「妖夢!鈴仙!」
二人はボロ雑巾の様な有様でピクリとも動かない。一瞬ヒヤリとしたが、妖夢が小さな呻き声をあげたので少し安堵した。少なくとも死んではいない。
「アハハハハハハハハハハハハハハッ!」
狂った様な―否、狂った笑い声が部屋を満たす。
この事態を引き起こしたであろう張本人は、スペルカードを構えて楽しそうに叫んだ。
「また!またオモチャがキタ!あそべる!壊せる!」
完全にイカれている。オレは妖夢と鈴仙の前に立ち、フランを見据えた。
「死ね!死んじまえ!ぐちゃぐちゃのぼぎゃぶぎゃになって醜くえげつなく壊れちゃえ!」
禁弾「スターボウブレイク」
凄まじい密度の弾幕が襲いかかってきた。
「いきなりハードすぎるだろ!」
叫びながら、右腕を突き出す。
部屋中に弾幕が炸裂したがオレ達は無事だった。自分達の方へ来るものは全て右腕で打ち消したからだ。
「あれぇ?」
フランが首を傾げる。自分の攻撃が無効化された事に驚いている様だった。だがそれも一瞬の事で、すぐにニヤリと笑った。
「アハハ!お兄さん面白い!フランと遊ぼう!」
「言われなくてもそうするつもりだ!」
叫び、オレは駆け出した。
超高密度の弾幕を右手で殺しながら突進する。
今回ばかりは全力でやらないと死ぬ。だからオレは躊躇なくフランに拳をぶつけた。
華奢な身体が少しよろめく。然し直ぐに体勢を立て直し、また弾幕の嵐を放ってくる。
キリがない。このままじゃいつか殺される…右腕を振って弾幕をまとめて消し去りながら、忙しく頭を働かせる。
戦闘開始からまだ全然経っていない。だがオレは早くも息が上がり始めていた。体力はある方だとは自分でも思うが…フランの弾幕にそれ程神経をすり減らしているという事だ。
加えて、後ろにはまだ動けない妖夢と鈴仙も居るのだ。無意識に彼女達を守りながら戦う方法を採っていた為、スタミナの消費が思ったより激しい。
「ほらほら!まだ遊べるよね!」
一方のフランはまだ余裕そうだ。そもそも一発しか当てられていないので殆どダメージも無いだろうし、狂気に侵されておかしくなっているのだから多少の疲れなどものともしないだろう。
禁忌「カゴメカゴメ」
四方からの弾幕。範囲が広すぎて殺しきれない…!
「My body is made of steel!」
自分が頑丈になるという自己暗示の言葉を呟いた瞬間、全身に焼け付くような痛みが走った。
「があっ!」
「アハハ!凄い、壊れてない!」
「それでも身体は痛えよ畜生!」
何とか耐えたが、今の一撃はキツかった。あれをもう一発喰らったら持たないかもしれない。
「はああああっ!」
顔面へのストレート、脇腹への蹴り、アッパー…あらゆる手を使って攻撃するが相変わらず効いていない。それどころか所々でカウンターを入れられ、こっちが吹っ飛ばされた。
「いいね!最高だよッ!」
「クソっ!最悪だ!」
互いに叫ぶ。そこに込められてる感情は真逆だが。
禁忌「フォーオブアカインド」
フランが四人に分身した。一人でもキツいのに四倍…今日は絶対に厄日だ。
フランが嗤う。瞬間、部屋を埋め尽くす程の弾幕がオレを襲った。
*
「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「む、無銘さん!」
…フランの高笑いが響き渡る。
オレは、無様に地面に転がっていた。
何とか生きてはいたが、それだけだ。四倍の弾幕は凄まじかった。右手では殺しきれず、あちこちに火傷を負った。もう、立ち上がる気力すら無い。
「しっかりしてください!」
妖夢と鈴仙が駆け寄ってくる。よかった、動ける程まで回復したのか。
涙を浮かべる二人の顔が視界に映る。オレはそれ程酷い状態なのか?
そう思って口を開こうとした時、オレは殴られた様な衝撃を覚えた。
「あ…」
思わず呆けた様な声を出してしまう。
「無銘さん!?」
「……わかった」
「え?」
オレは言った。
「フランを元に戻す方法を…思いついた!」