「道永、本当にいいんだね?」
康介達が眠りについた頃、総三は道永を呼び出した。
「はい、覚悟はできいています。」
道永は、キリッとした目で総三を見た。
「分かった。なら、明日の深夜決行だ。」
「父さん、俺たちを呼び出してなんだよ?」
翌朝、康介達は総三に呼び出されて、いつもの研究室にいた。
「率直に言う。君達のキーを渡して欲しい。」
「なんでだ?これが無くなったら俺たちは変身できない。」
昭彦が初めに口を開いた。
「何故ですか?総三さん。」
一美は総三に聞いた。
「康介にこの前渡したオーバーユニッター。あれは今夜の為の実験だった。」
「実験?」
総三は続けて言葉を発した。
「キーを一度に複数を同時発動させ、威力を高めるという実験だ。結果、それは成功した。」
すると、後ろに立っていた道永が腕に付けれるくらいの大きさの装置を出した。
そこには50もの鍵穴がある。恐らくそこにライダーチェンジキーやスタイルチェンジキーを装填するのだろう。
「今まで君達は沢山のライダー達を倒した。それにより26人のライダーチェンジキーとそのスタイルチェンジキーが全てここに揃っている。そのキーの力を全て発動させ、この世界を破壊する。」
「だろう私達のキーが必要という訳なのね。」
香が納得した表情で言う。
「なら、一つ聞いてもいいか?」
康介が父親を見る。
「なんでも答えよう。」
「あいつらは一体なんなんだ。早苗や南条達は俺達をこの世界に封じ込めて何をしようとしている?」
総三はその事か…と椅子に腰掛けた。
「最初に言っておく。私は全て知っているわけではない。あくまで、全てが本当かは分からない。本人に聞くしかない。」
「ユートピア…それが彼らが属する組織の名だ。ユートピアは元々我々とは別の科学者達の集団で、アトランティスにも関わっていた組織の一つ。私の実験室にも1人交換研究員として所属していた。」
「そんな組織、聞いたことない。」
康介が言った。
「ユートピアは、アトランティスの事件の後、表舞台から姿を消したからな。彼らは、アトランティスが消えてから10年、ある実験をひたすら続けていた。人体改造と人造生物だ。」
「人体改造…」
一美が呟く。
「それも、本格的なもので、人体改造の成功例が悪道、絶王、豪災、怪駕の4人、人造生物がホッパーとダークホッパーだ。現に、悪道達は本来人間では使えないサバイブバックル-αを使い、更には異形の姿に変身する。ホッパー達も飛蝗に似てはいるが、どの生態系にも属さない。」
「そんなものが現実にあるなんて…」
香は静かに驚いた。
「そして、君達はその実験の新たな素材にされる。ここで戦わせて勝ち残った者に力を与え、最強の生物を作り世界を支配する。私が分かるのはここまでだ。」
「俺達をそんな風に利用しやがって。」
昭彦は机を殴った。
「俺達はその実験を阻止する為、この世界に入り、ウォーズとエレクスを君達に託したと言うわけだ。全ライダーのキーを集める為に。」
道永は補足説明をした。
「分かった。私、これを託します。」
最初にキーを出したのは一美だ。
私もと次に香がキーを差し出し、それに釣られて昭彦も出した。
残るは康介だ。
「もし…世界を破壊して元の世界に戻ったらどうなる?」
康介にとって、そこが肝心だった。
「君達は元の生活に戻れるが、今まで死んでいった者たちは…」
総三はそう濁すように言った。
「…少し考えさせてくれ。」
康介は、その場を後にした。
『…もう無理そうだ…お前にこれを渡す…』
『これで…あの時の借りは返せた…ね、』
『…私も、康介の道に付き合わせてくれ。美叶のために…私も生き残る。』
『…そんな事ないよ、ただ…放っておかなかっただけ…』
康介の脳裏には、鮫島拓真、足立レイ、八代忍、虎山恵理の顔が浮かんでいた。
彼らは皆、康介に力を託して消えていった。
想いと共に…
「俺は、お前達を救えないのか…」
その時、後ろから一美が歩いてくるのが見えた。
「康介、また一人で抱え込んでる。」
一美は康介の隣に並んだ。
「ほら、顔が強張ってる。」
そう言って彼女は左人差し指で康介の頬を上に持ち上げようと…笑わせようとする。
だが、康介は、自然に笑った。
「そうだったな。」
「一つ聞いてくれないか?」
康介は聞く。
「いいよ。」
一美は頷く。
「俺、沢山のライダー達を…クラスメイト達を犠牲にしてここまで来た。己の為に。そんな俺が元の生活をしていいのかって、思う。」
彼は今まで沢山の死を見てきた。自分の知らないところで、自分を庇って、自分の意志に反して、自分を助ける為に、時には自分の意志で殺したこともある。逆にそう思わない方が不自然だ。
「私が彼らだったら、康介には生きて欲しいって思う。自分を犠牲にしたんだから、その分生きろって。」
彼は沢山の犠牲を出した。だが、それと同時に強さを得た。初めよりもずっと強く逞しいものだ。彼には生きる義務がある。彼らの分まで…
「父さん、キーを託すよ。」
覚悟を決めた康介は、ウォーズキー含めた全てのライダーチェンジキーとスタイルチェンジキーを差し出した。
「ありがとう、康介。ここまでよくここまで頑張った。もう、苦労しなくていい。」
総三は、彼の頭を撫でた。
「じゃあ、一美。俺は準備があるから。」
道永は一美に言った。
「うん、頑張ってね。」
一美は笑顔で彼を送り出した。
康介と一美が部屋に戻った頃には空は暗くなっていた。
昭彦と香は同じベッドに座り、それぞれ読書とゲームをしていた。
「キーを渡したのか?」
昭彦が俺に聞いた。
「ああ。」
俺はそう簡単に返し、布団に潜った。
康介の脳にある姿がぼんやり浮かび上がった。
それは前回の戦闘だ。ウォーズスペシャルがオーバーユニッターを使い複数キーの力を同時発動させて放った。
「…あの時、かなりの負荷があったな…」
その時、康介はある事に気がつく。
〜誰が世界を破壊する力を発動させるのか〜
「まさか!」
康介は布団から飛び起きた。
その様子に3人は驚いた。
「どうしたの?」
一美は聞いたが、康介はそれよりも早く『道永』の元に向かわねばと扉を勢いよく開けようとした。が…
「開かない…」
康介は何度も何度も開けようとノブを引いたり押したりするが開く気配は一向にない。
「どうかしたのか?」
昭彦が彼を見た。
「くそっ!!扉が開かない!」
その時、部屋の誰もが、驚きの表情になった。
「でも、世界が破壊されるから別に…」
香はそう言ったのを康介は遮る様に叫んだ。
「このまま世界が破壊されたら、道永が死ぬ!」