「久しぶりだな…我が故郷…」
夜の闇に包まれる中光を放つ街をその男はビルの上から見下ろしていた。
彼は、右手に不思議な物を持っていた。それを簡単に表すのなら「ゲーム機」だ。中心にオレンジ色の浮遊体が描かれ、その両側にはそれぞれ操作ボタンの様なものが配置されている。しかし、その紫色のパットには何かを射出する為の銃口が2つ取り付けられている。
「…さぁ…始めよう。」
男は、そのゲーム機からオレンジ色の浮遊体を空に解き放った。
「バグスターよ…お前達はどの様な働きをする。」
「これを君に渡しておく。頼んだぞ。」
私達の戦いが終わってから、もうすぐ1年が経過する。
私は専門学生としての日々を送っていた。正直、勉強はやっぱり難しいし時々全てが嫌になることもあるけど、なんだかんだやって来れてる。
私は今電車に揺られ自分の住む街へ帰る途中だった。その電車は、私が住む街の駅に停車しドアを開いた。
「じゃあね、一美さん!」
「さようなら、二葉さん!」
私は学校でできた友人の1人である二葉さんと別れ列車を降りた。そして、改札を出るとそこには見覚えのある顔が私を待っていた。
「久しぶり、イチミン」
「カオリン!なんでここに?」私を待っていたのは、私の親友である不知火香だった。彼女は心なしか少し大人びた様な気がした。そして胸もまた大き…私だって、それぐらいは…
「いや、休みを貰って来てみたんだ。ほら…もうすぐ『あの日』から一年だし。」
彼女は、あの日という言葉を少し暗めに言った。それもそうだ…
そういえば、あの日からもうすぐ一年か…そんな事を考えながら2人で夕焼けに染まる街中を歩いて行く。
「意外と一年で街の雰囲気も変わるもんなんだね。」彼女は久しぶりの街を堪能していた。
「うーん、なんだかんだ毎日歩いてるから意外と違和感は感じないかな。そうだ、折角だしどこかで食べていこうよ。」私は外食を提案した、そして彼女もその考えに賛成の意を示した。そして近くのファミレスに入る事にした。
それから数時間、私たちは過去を懐かしみながら食事を楽しんだ。
別れ際…
「それじゃあ、今日はこの辺にして帰るわ…あっそうだ。明日、アイツに会いにいこうよ。」香は突然そう言い出した。
「…分かった。じゃあ、明日の10時に駅でどう?」丁度講義が明日はない…丁度いいだろう。私はそう聞いた。
「オッケー、明日の10時に駅…それじゃあ、また明日。」
「うん。」香はそう言って店を出て行った。ちなみに、彼女が会計を忘れて私が結果的に彼女の分を奢る事になってしまった…まぁ明日返して貰えばいいだろう。
それにしても…早苗に会いに行く…なんて久しぶりかもしれない。確か去年の夏に康介と行ったっきりな気がするな。
楽しみではあるが、それと同時に彼女が崩れ落ちる姿も思い出す。
『一美…香、最期に…私を人間で居させてくれて…ありがとう…』
あの時救えなかった後悔と、その時の悲しみを思い出すと、何かがまた溢れそうになる。
「…早苗…」私は今は亡き人物の名を呟いた。
翌日、私は9時半くらいに駅に着いた。正直、昨日の疲れが取れた感じはしなかった。
今日は休日だからか、人通りが多い気がする。それも親子連れやカップルが。まるで、去年のあの日みたいに…
それは、私が2度体感した日。その日は康介の誕生日のお祝いの為にちょっとしたデートをした日のことだった。1度目は何もなく終わった。しかし、2度目は違った。私の目の前に現れたサバイブバックルとエレクスのキー、それらを持って康介の元へ私は向かった。
デジャヴというには少し違うかもしれない。だけど、今日がこのまま平穏で終わる事はないと強く感じている。
だからこそ、私は『バックル』と『キー』を持ってきた。
「よっ、早いじゃん。」そんな私に声をかけたのは香だった。昨日よりも肌の露出が多い爽やかな蒼と緑の服を着ていた。こいつ、余程見られたい変態なのか…
「うん、楽しみで早く来ちゃった。」私は七割くらいの嘘を混ぜて返した。
「これぐらい早く来ればイチミンより早いだろうって思ったのに、もう来てるし。」香は予定よりだいぶ早く来ている私に驚いていた。流石に、もう遅刻はしないよ。
「じゃ、行こっか。」私達は、早苗のいる場所まで歩いて向かう事にした。
そこは駅から徒歩で20分くらいのところにある寺、氷蘭寺だ。そこにある墓地に足を踏み入れた。そして私達はまっすぐ彼女の在る場所へと歩く。
『東雲』と描かれた墓石に私達は着いた。
「久しぶりだな…ん?」香は、彼女の墓に何かある事に気がついた。それは私も同じだ。
そこには、赤いグラジオラスの束が指してあった。墓石にも濡れた後がある。
「誰か来てたのか?」彼女は私を見て聞く。私は「分からない」と返した。
東雲早苗には、親が居ない。もしかしたら生きているかもしれないが、アトランティスの件で別れてしまい、彼女は別人となった。今更分かる手立てもない。だからこそ、彼女の墓参りに来る人物は限られている。
私は、ふと指してある花に気が付いた。これは前にも見た事がある…
「まさか、康介?」そうだ。これは早苗が亡くなった直後、康介が彼女に手向けた花だ。
「…アイツも来てくれてたんだな。」香もそう呟いた。
「じゃ、私達も花渡して、綺麗にしてあげよう。」そう言って私達は、彼と同じ様に花を差し、墓石を綺麗にした。
「じゃあね、早苗。また来るから。」
私達は、そう言って彼女のいる場所を後にした。
「そろそろお腹すいてきたな。」墓地を後にした私達に襲いかかったのは空腹だった。その頃には、時計の長針と短針がもうすぐ12を指そうとしている。
「じゃ…お昼ご飯に…」
その時だった。目の前に現れたのは、恐怖の顔を浮かべた人々だった。彼らは逃げ惑いこちらへと押し寄せていた。
「何が起きてるんだ?」私は素直に言った。
「まさか…行ってみよう!」香は、率先して人混みの先へと進む。私も離れないよう必死に着いていく。
私達が向かった先では、見たことのない怪物が人々に対して攻撃を仕掛けていた。オレンジ色の頭部らしきものを持ち、両手で持った簡素な三叉の槍で逃げ遅れた女の人に攻撃しようとした。
「危ない!」私は咄嗟に身体を動かして、その槍を止める。
「早く逃げて!」香は倒れていた女の人を起こし、遠くへ逃した。
「なんだ貴様ら…!」その時、奥から男の低い声が聞こえてきた。
私達はそれに身構えた。現れたのは、銀色の西洋の甲冑に身を包んだ戦士だった。
「こいつ…何処かで見覚えが…」香の呟きで、私もそんな気がしてしまった。集中しないと…
「消えろ!!」その戦士は私達に向かって剣を振り回す。私達はそれを後ろに避け、私はベルトをつけた。
「
えっ…なんで香が…そう思い彼女を見た。彼女の腰にはロードライバーがある。更に左手にはビクトリケーンのキーが…
彼女の顔を察するに思っていた事は同じだろう。私達は互いに目配せし「ならば協力しよう」という意思を伝えた。
私達は、キーをそれぞれ首元に構える。
「「変身!!」」
[open!][Lightning goddess!KAMEN RIDER ERE-X!]
[set up!][大展開!][仮面ライダービクトリケーン!!]
金色の鎧に、金色の冠のような角を持つ雷鳴の女神エレクス、青色の鎧に、風を思わせる爽やかな発色の体色を持つ勝利の神風ビクトリケーン、今ここに再臨する。
「いくわよ、イチミン。」ビクトリケーンは剣を構えた。
「カオリンこそ、遅れないでよ。」私は銃を構える。
「行け!」騎士は配下に攻撃を指示する。その号令に合わせて配下は一斉に攻撃を仕掛ける。
ビクトリケーンは風の様に一瞬にして距離を詰める。風の様な速さを持つ彼女に配下は驚きを隠せない。そこへ彼女の太刀が腹部へ次々と斬りつけられる。
配下はそれらの攻撃で次々と爆散していく。
敵を倒し油断している彼女の後ろから攻撃をしようと新たな配下が迫る。
それらを私が電撃を纏った弾丸で次々と撃ち落としていく。電撃を受け感電して身動きの取れない配下達は、次々と地面に倒れ、そのまま爆散する。
「案外、楽勝だな…。」ビクトリケーンは剣を振り払いながら言った。
「でも、まだ終わりじゃないわよ。」その私達に騎士が迫っていた。
「我が配下を一撃で倒すとは…お主らを少々見くびっていた様だ。こちらも本気で戦わねばな。我が名はワイバン、帝国随一の将兵にして、誇り高き国の騎士!」ワイバンはそう自らを高らかに名乗った。
「思い出した!アイツ、エンシェントライドドラゴンのラスボス、ワイバンじゃない?」香はそう大声で言った。
「言われてみれば、確かに似てる!」
ここで補足だが、エンシェントライドドラゴンとは、竜騎士が帝国によって自由を奪われた国に平和をもたらすべく戦うゲームだ。
「…来ないなら、こちらから攻撃するまで!」ワイバンは、剣を手にし私たちの元へ迫る。先に攻撃の的となったのはビクトリケーンだ。彼女はワイバンの剣撃を剣を構えて防ぐが、余りの力の差に押される。
私はサポートに入るべく銃を剣に変えワイバンの元へ迫る。電気を纏った斬撃で、ワイバンとビクトリケーンを引き剥がす。
「サンキュ、イチミン。」
「…集中していくよ。」私達は剣を構え直し、ワイバンを見据える。
その時だった。私の左半身に強い衝撃が走った。
気がついた時には私たちの身体は地面に倒れていた。
「…チーターか。」ワイバンはその衝撃の正体について口にした。
「アンタの戦いがノロマだったからつい手が出ちまったよ。」
ワイバンの隣にいたのは、また新たな怪人だった。名前の通り、チーターの様な模様と足の速さが特徴的な奴だ。
「…お前も、相変わらず足と口は軽いんだな。」
「そうカッカすんなって。協力してコイツらを倒すぞ!」ワイバンとチーターは私達に剣の刃と爪を見せつけて少しずつ歩み寄る。
「ここが貴様らの墓場だ!」そうゲームの悪役らしい台詞を吐きながらそれらを振り下ろす、が、実際は彼らの身体から火花が飛び散る。
後退した2人は何事という顔で前を向く。
「チッ、巻いたと思ってたのにな…」チーターが言う。それと同時に、後方からバイクのエンジン音が鳴り響く。それらは私たちの後ろで止まる。まさか…!
「素直に逃げればいいのに、こんな所で道草食ってんだから追いつかれるんだ。」
バイクから降り、こちらへ歩いてくるのは、紛れもなくウォーズ…康介だった。
「大丈夫か?一美、香。」銃を構え、私達の前に立ち言う。
「主役にしては、登場が遅いんじゃなくって?」私は言う。
「悪い、チーター『バグスター』を途中で見失ってな。」
バグスター…その言葉も…どこかで聞き覚えが。そんな事は今は気にする必要はない。
「貴様も、ここで倒す…!」ワイバンは剣を構え直す。
「…やれるものなら、やってみな。」私達3人は立ち上がり、並び立つ。
「お前達の運命は、俺達の手の上だ。」
「私達の神的プレイで」「シビレなさい!」
それにしても、毎回思うのだが、いくらなんでも「運命は俺の手の上だ」ってダサすぎない?すごい厨二臭くて、私達まで恥ずかしくなる…
そんなこと言ったら私の「プレイでシビレなさい」それはそれでちょっとかっこつけすぎだね。
そんな訳で、私達3人は剣を構え2体に向かって反撃を始める。2体に対してまずウォーズが剣を振り下ろす。そこへ私がチーターへ、ビクトリケーンがワイバンに対して剣で切り裂く。地面に倒れた2体は、立ち上がり反撃を試みるが、それよりも早く私とビクトリケーンの蹴りが炸裂、再び倒れる。
「さぁ、これで終わりだ!」そう言ってウォーズは、必殺技を発動させようとしたその時だった。
特殊な射撃音と共に私達の足元に何かが打ち込まれた。それらは煙幕の様に私達の視界を錯乱させる。
煙幕が晴れ始め、何が邪魔をしたのかがよく見える様になった。最初に見えたのは翠色の身体、次にゲームコントローラーみたいな胸部、そして最後に変わったゴーグルとそこから覗くゲームキャラの様な青い瞳。仮面ライダーとは到底思えない様な見た目だ。
「そのベルトは…ゲーマドライバー?」
「流石、仮面ライダーの知識は随一…しかし、それでも私のやりたい事についてまでは見切れない様だね。」そう言うと彼は右腕につけているゲームパットの様なものに、ベルトに装填していた緑と黒のゲームカセットの様なものを装填した。
それから一瞬だった。そのパットに取り付けられている二丁の銃口をウォーズの腹部に押し当て何かを流し込む。
「うぐっ…」すると、ウォーズの体が、徐々に崩れ落ちていく。
「康介!」彼の身体のあちこちに、オレンジ色の何かがノイズと共に浮かび上がる。
「ゔあぁ!」そして康介の身体は、オレンジ色の物体に飲まれ、全く別の物へと変貌してしまう。
それを一言で言うなら、エンペラーホッパーを人間と同じくらいのサイズに置き換えたものの様だ。ゴツゴツとした肉肌、頭部に浮かぶ大きな複眼、背中に生えた翅、それら全てがエンペラーホッパーの様だった。
「今日のノルマは達成だ。また後日…」そう言うと、意識のないまま操られている康介は他のバグスターと共にこの場から姿を消した。
「そんな、康介!」正直、私は泣きそうだった。たった一瞬を止めることが出来なかった。前みたいに救えなかった…その後悔がまた私の喉元まで登ってきたからだ…
「エンペラーバグスター、お前のデータが揃えば、ウォーズクロニクルガシャットは完成する。」
先程康介をバグスターに変貌させた男は、彼を見ながらそう言った。
「ワイバン、チーター。お前達もこの作戦に必要だ。しばらく培養して休むがいい。」
「承知」「リョーカイ。」
私は、後悔の念に縛られながらも、香の「行かなきゃいけない場所」と呼ばれる場所に行く事にした。
そこは郊外にある小さな建物だった。
「待っていたよ、香君、一美君」そこに待ち構えていたのは、康介の父である白夜総三さんだった。
「総三さん…」私は、康介が敵に操られている事を伝えようとした。
「…分かっている。康介とは常にバックルとこのモニターで通じ合っている。彼が操られ、敵のアジトにいる事は把握済みだ。」総三さんは、息子が敵に捕らえられたと分かっている割にはやけに落ち着いていた。
「ねぇ、貴方。私達に隠している事があるよね?」
そう言い放ったのは香だ。確かに、康介は奴らの事を「バグスター」であると言う事を知っていた。しかし、恐らく総三からベルトを受け取ったであろう香はその事を知らない…
「…奴らは一体何者なんだ?」
「…バグスターウイルス。コンピュータウイルスが人体に感染する様進化した存在。奴らはゲームキャラとして実体化し感染した人間の身体を侵蝕する事で完全体となる。」
「じゃ…康介も早く救わないと…!」そうだ…でなければ…
「そうだな、だが今は君達も疲労が蓄積されている。少し休んだほうがいい。それに、完全体まで多少なりとも猶予はある。それからでも間に合う。」総三さんは再び落ち着いた口調で話す。
「それに、そもそも君達では、感染者とバグスターを分離する事はできない。今動いたところで何もできない。」
「そんな…」私は落胆の言葉を発してしまった。つまり康介を助ける手立てはないと言われた様なものだ。
「…他のバグスターはどうなんだ?」香が聞く。
「ワイバンバグスターとチーターバグスターは、どちらとも感染者と分離するタイプだったらしく、感染者の存在も確認できている。どちらにしろ危険な事に変わりはないが。」
「…この状況、どうやって対処するつもりなんだ?」香は再び聞く。
「…今、バグスターウイルスが存在する世界と繋がることが出来ないか試している。そして、その世界からドクターを呼び寄せれれば、事態は収束できるはず。それともう一つ…」そう言って総三さんが取り出したのは、アルファサバイブバックルとノヴァバックルに似た金色の新たなバックルだ。
「まだ実用できていないが、私なりにバグスターについて研究して得た成果だ。この2つを使えば、理論上ならバグスターを撃破し患者…この場合なら康介を救出する事ができる。」
「なるほど…にしても、アルファバックルを何故私に押し付けようとしている?」確かに、総三の手は明らかに香の方を向いている。
「残念ながら、このアルファサバイブバックルに適性があるのは君しかいないらしい。それを分かってくれ。」
「…まぁ、しゃーないか。」香はそう言ってバックルを受け取った。
「…私にも…」
「分かっている。康介のことを頼めるのは、君しか居ないんだ。」総三さんはそう言うと私にバックルを渡した。
「…それじゃ、私はもうしばらく装置を見ている。2人も頃合いを見て頼んだぞ。」
そう言ってあの人は部屋の奥へと歩いていった。
「…うーん、味方と分かっていても、なんか胡散臭いんだよね。あの人。」香はそう言った。
「なんとなく、分かるかも」私もそう返した。
しかし、これで倒した気になってはならない。まだ希望の光が見えた程度なのだから…
丁度太陽が頂点から少し下がり始めた頃、私と香は、康介のバックルを頼りに、ある場所まで来ていた。そこは運命か否か、かつてアトランティスの事件が起きた場所だった。今は何もなく、岩側が剥き出しになっている。
「ここが…例の場所だよね?」私は不安になった為確認のため香に聞く。
「多分…」彼女も不安なのだろう、曖昧な返答をした。しかし、それは次の一声でかき消された。
「よく来たな…お前達。」そこへ現れたのはワイバン、チーター、そしてエンペラーの3人だった。
「今度こそ倒してやる!」チーターが言う。
エンペラーは黙ったままこちらを見ている。
「…康介を返してもらう!」私は新たなバックルを装着する。[BOOST…SET!]
「…そうしないと、今日を過ごせないんでね。」香もバックルを装着する。[α-survive buckle]
私はベルトのツマミに手を当て、香はキーを構える。
「「変身!!」」
[Awake!Venus!Over!KAMEN RIDER BOOST ERE-X!]
[悪道ノ鍵…][施錠…][悪魔ノ覇道…仮面ライダー悪道…]
私の身体には、ウォーズ・ノヴァと同型の鎧が装着される。しかし、左胸部にはZではなく「X」の文字が現れ、全身は金色に輝く。頭部の冠は青く光り、瞳は通常のエレクス同様赤く染まる。仮面ライダーブーストエレクス、それが今の私の名だ。
一方、香はビクトリケーンではなく、最終決戦の時、総三の元から盗んだアルファサバイブバックルで変身した悪道に再び変身する。今度はちゃんと人間が変身しても無害になる様に作られているのか、苦しむ様子もない。
「行こう…香…早苗。」私は、気にすることなく2人の名を呼んだ。しかし、この時なんで早苗の名前まで呼んだのだろう…
「…ああ、3人で…勝とうぜ!」悪道は剣を構え走り出す。私もそれに続き歩き始める。
悪道はチーターバグスターと交戦する。チーターバグスターは、得意のスピードで勝負に出る。悪道の周りを走り回って混乱させようと目論む。
「…スピード自慢の常套句だな…狩には、「罠」を仕掛けないとね。」そう言うと、悪道は剣を蛇の様に展開して地面に叩きつける。
それを何度か続けるうちに、剣に突然荷重がかかる。チーターが剣に激突した様だ。
「なんで…」チーターは見切られた事に混乱していた。
「お前が走ることしか考えていないからだ。」悪道は剣を収納する。
「チクショー!」チーターは爪を構え悪道に向かって走り出す。
「はあっ!」そのチーターに悪道は剣を構え、左肩から腹部に向かって切り裂く。
チーターが再び身体を起こしたときには、既に悪道が必殺技を発動させていた。
[再施錠…][悪道炎舞!]
「行こう…早苗!」悪道は、剣を最大限展開して竜の様に変える。その剣を無数に振り下ろす。それら全てがチーターの元に一つ、また一つと振り下ろされ身体を斬りつける。逃げようにも逃げられない。
悪道は、それらを終え剣を一度収納する。
「やあっ!」最後に剣を突き刺す構えを取った。その悪道の攻撃に合わせて剣が一直線にチーターの方へ伸び奴の身体を突き刺した。
チーターは、最後の言葉を発する事すらできずに爆散してしまった。
次に私の番だ。
私とワイバンはゆっくり距離を詰める。
「攻めないのなら、こちらから行くまで!」そう言ってワイバンは剣を振りかぶり私に向かって振り下ろす。
私はそれを待っていた。奴の攻撃は一つ一つの動作が大きい、それは隙も大きいと言う事だ。ならそこを攻めればいい。私は腹部へ電撃を纏った拳をぶつける。
奴はしばらく感電した素振りを見せ硬直する。そこへ私が今度は左拳をぶつける。
大きく後退したワイバンは地面に膝をつける。
「私のプレイにシビレなさい!」
[Awake open!][Ω-Voltage ERE-X lightning!]
私は、つまみを回転させ必殺技を発動させる。
ワイバンは立ち上がり反撃しようと試みるが、電気の鎖に繋がれて身動きが取れない。その隙に私は空高くジャンプ、そして両脚を突き出し、雷の様なドロップキックを炸裂させる。
「はっ!」
そのキックはワイバンに命中、それと同時に爆散した。
「その腕…貴様こそ強者だ!!」奴は最後までゲームキャラらしい大袈裟で格好つけた台詞を言いながら消滅していった。
それぞれ敵を倒した私たちは合流してエンペラーの元へ迫る。
「さぁ、ラスボス撃破といこうじゃない!」悪道が最初に攻撃を仕掛ける。エンペラーはそれを受けるが、身体に傷はつかない。
次に私が蹴りを見舞う、しかし、これも効く様子はない。
エンペラーが反撃を行う。私は左拳で殴り飛ばされる。更に悪道へキックを繰り出す。
私達2人はまた地面に転がる。
「ぐっ…こんな所で!」悪道は、そう言ってエンペラーを見上げる。
「そうよ…私は、康介を救う…救ってみせる!」そう、私は口にした。私に取って大切な人を…絶対に救う!
その時だった、私達の後ろに誰かがいる様な気がした。それはまさに奇跡と言っても過言ではない…そんな人物がいた。
[マイティアクションX!]彼は、先程の戦士が身につけていたベルトと、ピンク色のカセットを持っている。それを起動したと同時に、エリアが広がり、この空間がゲームのステージの様に変わっていく。
「大変身!」白衣を来た戦士は、腕を大きく振りかぶり、そう口にした。そしてカセットを装填、ドライバーのレバーを開いた。
[ガッチャーン!レベルアップ!][マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!X!]
その人は、自身の前に現れたキャラを選択、そしてベルトから現れたピンク色の画面をすり抜け、ライダーへと変身する。
特徴的なピンク色の髪の毛、ゴーグルにオレンジの瞳、胸部にはコントローラの様な模様、全身はピンクに包まれ、すごい派手だ。派手以外の何者でもない。
「お前らがエレクスと悪道…?」その人物は私達に問う。
「ええ…そうだけど。」
「アンタのとこのおっさんから話は聞いてる。俺はエグゼイド。バグスター専門のライダーであり医者だ。」おっさん…というのは総三さんのことだろう…とにかく、彼が専門の医師なのだろう。
「…エグゼイド、協力して康介を助けて。」私は、エグゼイドに言う。
「ああ、康介の運命は、俺達が変えてやらないとな。」あっ、この人も決め台詞に運命ってつけるタイプの人なのかな…
「エグゼイド、準備はできてるか?」悪道が問う。
「ああ、どんなゲームだろうと、ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」その声と共に、私たちは反撃を始める。
まず先程と同じように私達が剣と拳で攻撃を仕掛ける。どちらもエンペラーには効かない、がその後にエグゼイドが手にしたハンマーで攻撃、それは効いたのかエンペラーは後ろに後退する。
「流石は本場、効き具合が違うね。」悪道が言う。
「まぁな、俺のプレイが炸裂するぜ。」そう言ってエグゼイドはハンマーのBボタンを3回連打、それを打ちつける。[HIT]のエフェクトと共にエンペラーは後退する。更にもう一度ボタンを3回連打、それを打ちつける。
[ジャッキーン!]ハンマーを剣に変え、今度は赤いガシャットを取り出し装填した。
「私も混ぜてもらう!」
「いいぜ!」
[ガシャット!][キメワザ!][ゲキトツクリティカルフィニッシュ!]
[再施錠…][悪道炎舞!]
赤と白い斬撃が、エンペラーに膝をつかせる事に成功した。
「今よ!一美!」
「分かった!」[Awake open!][Ω-Voltage ERE-X lightning!]私は再びキックを発動させる。
「低レベル縛りでクリアと行こうか!」彼も、腰にベルトに装着しているガシャットを左腰のスロットに装填する。
[ガシャット!][キメワザ!][マイティクリティカルストライク!]
私達は空へと飛び、エンペラーに向かって脚を突き出す。ゲームエフェクトの様なポップなエフェクトと稲妻の様な攻撃がエンペラーに激突する。
エンペラーはキックを喰らい後退、満身創痍で両腕を上げ、爆散してしまう。
[ゲームクリア!]
「勝った…康介!」
私は、爆炎の中から康介を見つける。彼の身体は、元に戻っている。
「一美?」康介は、そう自らの口でそう言った。私は感極まってつい抱きついてしまった。
「よかった!!」
その頃、物陰で1人の男が、パットに何かを収めていた。そこには、[ウォーズクロニクル][ナイトオブサファリ][エンシェントライドドラゴン]と書かれている。
「成功…だな。」そう言ってその場を去っていった。
私達は、エグゼイドと共に総三の待つ場所へ帰る。
「うん、術後経過は良好、だね。」エグゼイドだった彼は、先程の少し強圧的な態度から一変、好青年の様な口調で康介に話しかける。
「ああありがとうございます!こんな…こんな宝生永夢先生に診てもらえるなんて、光栄です!」そうだ、こいつ重度のライダーオタクだった。そんな事すっかり忘れてた。だいたい、この設定使われたの殆どコラボとか番外編ばっかで、本編じゃ空気だったじゃないか…
「…ちょっと大袈裟な気もするけど、笑顔になってよかった。」
永夢先生は、笑顔で彼を見ている。
「先生、そろそろお時間です。」そこへ総三さんが入ってきた。恐らく、ゲートが開いたのだろう。ちなみに、これは実際に使えるものらしい。これで過去にも「ロック」というライダーを送り届けたらしい。アンタの科学力どっから出てくる?
「はい、それじゃ。」永夢先生は、立ち上がり総三と共に歩き出す。
「先生!ありがとうございました!」
「アンタ声でかいよ!」興奮する康介を香は宥める。
その隙にも先生はゲートのある部屋に向かっている。私は、どうしても聞きたいことがあって先生を追いかける。
「待ってください!」
「…どうしたの?一美さん?」永夢先生は振り返って聞く。
「…あの、こんな事、お医者さんに聞くのは無礼だと承知で聞きます。患者を救えなかった時、後悔しますか?」
私にとってずっと心に残っている後悔、早苗を死なせてしまった事…それが今回の件と被って見えた。その行き場のない感情が今にも溢れそうだった。誰に言えばいいか分からない…。その答えを、誰かに見つけて欲しかったのだろう…人の死に一番近い医者なら、答えてくれると…
「…やっぱり、僕にだって救えない命は沢山あったし、これからもあると思う。救えなかったって後悔するし、その人を思い出して悲しくなる時もあるよ。でも、前を向かなきゃ、もっと救える命も救えなくなる…これで答えになっているか分からないけど。後悔するけど、それと同時に、更に誰かを救いたいって前向きになる。」
更に誰かを救いたい…か。
「答えになった?」
「ありがとうございます…!」
「一美さん…頑張ってね。」そう言うと、永夢先生はゲートの中へと入っていった。
私は、この件で前向きになれた気がする。これからも、私は戦う、誰かを救うために!早苗、見てて欲しい、私の変身を…!