その建物はとてつもなく大きいものだった。平安時代の貴族が住んでいた寝殿造の様なその建物に、少年と少女が大きな庭が見える縁側に腰掛けていた。
「はぁ…家の仕来りだがなんだが知らんけど、今日の宴面倒くさいな…」
虎山恵理は、足を外に出し、ぶらぶらと揺らしていた。彼女はゆったりとした黒色のワンピースを着ていた。
「しょうがないよ。まぁ、夜までの辛抱だよ。」
もう1人、足立レイは壁にもたれかかって座っていた。黒のタキシード風の服を着ている。
彼女らがいる京都にある虎山家の屋敷。そこでは、毎年旧暦の正月に全国に散らばる家族が揃って一年の健康と幸せ祝う宴が行われる。
そんな儀式に、血が繋がっている2人も当然参加する。
虎山家は、朝廷が存在する時代からある由緒正しい家で、名の由来は、最初の当主が虎の様に威勢がいい男だったからと伝えられている。
現在、虎山家は京都を中心に活動している旅行会社、タイガートラベルの頂点に存在しており、ここの社長こそこの家の当主である。そして、その当主を継ぐものとして恵理が最有力候補となっている。
「ねぇ、せっかくだし抜け出そう。」
恵理は、立ち上がるとレイの手を取り、廊下を駆け出した。レイは強く手を握られ半ば強引に連れ出されてしまった。
「京都か…修学旅行以来だな。」
その頃、京都駅の前に名古屋からやってきた山田康介がいた。
その言葉の通り修学旅行の時初めてやってきた京都に再び足を踏み入れた。
何故そうなったのかと言うと…
「つまり、俺たちの様に今までのクラスメイト達が襲われる可能性があるのか。」
康介は、その日道永と一美の2人と共に自身の家にいた。
「そこで提案なんだが…」
道永は、説明を終え、一つ提案をした。
「彼らにもう一度仮面ライダーとして武器を取って戦って貰えるよう交渉しないか?」
「それいいね。私は賛成。」
一美は襲われそうなクラスメイトを逆に仲間の仮面ライダーとして引き入れることに賛成だった。
「俺も賛成だが、無理矢理やらせるのか?」
「それは、無しだな。この世界は現実だ。ここで死ねば本当に死んだことになる。やりたいって言う人は少ないだろうな。」
康介はよく考え、賛成と言う意見を出した。そして、早速向かいに住む恵理にその交渉をしようと立ち寄った。が、なんと彼女らは1週間以上家を空け京都にいると知った。更に、親戚のレイも京都にいることが分かるとすぐさま新幹線の切符を取り、新たに調整されたローディと同じタイプのロードライバーを2機とバイフー、ウェザーの新造キーを持ち京都へ旅立った。本来なら3人で行くべきだろうが、誰か1人残っていないと、ここに住んでいるクラスメイトが危険に晒される。また一美は東京へ別のクラスメイトの交渉へ向かった為、残ることになったのは道永だった。
京都は実に広い。町中に広がる道は一本一本規律正しく並んでおり、それらが京都という街並みを形成していた。その中から恵理達を探すのは困難の極みだった。
「どこにいるかぐらい聞くか…」
康介はスマホを取り出し、恵理にメッセージを送ろうとした。その為にメッセージの画面を開くと、丁度彼女とレイが映る写真が送られてきた。
[今どこにいるでしょうか?]
子供染みたそのメッセージを見て、康介は丁度いいと思った。背景には、京都の街中が空から見たかのように広がっている。
「まさか、京都タワーか?」
京都タワー、駅から徒歩数分の場所にある。それならすぐに向かえる。
彼はメッセージにこう返した。
[今から行く]と。
その言葉通り康介は、京都タワーの展望台にいる恵理とレイの2人に顔を合わせた。
「まさか本当に来るなんて。」
「丁度京都に来ててな。」
恵理達には敢えて本当の目的を言わず、たまたま居たという偶然を装った。
「そんな偶然もあるんだね。」
レイは康介に聞こえないくらいの声でつぶやいた。
「まさか、先を越されるなんてな…」
その頃、京都駅にはもう1人別の人物が降り立った。南条翔だ。彼はどうしようかと少し考え込んだ。
そして、一つの答えにたどり着いた。
「あの手で行こう。」
彼は、自信に満ち溢れた足取りで歩き始めた。
その頃、京都タワーを後にした3人は、鴨川を沿うように北へ歩いていた。
「2人はここで何してるんだ?」
「家の年中行事で旧正月に集まって宴を開くんだけど、実際の所は大人が淫らに酒を呑んで遊ぶだけの集まりで、子どもが居ても楽しいものじゃないんだ。だから僕達はこうして抜け出して京都をうろうろしてるんだ。」
康介の問いにレイは丁寧に答えた。
「まぁ、抜け出した所で何か問題がある訳じゃないし。」
恵理が続けて言う。
「へぇ…」
そんな会話を続けながら、徐々に五条大橋に近づいていた。
五条大橋は、昔牛若丸と弁慶が出逢った場所と知られている鴨川に架かる橋だ。
「もうそろそろ五条大橋ね。」
そう言うと、恵理は顔を上げ橋を指さした。すると、念力で念じたと勘違いされてもおかしくないかのように男性が1人川に転落した。
更に人々の悲鳴が響き渡る。橋の上にはホッパーの大群が占領している。
「何あれ!!」
恵理達は初めてみたかのような反応を示した。それもそうだ。その時の記憶がないのだから。ただ1人反応が違う人物が居た。
康介は、悲鳴が聞こえた時には既に変身して走り出していた。
次から次へと、牛若丸の如く身軽に体を動かした。そして、ホッパーを切り裂き、橋の中腹で動けない観光客達を避難させた。
観光客を避難させたウォーズの元に、雷を纏った矢が放たれた。それは肩を掠めそのまま川へと落ちていった。南条が仮面ライダーに変身した姿、豪災だ。
「久しぶりだな、あの時の借り、返しに来たぜ。」
「要らない貸し借りだな。貸しっぱなしでいいんだけどな。」
2人は互いに見据えた。
その様子をレイ達は橋の西側で見ていた。
レイは、先程康介のカバンのチャックが少し空いているのが見えた。
その中を恐る恐る除くと、
それを手に取ろうとした。しかし、そのタイミングで控えていたホッパーが2人に襲い掛かる。
「まずい…これが作戦か。」
「そうさ…生身の人間を殺すのには、ホッパーで十分さ。」
豪災は自信ありげに言った。しかし、その自信はあっけなく崩れ去った。
ホッパーは押しのけられ、地面に倒れていた。
そこには、黒と銀に輝くサバイブソードガンを持った仮面ライダーウェザーの姿があった。