「そう言うわけだ、そっちへ行くにはもう少し時間がかかりそうだ。」
「分かりました、博士。」
2人を見送った道永は今、近くのカフェに向かっていた。その途中、ある人物から電話がかかって来た。
道永はその電話を切ると、待ち合わせのカフェに着いた。
中に入ると、窓側の1番奥の席に待ち合わせの人がいる事に気がついた。
道永がその人物と会うのは初めてだったが、何も繋がりのない人物というわけではない。
相手も、道永が入った事に気がつくと、目を合わせて軽く会釈した。
「はじめまして、鮫島拓真さん。」
道永はそう先に座る人物に言った。彼の名は鮫島拓真、山田康介の友人であり、一美以外であの世界で初めて共闘した人物。道永はその人物と交渉をしに来ていた。
「道永さん、こちらこそはじめまして。」
彼は既に康介から事情は聞いていたらしい。ライダーになる事を快く引き受けてくれた。
「俺は、出来る事なら彼の力になりたい。だから、よろしくお願いします。」
その言葉に彼が康介とどの様な関係かがよくわかる。だが、康介の話によると、あの時は割と協力に否定的だったそうだ。これは康介が勝手に考えたことだが、自分が全員倒して生き残りたいと願っていたから、友達だろうが殺す気で居たから協力しようとしなかったのではと。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
そう言って俺はロードライバーとメガロドンのキーを渡した。
このロードライバーやキーは全て彼が先ほどまで会話していた人物が作ったものだ。といってもロードライバーは既存のローディの物を誰でも使える様改良したもの、キーはウォーズ達があの世界で手に入れたキーを模倣して作ったものだ。
「後残るキーは一つか…」
道永が持っているキーは後一つ。その人物は康介によると1番説得が難しいと言っていた。その人物とは午後別の場所で待ち合わせていた。
白い大理石で出来た噴水が特徴的な公園で彼女は腕時計を見ながら待っていた。黒一色であるにもかかわらず見惚れる様な服装の彼女は、周りを見て該当する人物を探した。
正直、行くのをやめようかとも考えた。だが、康介から送られてきたメールで、「あの日の真実を伝える」と書かれていた。あの日…どう考えてもアトランティスが消失した日のことだ。行かないわけがない。
「忍?」
その時、後ろから声をかけられた。その声は、康介とも、ましてや道永とも違う女の声だった。
その声の主を彼女はよく知っていた。
「美叶。」
西園寺美叶、彼女の昔の、そして今の親友だ。どうやらたまたまここを通りかかったらしい。
「どうしたの?こんな所で。」
「待ち合わせてをしていて…」
忍は、彼女に相手の名前をあえて告げなかった。あの日の事を聞いてほしくないから。
その時だった。周りから小さな悲鳴が聞こえはじめた。
周りを見渡すと、ホッパー達が2人を囲う様に立っていた。
その真ん中に、斧を構えた女性の様な姿の仮面の戦士がいた。
「久しぶりね。でも、すぐにさよならよ。」
「西本鷲花…」
その声が多少低いが、明らかに西本鷲花であるとすぐに分かった。
ホッパー達は、彼女達に襲い掛かろうとした…その時だった。
銃声と共にホッパーが1人倒れた。
その後ろには、漆黒の仮面の戦士がいた。
「貴様…」
鷲花はその男を見た。
「あの人…どこかで…」
美叶はそう呟いた。
「お前達、やれ!」
ホッパー達は鷲花の指示で一斉に襲いかかった。
「きゃあっ!」
その拍子で美叶は転び、頭を打った。
「美叶!」
忍が近寄り、体を起こそうとする。
彼女は先程の衝撃で気絶している。その体を起こすと、彼女に黒い影が映った。ホッパー達は2人の目前のところまで迫っていた。
「嫌!!!」
恐怖で動けない忍は叫んだ。先程現れた戦士は、鷲花と戦闘中で手が離せない、絶対絶命の危機だった…
「はあっ!!」
その時、目の前にいた3体のホッパーが一斉に斬り倒された。黒い鮮血が空を切るその後ろには、ローディの姿があった。
「大丈夫ですか?」
「美叶が…」
忍は半泣きで言った。ローディは、彼女の脈を測り息をしているか確認した。口元に手をかざすと、正常に息している事がわかった。
「大丈夫だ、気絶しているだけだ。」
「道永、彼女達を!」
黒い戦士がローディに向かって叫ぶ。鷲花は、ローディの乱入に驚いていた。
ローディは、逃げる為に空間に道を出現させ、目眩しの様に使ってその場を後にした。
「あの男…」
「いいだろう?私の一番弟子さ!!」
ローディがいた所を睨みつけた鷲花は、黒い戦士の腹部への攻撃に一瞬身体の力を奪われた。
「待て…!」
彼女が顔を上げると、黒い戦士の姿すらそこには無かった…
「とりあえず、ここまで来れば安心だろう。」
3人は、先程の公園から離れた運動公園に降りた。ローディは変身を解き、道永の姿に戻ると抱きかかえていた西園寺美叶の体をゆっくりと近くのベンチに寝かせた。
「さっきは、ありがとう。」
頃合いを見計らい、忍は道永に礼を言った。美叶の無事を確認でき、敵も撒けた為、一安心したのだろう。
「別に、逃げただけだよ。」
その時、バイクの走ってくる音がした。一瞬、敵かと思い彼女はビクビクしていたが、正体を知っていた道永はバイクに合図をした。
乗っていたのは、先程の黒い戦士だった。
「2人は無事か?」
「ああ、1人は気絶しているがすぐに意識は戻るだろう。」
彼は安心のため息をつくと、ベルトのキーを引き抜き、人肌を露わにした。
忍は、その姿を見て驚愕した。自分がずっと忌み嫌い、憎んできた男、白夜総三だったからだ…
「どうした?」
その感情は表情にも現れていた。睨みつける視線に総三はその意図をすぐに察した。
「康介が言っていた通りか…」
白夜総三は、キーを自分が来ていた背広の内ポケットにしまうと、彼女を見た。
「君に辛い思いをさせてしまった事は詫びよう。だが、憎む相手を間違えないでほしい。」
その言葉に、彼女の沸点はピークを迎えた。
「ふざけるなよ…あんたのせいでどれだけの人が苦しんだと思っている。」
「確かに、アトランティス消失の引き金となった装置は私が作ったものであり、管理体制が不充分であった事は認める。だが、その引き金を引いたのは私ではない。」
「そんな嘘、信じられるか!」
気がつけば忍の右の掌は握りしめられ、総三の顔面に迫っていた。
「待って!」
その声に、彼女の拳は寸前で止まった。
「美叶…」
その声は、ついさっき目が覚めたばかりの西園寺美叶だった。白夜総三がやってきた辺りから聞いていたらしい。
「その人が、あの時私を助けてくれた黒い人だから…」
「あの時…まさか記憶を?」
「うん…」
どうやら彼女は先程の衝撃で記憶を取り戻した様だ。その記憶には、しっかりとあの時の思い出が刻まれていた…
「ごめん…忍。今までずっと思い出してあげられなくて…」
美叶は泣きそうだった。その表情に釣られ忍も泣きそうだった。泣き顔を隠す様に彼女を抱きしめた。
いいよ…気にしてないから…そう耳元で呟いた…
「感動の再会って奴だな…」
「ええ…」
その様子を見ていた男2人も映画を観て感動している感覚に陥った。昔一緒に遊んでいた親友が再会した時には記憶がなくて。そんな感じの映画になりそうな…そんな事はどうでもいいな。
忍はその後、道永の交渉に応じ、ベルトとクノイチのキーを受け取った。
これで今ある六つのキーは全て本来の持ち主の元へ行き渡った…
終わりは近い…