仮面ライダーWAR-Z[ウォーズ]   作:津上幻夢

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第41話 東の都の恋人達

「将来、昭彦は何になりたいんだ?」

 

1人の男、父さんが小さな俺の頭に手を優しく乗せた。

 

「父さんみたいなすごいお医者さんになりたい!」

 

小さな俺は、綺麗な眼差しでそう答えた。

 

 

 

 

「私があそこに居なかったから…だからみんな死んだんだ!!」

 

「あなた、やめて!!」

 

首に縄を掛けようとする父さんとそれを止めようとする母さん。

 

その姿は、今でも残っている。

 

「運命には、逆らえないんだ…この罪は、死んで償うしか!」

 

結局、あの時の父さんの自殺は母さんによって止められた。

 

ただ、それ以降父さんは壊れていった。

 

あの時言った『運命には逆らえない』。あの言葉は、今でも俺の戒めとして脳の中心部に刻み込まれている。

 

運命に逆らえないと決めつけるのなら、死ぬ運命にある患者は救えないと。そう訴える様に。

 

だから俺は医者になる事だけ考えればいい…

 

それだけ考えれば…

 

 

 

 

 

…ッキー。

 

 

 

アッキー…きて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く起きてよ、もうすぐ東京着くよ。」

 

「…ん。もうそんな時間か。」

 

夢から解放されたばかりの俺に声を浴びせる不知火香。

 

正直、睡眠を阻害された事に苛立ちを覚えるが、起きなければこのまま新幹線と共に車庫へ連れて行かれるか、清掃員に起こされる羽目になる。

 

俺達は、共に春から東京で暮らす事になる。住む場所は違うが、俺は有名な医科大学、彼女は憧れの雑誌記者としてそれぞれ新たな道へと入っていく。

 

その下見に俺は1人で行こうとした…のだが、この女は俺が東京へ行くと知ったその瞬間デートだと言って着いていきたいと言い始めた。まぁ、拒否しようとしたが母さんから賛成され仕方なく2人で来る事になった。

ちなみに、母さんは彼女のことを息子の命の恩人だと言って神の様に接して…それは言い過ぎか。まぁ、彼女は良い人だと買い被っているが、俺からしたらただの遊び好きの馬鹿だ…

 

 

 

 

 

「やっぱり東京と言ったら…」

 

東京駅から降りた彼女は俺に話しかけてきた。どうやら東京の名所を聞いている。東京の名所と言ったらあそこしかないだろ…

 

「こうきょ「スクランブル交差点でしょ!!」」

 

一瞬、騒がしい東京の街に静寂が訪れたた気がした。

 

東京の名所って皇居じゃないのか…そうなのか?

 

「だって、ゲームでしか渋谷見た事ないんだから行きたいのは当然でしょ!さあ行くわよ!!」

 

東京に来てまでわざわざ人混みに行くのか…正直嫌だな…

 

丸の内駅舎を背に彼女は歩き出した…

 

 

が、何故かすぐに立ち止まった。

 

「ねえ、渋谷のスクランブル交差点ってどうやっていくの?」

 

 

その何気ない質問が、再び東京の街に静寂を訪れさせた…

 

 

 

 

 

「2人は一体どこへ行くのかな…」

 

その2人の後ろにいる彼女、清宮一美。彼女は京都へ向かった康介を見送った後、2人が東京行きの新幹線に乗るところを目撃した。ギリギリ切符を購入し、同じ車両に乗り込んだ彼女は2人の駅を行ったり来たりする様子をやや不思議に思いながらも2人の後をつけていった。

 

 

 

2人は、迷路の様になっている東京の色々な所を回った。2人は鉄道で基本移動したが、色で分かれている事の素晴らしさに感動していた。なんと乗り換えしやすい事かと。名古屋じゃオレンジラインの東海道線と中央線で色だけでの判別なんて出来るわけない。

 

そしてその2人に着いていく一美もまたその2人に着いていった。普段出歩かない彼女からしたらこんなに動き回ることは苦痛でしかない。

 

 

 

 

 

夕方、2人は郊外にある宿泊施設に向かって歩いていた。お土産袋を大量に抱えている香とその一部を持たされている昭彦の姿は、大きな影として映っていた。

 

「そろそろホテルだ。」

 

「うん…」

 

香は不満げな顔をしていた。

 

「どうした?何か不満なのか。」

 

「なんで2人一緒の部屋にしなかったのかなーって。そうすればお金も浮くし、2人一緒のベッドで寝れるし…」

 

「馬鹿なことを抜かすな。俺はその様な事はしたくないぞ。」

 

「その様な事ってどんな事?」

 

しまった…彼女のペースに乗せられてしまった。その後の彼女の悪女の笑みは憎たらしいが、どこか可愛げのある気がする…何を思っているんだ…俺は。

 

「賑やかね。2人とも。」

 

その時、前から全身黒い服に身を包んだ女が現れた。その女、見覚えがあるどころか、つい最近まで同じ学舎で学業を共にした級友の1人、東雲早苗だった。

 

「おっ、ハヤナエじゃん!もしかしてお土産待ちきれなくて来ちゃった?」

 

香は突然現れた彼女にいつものように声をかけた。

 

しかし、その問いに彼女は答えない。

 

「すまない、2人とも。だが、命令には逆らえない。」

 

早苗の腰には、紅のバックルが装着されていた。

 

「なんだそれは!」

 

昭彦が聞く。

 

「変身…」[悪魔ノ覇道…仮面ライダー悪道…]

 

彼女は、灰色の悪魔の姿、悪道へとその姿を変えた。

 

「許されなくても、それでいい…」

 

右手に持つ蛇腹状の剣を、地面に叩きつける様に2人へと振り下ろす。

 

 

 

「やめて!!」

 

しかし、その剣は、2人の後を追っていた一美、エレクスによって蛇が巣へ帰る様に弾かれた。

 

「一美…」

 

悪道はそう呟いた。その声を聞き逃さなかった2人は、エレクスに問いかける。

 

「イチミンなのか…」

 

「うん。事情は後で説明する。」

 

エレクスは後ろを振り向き、2人を見た。

 

「…」

 

悪道は、不意打ちに失敗し撤退する為にその身を炎で包み、一瞬にして灰のように風に乗せられ消えていった。

 

 

 

 

 

「なるほど…ハヤナエはその手先の1人で、私達を消そうと…」

 

一美はホテルに着いた2人に、ここまで彼女が見聞きして来た話を全て話した。

 

「うん。だから、その組織を壊滅させる為にも、力を貸して欲しい。」

 

「…私は、協力するよ。ハヤナエを止めたいし、その組織を壊滅させないと私らが平和に暮らせないからね。」

 

「ありがとう、カオリン。」

 

「俺は…その話、聞かなかった事にしてくれ。」

 

香は、協力すると答えたが、共にいる昭彦の答えはその反対のものだった…

 

「俺は、戦いに肩入れできるほど余裕もない。危ない事をするつもりもない。」

 

そう言った彼の背中を2人は眺める事しか出来なかった…

 

 

 

 

 

 

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