「はぁ…ここまでやられるなんてな…」
傷だらけの南条翔は、荒い息を吐きながら常盤高校の倉庫裏に居た。
壁にもたれかかり、座り込んだ所で誰かがやって来るのが分かった。
「豪災、惨めにもやられて来たようだな。」
「ははっ、少し羽目を外しちまってね…俺もあんたに粛清されんのか?」
物陰から、不気味な笑みを浮かべながら男は現れた。
「君はあの2人とは違って、私の計画に必要な人間の1人だ。そう簡単に殺しはしない。」
その男は、右手に傘を、左手に絶王のキーを持っていた。
「そういえば、悪道は山田康介と行動しているみたいだぜ。」
「ほう…珍しい事もあるのですね。」
男は再びニャっと笑って見せた。
「で、肝心な彼女は出かけちまったのか。」
康介の家には、鮫島、レイ、恵理の3人がいた。
肝心な彼女、東雲早苗は一美と仲間になった事を先に告げられた香と共に外へ出かけてしまった。本来なら顔合わせをしたかったが。
「でも、いいんじゃない?たまには気分転換させても。」
「そうだね。」
鮫島、恵理、レイと続けて言葉を発した後、康介は口を開いた。
「でも、本当に共闘してもいいのか?あの世界で彼女はお前達の事を…」
「あの世界って、俺達には記憶がない。まあ、多少苛つきはするし許す気にはならないが、共闘ぐらいならしてやってもいい。」
鮫島はベッドに勢いよく座った。
「僕を乗っ取り悪事を働いた事は一生許さない。でも記憶がなく、尚且つ未来の話…だから、共に肩を並べる事に嫌とは思わない。」
「私はどちらにしろ賛成だけどね。敵だった人物が味方になるだなんてこれ程頼もしい事はないし。」
「みんな…」
更に2人の言葉を康介は聞き入れた。
「アイツに後で礼を言わせないとな…」
そう心の中で呟いた。
「次はあっちに行こう!!」
「あっ、ちょっと!」
一方、その早苗は一美達に無理矢理連れて行かれる形で街を歩いていた。
2人に手を引かれ翻弄されているが、嫌な気持ちは無かった。
本当の私だったら…どれほど2人と楽しめたのだろうか。いくら彼女達が気を許し達とはいえ、元々敵だった私をそんなすんなりと受け入れてくれていいのか…そんな事ばかりを考えていると、知らぬ間に1人じゃ入れない様な可愛らしい店に入ってスイーツを食べていた。
虹の様にカラフルなパフェに正直驚いたが、食べてみるとこれまた美味しいものだった。
「美味しいでしょ!」
香は笑顔で早苗を見た。その笑顔についつい彼女も笑みを浮かべた。
その時だった。外で沢山の悲鳴が聞こえてきた。外に目を向けると沢山の人が逃げ惑っていた。
「行ってみよう!」
3人は、即座に店を出て街の様子を見た。そこには大量のホッパーとその奥にいる降魔と怪駕の姿を見た。
「降魔…怪駕…」
早苗が睨みつけた。
「まさかこんな所で再開するなんてね。」降魔が楽しそうに言う。
「お前を、消す。」怪駕は剣を抜き構えた。
「悪いが、私はそう簡単にやられるつもりはない!」
早苗達は逃げ惑う人々の中横に並びキーを構えた。
「「「変身!!!」」」
[KAMEN RIDER Sapphire ERE-X!]
[仮面ライダービクトリケーン!!]
[悪魔ノ覇道…仮面ライダー悪道…]
「行くわよ!」
一美の声に合わせて2人はすぐ様攻撃を開始する。
悪道は剣を伸ばし迫り来るホッパーを次々と薙ぎ倒していく。鮮血が飛び交う中ビクトリケーンが風を起こし降魔と怪駕に攻撃を仕掛ける。
降魔は風を拳でかき消すと、走り出し迫るエレクスの元へ右ストレートを放つ。
ビクトリケーンは怪駕に再び風の攻撃をする。蒼く靡く風を怪駕は赤い烈風で防ぐ。2人の剣が交わる時、暴風が吹き荒れた。
「貴女達は、あの女を庇うのね。」
「当然よ!友達なんだから!」
怪駕の問いにビクトリケーンは答えた。
「例え昨日まで敵だったとしても、この前までの思い出が彼女にとって偽りだったとしても、私にとっては大切な友達だから!」
そう言うと剣を銃に変え、弾丸を次々と放つ。高速の弾は怪駕を少しずつ押しのけた。
「大切な…友達…!」
悪道は、その言葉を聞くとビクトリケーンの隣に立った。
「ありがとう。私を受け入れてくれて。」
「早苗…こちらこそ、友達になってくれてありがとう。」
2人は、仮面の中で笑顔を浮かべていた。
しかし、それとは裏腹に戦況はあまり良くは無かった。数の多さに徐々に3人は圧倒され、追い詰められていた。
「まだまだ遊び足りないな…」
降魔は撫で回す様に地面に倒れる3人を見た。
「悪道、貴女の役目は終わったのよ。」
怪駕は、武器を斧に変え地面に叩きつけた。
地割れを引き起こす程の竜巻が3人に迫る…
その時だった。3人の前に壁が立ち塞がった。その壁によって竜巻はかき消され、怪駕は目を疑った。
その壁の向こうには、ローディとドゥアリティの姿があった。
「香、待たせたな。」
ドゥアリティは、ビクトリケーンの前に手を出した。
彼女はその手を掴み立ち上がった。
「遅いよ…アッキー。」
ローディは、降魔を睨みつけた。それもかなりあからさまに。
「お前は二度と一美に触れさせない…!!」
「へぇ、強気だねえ。」
静かな怒りを示す彼に降魔は気楽に返した。
「所詮、数が2人増えた所で変わらない…」
怪駕は、強気な発言をした。その様子を見たエレクスは答えた。
「2人?とうとう数も数えられなくなったの?」
「なんだと…」
その時、降魔と怪駕の背中に激痛が走った。
2人の背後には、剣を振り下ろした後の状態のウォーズスペシャルとウェザー、その後ろにはメガロドンとバイフーの姿もあった。
「6人、それが正しい答えだ。」
4人は、エレクス達がいる側に立った。
「ぐっ…不意打ちか…」
「ハハッ、戦いってのはこうでなくちゃね!」
降魔が、右手を突き出し暗黒のエネルギーを放出した。ウォーズ達は、その一瞬の攻撃に驚き、避けられないと感じた。
「私を忘れないで貰おうか!」
その時、降魔の影が揺らいだ。
その影は降魔から別れると、剣で背中を斬りつけた。
それにより暗黒のエネルギーは制御を失い空に撃たれた。
「忍!」
降魔の背後から現れたのは、クノイチだ。
「康介、いくら忍のライダーだからと言って私を忘れないでくれ。」
「なんなんだ…今の技は…」
「忍法、影隠れの術だ。これが私の戦い方だ。」
そう言うと、クノイチも他のライダー達と合流した。
ウォーズ、エレクス、メガロドン、ウェザー、バイフー、クノイチ、ドゥアリティ、ビクトリケーン、ローディ…ここに悪道が加わった総勢10人の仮面ライダー達が出揃った。
「全員集合…ってところか…」
ウォーズはそう言った。
「なんだか、燃えてくるね!」
「僕達で力を合わせれば必ず勝てる。」
「この世界を、救うのは私達よ。」
メガロドン、ウェザー、バイフーが続けて言う。
「ぐっ…」
怪駕は、完全に悔しがっていた。この数に勝てるわけがないと…
しかし、天は「彼女ら」を見捨てなかった。
その時、濃い霧が辺りを覆い始めた。
「なんだ?」
[2人には特別な魔法をかけています。この霧の中でも相手が見える筈。]
その時、怪駕達の脳内に豪災に話しかけた男と同じ声が聞こえた。
「感謝します。」
その時、ふと後ろには誰かが背後にいた気がした。しかし、それはすぐに気のせいと分かりライダー達に反撃を始めた。
「この霧…周りが見えない!」
「くそっ…どうすれば…」
ライダー達が惑う中、次から次へと攻撃が迫る。背後かと思い振り返るとその背後から。
次々と迫る攻撃を防ぐ事に精一杯だった。
そんな中、悪道だけは霧の中から出た…というより、出られる様導きがあったという風に感じた。
何故なら目の前に死んだ筈の絶王の姿があったのだから。
「この霧は貴方が?」
「…」
悪道は聞くが絶王は頷きもしない。
「貴方は死んだ筈じゃ…」
「私の事を話さなかったのだな。」
絶王から発せられたその言葉に悪道は背筋が凍った。
「話さなかった事が私に恐怖している証拠だ。」
そう言うと絶王は槍を構えた。
「どうすればいいの…」
エレクスが霧に翻弄される中、突然左手を掴まれた。掴んだのはローディだった。
「一美…お前ら、近くの奴の手を取れ。とにかく別れない様にしろ!」
その声に反応したライダー達は次々と手を取り、気がつけばそれが一つの円の形になっていた。
「みんないるか?」
ローディが聞いた。
「私はここよ、隣にレイと香がいる!」
バイフーが言った。
「俺はレイとアンタの隣だ。」
「私は隣にアッキーがいる。」
「俺は香と八代に挟まれている。」
「その私は、一美の隣に…」
次々と他のライダー達が自分の居場所を言っていく…その中で何かがおかしいと気づいた。
「康介と早苗は…?」
エレクスがそう呟いた。確かに8人が繋いだ輪には2人の姿がない。
その1人、ウォーズは悪道とは別に霧から脱出していた。
「他のみんなとはぐれたか…」
その時、金属がぶつかり合う音が霧とは別の場所から聞こえた。
その方向を見ると、悪道と絶王の戦う姿があった。
「早苗と…」
その時、ふと頭の中に昨日会話した内容が流れてきた。
「私は、これからも狙われる事になる。それでもいいのか?」
早苗は、リビングでテレビを見ながら聞いてきた。他人の家だからか遠慮気味の彼女は康介にそう聞いた。
「どちらにしろ、行く宛がないんだろう?ならここの方が安全だ。ここに今母さんは居ない。それに、俺と道永は自分で身を守れる。気にしなくていい。」
そう言うと、テレビの方を2人は見た。その間に道永が「風呂に入ってくる」と言い部屋を後にした。
頃合いを見て彼は口を開いた。
「狙われるって、誰にだよ。」
「それはもちろん、怪駕に豪災、降魔よ。絶王は私より先に消された。」
「誰が消したんだ?」
そう聞かれたとき、彼女の手は震えていた…
「それは…」
「貴方も抜け出しだのだな。」
その言葉で現実に引き戻された。
「康介…来るな!」
「なるほど、意地でも守りたい様だね。」
絶王は悪道がウォーズを見ている隙に必殺技を発動させた。
それを見ていたウォーズは声を張り裂けるくらい上げた。
「早苗!後ろ!!」
「えっ…」
「とりあえず、2人の居場所は後だ。今は迫り来る敵に備えろ。襲われたら叫べ。それぞれの居場所は分かるよな?」
ローディのその声に他のライダー達は一斉に静かになった。
しばらくの静寂の後、足音が聞こえた。
その足音は徐々に近づき、拳を突き出した。
「僕だ!」
その拳を受けたのはウェザーだ。その言葉を聞いたメガロドンとバイフーはすぐさまウェザーのいる方向に攻撃を仕掛ける。
「見破られた?」
そう降魔の声が聞こえた。どうやら攻撃が当たった様だ。
再び足音が聞こえた。今度は斧を振り下ろした。エレクスに。
エレクスはその攻撃に一瞬下がるが、すぐさま攻撃を仕掛けた。
「私の正面!」
その声にローディが銃で攻撃する。弾丸が着弾し爆発が起きたのは音で分かった。
降魔と怪駕は動きを完全に封じられた。
これ以上の戦闘継続は不可能、そう考えた直後だった。
金に輝く矢が霧の中をすり抜けドゥアリティに激突した。同じように攻撃を返すが当たる気配はない。
「遅くなった。怪我で中々動けなくてな。」
「どうやら遠距離には勝てないみたいだな。」
怪駕は、エレクス達に言った。
そして、豪災に雷の雨を降らせてやれと言った。
次から次へと放たれる矢は相手の陣形を崩していく。いつのまにか円は崩れ散り散りになっている。
このまま押し通せる、そう思った時だった。
その時、霧の外から声が聞こえた。
「早苗!後ろ!!」
その後、何かが突き刺さる音、そしてそれを引き抜く音がした。
それと同時に霧が突然晴れ始めた。
ライダー達の身体に光が差し始めた頃、その全容も見えてきた。
ウォーズが最初に見えた。
その次に悪道と絶王の姿が見えた。
絶王の槍には、赤い血がベッタリと付いていた。
それと同時に悪道は早苗の姿に戻る。
早苗と叫ぶ香と一美の声が街に響いた。
「…」
ウォーズは黙ったままだった。
「これで完了だ。」
撤退を促す絶王の声で怪駕達が引こうとした時、ウォーズが口を開いた。
「人を殺しておいて…何も思わないのかよ。顧みるものはないのか!」
「人を殺して、逆に何を思うんだい?」
絶王から帰ってきた答えはそれだった。それだけだった…
「アンタは…最初からそんな奴だったのか…俺達に見せていたあの顔は偽物だったのか!!」
「偽物なんかじゃないさ。君達が優秀な実験台として育っていく姿は実に面白いものだったよ。山田君。」
そう言うと絶王達はその場から姿を消した。
「待てよ!話は終わってない!!」
ウォーズが叫んだ後、再び静寂が訪れた。
みんなが…特に一美と香が早苗の近くに走った。
一美が体を起こすと、手に彼女の血がつき真っ赤に染まった。
「一美…香、最期に…私を人間で居させてくれて…ありがとう…」
それが彼女の最期の言葉だった。
街中に啜り泣く声がひっそりと聞こえる中、1人閉ざされた炎に火をつけた者がいた。
東雲早苗が死亡してから数日、卒業式は間近に迫っていた。
そんなある日だった。康介と一美は早苗が倒れたあの場所に花束をそっと置いた。
その花は、悪道が使っていた剣のように赤い花が段々となっていた。
「早苗…」
そう一美が呟き、2人は手を合わせた。
行こうか…、そう康介が呟きそこを後にしようとした。その時、目の前に2人のよく見覚えのある人物がいた。
「久しぶりだね、山田君に清宮君。」
湯山玄武だった。彼は黒いスーツを身につけていた。一美は玄武に近寄ろうとした。その身体を右腕を出す事で康介は止めた。
「人を殺す事に何も思わないのに、献花にはくるのか?」
彼の手には花が握られていた。白色の花だ。
「なんの話だい?それにそんなに睨みつけて。私が何かしたのか?」
玄武はそう言いながら近づいた。
「近寄るな!」
康介は叫んだ。
「ここには、彼女が眠っている。お前なんかが踏み入れていい場所じゃない。」
「康介、さっきから変だよ…」
怒りを抑えきれない康介を一美は抑えようとした。
「酷いな…別に私は彼女に花を渡そうとしただけだよ。」
「…早苗を殺しておいて、そんな事言うなよ。」
一美は驚きの表情をした。いつもはあんなに優しいあの人が、人を殺すだなんて信じられなかった。
「…」
「早苗は、俺に伝えたんだよ。自分達の上にいる存在を…自分を縛り付けるアンタの存在を!」
あの時、彼女は一瞬話す事に戸惑った。しかし、その恐怖に打ち勝ち『湯山玄武が全ての原因』とその口で伝えたのだ。
「康介…本当なの…」
「ああ。そして、あの日絶王に変身し、彼女を殺したのもお前だろ…」
「フフフ…ハハッ。面白い事を言うんだね。そうだよ。私が殺したんだよ。そして、君のお父さんをアトランティスが消失した日、陥れたのも私だよ!」
康介は驚いた…自分の父親を陥れたのもこの男だなんて…思っていなかった…
「私はあの研究所で特別研究員として居たんだよ。あそこに。そしてあの日意図的に装置を動かしてアトランティスを思うがままに戦場へと作り替えたのだよ。」
「そんな…」
一美がそう呟く中、玄武は話を続けた。
「実に楽しいひと時だったよ。君達を…白夜総三によって壊れた人間やその関係者達をこの学校に集めて、自分の思うがままに育てるのは。特に君達なんかはね。」
「…フッ」
「ん?どうした?」
玄武は、康介の呟きに耳を傾けた。
「ハハッ…じゃあ俺は最初からアンタの手の上で転がされてたって事か?俺だけじゃない…一美も、道永も、父さんも、他のみんなも…全部アンタの描いたシナリオ通りになったって事か…」
そう話す康介を玄武は笑いながら見ている。
「ふざけんなよ!」
突然の咆哮に彼は驚くが、すぐに元の笑い顔に戻った…非常に憎たらし笑顔に…
「返せよ…俺達の10年間を返してくれよ!!!!」
康介は玄武に掴みかからんとする勢いで近づいた。
その彼を玄武は衝撃波の様なもので払い除けた。
倒れた康介は、壁に打ち付けられたが、一美の補助もありすぐさま立ち上がった。
「私を人間だと思わないでくれ。今の私は『皇帝』なのだから…」
そう言うと彼は宙に浮き上がった。そして、翼が円を描く様に後ろに現れ、醜い怪物の姿を見せた。
ホッパーをより強化した見た目をしている彼…エンペラーホッパーは康介達を見下ろした。
「丁度よかった…これで迷いは無くなった。」
康介は、そう言うとノヴァバックルを装着した。
「アンタが人間じゃないなら…獣ならなんの足枷もなく殺せる…」
ウォーズ・ノヴァに変身した彼は、ノヴァ・セイバーの剣先をエンペラーホッパーに向け、空へと飛び出した。
エンペラーホッパーはこれを先程と同じ衝撃波で払い除けた…それも先程より強力なものを。
「今決着をつけるわけにはいかない。3日後…待っているよ。」
そう言うとエンペラーホッパーはその場から姿を消した…
彼が言った三日後…それは奇しくも康介達がアトランティスに送られた日、2月29日であった…