[完結済み] この素晴らしい田舎生活に祝福を! 作:Rabbit Queen
カズマさんは基本子供思いです。
夢は壊しません。
あと勘違いをよくする男です。
しょうがないよね。このみん可愛いもん……
「え?出かけるんですか?」
ここ最近の日課になってきた、れんげちゃんと遊ぶ日々。
そんないつもの一日になりつつあったある日の事、一穂さんがれんげちゃんと遊んでいた俺にそう言ってきた。
「うん。ちょっと遠い所にある大きなスーパーにねー。れんげの新しい服とか、家に必要なものとか買わないといけなくてねぇ」
「そうなんですか。わかりました、じゃあ行く頃に俺も帰りますんで」
「ごめんねー。せっかく遊びに来てくれてるのに」
「遊んでもらってるのは俺の方なので、全然いいですよ」
れんげちゃんには元気をもらっているし、これくらい全然構わない。
「準備できたん!」
着替えるために離れていたれんげちゃんが姿をみせる。
普段の格好とは違い、ちょっとお洒落な可愛いお洋服を着ていた。
うんうん、こっちのれんげちゃんもなかなか可愛い。
「早かったね―れんげ。それじゃ、うちも支度してきますかな。カズマ君、ちょっとお願いねー」
「あ、はい」
一穂さんかられんげちゃんを任された俺は、膝の上に座ってきたれんげちゃんの頭を撫でる。
最近のれんげちゃんは、よくこうやって俺の膝の上に座る。どうやらお気に入りらしい。
「かずにぃも一緒にでかけるん?」
「いや、俺は帰るよ。邪魔したらいけないからね」
「そうなのん?残念なんなー……」
「ごめんなぁ。そうだ、今度機動要塞デストロイヤー持ってきてあげるよ」
「ほんとうなん!?」
機動要塞デストロイヤー。れんげちゃんと初めて会った日に俺が買いに行ってたフィギュアだ。
あれのおかげで今の俺があると言っても過言ではない。
前にれんげちゃんに初めて会った時に、持ってた物の事を尋ねられ話してみたところ、えらく興味を持っていた。機会があれば見せようと思っていたので、今度持ってきてあげよう。
「約束なんな―!」
「おう、約束だ!」
れんげちゃんと指切りをする。子供の手って、やっぱり小さいなぁ。
「お待たせー。お?れんちょん嬉しそうだね」
「ねえねえ!あんなー、かずにぃが今度デストロイヤーになるん!」
「お、おぉ……それはそれは……カズマ君?」
「バレては仕方ない。このデストロイヤーカズマの凄さを見せてやろう!!っておい」
たまにれんげちゃんが話を端折っちゃうけど、可愛いから良し。
俺はノリツッコミをしつつ、一穂さん達と玄関に移動しながら説明をした。
「それじゃ、行ってくるね」
「いってくるのーん!」
「気をつけてくださいね。いってらっしゃ~い」
一穂さんとれんげちゃんが乗る車を見送りながら、さてどうしたものかと考える。
普段はれんげちゃんと遊んだり、一穂さんの手伝いをしたりしてるから時間は潰せたが、うーん……。家に帰ってアニメでも見るか?けど、今は気分じゃない。
決してアニメやゲームが嫌いになったわけではない。
ただ最近は、こうして外に出て遊ぶのが楽しかったんだ。
そう考えると、本当に、れんげちゃんとの出会いは奇跡だったんだなと思えた。
彼女が居たから、彼女と出会ったから、俺は少しずつ変わった。
多分これからも、そうだと思いたい。
じゃあ、もし会えていなかったら?
もしあの時会えていなかったら?会えたとしても、助けようと動かなかったら?
彼女が居なかったら、俺はどうなってたんだろう。
「……考えてても仕方ないか」
今があるんだ。彼女と出会ったから、今の俺がある。
それでいい。会えなかったら、なんて、考えなくてもいいじゃないか。
今が楽しいのなら、それで。
「よし、気分転換に、ちょっと散歩してみるか」
よくよく考えたら、一人で歩き回ったことがない。
せっかく時間もあることだし、ゆっくり散歩でもして風景を楽しもう。天気もいいしな。
「もしかしたら、新たな出会いがあったりして」
そうそう、今は全部忘れて前向きに考えよう。
まだ見ぬ出会いに期待を込めて。
「へぇー、ここ水車なんてあるのか」
のんびりと、まったりと、一人散歩を楽しむ。
田んぼばかりだと思っていたけど、いろいろあるもんだなぁ。
さっき見た川も綺麗で、子供達が遊び場にしてそうな場所もたくさんあった。
案外、ああいう場所でもれんげちゃんも遊んでたりして。
そういえば、れんげちゃんはよく駄菓子屋に行くと言っていた。
スーパーとかコンビニが近くになく、お菓子とか買いに行くときはその駄菓子屋に行くらしい。
名前は聞いたことあるけど、実際に行ったことはないんだよなぁ。
機会があれば行こうと思っていたけど、場所が全くわからん。
近くの人に聞いてみるか。いやでも忙しそうだしなぁ畑仕事。
邪魔になるといけないし、うーん……。
「まぁ、今度でいいか」
うん、今度れんげちゃんに案内してもらおう。
ついでに彼女がよく遊ぶ場所も教えてもらおうかな。
楽しみがまた一つ増えた。
「おや?ここ、人が通った跡があるな」
散歩を続けていると、茂みの中に人が通ったであろう道があった。
いわゆる獣道か。こういうのって見つけるとワクワクするよなぁ。
しかし奥はどう考えても森。
もしかしたらやばい儀式が行われていたり?
気になる。気になるが、とても怖い。
「いざとなれば走って逃げるか」
しかし好奇心に負けてしまった俺は、茂みの中に入っていく。
少し歩くと、道の先には青いブルーシートで囲われた場所があった。
あれ?もしかして本当にやばい?
まずいと思い元来た道を戻ろうとするが、よく見てみると「ひみつきち」と書かれた木の板が近くに置いてあった。なるほど、秘密基地だったのか。驚いた。
「秘密基地かぁ。子供の頃の夢だったなぁ」
中の様子を見ようと一歩足を前に出す。
そして思った。
もしこれが本当に子供達の秘密基地だったとしたら。そう考えたら入るのは失礼だと思った。
何故なら、子供達にとってここは「ひみつ」だから。
そんな秘密の場所を、勝手に入るのは気が引ける。
見つけてしまった事は仕方ないけど、忘れよう。子供達の秘密を奪ってはいけない。
「しかし、俺も欲しかったなぁ。秘密基地」
羨ましいなと思いつつ、俺は秘密基地を後にした。
歩いてきた道を戻り、歩道に出る。
流石に歩き疲れてきた。
ここらで休憩しようかと思ったけど、周りになにもない。
さっき見た水車の近くにベンチがあったような。仕方ない、そこまで戻るか……。
「あれ?カズマくん?」
名前を呼ばれドキッとする。こ、この声は!?
咄嗟に振り返った俺は、予想通りの人物がそこにいるのを確認すると、胸が高まりテンションが上り始める。
「こ、このみさん!」
「やっほー。奇遇だねー、こんなところで会うなんて」
「そ、そうですね!奇遇ですね!!」
お、落ち着けぃ佐藤和真。
いつものように、いつものように話すんだ!
「茂みの中から出てきてたけど、何やってたのー?」
「えーと、そのー」
秘密基地を見つけた。
と、言いたかったが、果たして話して良いことなのか?
このみさん、こういう場所で遊ばなそうだし、秘密基地なんて知らない気が。
「あ、そういえばそこって秘密基地ある場所だよね。懐かしいなぁ」
まさかの知っていた様子。これはちょっと意外。
「昔ね、よくひかげちゃん達とそこで遊んでたんだよ」
噂のひかげさんだ。
彼女はどうもアグレッシブらしい。
「そ、そうなんですねー。ひかげさんって、結構アグレッシブなんですね」
「うーん、そうだね。凄い元気な子だよー。なっちゃんみたいな感じかな」
「なっちゃん?」
これまた知らないお名前が。
「あ、そっか。カズマくん知らないもんねー。うちの家の隣に住んでる子なんだよー。中学生なんだ」
「中学生……?もしかして、夏海ちゃんとかいう?」
「そうそう、越谷夏海ちゃんね」
れんげちゃんから聞いていた名前だ。
れんげちゃんがよく遊ぶ友達の一人で、元気で活発のいい子だと聞いていた。
その夏海ちゃんとひかげさんは同じタイプという。
うーん、ますますどういう人物か気になるなひかげさん。
「あれ?でもなんでカズマくんが秘密基地に?れんげちゃんに案内されたの?」
このみさんはキョロキョロと周りを見渡す。
その姿が可愛らしく、俺はしばらく眺めた後に説明するのだった。
「そっかそっか。それでカズマくん一人なんだね」
「はい。それで、いい機会なんで散歩していたらこのみさんにこうして会ったわけです」
偶然とはいえ、このみさんに会えるとは。
やっぱり散歩してみて正解だったな。
「とはいえ、流石に疲れてきたので、そろそろ帰ろうかなと思っていたところです」
「そうなの?」
会えたことは嬉しい。けど正直疲れてきてるのも事実である。
すごい名残惜しいけど、すっごい名残惜しいけど! 少し話して今日は帰るとしよう。
「そうだカズマくん」
「はいカズマですが」
「うち来ない?カズマくんの家の帰り道にあるし、せっかくだからそこで休憩していきなよ」
「行きます。ぜひ行かせてください。……え?」
「決まりだね。それじゃ行こっか」
「あ、え?」
え?
「どうしたのカズマくん?早く入りなよ―」
「ここがあの女のハウスね」
などとボケる。
いや、ボケないとやっていけない。
え?俺今どこにいるの?ここは?誰の家?
冷静にならなければという考えと、このままボケた振りして勢いで行っちゃおうという考えが脳裏をよぎる。
落ち着け。落ち着くのだ。
整理しよう。まず俺は佐藤和真。(カズマだよ)
そしてあの玄関で待っているのが女神富士宮このみさん。
そしてそのこのみさんが入ろうとしてる家が彼女の家。
俺は彼女に誘われ家に入る。
二人で話す。
恋人の誕生である。
「うん悪くない」
おや?何も恐れることはないじゃないか?
よし行こう。
お父さん、お母さん、貴方の息子は今日大人になります。
「お待たせー。お茶でよかった?」
「全然大丈夫ですよ!い、いただきます!」
このみさんの可愛らしい部屋でお茶をいただく。
程よく冷たいお茶が、乾いていた喉を潤す。
まぁそうだよね。これが普通だよね。
うん、わかってた。わかってたぞー。
決してやましい気持ちはありません。何故なら俺は紳士だから。
しかし
(すんすん……いい匂いだ……!)
に、匂いくらいは嗅いでもいいよね?ね?
「わたしね、思ったんだけど、カズマくん硬いと思うの」
「おっふ」
「同い歳なんだし、敬語じゃなくて普通に話してみない?」
「あ、そういう」
決してやましい気持ちはありません。
「よし、練習してみよう。わたしのことこのみって呼んでみて?」
「えーと……このみ……さん」
「むぅー。ダメだよカズマくん。もう一回」
「こ、このみん」
「このみん?うーん、まぁいっか。うん。じゃあもう一度」
「こ、このみん?」
「よくできました。偉いぞ―」
「う、うへへ」
やばいこれすっごい楽しい!!
「気をつけて帰ってね。カズマくん」
「はい。ありがとうございます」
「カズマくーん?」
「あー、えーと、お、おぅ!ありがとう、こ、このみん」
「よしよし。それじゃあね」
まるで恋人のような時間だった。
いや、きっともう俺たちは恋人同士なのだろう。
この俺にも遂に彼女が……ふふふ。
「いやー!今日はいい日だったなー!!」
思わず声に出しながら、俺はスキップして帰った。
そして翌日、筋肉痛で一日家で過ごした。
― カズマが家に帰った後 ―
「……帰ったね」
「帰っていったね」
「ほら!やっぱりこのみちゃんの彼氏だ!」
「まさかとは思ったけど、マジかぁ……どうしよねえちゃん」
「ど、どうしようって……そ、そうだ!蛍たちに教えないと!」
「えー、大丈夫なの?広めちゃって」
「だ、だって!邪魔したら悪いというか……」
「うーん、変に広めちゃうほうがダメな気がするけど」
「うっ……夏海の癖にまともなこと言う……」
「うちはいつもまともですー」
「はいはい。と、とにかく、夏海の言う通り、黙ってることにしよう、うん」
「まぁそれが一番かなー。さてと、うちお風呂入ってくる」
「私も後で入らないと。……うーん、でも、すごい気になる……」
「ほ、蛍になら話してもいいよね?今度あったら話してみよう」
お疲れさまでした。
本編とは別にキャラの詳細も一応載せておこうかなと考えてます。
一話終わるごとに詳細追加される的なね。
週一回の更新予定ですが、話が出来てたら二回投稿する予定です。
無理せずのんびり投稿するのでよければお付き合いくださいませ。