「…結構な距離だったが、ここが地霊殿か…」
あれから、徒歩だったり魔理沙の箒の後ろに乗せてもらったりして(急激なGにより意識が飛びかけたが)何とか地霊殿に到着した。
中に入ると、直ぐに「やっと来たわね」という声がして、古明地さとり、古明地こいし、火焔猫燐が現れた。
「待ちくたびれたわよ」
「お姉ちゃん、早くやろ?」
「さっさと済ませましょう」
余裕のある態度でオレ達を見回したさとりは、オレを見ると「あれ?貴方見ない顔ね」と首を傾げた。
「名前は無い。だから無銘だ」
「そう…早速だけど、死んでもらうわ」
その一言をきっかけに、場の空気が一気に張り詰めた。
瞬間―爆発音。
それが、自分の横を高速で通り過ぎた弾幕が齎した音だと判った時には、既に霊夢と魔理沙が前に出ていた。
「弾幕が速い!?魔理沙合わせなさい!」
「分かってるっての!」
『スペルカード発動!』
二人が手に持つカードを掲げてそう宣言する。
『二重弾幕結界』
『スターダストレヴァリエ』
霊夢の弾幕結界と魔理沙のスターダストレヴァリエを悠々と躱し、さとりは不敵に笑む。
「ダメね、それじゃあダメよ…スペルカード発動!」
『テリブルスーヴニール』
さとりのスペルカードによって放たれた弾幕により視界が塞がれる。霊夢と魔理沙がどうなったのかは分からない。
「畜生!やっぱり妖怪か!」
恐ろしさを痛感しながら背負っていたお空をその場に下ろし、さとりの方へ向かおうと走ったが…行く手をこいしに塞がれる。
「肉弾戦は嫌いじゃないよ」
こいしは余裕の表情でそう言った。こっちは只の人間だってのに…!
(空手はかじってるが…こりゃあ詰むかもな)
額から汗が一筋流れ落ちる。それを拭う間もないまま、こいしに殴りかかった。
「はあっ!」
気合いの声と共に、只管に拳をぶつけるが…堪えた様子も無いな。
「やるじゃん」
「人に殴りかかった事なんて初めてだぜ…ケンカじゃあ噛んでたからな相手を」
こいしもまた、オレに打撃をぶつけてきた。小さい女の子とは言え妖怪だ。パワーは桁違いで…何時しか防戦一方になっていく。
こいしの拳をガードしている両腕が痛い。このまま行くと折れるか粉砕されるかの二択だろうな。
「あはは!楽しい!」
「狂ってやがる…」
…狂ってる?
そうだ、こいつら全員
だから力の箍が外れているのか、こいしの拳は益々速度を上げ、一撃一撃が重くなっていく。攻撃する余裕なんて無いし、あったとしても全然効かないだろう。
そこで遂に左腕にこいしの拳がめり込んだ。グギッという嫌な音がして、左腕に激痛を感じた。
「が…はぁ…」
拙い、ガードが…。
「他の考え事しちゃダメ!私を見て!」
「普通なら嬉しいセリフなんだろうが今は最悪だ!」
なんとか右腕でのガードが間に合ったが…このままだと本当にヤバいぞ…。
その時、視界の隅にあるものを捉える。
動けないお空にお燐が近付いていた。
「お燐…やめてよ!こんな事間違ってる!」
「お空が悪いんだよ。さとり様に逆らうから…」
オレはすぐさまそこに割って入った。こいしは今は無視だ。お燐に殴り掛かるも堪えた様子は無い。やっぱり防御力も底上げされてるのか。
「なんだこいつ」
不機嫌そうにお燐はオレを睨み付ける。
「私を忘れてない?」
そこにこいしも混ざり、挟まれた。前門の虎、後門の狼という感じだ。
(こりゃあマジでここが墓場になるかもな…)
再び打撃。しかもお燐も混ざって二倍の攻撃が襲ってきた。右腕一本ではどうにもならず、拳が身体中を抉る。
「スペルカード発動!」
『スーパーエゴ』
体制を崩した所でこいしのスペルカードが発動し、弾幕が容赦無く襲いかかってきた。
「アハハハハ!」
こいしの狂った様な笑い声が聞こえた瞬間、全身を熱を持った痛みが駆け巡り、オレは吹っ飛ばされる。
そしてその先にはお燐が居て、こちらもスペルカードを発動していた。
「スペルカード発動!」
『キャッツウォーク』
「ああああああああああああっ!」
再び猛烈な痛み。それで…オレは倒れた。意識があるのが不思議なくらいだった。
「あれ?もう終わり?」
「あっさり終わったね」
「し、しっかりして!」
お空がオレの元へ駆け寄ろうとするが…元々ダメージが大きいからか中々上手くいかないようだった。
「む、無銘!今助けるぜ!」
そこに魔理沙の声が割り込んできた。
「スペルカード発動!」
「やらせないよ」
「うあっ!……ぐ……ぅ」
魔理沙はこいしの一撃を喰らい、意識を一瞬にして狩り飛ばされた。
「………ッ!こ、この!」
次いで霊夢がこいしに攻撃を加えようとするが…さとりに阻止される。
「貴女達はここで死ぬの」
「クソっ!どきなさい!」
「ダメよ。皆、ここでお終い」
何かが折れる音がした後、霊夢は呻き声を上げて倒れた。
「む…めい。にげて…」
「霊夢…畜生!」
「やめて!お願い!」
お空の叫び声。
「バイバイ、お空」
お燐がスペルカードを発動し、お空に攻撃しようとしていた。
「スペルカード発動!」
『火焔の車輪』
させるか…!
オレは全身全霊で立ち上がり…お空の前に立ち塞がる。
そして…右手を突き出した。
「え………」
お燐が絶句した。
無理もない。
「マジかよ…マジで
咄嗟の行動だったが、それが功を奏した。
「…よく考えたら、あの時鳥のフンが落ちてきたのも、クジで安定のハズレを引くのも…それもこれも全部
不幸。
確かに、オレは不幸体質だ。
だが…今だけはその不幸を喜びたい。
「だったらいいさ、守れるなら…この右手で誰かを救えるのなら…死ぬ事だって惜しくない」
さあ…始めよう。
あの小説に出てきたあの人のセリフを借りて。
「―まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!」
初戦闘シーンでしたが如何でしたでしょうか?
幻想記の魅力でもある戦闘シーンがちゃんと再現出来ていればいいのですが…。