「一美…お前だけは逃げろ。」
「お兄ちゃんは?」
「…お兄ちゃんは、大丈夫だから…」
待って、その一言すら言えず、お兄ちゃんは瓦礫の山の中に消えた。
今思えば、私も一緒に行くべきだった。そう後悔している。だから…だから…
「一美、大丈夫?」
「恵理…私は大丈夫。」
私は自室のベッドで寝ていた。その隣には私の少ない友人の1人、恵理の姿があった。
虎山恵理、彼女は私が通っていた高校のクラスの元学級委員長であり、2年生からは生徒会長として学校を支えてきた。
一年の頃、学校に行くのも一苦労だった私を支えてくれた1人だ。その時の話は…またそのうちに。
「はい、スープ。」
恵理が私にスープを差し出した。
「ありがとう。」
私はそれを手に取り、スプーンで掬い上げた。
あの日から数日経った。あの日、私が山中で意識を失っているところをレイと恵理が助けてくれた。特に怪我をした訳ではないが、あの日以降、重りがのし掛かったかの様に身体が重い。そんな私を恵理は看病してくれた。
「じゃあ、ゆっくり食べて、しっかり寝てね。」
恵理は扉を閉め、一階に戻った。
「恵理…一美の様子は?」
恵理が廊下に出ると、レイの姿があった。
「うん、とりあえず食事が喉を通るぐらいには大丈夫。」
恵理は下に降りようとレイの左を通った。
すると、レイが声を出した。
「恵理は…大丈夫なの?」
恵理は足を止めた。その顔には少し暗がりがあったが、レイには見えていない。
「愛理さんと悠紀ちゃんの事、やっぱりまだ引きずってるよね…」
レイの言葉にはいつも以上に力が入っていた。
「…」
「いつも無理して明るく振る舞わないで。僕は君の事が心配だ。相談したい事が有ればいつでも…」
「レイ君」
レイの言葉を恵理は遮った。恵理は振り向き、笑顔で言った。
「私は大丈夫だから、レイ君は心配しなくていいよ。」
そういうと恵理は階段を降りていった。
「嘘だ…絶対に隠してる。」
レイの目には恵理が話してくれない事の悲しさと頼りない自分への悔しさが滲み出ていた。
「そんな事実、初めて知った。」
東雲早苗は、北川光司から渡された資料を見て、驚きの目をしていた。
「その割には顔には出ないんだな。」
光司が早苗を茶化した。
「私は顔に出にくい方でな。」
2人が見ていた資料、その題目は
[清宮一美の経歴]
「まさか、清宮一美が………なんてな。」
光司が言い放った。
「だが、そんな事が今の科学力でできるのか?」
「さぁ、白夜の事だ。それぐらいの力を身につけていてもおかしくないだろ。」
「だが、白夜総三は死んだはず……まさか!?」
早苗の脳に電撃の様な物が流れ込み、一つの結論を導き出した。
「そのまさかさ。白夜総三は、なんらかの形でまだ生きている。」
光司は薄気味悪い笑みを浮かべた。そして、ベルトを手に取り、扉の持ち手を持った。
「どこへ行く?」
早苗が聞いた。
「ちょっとそこまで」
そういうと、光司は部屋を後にした。
居間では恵理とレイがコーヒーを嗜んでいた。
レイは、角砂糖一個とミルクを少々入ったものを、恵理はブラックだ。
レイはどこか哀しそうな目で恵理を見ながらコーヒーをゴクリと飲み干した。
それから数刻後、拠点の上方から何かが降りた音がした。
「なんだ?」
レイが上を見た。
「もしかして、一美に何かあったんじゃ…?」
恵理は立ち上がるとすぐさま2階に上がった。
その直後、居間の窓ガラスをぶち破り、ホッパーの大群が現れた。
「なんでここにコイツらが!」
レイはベルトを巻き、ウェザーに変身した。
「変身!」[open!][WHETHER!]
剣を取り出し、迫り来るホッパーに突き出した。
同じ時、2階に上がった恵理は身構えた。ホッパーの大群が2階の廊下を埋め尽くしていたのだ。
急ぎ一美のいる部屋の扉を開けると、一美は既にエレクスに変身した状態でホッパーと戦闘していた。扉を開けると廊下にいたホッパーが次々とエレクスの元に向かっていた。
「まさか…一美が狙い…?」
恵理はベルトを巻いた。
そして、白銀のキー、バイフーキーを構えた。
「変身!!」
[BAIHU key!][open!][Fight master!KAMEN RIDER BAIHU!]
恵理は、白銀の拳闘士、仮面ライダーバイフーにその身を変えた。
「はあっ!」
バイフーの拳がホッパーを一気に2体貫いた。
「恵理、ここでは不利だ。外に!」
「分かった!」
その声と共に、エレクスとバイフーは外へ飛び出した。
更に、ウェザーも遅れた外に脱出、3人は円陣を組むように並んだ。
ホッパーはそれを囲むように立ち塞がった。
「囲まれた!」
レイが言った。
「落ち着いて、ここは私に任せて!」
バイフーは深紅のキーを装填した。
[Fire key!]
すると、地中から火柱が上がり、ホッパーを次々と焼き尽くした。
「おお…」
エレクスは火柱を見上げ、驚いていた。
「流石はバイフー。格闘と炎の戦士なだけある。」
「…誰?」
声のした方を見ると、北川光司がいた。その腰には紅のバックルが巻かれ、手にはクリアブルーのキーを持っていた。
「えっと…北川光司?」
エレクスが聞いた。
「そうさ、この僕が北川光司、絶対的烈王…又の名を、仮面ライダー絶王さ。」
[絶王ノ鍵…][施錠…]
ガイダンス音と共に、氷の牢獄が現れた。その牢獄は光司を飲み込んだ。
「変身…」
その声と共に、牢獄は蒼の槍で貫かれ、砕けた。
[絶対的烈王…仮面ライダー絶王…]
氷のような鋭い紫色の眼を持つ仮面ライダー絶王が君臨した。
「地獄から、御迎えさ…」
絶王は絶対烈槍と呼ばれる槍を構えた。
「一美が目的?」
バイフーが聞いた。
「そこまで読んでるとは、頭が冴えてるね。」
絶王は走り出した。
「絶対に殺させない!」
[Re open!][Frame burst!]
バイフーはキーを回し、炎のライダーパンチを放った。
その拳は、絶王の胸部に命中、炎が燃え広がった。
が、その攻撃が絶王に効いた様子は一切ない。むしろ、自身の氷で炎を消し、左手でバイフーの拳を振り払った。
「恵理!」」
ウェザーとエレクスがバイフーの元に駆け寄ろうとするが、ホッパー達が行方を阻んだ。
「バイフー、まさかこれで終わりな訳ないよな?」
絶王はキーを回した。
[再施錠…][絶王氷槍!]
絶王は、槍を地面に突き刺し、氷柱をバイフーに喰らわせた。
「恵理!!」
レイが叫んだ。
「本当に終わっちゃったよ…」
絶王は槍を振り払った。その時、氷柱が溶け、バイフーが姿を現した。バイフーの身体は白銀ではなく、黄金に輝いていた。
「これで終わりなんて、私は言ってないわ。」
数秒前、バイフーは氷柱が突き刺さると同時にあるキーを装填した。
「その光、まさか!」
「そう、これは康介が使おうとしたキー、スペシャルキーの力よ。」
バイフーはウィングを広げると、空へと高く飛び上がった。
[Re open!][BAIHU burst SP!]
炎のドロップキックが絶王に迫った。絶王は氷の盾を作り、これを防ごうとした。
「はあっ!!」
バイフーは更に威力を高め、絶王と激突、絶王は一時押されかけたが、それをすぐさま弾き返した。
「ぐはっ!!」
バイフーは恵理の姿に戻ってしまった。
「恵理!」
ウェザーが駆け寄った。
「恵理!しっかり!」
ウェザーは恵理の身体を起こした。幸い、ベルトは破壊されておらず、息もあった。
「レイ、ここは私に任せて、」
エレクスがウェザーに言った。
「でも…身体がまだ…」
「それなら…今は大丈夫。さ、早く!」
その声をレイは信じ、恵理を連れて逃げた。
「一対一か…楽しみだね…」
絶王が言った。
「そうね。」
一美の手には、あの時拾った青のカードキーが握られていた。
「私の友達を傷つけるやつは…許さない!」
エレクスはカードキーをベルトにスラッシュさせた。
[Sapphire key!][open!]
[Blue flame!Brave fire!KAMEN RIDER Sapphire ERE-X!]
エレクスの身体が蒼炎のように燃え上がり、炎の勇者の鎧に身を包んだ。仮面ライダーサファイアエレクスの爆誕だ。
「…サファイアキー…君が持っていたのか…」
「…私のプレイにシビレなさい!」