[完結済み] この素晴らしい田舎生活に祝福を!   作:Rabbit Queen

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6話です。

今回は駄菓子屋さんからスタート。
一穂とは違い警戒する楓にカズマは和解できるのか……?

そしてそんなカズマに、東京からヤツが着実に近付いていた――。


この恐いお姉さんのお手伝いを!

 

 「すいませーん」

 

 初めて訪れた駄菓子屋に、俺はちょっとワクワクしていた。

 いろんなお菓子があって、どれも安くて、なにより、子供心がくすぐられた。

 あとは、大人のお姉さんが居ると聞いて、ちょっと期待してたり……。

 果たしてどんな人なのか、俺は期待を胸に抱き、少し前の出来事を振り返った。

 

 

 

 

 「カズマ君、ちょっとお願いしたいことがあるんだけどね」

 

 

 俺が何故駄菓子屋に行く事になったのか。

 それは、いつものようにれんげちゃんと遊んでいる時の事だった。

 目の前でぐーたらしてる一穂さんが眠い目を擦りながら言った。

 

 「お願いですか?俺に出来ることなら全然大丈夫ですけど」

 

 「大丈夫大丈夫。カズマ君でも出来ることだよ。というか、カズマ君だからお願いしてるところもあってね」

 

 「ふむ?」

 

 「まぁぶっちゃけると、男手が欲しいんだ。ちょっと重い物を幾つか運んでほしくてね」

 

 「なるほど。うーんでも、重すぎるのは流石に厳しいですよ?」

 

 「大丈夫大丈夫。そんなに重くはないよー。私もたまに手伝うからね。保証はします」

 

 「なるほど。でも、普段手伝ってる一穂さんが俺に任せるって事は、何か事情があるんですよね?」

 

 俺の言葉に一穂さんは少し驚き、嬉しそうに言った。

 

 「お、わかっちゃう?」

 

 「まぁ、そこそこ付き合ってきたので、なんとなく」

 

 「いいねいいねー。そうやって私を楽させておくれ」

 

 「帰っていいんですねわかりました」

 

 「ごめんごめん。だから待って」

 

 こんな風にバカをやるくらいには、俺も一穂さんも付き合いが長くなってきた。

 

 「カズマ君の言う通り、ちょっと出かけないといけなくてねぇ。私の用事と知り合いに頼まれてた用事が重なっちゃってね」

 

 「なるほど」

 

 「だから、悪いんだけど頼まれてくれないかな?勿論お駄賃は出るよ」

 

 「お金が出るのは魅力的ですけど、そうじゃなくてもいいですよ。身体動かすのも、悪くないなって思ってきたんで」

 

 「お、いいねいいね。よしよし、それじゃ頼んじゃおうかな」

 

 「かずにぃどこか行くのん?」

 

 それまで一穂さんの上でゴロゴロしていたれんげちゃんが言った。

 

 「そういえば、どこに行くか聞いてないですけど」

 

 「あぁ、そうだったね。頼み事をされてる場所なんだけどね――」

 

 

 

 そうして、今に至る。

 

 一穂さんの友人で後輩の、楓さんという女性が経営してる駄菓子屋さん。

 その駄菓子屋さんに行って、楓さんの手伝いをしてほしいとのことだった。

 俺が場所を聞こうとすると、れんげちゃんも一緒に連れてってあげてと頼まれた。

 れんげちゃんはその駄菓子屋さんとは仲がとても良いらしい。 

 場所も人物も知っているれんげちゃんと手を繋ぎながら、俺は駄菓子屋に来たのだった。

 

 

 「反応ないなぁ」

 

 声をかけるも、反応は返ってこなかった。

 留守にしてるのか、それとも奥で何かしてるのか。

 悩む俺に、れんげちゃんは言った。

 

 「駄菓子屋のぶるんぶるんがないのん」

 

 「ぶるんぶるん?」

 

 それはひょっとして卑猥なものかい?

 

 「駄菓子屋の乗り物なん。ぶるんぶるんするん」

 

 「乗り物……?あ、もしかしてバイクか?」

 

 「多分そうなん」

 

 「なるほど。じゃあ留守ってことかな?」

 

 「そうだと思うん。でも大丈夫なん。きっとすぐ戻ってくるん」

 

 「んー、れんげちゃんがそう言うなら、待つかぁ」

 

 そう言って二人でのんびり待とうとした時、外から何やら音が聞こえてくる。

 それはエンジン音だった。最初は小さかったその音は徐々に大きくなり、駄菓子屋さんの近くに来ると乗り物は止まり、音が止んだ。もしかして帰ってきたのかな?そう思い、しばらく待つ。

 

 そして駄菓子屋に入ってくる一人の女性を見て――

 

 「……ひぃ!?」

 

 「あん?」

 

 その姿に思わず、声を漏らした。

 

 

 

 「なんだ、れんげだけか?」

 

 女性は周りを見渡すと、そう言った。いやあの、俺も居るんですけど……。

 

 「駄菓子屋、にゃんぱすー」

 

 「おう、にゃんぱすにゃんぱす」

 

 れんげちゃんの独特な挨拶を普通に返す女性。

 

 「先輩から手伝いが来るって聞いてたんだが、れんげだけか?」

 

 「かずにぃも一緒なのん」

 

 「なんだそりゃ?」

 

 「そこにいるのん」

 

 れんげちゃんは俺を指差す。女性は俺を一度見て、ため息を漏らした。

 

 「……はぁ。まさかとは思ったけど、本当にこいつかよ」

 

 初対面の人間に対して失礼ですよ!!

 

 と、心の中で強く言った。口には出さない。だってめっちゃ怖いもん!!

 

 「えーっと、俺、佐藤和真っていいます……」

 

 「知ってるよ。先輩から話は聞いてる。引きニートだろ?」

 

 おぉい!?なんて説明してんだあの人!?

 いやまぁ、間違いではないけど!!そろそろ違う紹介の仕方をしてくれないかな!?

 

 「ま、まぁ、そうです、はい……」

 

 否定できない自分が恥ずかしいっ!!

 

 「はぁ。まぁ、先輩の紹介だ。使えないってことはないだろうし、悪いけど頼んでいいか?」

 

 「あ、はい。任せてください!」

 

 「れんげ、ちょっと運ぶものがあるから、奥の部屋でテレビでも見てな」

 

 「あーい」

 

 そう言って、女性はれんげちゃんを奥の部屋に上げる。

 思ったけど、れんげちゃんに声かける時の表情とか微妙に違う気がする。特に声が優しい気がする。なんて事を思いながら、そういえば確認してなかったなと思い女性に話しかけた。

 

 「あ、そうだ。確認なんですけど……」

 

 「あん?」

 

 「加賀山楓さん、で、いいんですよね?」

 

 「あぁ、そういえば自己紹介してなかったか。まぁ、気軽に下の名前で呼んでくれ」

 

 「あ、はい。宜しくおねがいします、楓さん」

 

 

 加賀山楓。

 彼女の印象は、というか見た目は――金髪で目つきが少し悪く、一攫千金と書かれたジャージを着るその姿は――まるで、いや……ヤンキーそのものだった――。

 

 

 

 

 「よいしょ……っと」

 

 俺は楓さんに言われるがままに、次々と物を運んだ。

 それはダンボールで、中には駄菓子やら生活用品やらが入っていた。

 統一性のない物を次々と運んでは、指定された場所に置く。

 最初は気にせず運んでいたけど、こうも統一性がないと物凄く気になる。

 俺は少し休憩も兼ねて、ダンボールに物を詰め込んでる楓さんに聞いてみた。

 

 「あの、楓さん」

 

 「ん?」

 

 作業に集中しながら、彼女は俺の声に耳を傾ける。

 

 「このダンボールの中身って、楓さんの私物ですか?お菓子とかは商品でしょうけど、この洋服とか、毛布とか、生活用品とかはそうなのかなって」

 

 この猫のぬいぐるみとかまさに私物っぽいし。

 

 「いや、普通に全部商品だけど」

 

 「え、これ全部ですか?」

 

 「ああ」

 

 驚いた。これ、全部商品なのか。

 

 「先輩に聞かされてなかったのか?うちは駄菓子だけじゃなく、生活用品を貸し出したりしてるんだよ」

 

 「え、駄菓子だけじゃないんですか?」

 

 「ああ。まぁ、流石に駄菓子だけじゃ生活できないしな」

 

 「確かに……大変なんですね」

 

 「ネット通販の物とか取り寄せたり、急に来た客人の為に布団一式貸し出したり。まぁ、いろいろやってるよ」

 

 「……なんか、改めて、経営の凄さというか、いろいろ考えて上手くやってて、凄いなと思いました」

 

 「そうか?普通だ、普通。もういいだろ?早く運んでくれ」

 

 「あ、すみません」

 

 何気なく聞いてみたそれは、生きていく事の難しさを実感させた。

 そうだよな。駄菓子屋さんに限った話じゃないけど、何かを続ける事って自分が思っている以上にとても難しい。俺がもっと子供だったら、理解できなくて適当に返事してたと思うけど、今なら少しは理解できる。こういう現実的な事も、考えないといけないんだなって。

 

 

 「……よしっ!これで終わりっと!」

 

 最後のダンボールを丁寧に置いて、額の汗を拭う。

 我ながら、いい仕事をしたと思う。

 終わったことを報告しようと楓さんが居る駄菓子スペースに戻る。

 しかしそこには楓さんは居なくて、代わりにれんげちゃんが駄菓子を見てウロウロしていた。

 

 「あれ、楓さんは?」

 

 「おトイレにいったのん」

 

 「あぁ、なるほど」

 

 そう話してる内に、楓さんが戻ってくる。

 

 「ん、終わったのか?」

 

 「はい。全部運びましたよ」

 

 「そうか。おつかれ。ありがとな」

 

 「いえいえ。これくらい」

 

 どうってことない、そう言おうとして、楓さんが別の方向に目を向けている事に気づいた。

 俺も同じようにそっちを見る。

 れんげちゃんが自分の背より高い場所にある駄菓子を背伸びをして取ろうとしていた。

 あ、あれ取りたいのか。そう思って俺は声をかけた。

 

 「れんげ、それ」「れんげちゃん、俺が取ってあげるよ」

 

 

 あれ?今、楓さんと被った?

 確かに楓さんの声だった。

 チラリと見てみると、睨むような目で俺を見てきていた。

 原因はわからないけれど、もしかして怒ってらっしゃる……?

 そう思いつつ、れんげちゃんに駄菓子を取ってあげた。

 

 「かずにぃありがとなのん!いつもは駄菓子屋が取ってくれるから、新鮮なんなー」

 

 「どういたしまして……うん?」

 

 いつもは……?れんげちゃんは確かにそう言ったよな?

 もしそうなら、普段から取って貰ってる事になる。

 この恐そうなお姉さんが?れんげちゃんを気遣って?

 ふむ……チラリ。

 

 「……んだよ」

 

 楓さんは少し恥ずかしそうにそっぽを向く。

 

 あ、わかった。

 この人、絶対いい人だ。

 見た目で判断してはいけないとはこの事だなと思い俺は深く反省した。

 

 

 

 加賀山楓は警戒していた。

 目の前に居る男、佐藤和真を。

 

 

 彼の話を最初に聞いたのは、たまたま彼女が忘れ物を取りに宮内家に訪れた時のことだった。

 宮内家から出てくる和真を、楓は原付きで遠くから見ていた。

 見かけない人だった。だからなんとなく、気になって楓は一穂に聞いた。

 するとどうだ、彼は最近、れんげと仲が良いと言うではないか。

 しかも、れんげだけではなく、このみとも仲が良くなっているらしい。

 楓に話をしてくれた一穂も、少しだけ楽しそうだった。

 

 楓はこの時から警戒した。

 

 何故なら、見知らぬ男がれんげと仲良くしているから。

 何故なら、親しんでいる先輩が楽しそうにその男の話をするから。

 何故なら、佐藤和真という名前を、この田舎で聞いたことがないから。

 

 

 引っ越してきた?それなら納得が出来る。しかし、そんな話は、楓の元には来ていない。

 たまたまなのか、それとも、楓が見落としていただけなのか。

 不安になる楓に、一穂は察してなのか、こう言った。

 

 「彼は大丈夫だよ。彼は、きっと子供達の為になるよ。一番は、れんげだけどね」

 

 一穂の言葉に、楓はひとまず従うことにした。

 しかし、警戒は解かなかった。いつ本心を表すかわからない。

 だから、自分だけは警戒しないと。そして、化けの皮を剥がしてやると。

 だから、今回の話はチャンスだと思った。

 

 佐藤和真。彼の本心を見れると思って――。

 

 (と、警戒したものの、こいつ、普通にいいヤツっぽいんだよな……)

 

 楓の思惑とは裏腹に、和真は淡々と仕事をこなしていった。

 嫌な顔せず、むしろ進んで、他にやることはないかと。

 少しだけ話しを交わしたけど、何か隠してるような感じはしなかったし、下心もあるようには感じなかった。

 

 (……いや、これこそ、あいつの思惑かもしれん)

 

 そうだ。いい人そうに見せて信頼を得ようとしているのかもしれない。

 まだ信用してはいけない。

 もしかしたら、こいつは人を騙すのに長けているかもしれないからだ。

 

 (……でもなぁ、れんげが、懐いてるんだよなぁ……)

 

 一番の問題はれんげだった。彼女が懐いているのだ。

 夏海達は昔からの付き合いだからわかる。

 蛍ちゃんは転校生だけど、良い子だったかられんげが懐くのもわかる。同じ子供だし。

 だがこいつはどうだ?

 

 確かに、こいつも子供だ。

 だが、幼いれんげ達と違い、こいつはこのみと同じ、大人に近い子供だ。

 知識や考え方は大人に近づいてきている。

 悪知恵が働いていてもおかしくはない。

 こいつが純粋な気持ちで接しているなら構わない。

 ただ、それが犯罪に近いものだったら、大人として止めなければならない。

 

 (このみから話が聞けたら、一番だったんだけどな)

 

 このみとも関わりがあるからと、彼女に聞こうと思った。

 だが運悪く、彼女に会う機会がここ最近なかった。

 彼女も高校生だ。夏海達とは違い、少しだけ大人に近い存在だ。

 やりたいことは沢山あるだろうし、やらないといけないことも沢山ある。

 だから、時間が合わなかった。

 

 (ま、自分の目で見るのが、一番か)

 

 れんげがなんでこいつに懐いているのか、それだけは知りたかった。

 

 

 

 

 それから、楓は隙を見ては、和真を監視した。いつかボロが出るんじゃないかと期待して。

 しかし、見れば見るほど、和真がただただお人好しな優しい青年だと知っていく。

 

 本当は、何も隠していないんじゃないか?

 ただの、優しい子供なのでは?

 考えれば考えるほど、和真への警戒が薄れていき――そして。

 

 「れんげちゃん、俺が取ってあげるよ」

 

 それを見て、確信した。

 

 (……あぁ。こいつ、ただの、いいやつじゃん)

 

 れんげと話してる時の和真の顔が楽しそうで。それが、自分にはわかる部分があって。

 れんげの良いところも、悪いところも、多分こいつは、もう知ってるんじゃないかなって。

 まるで、自分を見ているような気がして。

 

 (……少しだけ、信じてみるか)

 

 だから少しだけ。

 少しだけ、信じてみることにした。

 

 「おいカズマ」

 

 「あ、はい?」

 

 「……昼飯、食っていけ。れんげも、うちで食べていきな」

 

 「いいのん!?」

 

 「あぁ。今用意するから、奥の部屋で待ってな」

 

 「わかったのーん!」

 

 れんげは奥の部屋へと走っていく。

 和真は、まだそこにいた。

 

 「どうした?お前も行っていいぞ」

 

 「いやー……その、俺にも何か手伝えることないかな、って」

 

 こいつは……全く。

 

 「……んじゃ、手伝え。野菜切れるよな?」

 

 「はい!任せてください!」

 

 こういうところに、れんげは惹かれたのかもな。

 

 

 

 「やーぶれかぶれーのやぶいしゃがー」

 

 

 れんげちゃんと共に、家路を歩く。

 今日は、いつもと違って、現実的な経験を得ることが出来た。

 経営の難しさ。生活の手段。生きるための知識。

 目を背けていた現実に、少しだけ鬱な気持ちが入りそうで、でも、いつかは向き合わなくちゃいけなくて。今日の経験は、きっと、ずっと、大事なものになる。俺はそう感じた。

 

 いつかは、自分の道を見つけなくちゃいけなくて。

 いつかは、自分の時間を有効に使わなくちゃいけなくて。

 いつかは、彼女達と過ごす時間を、減らさなくちゃいけなくて。

 

 そんな、いつかの事が、明日なのか、明後日なのか、わからない。

 そう考えると、怖くなって。

 

 

 「かずにぃ」

 

 「うん?」

 

 だから、今は――。

  

 「うちなー。もっともっと、かずにぃといろいろ遊びたいん。だから、明日も、明後日も、一緒に遊んでほしいのん」

 

 今は――彼女の言葉が、とても暖かくて。

 

 「……おう!明日も明後日も、なんだったらこれからもずっと!一緒に遊んであげるよ」

 

 

 だからどうか、どうか今だけは。

 この時間を楽しんでもいいですよね……?神様。

 

 

 

 「それじゃあね。れんげちゃん」

 

 「また明日なのーん」

 

 

 家の前までれんげを送り届けた和真は帰っていく。

 れんげも、家の中に入っていった。

 玄関を開けると、見慣れた、でも今はここには住んでいない人物の靴を見つける。

 れんげは嬉しくなり、急いで靴を脱いで居間に向かった。

 そこには、れんげが待ち望んでいた人が居て――

 

 「おぉれんげ。おかえりー」

 

 「おかえりれんちょん」

 

 一穂と、都会から帰省しに帰ってきた、宮内ひかげがくつろいでいた。

 

 「ひか姉!帰ってきたん!?」

 

 「さっきねー。かず姉に迎えにきてもらったんだ」

 

 「迎えに行く用事をすっかり忘れててねー。いやぁ、今日は助かったよれんげ」

 

 「れんげ、今日は駄菓子屋の手伝いしたんだって?偉いじゃん」

 

 「うち、何もしてないん。全部かずにぃが手伝ってたのん」

 

 「あり?そうなの?」

 

 「そうなん。今日はうち、駄菓子食べたりテレビ見てたりしてたのん」

 

 「そうだったのね、こりゃ、カズマ君には追加でお礼しないとなぁ」

 

 「……あのさ、ちょっといい?」

 

 れんげと一穂の会話を黙って聞いていたひかげが口を開いた。

 

 「かずにぃ……って誰?そんな人いた?」

 

 ひかげは、この時初めて佐藤和真の存在を知る――。

 

 

 

 

 「はいはーい。今出るよ―」

 

 「お、いたいた。ひか姉おかえりー」

 

 「あれ、夏海じゃん。ただいま」

 

 次の日。ひかげは、れんげと一穂が買い物に出かけると言ったので、留守を預かることにした。

 れんげに誘われたが、昨日の帰りの電車で少し疲れていたからだ。

 今日はのんびり過ごそうと思い、一人家で暇を潰していた。

 

 

 ……とはいえ、やはり田舎。やることはなく、どうやって暇を潰そうかと悩んでいた。

 そんなひかげの所に、運良く夏海が訪れたのだった。

 

 「ひか姉帰ってきてるって聞いてさ、暇してるかなーって」

 

 「よくわかってんじゃん。丁度暇しててさぁ」

 

 「仕方ない。うちが付き合ってあげますか」

 

 「かたじけないでござる。いや何様だよ」

 

 「夏海様だけど」

 

 「やかましいわ」

 

  

 「んでさ、その時かず兄がさ」

 

 「ふーん」

 

 夏海と雑談をして時間を潰すひかげ。

 最初は、授業中にこういう事が起きたとか、休みの日はこういう事をしたとか。

 そういう、いつも帰ってきた時に聞く話だった。

 

 ただ、今日は違った。

 

 後半は、かず兄と呼ばれた人との話だった。

 一緒に遊んだとか、一緒に怒られたとか。一緒にご飯を食べたとか。

 そんな、いつもと違う話を聞かされた。

 

 「あ、そうだ。今度かず兄と川遊びに行くんだけどひか姉も来る?」

 

 「んー、あのさ、夏海」

 

 「どしたの?」

 

 「そのかず兄って、どんな人なの?」

 

 「え?うーん、そうだなぁ……」

 

 夏海曰く、優しく、お人好しで、バカっぽい。

 バカっぽい……はれんげは言ってなかったけど、大体はれんげと同じ事を言った。

 かず姉に聞いても同じ感じだった。

 このみや駄菓子屋も会ったらしいけど、多分、同じ事を言うんじゃないかと思った。

 気付いたら現れて、一瞬で皆の和に入っていった、佐藤和真。

 

 はてさて、一体、どういうやつなのかな。

 

 なんて思っているひかげに対し、夏海は思い出したかのように言った。

 

 「あ」

 

 「うん?」

 

 「うち、兄ちゃんとゲームする約束してたわ。ごめんひか姉、うち帰るね―」

 

 「えぇ?なんだ帰るのかよー」

 

 「ごめんごめん、また今度遊ぼうぜ―」

 

 「はいはい。気をつけて帰れよ―」

 

 元気よく走って帰っていく夏海を見送り、ひかげはまた一人、何をして時間を潰そうかなと考える。漫画でも読むか?でも家にあるのは全部読み終わったし。昼寝でもするか?でも今はそんな気分じゃないし。あー、なんか、暇つぶし出来ないかなぁ……。

 

 

 「……ん?あれって……」

 

  

 そうして、ひかげは気付いた。

 我が家に近付いてくる、ジャージ姿の一人の青年の姿を――。

 

 

 

 




お疲れさまでした。

楓さんについては警戒しすぎでは?と思われる方も居ると思います。
でも楓さんの考え方も一理ありまして。
今まで出会った人達は何かしら縁が合って会っているので、警戒心とかはすぐに解いてます。でも楓さんは遠くで見ただけで、後は話だけしか聞いてません。

小鞠や夏海は最初勘違いしていましたが、小鞠は怪我しているところを、夏海は姉を運んでくれたカズマを見て、警戒が解けています。でも楓さんはそういう場面はありません。お手伝いという形で来ていますが、それまでは会っていませんし、ただいい人という事しかわかりません。こういう田舎だから、そして他に大人があまり居ないから楓さんみたいに警戒する人も居るんじゃないかなと思いました。一穂さんは教師として大事な事を教え、時に頼れる姉として、楓さんはお母さん的な立場として子供達を見守っている、そんな感じです。


長くなりましたけど、次回は皆さんのお待ちかねのアイツが登場します。
内容濃いのでお楽しみに。

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