「はい、治療は終わりです」
数時間後、皆の治療が終わった。
「まさか包帯巻くことになるとはな…今まで骨折すらした事なかったから新鮮だ」
オレの怪我は割と酷く、全身が包帯だらけだ。幸いギプスまでは行かなかったが…腕も骨折は免れたからな。もしかしてオレって意外と頑丈なのか?
「それで、何があったんですか?」
人心地ついた所で鈴仙が訊いてきた。
「実は、地霊殿で異変が起きたんだよ」
「異変!?」
「ああ、その事でお前に用があったんだ」
あの時感じた事…こいつなら、解るかもしれない。
「用ですか…その前に貴方の事聞いても大丈夫ですか?」
「ああ、オレは無銘。外の世界の人間だ」
「能力はあるんですか?」
能力…流石に幻想殺しって言う訳にもいかないからな…。
「右手に触れた異能を殺す程度の能力…それがオレの能力だ」
「分かりました。私は…」
「鈴仙・優曇華院・イナバだろ?」
狂気を操る程度の能力を持つ月の兎…だった筈だ。
「…自己紹介は要らないみたいですね」
鈴仙が微笑んだ。オレは頷き、本題に入る。
「…それで、狂気を操る程度の能力を持つお前に聞きたい事がある」
「…なんでしょう?」
鈴仙が真剣な表情になった。
「お前の目には、地霊殿の連中はどう映った?」
「…そうですね。見た感じ安定していました、とても異変を起こした様には見えません」
「オレ達が地霊殿に乗り込んだ時、あいつらは明らかに狂っていた。一時的な狂気…そうとしか思えない」
「…そう言える根拠は?」
「ぼっちの勘だ」
あいつらが狂っているなんて事はあの場にいれば誰にでも分かるだろう。あいつらは妖怪とはいえ、あんなに好戦的では無いはずだ。ましてやスペルカードルールの決闘はあくまでも「遊び」の筈。なのにあいつらは明らかにオレ達を殺しに来ていた。
「…多分、当たりです。治療の最中、さとりさん達の狂気の波長の揺れ幅が少し大きい様に感じました。恐らく何かに狂わされ、それが抜けた事による残滓の様なものだと思います」
「やっぱりか。そうじゃねぇかと思ったんだ」
「…二人が何の話をしているのかさっぱり分からないよ」
それまでじっと話を聞いていたお空がクエスチョンマークを大量に浮かべながら首を傾げていた。
「そういえばこいつは鳥頭だった…つまり、あいつらは自分の気持ちで異変を起こした訳じゃないって事だ」
「そうなの?」
「…色々調べる必要がありますね」
鈴仙が難しい顔をして呟いた。
「…実は、オレに当てがある」
「どこでしょうか?」
「紅魔館だ。あそこの図書館なら何か分かるかもしれない」
「なるほど…」
「今動ける人員を集めてくれ、少人数で行こうと思う」
「…分かりました。集められるだけ集めます」
鈴仙は頷き、部屋を出ていった。
「…今夜だな。行くのは」
もしもの事もあるしな。
それにしても、狂気か…可能性は低いだろうが、一つ、宛てがある。
「私はどうすればいい?」
「夜に紅魔館に行くから準備しといてくれ」
「分かった」
お空が部屋を出ていくのを目で追いながら、考える。
もし、オレの予想が合ってたら、その時は……
そして夜。
オレ達は、二つ目の異変に遭遇する事になる。