仮面ライダーWAR-Z[ウォーズ]   作:津上幻夢

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第40話 彼女の表と裏

「これを使えば…僕も…」

 

レイ、彼は康介の鞄からロードライバーとウェザーライダーチェンジキーを取り出し、ドライバーは腰に巻きキーを左手で持った。

 

そして、キーを左側に装填、回す事でライダーへの変身を遂行する。

徐々にオレンジメタリックの身体に変化していく。

 

 

 

仮面ライダーウェザー、彼があの世界で戦った時の姿、それが今ここに再び現れた。

 

彼はすぐ様剣を装備、隣で危険な目に遭っている虎山恵理の前に立ち、ホッパーへ回転斬りを見舞う。

 

 

 

「なんだと…」

 

豪災は、目の前に参上するはずのない人物に目を丸くしている。

 

「レイ。」

 

豪災の拘束を解き放ち、ウォーズはウェザーの隣に立った。

 

「ブリザードキーを使え、一旦引くぞ。」

 

「分かった。」

 

ウォーズの言葉にウェザーはブリザードキーを持ち応える。

 

「させるか!!」

 

豪災は矢を次から次へと放ち、雨の如く差し向けた。

 

[Blizzard key!]

 

しかし、その雨が降る前にウェザーは氷の巨壁を作り出した。その隙にウォーズは恵理と自身の荷物を持ち、バイクに乗り込んでその場を猛スピードで去っていった。

 

「逃がすか!!」

 

豪災は、雷を氷の巨壁に降らせる。ウェザーはそれに撃たれてしまう。が、それと同時にウェザーの姿は霧に隠れるかの如く消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、私の友達をここに一晩だけ泊めさせてもらえないかな?」

 

恵理は、目の前に座る白髪混じりの男に俺を今晩ここに泊めさせてくれる様頼んでいた。もちろんこうして泊めさせてくれる様頼んでくれるのはありがたいし、更に「本当は日帰りの予定だったけど、私が無理して一泊するよう頼んだから」と自分の面が汚れてもいい様な理由付けをした。

 

「いいだろう。」

 

白髪混じりの男、後々タイガートラベルの会長である事は後々知るがその男は重い口を開きそう告げた。

 

この家にはとにかく沢山の人がいた。それら全員違う家族だろと言われてもおかしくないくらい男や女、子供がいる。レイから聞いた話によると、ここにいる全員血の繋がりが濃い者たちだという事。一体どれだけ居るんだよ。

 

その日の夕食は豪華なものだった。殆ど和食ばかりだったが、大皿にこれでもかと言うほど料理を載せてバイキング形式でみんなで食べた。自分は大人数で会話しながら食べるなんて事はして事なかったが、周りの人達も悪い顔せずに俺と関わってくれた。

 

 

俺は夕食だけいただいたが、今日は宴の日らしくこの後も様々な催し物があったらしい。だが、会長の奥さんが「長旅で疲れているだろうから風呂に入って疲れをとったほうがいいんじゃないですか?」と言われ、その気遣いに甘える事にした。

 

その屋敷は1人に一部屋配ってもまだ部屋が余るほど沢山の部屋があった。その中でも俺は客間、それも庭が1番よく見える部屋に連れて行かれた。そこからは、庭だけでなく夜の京都の街を見下ろす事ができ、とても広々としている。しかもそれだけでなく、テレビにコタツにヒーターに、挙げ句の果てにはこの部屋専用のトイレや洗面台まである。ここまで来るともはや旅館だ。

 

その時、部屋の襖をノックする音が響いた。旅館気分になっていた俺は一瞬女将さんと勘違いしたが、その気分を一瞬にして消し去った。

 

「どうぞ。」

 

そう俺が言って入って来たのは、レイと恵理の2人だった。

 

俺は2人にある事を問いかけていた。「俺や一美と共に仮面ライダーとして戦ってくれないか。」と。正直、イエスと応える事はないだろうと半分思っていた。

 

「昼間の話…なんだけど。」

 

恵理は、話を始めた。手短に、だけど具体的に答えを言った。

 

「ごめんなさい。私は…一緒には戦えない。」

 

俺はやはりなという顔をしたが、隣に立っていたレイは予想外の回答で恵理の方を見た。

 

「確かに…2人の力になれればいい…そう思うけど、怖いから。」

 

彼女はそう答えた。怖い、という割にはそんな雰囲気はなかったが、問い詰めはしなかった。

 

彼女が部屋を後にした後、レイは俺を見た。

 

「レイはどうするんだ?」

 

「僕は…戦うよ。一緒に。誰かを守る力があるのなら…僕は手を伸ばしたい。大切な人の為に。」

 

彼のいう大切な人、それは恵理の事だ。

 

高校に入ってから知ったのだが、2人は従姉弟に当たるらしい。それだからだろう。だが…それだけじゃない気がする。レイには、家族以上の想いを彼女に持っているのでは、そう錯覚してしまうが俺の気のせいだろう。

 

 

 

 

 

私には言えない…一緒に戦おうなんて…言える訳ない。

 

散々、彼らのことを利用してきて…今更言えない。

 

あの日、私が立ち直れたのも…私がこうして私を保っていられるのも…全て。

 

最低だ…

 

高校生になってから少し経った時、最初は心を開かなかった康介や一美と関わっている様子を見て優しい人だと言った人がいた…でもそんな事はない…私は、ずっと利用してきたのだ。自己満足の為に…

 

私は、醜い以外の何者でもない。

 

だから…だから…

 

 

「恵理、ちょっといい?」

 

レイだ。今は入られたくない…醜い私が居るここに…

 

駄目、そう叫ぼうとした。しかし、口から溢れた言葉は全く違う言葉だった。

 

「うん…」

 

 

彼は襖を開け、中に入った。

 

 

私も彼も寝巻きを着ていた。一瞬昔一緒に寝ていた頃を思い出したが、すぐ様かき消した。

 

「どうしたの?」

 

「さっきの答え…どうしても気になって。」

 

薄々そんな気がしていた。

 

「…恵理らしくない、そう思ったから。」

 

私らしくない…違う。そんな訳ない。

 

私は、本当の事だから…そう口にしようとしたが、何故か詰まって出ない。

 

その時、頬を何かが流れ落ちた。レイはそれに驚いた。

 

「僕が何か傷つけた?」

 

慌てていたレイを落ち着かせようと涙を止めようとしたが、止まらない。それどころか、一滴…また一滴と落ちていく。何故流れるのか分からない…止まって…止まってよ…

 

気がつけば私は彼の身体に抱きつき、身を預けていた。

 

レイは、それを嫌がらず、優しく包んでくれた…泣き止むまでずっと…醜い私を…

 

「私は…康介をずっと利用してきた…自己満足の為に…彼を、康介を」

 

泣き止んだ私が、本当の理由を口にしようとした時、レイは首を横に振った。

 

「僕より、康介にその事を伝えた方がいいよ。」

 

「康介に…」

 

 

 

 

 

 

深夜、殆どの部屋の灯りが消えた頃、私は康介がいる部屋の前に立っていた。

 

今、とにかく怖かった。真実を告げる事を。康介、怒るかもしれない…殴られるかもしれない…一生口を聞いてくれないかもしれない…そんな事ばかり考えていた。

 

そんな恐怖を押しのけ、襖を叩いた。

 

「康介…起きてる?」

 

こんな時間に起きている訳ない、そう思った。だから扉がゆっくりと開いた時、びっくりした。

 

「何かあったのか?」

 

後ろの暗い部屋の窓が開けられており、どうやらずっと起きていたのではと思った。

 

「ううん、ちょっと話をしたいなって思って。」

 

「分かった。」

 

彼は部屋に招き入れた。部屋の灯りをつけようとスイッチを押そうとしていたが、私が窓越しに夜空を見ているのを気遣いつかなかった。

 

しばらく私達は、夜空を見上げていた。何か話すわけでもなく、ただずっと。

 

彼は何も聞かなかった。何故来たのか。私が話し始めるのを待っていた。

 

私は覚悟を決めた。

 

「私、謝る為に来たの。康介に。」

 

謝られる覚えのない彼は、その言葉に少し驚いた。

 

「私は、貴方や一美を、ずっと利用してきた。陰で。あの時、私が立ち直れたのは、自分の力じゃないの。周りを蠅の様に飛び回るマスコミに追われる貴方を見て、思ったの。」

 

あの時…アトランティスが消えた時からずっと…

 

「私より『不幸』な人がいるのだから、私は悲しんで居られないって。だからずっと優しくしていたのは、貴方達を哀れに見ていたから…」

 

私の一言一言を彼はずっと聞いていた。

 

「そんな醜い私が、今更いい顔して協力なんてできない。」

 

気がつけば、私の頬を一滴の涙が伝っていた。

 

「なら、あの時より前の優しさはなんなんだ?」

 

「えっ?」

 

「いつも俺を気にかけていた恵理は、なんだったんだ?」

 

康介は優しい口調で言ったが、私はそれにいい返しを思いつかなかった。

 

彼は、右手を差し出すと、私の涙を拭き取った。

 

「俺は、別にそんな事で恵理を恨んだらり、嫌ったりはしない。俺は知っているからな…恵理が、優しい事を…」

 

嘘だ…そんなわけない…そんな…

 

 

ふと、頭の中にアトランティスが消えた前日の事が浮かび上がった。

 

公園で、一人でボールを蹴っている康介、そこへ得意でもないのにサッカーしようと誘う私。

 

 

それだけじゃない、彼が筆箱を忘れ物をした時筆記用具を貸した事、一緒に校外活動をした時の事、いろんな事が彼から伝わってきた。

 

私は再び泣き出した。さっきの子どもみたいな泣き声じゃなくて、涙だけを静かに流した。

 

 

「今なら、どう応えるんだ?」

 

収まった私に、再び声をかけた。

 

私は、答えが既に決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、私達は先に帰る康介を見送る為に京都駅に来ていた。

 

改札前に、レイと一緒に立っていた。

 

「じゃ、また名古屋でな。」

 

「気をつけてね。」

 

康介は改札の中へと入っていった。

 

「結局、恵理はベルトを受け取らなかったの?」

 

レイは聞く。そういえば、まだ答え言ってなかったっけ。

 

私は自信に満ちた表情でキーを見せた。

 

それを見てレイは、よかった、と笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、手に入れる前に殺そうとしたが、これは失敗だな…」

 

南条翔は、2人が笑顔で屋敷に戻ろうとする姿を睨む様に見送った。

 

「東京の方はどうかな…」

 

 

 

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