覇王~誰よりも優しく強くそして弱かった男の冒険譚~ 作:金舎
ここはとあるファミリアのホームの一室。
端正な顔立ちをした少年がベットで眠るように横たわっていた。
少年の身体は全身から血を流し、片方の腕がない状態だった。
普通なら助かる見込みはないだろう。
その周りには、猫人《キャットピープル》、妖精《エルフ》、犬人《シアンスロープ》、女戦士《アマゾネス》、小人族《パゥルム》様々な種族が彼の周りで立ち尽くしていた。
誰もが、目に涙を浮かべている。
それが、怒りからくる涙なのかそれとも悲しみからくる涙なのかそれは誰にもわからない。
これが、モンスターにやられたのならば後者だろうと推測できるが、これが人為的なものであれば前者であろう。
だが、ここは迷宮都市オラリオ。
彼と同じような人間は五万といる。
ここではそれが日常茶飯事なのだ。
オラリオにはダンジョンがある。
大切な人を守るためか、誰かに恩を返すためか、将又皆に希望を与えられる英雄になるためか。
理由は人それぞれ、十人十色。
己の持つ信念のために己の命を懸け、来る日も来る日もダンジョンに潜り、崩れ挫けながらも、確かな足跡を付けながら己の使命のために。
冒険していく。
そしてその冒険は、一人に一つだけの物語になる。
此度は、彼の物語を読んでいくとしよう。
これは、覇王と呼ばれた誰よりも優しく強くそして弱かった少年の物語だ。
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一人の少年は明らかにおかしな空間にいた。
周りにはずっと暗闇しかない場所なようだ。
少年はとりあえず、誰かいるのか尋ねてみることにした。
「すいませ~ん。誰かいませんか~。」
しかし、何の返事もなかった。
ここは、何なのだろうか。
僕はどうなったのだろうか。
あの大災害で死んでしまったのではないのか。
何も現状が理解できない状態に一抹の不安を覚える。
「ここは何なんですか~。」
やっぱり何の反応もなかった。
ダメか、とあきらめかけた時。
ギィっという扉が開く音が鳴った。
音が鳴った方を向くとまぶしすぎるくらいの光が差していた。
「なんだ、声が聞こえてきたかと思ったら赤ん坊ではないか。なんでこんなところにいるんだ。」
「《自分でもよくわからないんです。》」
「おぉ~。どうした。おなかでも空いたのか?」
そう言って巨大な女の人が自分の身体を持ち上げられ、片手で抱かれていた。
少年はこの時に気づいた。
自分の言葉が通じていないことに、自分が赤ん坊になっていることに。
「《違うよ!それよりここはどこなんですか!》」
「おわっ。なんか気に障ったのか。赤ん坊というものは本当にわからん。まあいい、とりあえずホームに戻ろう。」
彼女は自分が赤ん坊にしか見えていないのだろう。
そう思って、諦め、赤ん坊だからなのか抱かれた時からやってきていた眠気に負け、眠りについたのだった。
2020/3/10 一部修正