仮面ライダーWAR-Z[ウォーズ]   作:津上幻夢

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記憶3 だって…私達友達でしょ?

「あっ…雨…」

 

私が教室から窓の外を見ると、雨が降り始めた。

 

 

「そういえば、もう梅雨の季節だからね…」

 

窓際にもたれ掛かりながら、茶髪ロングの女、不知火香が言った。

 

「そういえばイチミン、学校近くのゲーセンに新しいマシンが導入されたって知ってるか?」

 

彼女は私をみた。ちなみに、何故イチミンかと言うと、彼女が初めて私を呼んだ時、『イチミ』と呼んだからだ…いくら私でもそんな読み方はしない…

 

 

「そうなんだ…どんなの?」

 

 

私はあの日から1ヶ月、全く休んでいない。なんというか、気が楽になったというか、背負いこんでいたものが軽くなったというか…。それに合わせて長く伸びた髪を短く切り、ショートヘアにした。だが、それと同時に彼がどんどん遠くに感じた。

 

彼ー山田康介とはあれ以降話さなくなった。

 

 

『俺、応援するよ。』

 

そう言ってくれた日の翌日から、避けられている…そんな気がした。

 

 

「おーい、イチミン。意識がバーチャルに飛んだか?」

 

私が思考から現世に戻ると、香が私の顔をマジマジと見ていた。

 

「バーチャルって、VRじゃないんだからー」

 

 

 

 

それから更に数週間後、期末テスト最終日放課後…

 

「イチミン、今日放課後ゲーセン行くか?」

 

「うん、行こうか、カオリン。でもその前に昼飯食べよ?」

 

「そだな…マックにする?」

 

マック…『マック・ドーナットル・バーガー』の略、決してマク○ナル○ではない。

 

「うーん、昨日も食べたしな…他のものがいいな…」

 

 

私はふと康介の席を見た。しかし、そこにはもう彼の姿はなかった…

また聞けなかった…そう思った。

 

 

「ねぇハヤナエ!なんか美味しい店知らない?」

 

 

香は机に座って帰る支度をしている東雲早苗に言った。

 

 

「私をハヤナエなんて呼ぶな!早苗!さ・な・え!」

 

早苗は怒りの形相でこちらを見た。

 

「そうかっかしなさんなって、ハヤナエ!」

 

香は早苗の肩に両手をついた。

 

「だ…か…ら!」

 

「早苗さん…怒らない怒らない…」

 

私は早苗を宥めたが、彼女は聞く耳持たずだった。

 

 

 

 

結局私達はマックで昼食を取る事にした。

 

「何で私まで…」

 

早苗は不機嫌そうだったが、香はそんな事気にせずダブルバーガーを頬張っていた。

 

「ハヤナエも今日ゲーセン行くだろ?」

 

「行きたいのは山々今月出るソフトの為に貯金しなきゃいけないのにゲーセンなんて行けるわけないじゃん。」

 

「着いてくるだけでいいから〜」

 

香は早苗に抱きついた。

 

早苗はまた怒ると思ったが、フフッと笑った。

 

「しょうがないな…」

 

私は、この瞬間に幸せを感じた。家族が居なくても…人は幸せになれると…誰かが側に居てくれるだけで、見方が変わるって…

 

「どうした?そんな笑って?」

 

「そんなに可笑しい?」

 

2人が私を見ていた。どうやら無意識のうちに笑っていたみたいだ。

 

「そんな事ないよ、ただ、こんな私にも友達が居て、幸せだなぁって。」

 

「なんだ、そんなことか。私達、前から友達だろ?」

 

香が微笑んだ。

 

「まぁ、人の名前を覚えられない人は置いといて、私の事を友達だと思ってもらえるのは嬉しいね。」

 

早苗は香をチラッと見ながら言った。

 

「それは心外だな…」

 

 

 

 

 

そこから更に3週間経過し、とうとう終業式当日になってしまった。

 

その日も、彼は足早に帰ろうとしていた。

 

「イチミン、今日も…」

 

「カオリン、先行ってて。ちょっと用事があるから。

 

「あっ、ああ…分かった。」

 

香は拍子抜けした顔をしていたが、そんな事を気にせず、康介の席の前に立った。

 

「ねぇ…ちょっといい?」

 

康介は、顔を上げた。

 

しかし、すぐにその顔を背け、走って教室を出た。

 

「あっ、ちょっと!」

 

 

私もすぐさま追いかけようと教室を出た。

 

 

 

 

 

何で…寄ってくるんだよ…

 

せっかく…避けているのに。

 

俺は、彼女に最低な事をした…だから…近くにいちゃ行けないんだ!

 

俺は、自転車に跨り、急発進した。

 

その様子を一美が見ている事に気がついたが、そんな事どうでもよかった。

 

 

 

ただひたすら走った。とにかく離れようと…近づかれないように…

 

 

気がついたら、家に着いていた。俺はすぐさま家の中に入り、部屋のカーテンを閉めた。

 

 

 

「はぁ…はぁ…。逃げられた…」

 

私は、また逃してしまった…

 

「どうしたの、一美?」

 

私が息切れしているのを見た恵理が寄ってきた。

 

 

 

「そうなんだ…」

 

私は恵理ととりあえず食事を取る事にした。

 

近くの喫茶店に入り、対面で座った。

 

私は今までの康介との事を話した。

 

「私、嫌われるような事、したかな…」

 

「…ねぇ、貴女のご家族が亡くなられた理由ってなんなの?」

 

恵理は、何かピンと来たのか、私に聞いてきた。

 

「…アトランティス消失の時に…」

 

私はそう口にすると、恵理は「そう言うことか…」と言った。

 

「どう言うこと?」

 

恵理は、顔を近づけた。

 

「あまり大きな声では話せないこと。他言無用で。」

 

恵理は一瞬躊躇おうとした。が、覚悟を決め、私の耳に小さな声で言った。

 

「康介は…そのアトランティス消失に大きく関わったとされる科学者の子どもなのよ。」

 

「えっ?」

 

驚きだった…そんな事、初めて聞いた…

 

「白夜総三、それが父親の名前。当時ニュースでも大きく取り上げられた。彼がやったなんて決まってないのに、報道陣はあたかも彼の父が全てやったかのように報道、それが彼を苦しめたのよ。」

 

白夜総三、私も聞き覚えがあった。確か、家族の葬式の時も、「全て白夜総三のせいだ」と言っている人が居たような気がする。

 

「もしかしたら、貴女の家族がアトランティス消失で死んだ事を何かで察して、一緒に居られなくなったのかもしれない…」

 

「でも…それは山田君の責任じゃないじゃん!なんで…」

 

「『蛙の子は蛙』その言葉通り、康介も父親と同じようになるのではと周りの誰しもが思ったから…だから、寄ってたかって康介を陥れた。そのせいで、彼は責任は全て自分にある、そう思ったんだと思う。」

 

 

そんな…私があの事話したから…康介を苦しめる事に…

 

「私ったら…最低ね。人のこと、知らないのに自分の事ベラベラ喋って傷つけるなんて…」

 

私は下を向いた。

 

「そんな事ないよ…」

 

恵理はそう口を開いた。

 

「康介も、一美も悪くない。悪いのは、彼を拒絶した現実よ。間違いかもしれない事を本当の事にすり替え、人を騙し傷つける世の中が…」

 

「…そうかもしれない…。

 

「今、貴女がするべきは誤解を解く事、そうしないと、康介はこのまま苦しんだまま過ごす事になる…」

 

恵理は私の目を見て言った。

 

「もし、康介の事を想っているなら…側に居たいって想ったなら、行くべきよ!」

 

恵理は私の心に訴えるように言った。

 

「…分かった。やってみるよ。」

 

私は立ち上がり、店を出た。そして彼の家がある方面へ足を進めた。

 

 

 

俺はふと、カーテン越しに外を見た。

 

すると、一美が俺の家の目の前にいる事に気がついた。

 

「なんでいるんだよ!」

 

 

それからすぐインターホンの音が鳴った。

 

俺は玄関に近づいた。

 

外から一美の声が聞こえた。

 

「康介…お願い、少しだけでいいから、話を聞いて欲しいの。だから開けて!」

 

俺は正直放っておこうと思った。が、身体が勝手に動き、扉の鍵を開けてしまった。

 

それと同時に扉が勢いよく開かれた。

 

「よかった…居てくれて。」

 

一美は安堵の表情を浮かべた。

 

「なんで…なんで来たんだよ!」

 

「だって…私達友達でしょ?」

 

友達…俺とお前では友達になんてならない。

 

「俺はなれない…お前の…大切な家族を奪った…そんな奴の子どもと馴れ合おうとしないでくれ!!」

 

俺は自分の部屋に戻ろうとした。

 

しかし、それを一美は止めた。

 

「私は…そんな事思ってない!私は、親がどうだったから子どもも同じだなんて思わない!親同士で何かあって交わらないとしても、子どもまでそれが一緒だなんて思わない!!」

 

一美は俺の手を握った。

 

「離せ!!」

 

俺は必死に振り払おうとした。

 

「絶対に離さない!」

 

「なんで俺に構うんだ!」

 

「側に居たいと思ったから!一緒に居て欲しいって想ったから!!」

 

 

一美は強く手を握りしめた。

 

 

「康介のお父さんのことなんかどうでもいい!ただ、側に居て欲しいのよ!!」

 

 

「でも、その運命は変えられない!」

 

 

「過去の運命は変えられない…でも、これからの運命は変えられるはず!この手で!」

 

 

 

「一美…」

 

一美は、俺の顔に近づき、訴えるような顔をしていた。

 

 

しばらくすると、一美は突然俺を引き剥がした。

 

「はっ、ごめん!いつのまに!」

 

「一美…ありがとう。こんな俺を必要としてくれて。」

 

「康介…」

 

一美は、泣きそうな顔で笑った。

 

俺も正直、泣きそうだった。初めて俺を必要とされた気がして。

 

「ごめん…心配させて。」

 

「そんな事ない、こっちこそ…」

 

 

 

 

「とりあえず、一つ気になったこと聞いていいか?」

 

 

 

 

「何?」

 

 

 

「さっきの『側に居て欲しい』ってどう解釈すれば良いの?」

 

 

 

一美は先程の事を思い出したのか、顔を赤く染めた。

 

 

 

「そのことは忘れて!!」

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