ギャラクシーエンジェルⅡ ~失われた英雄と心に傷を負った天使~   作:ゼクス

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短めですが、六章の始まりです。


第6章 亡霊との再会
6-1


 セルダール方面の宙域。

 その宙域を黒く塗装された艦隊が進んでいた。

 艦隊が進む先には一つの惑星があった。フォルテ・シュトーレンが首魁とされるクーデター軍は、セルダール支配以降、近場の星々を侵略し幾つかの星を征服する事に成功していた。

 今、宇宙空間を進んでいる艦隊は新たな星を侵略する為の先遣艦隊。強力無比な無人艦隊は、与えられた指示のまま次なる星を征服しようとしていたが、突如として艦隊の動きが変わり、星がある方角とは別の方向に進み出した。

 何もないはずの宇宙空間。しかし、彼らに備わったあるセンサーが星の侵略よりも重要度の高いように設定された命令に従って進んで行く。

 艦隊が進む先にあったのは、宇宙のデブリベルト。巨大な艦が入り込むには不向きなその場所に、まるで誘導されるように艦は進んで行く。

 そしてデブリベルトに集まった小惑星の岩の類をセンサーが捉えれば、即座に無人艦隊はレーザー砲を撃ち出して艦が進む為の道を作る為に破壊していく。

 序でに艦のセンサーが捉えた優先対象を破壊出来れば良いと、無慈悲な攻撃がデブリベルトを襲い続け、次の瞬間、一隻の艦が上方から放たれたレーザーによって撃ち抜かれて爆散した。

 

 ドォンッ!!

 

 味方機が一瞬の内に破壊された他の無人艦隊は、混乱するように隊列を乱す。

 機械のAIで動いている彼らには人のような動揺の類は無い。だが、現実的に彼らは混乱していた。何故ならば先ほどまで確かに攻撃したデブリベルト内にあった筈の標的の反応が、何時の間にか自分達のセンサーの上方に現れて攻撃されたのだから。

 そして攻撃を行なった相手は、その動揺が収まらない内に上方から落下する勢いで下に進み、両翼に備わっているミサイルポットから小型のミサイルを撃ち出して他の艦隊に次々と当てて爆発させていく。

 爆煙を突き破るように飛び出したのは、闇色のダークブルーの色合いの主翼部分が一部ピンクに染まった『EDEN(エデン)』製の『紋章機』に酷似した機体-『ファントムシューター』だった。

 敵機の存在を確認した無事な無人艦は、即座に攻撃を開始する。

 レーザー砲や実体弾が飛び交う中を、ファントムシューターは機械のような精密な動きで全て回避し、逆に中距離レーザー砲や大型バレルレールガンで反撃して次々と艦艇を沈めていく。

 それから三十分後には全ての無人艦は沈められ、ファントムシューターは自らが発生させた闇の中へと去って行った。

 

 

 

 

 

『おのれ! おのれ! イレギュラー――!!!』

 

 またしてもファントムシューターによる侵略の先遣部隊全滅の報を聞いたヴェレルが、画面の中で怒りを露わにしていた。

 その怒りの声に、セルダールにいるヴェレルの協力者達である『EDEN(エデン)』排斥派の『NEUE(ノイエ)』の者達は縮こまるしかない。

 当初こそ策略が上手く嵌まり、このまま行けば『EDEN(エデン)』の者達を排して、自分達こそが『NEUE(ノイエ)』の支配者になれると思っていた彼らだが、遅々として進まない侵攻。加えて先日のディータのマジーク攻略が完全に失敗に終わるどころか、マジーク政府が正式に『EDEN(エデン)』軍と共にセルダールの解放を宣言した事で雲行きが怪しくなって来ていた。

 マジークに対抗できるセルダール騎士団は、クーデター軍に協力する筈もなく、もしも無理やり戦場に出して途中で裏切られでもしたら目も当てらないどころの騒ぎではない。

 彼らの中には最早栄光への道がひしひしと崩れていく足音が聞こえて来ていた。

 

(やれやれ。所詮は借り物の力に溺れた連中だね)

 

 通信越しで喚くヴェレルと『EDEN(エデン)』排斥派の醜態を壁に寄りかかっていた見ていたフォルテは、呆れたように眺めていた。

 

(まっ、此処まで『ゴースト』が、積極的に自分達の邪魔をするとは思ってなかったんだろうね)

 

 『NEUE(ノイエ)』宇宙を目的が不明なまま、飛び回り続けていたファントムシューター。

 事前に『EDEN(エデン)』軍が追っている情報を掴んでいたことから、クーデター軍内では積極的に自分達の邪魔をしないと楽観視していた面があった。

 だが、実際は『ABSOLUTE(アブソリュート)』に在る『セントラルグロウブ』の占拠からファントムシューターは関わり、今では本格的にクーデター軍の侵攻を阻んでいる。

 これに関してはフォルテにとっても嬉しい誤算だった。

 

(まっ、ちょいとゴーストのやり方には気になるところがあるんだけど……アタシは関われないようにされてるからね)

 

 『EDEN(エデン)』製の『紋章機』に酷似した機体であるファントムシューターと、正式な『EDEN(エデン)』製の『紋章機』である『GA-004 ハッピートリガー』の正式な搭乗者であるフォルテ。

 これらが出会った時に何が起こるか分からない為に、ファントムシューター関連の件には、フォルテは関われないようにされていた。

 

(慎重さと臆病さは違うもんだよ、ヴェレル)

 

 もしもファントムシューターの討伐を命じられれば、()()()()()()()()フォルテは逆らう事が出来ない。例えファントムシューターの背後に何者がいるとしてもだ。

 

(自分達の弱みを強みに変える……アンタは得意だったね)

 

 帽子に手をやり顔を隠すようにフォルテは俯く。

 それと同時にドォンっと建物が揺れる音が響き渡った。

 

『何事だ!?』

 

「だ、脱走者です! 騎士団が協力して、『リリィ・C・シャーベット』が『紋章機』に乗って脱出を!?」

 

『何だと!? すぐに追撃を行なえ! 絶対に逃すな!!』

 

(頼んだよ、リリィ。逃げ延びとくれ)

 

 慌ただしく動き回る者達を眺めながら、フォルテは自らの後輩の無事を願うのだった。

 

 

 

 

 

 セルダールの惑星から飛び出すように一機の槍を思わせるような形状をした両翼を前方に向けたディープブルーカラーの『NEUE(ノイエ)製の紋章機』-『RA-002 イーグルゲイザー』が、宇宙空間を突き進む。

 

「くっ! 何としても逃げ延びてルクシオールに辿り着かなければ!」

 

 背後から追跡して来る無人艦隊のレーザー砲や砲撃を必死に回避しながら、蒼い髪で左目を覆い隠している騎士然とした服を纏っている少女-『リリィ・C・シャーベット』が叫んだ。

 仲間であるセルダール騎士団の協力もあって、何とかクーデター軍に支配されているセルダールから自身の『紋章機』であるイーグルゲイザーに乗って脱出できたリリィだったが、背後から迫る無人艦隊の容赦ない攻撃に機体が被弾していく。

 このままでは不味いと僅かに焦りを覚えた瞬間、前方が一瞬光るのをリリィは目にする。

 

「しまった!? 回り込まれたのか!?」

 

 一瞬の光を攻撃だと思ったリリィは、思わず来るであろう衝撃に備えて目をつむる。

 

 ドォン!!

 

「なに!?」

 

 だが、リリィが来ると思った衝撃は来る事なく、逆に後方から追撃していた無人艦が一隻爆発した。

 一体何がとリリィが疑問に思う中、イーゲルゲイザーの横を通り過ぎるようにダークブルーカラーの機体。ファントムシューターが通り過ぎて、そのままリリィを追っていた無人艦隊に襲い掛かった。

 

「今のは!? まさか、ゴーストなのか!?」

 

 脱出の為の事前の情報収集の中に、クーデター軍にゲリラ戦を仕掛けているファントムシューターの情報をリリィは得ていた。

 だが、まさか、自分の脱出の援護までして来るとは夢にも思ってなかったリリィだが、とにかく助かった事は確かだった。

 

(だが、どうする!? このまま反転してゴーストに加勢するか? それとも追っ手を任せて逃げ延びるべきか?)

 

 自身の役目を考えれば、ゴーストに後を任せて逃げるべき。

 だが、騎士としての自分が囮役を買って出てくれたファントムシューターを見過ごせないとリリィが思い悩んでいると、通信を知らせる音声が響く。

 

「通信? 一体誰から? いや、まさか!?」

 

 この状況で通信を送って来る相手など、それしか考えられず、リリィは通信を繋いだ。

 

『あ~、聞こえるかい? 其処の『紋章機』のパイロット?』

 

「誰だ!?」

 

 通信から聞こえて来たのは、明らかに合成音だと分かる男性寄りの声。

 

『う~ん。名乗りたいんだけど、こっちにも事情があってね。とにかくこの場は俺達に任せて、君は逃げてくれ。セルダールから無理をして逃げ出して来たんだろう? なら、何か重要な情報を君は持っていると俺は判断した。それはきっとレスター達にとって重要な情報の筈だ』

 

「クールダラス司令を知っているのか!?」

 

『うん。まぁね。ああ、そうそう、早急にレスター達と合流したいんだったら。此処に向かうと良いよ』

 

 ピピッとイーゲルゲイザーに何かのデータが送信されて来た。

 リリィは不審に思いながらも、そのデータを確認する。送信されて来たデータには、リリィが逃走経路として考えていたセルダールとマジークの間にある小惑星帯の座標が表示された。

 そして送られて来たデータには、小惑星帯に向かっている四機の『紋章機』の反応がある事も示されていた。

 

「これは!?」

 

『その小惑星帯に『NEUE(ノイエ)製の紋章機』が向かってるのは間違いない。だから、君は其処に向かうんだ』

 

「まさか!? 我々の『紋章機』の反応を感知できるのか、ゴーストは!?」

 

 驚くべき事実。

 だが、リリィは同時に心の何処かで納得出来た。ルーンエンジェル隊の一員としてリリィは、ファントムシューターの追跡の任務を受けていた。

 しかし、追っても追ってもファントムシューターを捕捉する事も出来なかった。その理由がファントムシューター側は一方的に他の『NEUE(ノイエ)製の紋章機』の反応を感知できることだったとすれば、全て納得がいく。

 捕えられる筈がないのだ。何故なら相手側だけ一方的に、リリィ達が乗る『紋章機』の反応を感知できるのだから、幾ら追いかけても『NEUE(ノイエ)製の紋章機』がある限り、ファントムシューターはその反応を感知して去っていく。

 

『そんなところさ。とにかく君は逃げてくれ。俺達も頃合いを見計らって逃げるから』

 

 言い終えると共に通信が切れた。

 

「くっ! この借りは何時か必ず返す!」

 

 思うところは多々あっても、今はこの場の窮地から逃げる事が先決だと判断したリリィは、イーグルゲイザーを加速させ、背後で行なわれている戦闘から去って行った。

 

(漸く行ってくれたか)

 

 センサーで遠ざかっていくイーグルゲイザーを確認し安堵の息を吐く。

 その間にも苛烈な攻撃がファントムシューターに向かって放たれるが、最小限の動きで回避し、逆にミサイルポットから放たれたミサイルで艦艇が撃破されていく。

 

(どのくらい時間を稼げそうだい?)

 

(本機の現状を確認……残弾数及びエネルギー値から計測……10分と推定)

 

(充分だ。ならギリギリまで時間をかせっ!?)

 

 一隻の艦艇から他の艦艇を巻き込むように放たれたレーザーが、ファントムシューターの片側のスラスターに直撃した。

 

(背部スラスター損傷!? 機動力低下!)

 

(あちゃ~……やっぱりセルダールに近づきすぎたか)

 

 今の攻撃は無人艦のAIが判断して出来る攻撃ではない。誰かの意図があっての攻撃。

 その相手が、誰なのかがファントムシューターの内部に居る者はすぐに分かった。

 

(君が相手なら、俺も決死で挑まないとな、フォルテ!?)

 

 これまでと違う艦隊の動きに危険を感じながらも、ファントムシューターは今まで以上に苛烈な攻撃を繰り出す艦隊を相手に戦いを繰り広げるのだった。

『無限回廊の鍵』で登場のロゼルの役割

  • リコに接近
  • ちとせに接近
  • 別ヒロインと結ばれる
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