「道永、何しているんだ?」
これは少し前の出来事だ。不知火香を救出した後の話だ。
俺はこの部屋で、あるものを作っていた。
「一美に、渡そうと思って。」
それは、サバイブバックルと同じくらいの大きさの盾のようなパーツだ。
まだ色は塗られておらず、基盤や配線が剥き出しになっている。
「だが、この世界が閉じるのだから、意味ないだろ?」
博士はそう聞く。確かに、閉じる世界には必要ないかもしれない。でも…
「でも、せめて俺が生きたって証を一美に託したいな…って。」
俺は、もうすぐ死ぬ。一美や康介の為に。でも、それで彼らが幸せになるなら本望だ。
それに、これが成功するとは限らない。その時のためにもこれは必要なものになるかもしれない。博士は、その時のことは考えていないようだが。それだけ成功する可能性があるのだろう。
一美は、俺にとって大切な人だ。何者にも変え難い、唯一無二の…だからこそ、側でずっと守ってあげたい。そう再会するまで思っていた。ただ、俺が思っていた以上に一美は成長していた。強くなった、と言った方がいいかな。それに、彼女に今必要なのは康介だ。彼なら一美を俺に代わって守ってくれる。一美なら康介を一生愛することができる。
そう思った。というより、確信したと言った方がいいかな。
どうやら、寝ていたようだ。
俺が目を覚ますと、散々に荒れ果てた実験場と壊れた装着が無惨に転がっていた。
実験は失敗した…俺が生きているのが証拠だ。左腕もうまく動かない。
俺はローディのキーを右手で持った。
「一美は…どこへ?」
俺は一美を探しに実験場を出た。
長い廊下の壁には所々大きな傷がいくつもあった。ここでも戦ったのだろうか…
その時、前に人が居るのが見えた。男か女かは分からないが、声を聞いた瞬間、男だと分かった。
「初めまして、黒夜道永さん。」
「誰だ…?」
「僕は、火神麒麟。君の妹さんとは仲良くさせてもらったよ。」
悪意のあるように感じさせる言い方をする彼はゆっくりと俺に近づく。
「何が目的だ?」
「僕は、かつての級友を自分の手で殺めるのは嫌なんだよね。だから…」
抵抗できない俺の身体を、彼は掴み上げた。
「君の体を使わせてもらおうと思って…ウェザーと悪道、ドゥアリティと豪災、ビクトリケーンと怪駕のように…いや、僕に取り憑かれたら、もう死ぬみたいなものだからもっと酷いかな…」
俺の意識は、薄らと残っている。康介も、一美も、騙されている。俺の偽物に…
………
……
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