魂魄妖夢と鈴仙・優曇華院・イナバは紅魔館の奥―レミリアの部屋へと向かっていた。
館内はがらんとしていた。窓からは紅い空が見え、それが不気味さを増長させている。
「妙ですね…」
妖夢が呟く。
「どうしたんですか?」
「紅魔館には妖精メイドが居る筈ですが…何処にも見当たりません」
確かに、それは鈴仙も気になっていた。普段の紅魔館には沢山の妖精メイドが居て、メイド長である咲夜の仕事をサポートしているのだが、今は影も形もない。
それに―。
「狂気が、濃い…」
鈴仙は紅魔館に入った時から、この場所に満ちる狂気の濃さに驚いていた。居るだけでおかしくなりそうな程の狂気…鈴仙だからこそ分かる事かもしれないが、それにしてもこれは異常だ。
自然と身体が震え出す。レミリアの部屋に近付くにつれ狂気が濃くなっていく。この先に、狂気に侵されたフランが居るのだろう。
「大丈夫ですか?」
妖夢が心配そうに訊いた。自分は顔に出る程怯えていたのか。
「……大丈夫です」
怖気を振り払い、前を見据える。
師匠である永琳が戦っているのだ。ここで立ち止まる訳にはいかない。
レミリアの部屋のドアは閉ざされていたが、鍵は掛かっていないようだ。
妖夢と頷き合い、勢い良くドアを開ける。
そこには―。
「アハッ!新しいおもちゃが来た…!」
狂気に侵された悪魔が、此方を見て残酷な笑みを浮かべていた。
*
途中で迷いかけながら、なんとか地下牢に辿り着いた。紅魔館にこんな所があったとは驚きだが今はそんな事を気にしている場合じゃない。
ズラリと並ぶ牢の一つに、レミリアが閉じ込められていた。オレに気付き、弱々しい声で言う。
「貴方は…?」
「外の世界の人間だ。紅魔館がおかしくなった事は把握してるからこの事態の原因を教えてくれ」
「フラン…フランドール・スカーレットよ」
やっぱりか…。
「どうしてかは分からないの。ただ急におかしくなって…」
レミリアによると、フランは突然狂気性を出して、それを咲夜やパチュリーがとめようとした。だが彼女達もフランに触れた瞬間まるで洗脳されたかのようにおかしくなり、レミリアに襲いかかった。レミリアはそのまま地下牢へ閉じ込められたという訳だった。
「でも、美鈴はおかしくなってなかったぞ?」
「えっ…」
レミリアは驚いた顔をした。
おそらくだが…門番の仕事で紅魔館の外にいた美鈴は洗脳されなかったのだろう。
「とりあえず…オレはフランを助ける」
「大丈夫なの?」
「まあ…なんとかなるだろ」
実際地霊殿の時もなんとかなったのだ。
しかし、レミリアは不安そうな顔をした。
「フランは…何かの力で強化されてるわ。私が手も足も出なかった位だもの。アレは…本当に禍々しいものだった…」
レミリアの肩は震えていた。それ程フランが強かったという事か。
「妖夢と鈴仙が戦ってる筈だが…」
オレが言うと、レミリアは慌てた様に、
「早くしないと手遅れになるかも…!」
何だと…!?
いやしかし、フランならやりかねない!
「玄関で戦闘してる奴らを助けに行ってくれ!オレはフランの所に行く!」
言って、オレは地下牢から飛び出した。
無事でいてくれ…!
*
走って、レミリアの部屋に辿り着いた。
ドアは開け放たれている。中に飛び込むと、何かに躓いた。
慌てて体制を建て直し、躓いた物を見る。
「……え」
…ボロボロになった妖夢と鈴仙が、床に転がっていた。