ここは…どこだ。
何も見えない…何も聞こえない。
何も感じない、温度も、風も、地面も。
俺は死んだのか…
「そうだったな…」
俺は一美を命懸けで押しのけ、あの攻撃から庇った。
それによって救われたかどうかなんて分からない。
そうであって欲しい…
「康介…」
その時、女の声が聞こえた。
「一美?」
最初はそう思った。しかし、それはすぐに違うと分かった。俺より先に闇に飲まれた香の声だった。隣に神谷がいるのも分かった。
そして、その後ろで緑にぼうっと光る灯籠がいくつも並んでいた。
「イチミンは居ないわよ。」
「そうか…」
「俺達、どうなるんだろうな。」
神谷は今までに見たことない程の不安に襲われていた。
「分からない…」
『助かる方法ならある。』
その時、どこからかまた違う男の声がした。
「誰?」
『これはウォーズのバックルに搭載されている緊急脱出プログラムの声だ。』
その声はプログラムだが、紛れもなく父さんの声だった…
『ウォーズ、君はまだ死ぬべきじゃない。』
「どう言うことだ?」
康介は聞く。プログラムだから受け答えはしないが。
『君は選ばれたんだ。あの時から…』
あの時、恐らく初めてウォーズに変身した時のことだろう。あのバックルが投げ渡され、初めて変身した…
『だからこそ、君が最後まで戦い抜かなければならない。仮面の戦士として…仮面ライダーウォーズとして。』
「…」
3人は黙って聞く。
『この空間は、財団が開発した一種の捕縛装置兼暗殺装置だろう。これを聞いている間にも君達の生気は徐々に吸い取られている。時間は限られている。そこで手短に話そう。』
すると、サバイブバックルが弾き飛ばされ、地面に転がった。
そして、巻かれているライフバックルから、新たなバックルの生成が始まった。
ほんの数十秒で、それは完成した。黒とオレンジのバックルだ。
俺が落ちたサバイブバックルを拾うと、声が再び鳴り響いた。
『それはウォーズ専用に作られたバックル、ノヴァバックルだ。そのバックルの力を解放すれば、この闇を切り裂く程の力を発動できる。』
「本当!」
香が喜ぶ。
その時だった。
彼らの背後から、謎の怪物が迫っていた。
「そんな事はさせませんよ。」
「誰だ!」
昭彦と香は変身し、構えた。
その2人に、異形の怪物は掴みかかった。
「康介、早くそれを使って出口を!」
香の声で、康介はノヴァバックルで、新たな姿へと変身した。
黒い光を纏った戦士、ウォーズ・ノヴァへと…
ウォーズ・ノヴァは大剣で、空間を切り裂いた。
「2人とも!」
ウォーズは後ろを見た。しかし、異形の怪物を抑えるので手一杯だった。
「康介!先に行って一美を助けろ!」
昭彦が言う。
「でも…」
踏みとどまった康介に、香が言う。
「一美を救えるのは、康介だけだから!」
その言葉に、康介は覚悟を決めた。
「分かった、必ず来いよ!」
そう言うとウォーズは、その切れ目を通り抜け、外へと帰還した。
その切れ目はウォーズが抜けた後、すぐさま閉じてしまった。
異形の怪物は、その様子を見て諦めたのか姿を霧のように消した。
暗い空間に、昭彦と香は取り残された。
彼らにはもう座して死を待つしか道はない。
「死ぬのは怖くないのか…?」
昭彦は香に聞く。
「大丈夫…