その暗闇に、2人の使者が帰還した。
気を失っている西本鷲花は、南条翔に抱え上げられている。
彼は、彼女をその闇に置かれているソファに優しく下ろした。
「…あいつら、ここまでやるとはな。こっちも準備が必要だな。」
[それなら全て用意してある。]
その時、男の声が部屋に鳴り響く。
翔は、辺りを見回す。その声の主を探す。
彼はその声の主を知っている。彼らに数々の指令を出すもの…そして、彼らをここまで育て上げた
「どう言うことだ?」
翔は、どこから発せられるか分からない声に問いかける。
[
翔は、息を呑んだ。重い間が少し置かれた後、声の主は口を開いた。
[その錠前で、彼らを闇に消し去れ。そして、その眼を二度と開かせないようにするのだ!]
普段は力強い言葉を発しない主の気迫に、翔は一瞬揺らいだ。
そして、机の上にあるバックルと同じくらいの大きさをした錠前を手にした。
[あの男は、この世界の破壊を目論んでいる。時間は短い。体力が回復後、直ちに出撃しろ。]
暗黒の玉座に、主は座っていた。
大理石のようなものでできた氷のような玉座は、暗闇の中に冷たい光を放っている。
主は、立ち上がった。
その主は、人ではない。むしろ、ホッパーに近いが、ウォーズの前に幾度となく現れるような個体とは明らかに異なる見た目をしていた。
不気味に隆起する身体。頭から天にかけて伸びる触覚。
「総三、お前の計画は、再び全てを滅ぼす。」
そう呟くと、どこが地面か分からない床を力強く歩み始めた。
翔は、鷲花が目覚めた後、先程の指令をそっくりそのまま話す。最初は喋り方も真似ていたが、彼女に即却下された。
「と言うわけだ。」
彼女はしばらくその錠前を眺めていた。
「この錠前、誰が持ってきたのだろうか。」
「あのお方じゃないのか?」
彼は、なんの突っかかりもなく聞く。
「彼はここに居ない筈。もっといえば、移動手段を持っていない筈…」
彼女は、錠前を手に取った。
「つまり、私達も知らないもう1人の使者がいる。」
「そう言う事なんだろうな。」
2人は顔を合わせた。
選ばれし者達、彼らはあの事件で生き残った。
彼らは、あの事件の中で選ばれた…
家族を失い、露頭に迷っていた彼らに主は手を差し伸べた。
その手を取った時は、温かく、優しいものだったのかもしれない。
ただ、今も同じように主の手を取ったとしても、彼らは同じようには思わないだろう…恐らくは。