「…状況を整理しましょう」
博麗神社。
博麗霊夢が管理する、幻想郷の中核とも言える場所で、オレ達は湯呑みを片手に話し合っていた。
「貴方は紫に連れられて、ここに来たのね」
「その通りだ…出来れば今すぐ帰りたいが」
「でも、幻想郷がピンチなんだろ?帰しても良いのか?」
「…それを考えているのよ」
霊夢は難しい顔になり、思考を巡らせている様だった。
「紫のセリフといい、彼の迷い込むタイミングといい…偶然とは言えないわよね」
確かにそうだ。何かしらが起きたから紫はオレを幻想入りさせた…それは確実だろう。だが、この場にオレが介入した所で何が変わるというのだろう?
能力も持ってないのに…あ、そうだ。
「そう言えばオレの能力って何なんだろうな…紫は右手と言った…まさか
「なんだそれ?」
「気にするでない」
説明した所で理解してくれるかは怪しいし、まさか本当に幻想殺しな訳ないだろうしな…。
「しかし、これからどうしようか…」
「悩む所ね…」
場の空気が停滞した。
「…少し外していいか?」
この空気に耐えられなくなったという事は無いが、何となく気分転換がしたかった。
「どうして?」
「…ただ風に当たりたくなっただけだが。お前らもオレ抜きで話したい事があるだろ?」
それもそうねと霊夢は言い、あっさりと了承してくれた。
立ち上がり、鳥居の方へと歩き出す。
*
さて、本当にこれからどうしようか。
オレとしちゃこんなバケモノだらけの世界なんて嫌なんだが…まあすぐ死ねそうだから居てもいいんだけど。あれ?何か矛盾してるぞ。
そんな事を考えながら階段の下を見た時、それが目に入った。
「うう…」
「……!お空、大丈夫か!?」
階段の下で倒れているのは
「霊夢と魔理沙は…?」
ボロボロのお空が弱々しく訊いた。本当に何があったんだ…。
「おいお前ら!こっちこい!」
直ぐに霊夢と魔理沙が来て、お空を見て目を丸くした。
「お空!?大丈夫!?」
「さとり様が…」
呟くような小さな声で、それでも必死に自分の身に起こった事を伝えようとする。
「さとり様だけじゃない…こいし様、お燐まで…」
「あいつらがどうしたのよ!?」
「わからない…急に皆おかしくなって…」
「…お空、道案内頼む」
オレは既に走り出していた。身体が自然に動いたのだ。
「待てよ!」
魔理沙が慌てて引き止めようとする。
「無理だぜ!まともな能力も無いのに…」
「オレの命は捨てるためにあるもの…その命で誰かが助かるならいい事だ」
「君…どうして…」
「さて、道案内してくれ」
どうしてなのか?
そんな事、決まってるじゃないか。
目の前で困っているやつを見捨てる訳にはいかない…ただ、それだけだ。
「待ちなさい」
今度は霊夢が言った。また引き止めるつもりかと思ったが…。
「私も行くに決まってるでしょ」
「それくらい、わかってる」
異変解決は博麗の巫女の務め…だもんな。
「…私が逃げろと言ったら逃げなさい。でないと本当に死ぬわよ」
霊夢の目は既に戦う者のそれへと変わっていた。その目が、本気である事を示している。
「…考えておく」
言って、お空を背負う。
そして彼女の道案内に従い、地霊殿へと向かった。
何が起きているのかは分からない。
今は―オレがやるべき事をやるだけだ。