東方幻想記 THE NOVEL(休載中)   作:転寝

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幻想記屈指の名作「満月の天使」のノベライズです。
時系列は1章の姉妹逆転紅魔異変終了後です。
よろしくお願いします。


番外編
満月の天使1〜月見で少女〜


「……マスター、一つ訊いてもいいかい?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「…楽しかったのかい?終わる事が分かっていて…それでもマスターはあの時間を楽しいと思えたのか?」

 

「……ええ、とても楽しいと思えました」

 

 だって、私は―。

 

*

 

「ふぁ〜…眠い」

 月の綺麗な夜だった。

 何となく夜風に当たりたかったオレは、ぶらりと外に出て、ぼんやりと月を見上げていた。まあ、シチュエーションとしては悪くない。

 ただし、

「なんで腹がこんなに空いてるんだ…」

 確かに夕食から大分時間は経っているが…それにしても腹が空くのが早い。動き回っているからだろうか。

 そんな事を考えていると、背後から足音が聞こえた。振り返ると西行寺様が夜風に髪を靡かせながら此方に近付いて来るところだった。

「おろ?西行寺様?」

「あら無銘。眠れないのかしら?」

「まあ、そんな所です。昔からどうも寝付きが悪くて」

「そう…なら少し月を見ない?」

 言って、西行寺様は月を見上げた。綺麗な満月が、空にぽっかりと浮かんでいる。

「満月ですね」

「こんな夜には団子に限るわ〜」

「月より団子ですねわかります」

 相変わらずの西行寺様に苦笑。まあこの人はかなりの大食いだからな…妖夢はいつも大変そうにしてるし。

「貴方も食べる?」

 見ると、西行寺様はいつの間にか団子を食べていた。どこから出したんだそれ。

「…まあ、頂きます」

 団子を受け取り、食べる。そういえば久しぶりに食べた気がしなくもない。

「それにしても、綺麗な月ね〜」

「そうっすね…月はどこから見ても同じですからね」

「そうなの?」

「まあここの方が綺麗ですけど…幻想郷ですしね。高層ビルとかも無いし」

 実際、月は外の世界よりも綺麗に見えた。何も遮るものが無いからかもしれない。

 

「…あれ?あれは何かしら?」

 突然西行寺様が素っ頓狂な声を上げた。

「…ん?あれ?」

 その方向を見てみると…。

「女の子が空からゆっくり落ちてきてるわよ?」

「飛○石かよ!?」

 思わずツッコんだ。そんな天空の城めいた事がある訳ないと思ったが、実際空から女の子が落ちてきているのだ。

「ほら無銘!受け止めてあげなさい」

「わ、分かりました」

 腕を伸ばすと、女の子がふわりとそこに収まる。羽のように軽かった。

 まだ幼い子供のようだった。少なくともオレよりは歳下だろう。あどけないという表現がぴったり当てはまる少女は…まるで、天使の様だった。

「可愛いわね〜」

 西行寺様が女の子の顔を覗き込んで言う。と、その表情が悪戯っぽいものに変わった。

「さて、食べちゃうの?」

「なんでだよ!?ロリコンは悪友で間に合ってますよ!」

 西行寺様はニヤニヤと笑いながら「そういう事にしとくわ〜」と言って、それから元の気品のある表情に戻った。

「…とりあえず、寝かせてあげましょうか」

「そうっすね」

 オレは女の子を客間まで運び、布団に横たえた。

 …一瞬、何か懐かしい気持ちになったがその出処が何なのか、よく分からなかった。

 

*

 

 朝。

 オレが妖夢と木刀で稽古をしていると、「無銘さん…無銘さんは居ますか!?」という声が聞こえた。ちらりと見ると昨日空から落ちてきた女の子が駆け寄って来るところだった。

「…え?」

 一瞬そちらに気を取られる。そして妖夢がそれを見逃すはずも無く、鋭い一撃を放ってきた。

「はあっ!」

「うおっ!?」

 咄嗟に受け止め、鍔迫り合いの形になる。

 女とは言え、多分妖夢はオレより筋力がある、このままじゃ押し負けるのがオチだ…そう思ったオレはわざと力を抜き、素早く屈んだ。突然の事に妖夢がバランスを崩す…が、すぐ体勢を立て直すだろう。だが一瞬の隙さえあれば十分だった。

「おらぁっ!」

 気合いと共に、妖夢の脚に一撃を打ち込む。それで倒れた妖夢の鼻先に木刀を突きつけた…よっしゃ!一本取った!

「どうだ妖夢!オレだって上達して…」

 

 …ぶちっ

 

 妖夢の中で何かが切れた音が聞こえた…気がした。

 次の瞬間、

「スペルカード発動!」

「えちょ…スペカは反則だってぇぇぇぇ!」

 この後めちゃくちゃしばかれた。不幸だ…。

 

*

 

 少女は、妖夢のスペルカードを喰らって倒れている無銘を見て、慌てて彼の元に駆け寄った。

(大丈夫かな…ケガしてないかな…)

 少女の心中に渦巻くのは不安。そして…。

 

(やっとだ…やっと、無銘さんに…!)

 

 ―安堵にも似た、あたたかい気持ちだった。

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