓さんと一緒に後片付けをしていた。

 れんげちゃん達も一緒に手伝うと言ってくれたのだが、一穂さんが断った。

 なんでも、片付けが終わった後に俺に話があるからだとか。

 きっとまた手伝いの話だろう。

 

 最後に打ち上げた花火の音が、未だに俺の頭の中で鳴り響く。少しずつ消えていくその音を名残惜しむも、せっせと片付けを終わらせる。またいつか聞く日が来るだろうと1人思った俺は、一穂さん達と一緒に楓さんの家に向かった。

 

 

 

 

 「あー、疲れた」

 

 肩を揉みながら楓さんが呟いた。

 

 「楽しかったねぇ、花火。子供達も楽しんでくれて良かった良かった」

 

 「俺としては、ひかげや夏海がいつも通りやらかして疲れましたけどね……」

 

 「おやおや」

 

 一穂さんが苦笑する。そりゃまぁ、楽しかったですよ?

 いつも通り、あの二人がやらかさなければですけど。

 最近じゃ俺も含めて三馬鹿と言われるハメに……。

 夏海はともかく、ひかげには一度ガツンと言うべきか……なんて考えながら、俺はふいに、呟いた。

 

 

 「まぁでも、楽しかったですよ。また皆でやりたいですね!」

 

 

 本音だった。

 口ではああ言ったけど、本当は、凄く楽しかった。

 夏海とひかげがバカなことをやらかすのも、れんげちゃんがやること全部に興味を持っている姿も。小鞠ちゃんが大人ぶろうとして、それをフォローしてあげる蛍ちゃんの優しさも。

 このみんと線香花火したり、卓と花火の準備したりしたのも、全部、全部が楽しかった。

 

 だから、つい俺はそう言った。

 恥ずかしさもなく、純粋にまた皆でやりたいなって。

 

 「……カズマ君は、今が凄く楽しい?」

 

 一穂さんが優しい声でそう聞いてきた。

 いつもより、ずっとずっと、優しい声だった。

 

 「こう言うの、すごい恥ずかしいですけどね。でも、今の俺なら自信持って言えますよ。俺、今が凄い楽しいです!」

 

 「そっか」

 

 そう言って、一穂さんは楓さんが用意していたお茶を一口飲んだ。

 楓さんは、何故か無言だった。

 

 

 

 

 

 そして、一穂さんが言った。

 

 

 

 

 

 「そう思ってくれて凄く嬉しいよ」

 

 この日常は、神様がくれた、俺にとっての最後のチャンスだと思っていた。

 

 「でもね、カズマ君。君は知らないといけない。んや、思い出さないとだめなんだ」

 

 俺が、幸せになるための。俺が、生きるための。

 

 「君が今居る世界と、君が居た世界の事を」

 

 だから、だから俺は――

 

 

 

 

 

 「冒険者カズマ君。君は、違う世界から来たんだよ」

 

 

 俺は、一穂さんが何を言っているのか、わからなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れさまでした。

時系列としてですが、このすばアニメ二期の後の話になっています。
温泉から帰ってきて……という。

もちろんアクア達もいますが、この世界にはいません。
カズマが何故この世界に居るのか、次回。


水曜日更新予定。
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