なお、今回から始まる「姉妹逆転紅魔異変」は動画版と内容が少し変わります。
どこがどう変わったのか…是非見比べてみて下さい。
(なお、プロットは赤蜥蜴826氏が書いたものです。私の独断という訳ではありませんので予めご了承下さい)
夜。
梟が鳴いている様な静かな森の中を、オレは歩いていた。後ろには鈴仙と彼女の師匠である八意永琳、そして偶然居合わせた白玉楼の庭師である魂魄妖夢が居る。
霊夢や魔理沙は治療が終わったとはいえ鈴仙からドクターストップが掛かり、渋々といった感じで永遠亭に残ったし、彼処には地霊殿組もいる。お空には彼女達の護衛を任せる事にした。襲撃をかけられる事は無いと思うが、念の為だ。
「紅魔館の図書館に行くのよね?何を調べるつもりなの?」
永琳が訊いた。まあそうなるよな。オレは集まった連中には「何かあると拙いから着いてきてくれ」としか言っていないのだから。
「急に凶暴化するこの現象、もしかしたら一柱の神が関わってるかもしれない。あくまで憶測だけど……」
ゾロアスター教という宗教がある。
善悪二元論のゾロアスター教において、最高善とする神である「アフラ・マズダー」に対抗し、絶対悪として表されるもう一人の神…それが今回の異変に関わっているとオレは睨んでいた。
普通なら有り得ないと一蹴するだろうが、ここは幻想郷なのだ。何が起こってもおかしくない。
何せ、この場所では常識にとらわれてはいけないのだから。
*
暫く歩くうちに、全員がある事に気付いた。
「空が…」
「紅くなってます…」
紅魔館を起点として発生した紅い霧が空を覆っている。
「紅霧異変の再来か…!」
やっぱり、ここも…!
「急ぎましょう!」
鈴仙の声で我に返ったオレは、行く手に聳え立つ紅魔館を睨んだ。
*
入口に居る筈の門番は居なかった。
嫌な予感がして館内に駆け込むと、ロビーに二つの人影があった。
「ハァ…ハァ……落ち着いて下さい咲夜さん!」
紅魔館の門番である紅美鈴が焦燥した様子で言う。それに相対するのは十六夜咲夜、紅魔館のメイド長だ。
同じ館で働くこの二人が、何故争っているのか…声を掛けようとした時―。
「!?」
…一瞬にして時が止まった。咲夜の能力か…!
動けるのはオレだけだ。直ぐに美鈴と咲夜の間に割って入る。
「やめろ!」
「…退きなさい」
咲夜が呟くように言った瞬間、銀色の輝きが視界に飛び込んで来た。すんでのところでそれを叩き落とす。
それに動揺した素振りも見せず、咲夜は新たなナイフを構える。
クソっ!やっぱりこうなるのかよ!
オレは咲夜に飛び掛る。急な動きに対応しようとしたのか、咲夜は時止めを解除してからナイフを投げてきた。紙一重で躱すが、頬に刃物の冷たさを感じた。
「これはどういう事だ!」
オレが怒鳴ると、美鈴は我に返った様子で言った。
「妹様が暴走して…館内のみんなもおかしくなって…!」
「フランが?」
フランドール・スカーレット。この館の主であるレミリア・スカーレットの妹だが…そうか、フランなら真っ先に狂気に当てられてもおかしくない!
「レミリアさんもおかしくなっているんですか?」
鈴仙の問い掛けに答えたのは咲夜だった。
「お嬢様は地下牢に居るわ」
「閉じ込めたんですか!?従者が、主を…!」
妖夢が怒りの篭もった声で言う。咲夜はそれを「貴女には関係のない事よ」と受け流し、オレ達に敵意の籠った視線を向けた。
その時、
「なんの騒ぎかしら?」
当初の目的だった図書館から、パチュリー・ノーレッジと小悪魔が出て来た。
―どうする?ここに居る全員でこいつらを抑えるか?
オレが判断に迷っていると、それまで事態を静観していた永琳が口を開いた。
「優曇華、そして魂魄妖夢…貴女達はフランの元に行きなさい」
それからオレの方を見て、
「貴方は地下牢に行ってレミリアを助け出しなさい」
「でも師匠は……」
鈴仙を制し、永琳は余裕の表情で言った。
「私一人でも、三人の相手は出来るわ」
美鈴も口を挟む。
「出来れば私のことも忘れないで欲しいですけどね」
それでも鈴仙は逡巡していた様だったが、妖夢が「鈴仙さん。ここは任せましょう」と言うとやっと決心がついたのか頷いた。
「無銘さんも…」
「ああ、分かってる」
オレは永琳と美鈴を見る。
「…任せたぞ」
「早く行きなさい」
「ここは私達で抑えます!この紅美鈴、鼠一匹たりとも通しませんよ!」
オレは頷き、地下牢へ向かった。
後ろから聞こえてくる戦闘の音が、背中を押した。