仮面ライダーWAR-Z[ウォーズ]   作:津上幻夢

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これは、俺が高校一年生になった時の記憶…それをここに記す。


第※章 歩み寄る、2人
記憶1 別に、気にしてないよ


「山田康介!」

 

 

俺の名が呼ばれた。

 

 

厳粛な雰囲気の会場に俺の返事が響く。

 

 

 

 

その日の空は、花曇りだった。太陽の光は、弱く儚いものに見えた。ただ、弱く儚くても手に入れたい。そう感じた入学式。

 

 

その日の帰り、母さんが、学校近くのコンビニに車を止めて待っていた。

その車の助手席の窓をノックすると、母さんはドアのロックを解除し、俺を招き入れた。

 

「ごめんなさい、今日行かなくて。」

 

それが第一声だった。

 

「別に、気にしてないよ。」

 

俺は、そう返した。

 

ドアを閉め、シートベルトを装着するのを確認すると、車はゆっくりと走り出した。

 

 

ふと、窓の外を見ると、皆、笑顔で家族と接していた。

 

それを一瞬羨ましいと思ってしまった。

 

「学校、馴染めそう?」

 

母さんは徐に聞く。

 

「…多分。」

 

正直、自信がない。いくら同じクラスに知り合いが居ても、そう思ってしまう。

 

「…そっか。」

 

車は、桜並木を通り過ぎていく。

 

 

俺が再び外を見ると、俺と同じ学校の制服を着た女の子が、1人歩く姿がこの目ではっきりと映った。

 

女の子は、しっかりと手入れされた長髪で綺麗な肌色をしていた。だが、それなのに暗く感じた。

 

俺は彼女と一瞬目が合ったような気がした。

 

 

しかし、それよりも早く車は進んで行った。

 

 

 

 

翌日から早速授業があった。とは言っても、学生としての心構えだとか、生活の仕方、授業に必要なものの確認などほとんど楽なものばかり。非常に退屈だったが、昼になる前に一つある事に気がついた。

 

何かと言うと、昨日、桜並木で見かけた彼女が同じクラスにいるのだ。正直、全く記憶になかった。いくら昨日入学して、初めて会ったとはいえ、あのような雰囲気の人に気がつかないわけがない。

まぁ、だからと言って、声を掛けようとは思わなかった。というより、掛けれなかった。

 

 

「山田、飯食おうぜ。」

 

1人の少年が俺の目の前に椅子を置いて弁当を広げた。

 

「ああ、鮫島か。分かった。」

 

鮫島拓真、この学校に来てから最初に出来た話し相手…というか、今は彼しかいない…

 

鮫島とは、入学式前に少し世間話をした程度だ。その後、再び顔を合わせた時は同じクラスの人間だった…というだけだ。

 

俺も弁当を広げた。中身はおにぎり3つとたくあんと唐揚げ。いつもと同じだ。

 

「そんな簡素なもので午後持つのか?」

 

鮫島は不思議そうに聞く。彼の弁当は2段弁当で1段目には白米がびっしりと、2段目には色とりどりのおかずが隙間なく敷き詰められていた。

 

「これで充分。というか、これ以上腹に入らない。」

 

俺はふと彼女の席の方を見た。しかし、そこに彼女の姿はない。周りを見渡してもどこにも居なかった。

 

「どうした?」

 

「ん、なんでもない。」

 

俺は、おにぎりを一つ手に取った。

 

 

 

 

 

放課後、俺は筆箱をしまい、帰る準備をしようとした。

 

「康介!」

 

その時、後ろから女の声が俺を呼んだ。

 

「恵理、なんだ?」

 

後ろにいたのは虎山恵理、小学校の時からの同級生だ。同じクラスだ。更にその後ろには気弱そうな男がいた。名前は確か、足立レイと言ったな。もう仲良くなっているのか。

 

「いや、大丈夫かなぁって。康介、積極的に人と関わらないからさ、あの時と同じように孤立してないかなぁって。」

 

あの時…俺が思い出したくない事。独りで…怖かった時。

 

「…もう、あの時の俺とは違う。別に、話し相手ぐらいはいる。心配しなくていい。」

 

「そう…ならよかった。」

 

恵理は、その可愛らしい顔に笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、私、この後学級委員長としての仕事があって、まだ残らなきゃいけないから、先帰ってていいよ。」

 

「分かりました。学級委員長さん、お仕事頑張ってくださいね。」

 

俺はそう彼女の肩を軽く叩いた。

 

 

俺にとって恵理は、ありのままの自分を出せる人だ。

何か大きな理由があるわけじゃない。ただ、一緒にいて楽だから。

 

彼女は、表裏のない人間だと、俺は思う。彼女の全てを見ているわけじゃないから本当にそうなのかはわからないけど。

 

 

俺は教室を後にした。

廊下には沢山の生徒が早速作った友人と並んでお喋りをしていた。その森を俺は掻い潜るように抜けていく。

 

俺にとって、人混みは、夜の森と同じだ。入るのを戸惑うくらい嫌いだ。喋り声や笑い声が、自分に対して向けられているのではと思ってしまい怖くなる。俺が人と積極的に関わらないのもそれが原因だ。相手は俺のことを蔑んでいるのでは…俺のことを『怪物の子供』と思っているのでは、そう錯覚してしまう。もちろん、そんな事は一切ないだろうけど、はっきりと言えるわけでもない、自信がない。

 

 

 

俺が下駄箱に着くと、丁度暗い感じの女が丁度外靴を出したところだった。

俺も下駄箱から靴を取り出そうとした時、たまたま目が遭ってしまった。

 

どうしよう…そう思った。とりあえず、俺は軽く会釈をしてみた。

 

しかし、彼女は、何か怯えるように無視して去ってしまった。

 

「はぁ…俺、初日で早速嫌われているのか…」

 

そう独り言を呟き、靴を取り出した。

 

ふと、彼女の下駄箱が見えた。そこには彼女の名前が書かれた名札があった。そこにあった名前は「清宮一美」だった。

 

 

 

 

 

 

それから一美とは特に進展はなく気がつけば4月も終わりに近づいていた。ただ、彼女は、身体が弱いのか、1週間に1日2日ぐらい欠席、早退をしてしまう。

 

その日も彼女の姿は学校になかった。明日からゴールデンウィークだからか、皆浮かれていた。

 

今日も何事もなく過ごし、帰ろうとしたその時、恵理に呼び止められた。

 

「康介、ちょっといい?」

 

「ああ、なに?」

 

「あのさ、康介と会わせたい人が居るんだけど、会ってくれる?」

 

意外な頼み事だった。今までこんな事は一度もなかった。

 

「いいけど、誰?」

 

俺は聞いた。率直に誰か気になった。一体誰なのだろう。

恵理は会えば分かるといい、自転車で俺と一緒に学校を出た。

 

 

学校から程近いところ、あの桜並木沿いにある一つの店に着いた。

 

店名は『ベーカリー清宮』

 

その名前で、俺はなんとなく誰か分かった。

 

 

その店に入ると恵理はカウンターにいた40代くらいの女の人に声をかけた。

 

その女の人は、恵理と俺を家の中に招き入れた。

 

「もう、誰か分かったよね。」

 

恵理が聞く。

 

「ああ、同じクラスの清宮一美、だろ?」

 

「うん。」

 

 

恵理は、家の階段を登り、3階まで登った。その間、俺に事情を説明した。

 

「実は清宮さん、入学以前に康介に会ったことあるかも知れないって、言ってたの。」

 

 

「俺に?」

 

俺と一美が?そんなわけないだろ。

 

「人違いじゃないのか?」

 

「私には分からない。とにかく、会ってみて欲しいの。」

 

「…分かった。」

 

気がつけば、彼女の部屋の前に立っていた。

 

「清宮さん、恵理だよ。」

 

彼女はノックした。すると、扉がゆっくりと開けられた。

 

「清宮さん、今日も会いにきたよ。後、康介も一緒だよ。」

 

俺はあの時と同じように軽く会釈した。

 

彼女は俺達を部屋へ招き入れた。

 

彼女の部屋は、非常にシンプルだった。白い壁に、ピンク色のカバーが敷いてあるベット、小さめなサイズのテレビが一台、テレビ台の中にはゲーム機らしきものが2、3見えた。窓から朗らかな日差しが差し込んでいた。

 

「とりあえず、座って。」

 

それが俺が覚えている限りでは初めて聞く彼女の声だ。

 

俺と恵理は、ベージュ色のカーペットの上に座った。

 

「清宮さん、着いて早々あれだけど、トイレ借りてもいい?」

 

「うん、いいよ。場所は分かるよね?」

 

彼女の声は、綺麗だった。けど、元気な声ではなかった。

 

恵理は一旦席を外した。

 

しばらく沈黙が流れた。

 

何を話すべきか、そもそも男女2人きりなんて恵理としか経験のない自分からしたらかなり緊張する。

 

そう考えていると、彼女は口を開いた。

 

「その…この前はごめんなさい。」

 

この前、恐らくあの下駄箱での事だろう。彼女は続けて口を開く。

 

「別に、山田君の事が嫌いとか、そういうわけじゃなくて…ただ、怖くて…」

 

「その、私、人と目を合わせたり、あいさつしたりするのが苦手で…だから…とにかく、ごめんなさい。」

 

彼女は震える声で言った。

 

「…そうなんだ。じゃあ、俺がなんかした訳じゃないんだね。」

 

彼女はうんと頷いた。

 

「いや、俺何か気に触る事してしまったかな…って思ってて。清宮さんの思いを聞けてよかった。」

 

 

俺はしばらく間を置くと、聞きたかったことを切り出した。

 

「その、恵理から聞いたんだけど、清宮さん、俺と前に会った事あるって言ってたみたいだけど…」

 

俺が言い切る前に彼女の口が開いた。

 

「あっ…その事なんですけど…」

 

俺は黙って彼女をみた。

 

「多分、勘違いです…その、山田君と同じような雰囲気のおじさんと子供の頃会った事があって…でも、苗字が違うから親族でもないだろうし…」

 

「そうなんだ。」

 

 

その時、恵理が部屋に入ってきた。

 

それから、恵理がする世間話を俺はただ聞いてるだけだった。一美も、正直退屈そうにしていた。

 

帰り間際、恵理は、「学校で待ってるね」と言った。

 

俺も「今日はありがとう。」といい、部屋を後にした。

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