ギャラクシーエンジェルⅡ ~失われた英雄と心に傷を負った天使~ 作:ゼクス
7-1
(アレからもう数日か)
格納庫にやって来たカズヤは、既に破損していた装甲の修復が終わり、ハンガーに吊るされたままのファントムシューターを眺めていた。
そんなカズヤの傍に、他の『紋章機』の整備をしていたクロワが近寄って来る。
「よぉ、また来たんだ」
「あっ、班長。はい……どうですか?」
「さぁな。こっちのスキャンは全く通さねぇ上に、ちとせの嬢ちゃんが乗ったままだから下手に手出しも出来ない。ファントムシューターも、あのマイヤーズって奴も、ずっと黙ったままだ。唯一、ちとせの嬢ちゃんの生命反応だけ出てるがよぉ……」
それでも安心できないと言うように、クロワはファントムシューターを見つめる。
その理由をカズヤも知っていた。
(『黒き月』の思想か……)
『
だが、それと対を為し、今は破壊されて消滅した『黒き月』と呼ばれる物が存在していた事は知らなかった。
その『黒き月』の思想が、今カズヤ達が戦っているクーデター軍が使用している無人機を主として扱い、人間を否定、或いは道具として扱うものだとは知らなかった。
そしてファントムシューターは『紋章機』でありながらも、他の『白き月』の思想から製作された機体ではなく、『黒き月』の思想を中心に添えているとタクトは説明した。
(そんな機体に乗ってちとせさんは、本当に無事なのか!?)
もしかしたら、もうちとせ本人の意思が失われてしまっているかもしれない。
やはりタクトの言う通り、乗せるべきでは無かったのではとカズヤは後悔する。
「坊主。信じようぜ、ちとせの嬢ちゃんとマイヤーズって奴をよぉ」
「班長?」
「ちとせの嬢ちゃんは必ず戻るって言ったんだ。なら、ソイツを信じて待とうぜ。それによぉ。惚れた女を護れねぇなんざ男の風上にもおけねぇ! 聞こえってかぁ! マイヤーズって野郎!? ちとせの嬢ちゃんに何かあったら、俺達整備班がおめぇをぜってぇ赦さねえぞ! なら、お前らぁ!」
『うぃーす!!』
「せやでぇーー!!」
「あははっ……」
(マイヤーズさん。指令も四年間分の仕事をさせるとか言ってたし、身体が戻ったら戻ったで大変そうだなぁ)
将来的なタクトの未来に、カズヤは僅かに同情を感じずにはいられなかった。
「おう、そうだ。坊主。イーグルゲイザーの事だが、修理は終わったって、艦長に伝えといてくれ」
「分かりました。それじゃあ、失礼します」
カズヤは挨拶をすると、ブリッジに向かう為に格納庫から出て通路を出た。
(そうか。リリィ先輩の機体。イーグルゲイザーの修理が終わったんだ)
クーデター軍が支配する惑星セルダールから、脱出する時にリリィが乗って来た『紋章機』であるイーグルゲイザー。
途中から追っ手をファントムシューターが相手してくれたとは言え、やはり甚大なダメージを受けていた事には変わりなく、修理には時間が掛かってしまった。
だが、そのイーグルゲイザーの修理も終わり、漸くルクシオールに最初から登録されていた四機の『紋章機』である『RA-001 クロスキャリバー』、『RA-002 イーグルゲイザー』、『RA-003 ファーストエイダー』、『RA-004 スペルキャスター』が揃った。
それに加えてアニスが個人で所有していた『RA-005 レリックレイダー』も合わさって、合計の五機の『
(そして僕の機体であるブレイブハートもある。戦力はかなり揃ったな……それにファントムシューターも……いや、兵装を殆ど失っている以上、戦力としては当てには出来ない)
ちとせが乗った事でファントムシューターに、課せられていると言うリミッターが一つ外れた。
これによって間違いなくファントムシューターは強化された。今はそのシステムの最適化中らしいが……肝心の兵装の大半が失われてしまっている。
兵装が機体と一体となっている『
だが、ルクシオールは『
『
唯一、破壊を免れた大口径の大型ロングバレルレールガンはそのままだが、残弾数は僅か3発しか残っていなかった。
(クールダラス指令も、当てにする気が無いみたいだし、僕らで頑張るしかない)
決意を新たにしながら、カズヤはブリッジに向かう為にルクシオールの通路を進んで行く。
「んっ?」
「あっ、シャ、シャーベット先輩……」
ブリッジへと続くエレベーターの前でリリィとカズヤは出くわした。
「シラナミ少尉か?」
「は、はい。あっ、今更ですけど、僕はカズヤ・シラナミです。挨拶が遅れて、すみません」
リリィとは数日前の出来事で顔を会わせていたが、その後の騒ぎに加え、リリィは今日まで医務室で過ごしていた。
セルダールからたった一人で脱出してきただけに、やはりかなり負担が掛かっていたのか、検査をした医務官のモルデンから暫らく絶対安静の通達をリリィは受けたのだ。
「気にしなくていい。あの騒ぎだったのだし、私はつい先ほどまで医務室で過ごしていたのだから。では、私も改めて自己紹介しよう。私は、リリィ・C・シャーベット。『EDEN《エデン》』軍の階級としては中尉だ。既に知っていると思うが、ルーンエンジェル隊のメンバーでもある。よろしくな」
「はい、宜しくお願いします、先輩」
「先輩か……NGだな……」
「は?」
「まぁいい。ところでシラナミ少尉はどうして此処に? 私は退院した事をブリッジにいるクールダラス司令に報告に行く途中だったのだが」
「あっ。そうだ。実は整備班の班長から先輩の『紋章機』イーグルゲイザーの修理が終わった事を伝えられて、司令にその報告に行こうとしていたところなんです」
「そうか。イーグルゲイザーも修理が終わったか。脱出の時にかなり無理をさせてしまったからな。無事に修理が終わって何よりだ」
(先輩。嬉しそうだな)
リリィが口元で薄く微笑んでいる事にカズヤも少し嬉しくなった。
(僕もブレイブハートが壊れたりしたら悲しいからなぁ』
何時の間にか、自分がブレイブハートを愛機として思っている事にカズヤは気が付いた。
リリィもそんな気持ちなのだろうかと思いながらカズヤは、一緒にエレベーターに乗ってブリッジに着く。
「シラナミ、入ります」
「シャーベットに同じく」
「ん? カズヤにリリィか」
「珍しい組み合わせね」
「二人ともどうしたのっと言うよりも、リリィさん。大丈夫なの?」
「ブルーベリー士官。問題はない。医務官のモルデン殿から退院の許可を得たので、その報告に来たのだ。シラナミ少尉とはエレベーターの前で偶然会っただけだ」
「僕の方は整備班の班長からイーグルゲイザーの修理が終わった事を伝えるように頼まれたので、その為にブリッジに来ました」
「そうか。二人とも報告ご苦労。しかし、漸くイーグルゲイザーの修理が終わったか。リリィも復帰し、これで一つの目途がついたな」
「ん? どう言う事だ、クールダラス司令」
意味深な言葉を呟いたレスターに、リリィが質問する。
ゆっくりとレスターは、カズヤとリリィに身体を向けて説明する。
「後でエンジェル隊の全員集めてから報告するつもりだったが、先に二人には説明しておこう。先ほどマジークに残ったランファから通信があって、二日後にマジーク艦隊が我々のいる宙域に向かって出撃する。そして合流後、我々はセルダールの奪還に向けて動き出す」
『っ!?』
(遂にセルダールの奪還に向けて動き出す!)
漸くこの時が来たとカズヤとリリィの目に力が籠る。
特にリリィは自らの故郷である星を救う時が来た事を知って、武者震いするように身体を震わせている。
「そして二人に先に説明したのは、他でもない。今回の任務に置いてブレイブハートとイーグルゲイザーは重要な役割を担う事になるからだ」
「ブレイブハートとシャーベット先輩のイーグルゲイザーが、ですか?」
「どう言う事か、説明して欲しい」
「分かっている。先ずセルダール解放の際、我々は何においてもしなければならないのは敵軍の壊滅ではなく、衛星軌道上の何処かに配置されていると言うクラストブレイカーの破壊だ」
セルダールを支配下においているクーデター軍の無人艦隊も脅威には違いない。
だが、それ以上に脅威なのはリリィが知らせてくれた衛星軌道上に配置されていると言う地殻破壊爆弾。クラストブレイカーの存在。
「これは俺の勘だが、奴らは自分達が危機的状態になれば、躊躇う事無くセルダールにクラストブレイカーを落とすだろう」
「そんな!? セルダールは『
「確かにな。だが、クーデター軍の真の首謀者は『ヴェレル』だ」
「……なるほど。奴にとってはセルダールも一惑星でしかない。追い込まれれば、躊躇いなく捨てるだろう」
クーデター軍の背後にいる真の首謀者である『ヴェレル』には、『
出身者で無いのならば感慨もなく、セルダールを切り捨てるのは目に見えていた。
『
「解放時に俺達が行なわなければならないのは、クラストブレイカーの破壊だ。その為にカズヤ。お前には戦いの中で幾度か合体を繰り返して貰う事になるだろう」
「ええっ!? それって最初にアニスと出会った時みたいにですか!?」
カズヤの脳裏に浮かんだのは、一番最初の出撃の時に『クロスキャリバー』から『スペルキャスター』へ再合体を行なった時。
あの時は周りから邪魔が入らなかったので問題なく再合体できたが、それ以降の戦いでは一度も再合体を行なった事が無い。レーザー砲や砲弾が飛び交う戦場の中での合体の変更は危険極まりないからだ。
だが、残念ながら次の戦場ではどうしてもその必要があるとレスターは考えていた。
「俺達はクラストブレイカーが置かれている衛星軌道上の位置が分からない。つまり、戦いながら索敵するしかない以上、先ず索敵能力に優れているテキーラの『スペルキャスター』との合体は必須だ」
「はい」
「索敵後に位置が判明した後にはm遠距離攻撃に特化したリリィの『イーグルゲイザー』と再合体して貰う。リリィには合体時に全力で攻撃して貰い、クラストブレイカーのブースターを損傷、或いは破壊して貰い、セルダールへの落下を阻止して貰う」
「OKだ。その大役必ず成し遂げる事を約束しよう」
故郷で在り、主君や仲間の騎士団、そしてセルダールの民達を救う為の重大な役割を聞かされて、リリィのテンションは燃え上がった。
「そしてクラストブレイカーのブースターが使用不可能になった後は、『クロスキャリバー』か『レリックレイダー』のどちらかと再合体。圧倒的な火力で完全にクラストブレイカーを破壊して貰う」
「今のところは合計三回、カズヤ君にはブレイブハートで『紋章機』と合体して貰う事になると思うわ。状況によっては回数は更に増えるかも知れない」
「ナノナノちゃんのファーストエイダーには、その合体の度に機体の修繕をして貰う予定だけど、大変なミッションになると思う」
過酷な任務になる事は確実。だが、カズヤとエンジェル隊員には、この任務をこなして貰わなければならない。
そうでなければ、セルダールを救う事は出来ないのだから。
「分かりました。必ずやり遂げてみせます!」
レスター達の期待に応えられるように、カズヤは力強く返事を返した。
「とは言っても、全てはマジーク艦隊と合流してからだ。それまではまだ時間もある。カズヤとリリィも、そして他のエンジェル隊の皆もそれまでは英気を養っておいてくれ」
「分かりました。失礼します」
「では、私も失礼する」
カズヤとリリィは揃って敬礼を行ない、ブリッジから出て行った。
その姿がエレベーターの中に消えた後に、レスターは何となしに呟いてしまう。
「遠距離攻撃か……」
「………」
「………」
ココとアルモはレスターの呟きに、僅かに顔を伏せた。
二人ともレスターと同じ想像をしていた。彼らの脳裏に浮かぶのは、一機の『紋章機』に乗って次々と遠距離から敵艦を沈めた女性の姿。
戦場に出る度に、他の『紋章機』を超える戦果を必ず挙げ、瞬く間にエースの座を得た。
リリィも遠距離戦では他のルーンエンジェル隊のメンバーでは出せない実力を発揮しているが、レスター、ココ、アルモは知っている。今のリリィでは足元にも及ばない遠距離射撃の名手を。
不利な戦況を一瞬にして一変させ、常に信頼出来る指揮官と共に自分達を勝利に導いてくれた天使を。
「………タクト、ちとせ……俺達は、またお前達に重過ぎるものを背負わせてしまうのか」
今は格納庫で、静かにまるで翼を休めるように沈黙しているファントムシューター。
出来る事ならばレスター達はこのまま事態が終結するその時まで、ファントムシューターが沈黙し続け、『
タクト・マイヤーズと烏丸ちとせの二人が、仲間の危機に駆け付けない筈がないのだから。
「はぁ、はぁ、はぁっ……くっ!」
荒い息を吐きながら、ちとせは手に握る操縦桿を操作してモニターに映る敵からの攻撃を回避しようとする。
しかし、彼女の意思に反して操作しようとしている機体の反応は鈍い。それは機体のエネルギーの残量が殆どない為。幾ら強力な機体でも、動かす為のエネルギーが無ければ思うように動かないに決まってる。
ちとせにとって忘れることが出来ない攻撃が次々と機体に直撃し、損傷が酷くなっていく。
最早何度見たかちとせ本人にも分からないほどに、呪いを施される前から眠る度に見続け来た悪夢。
呪いによってその悪夢は現実と見紛うほどになり、ちとせの心を壊そうと牙を突き立てる。だが……。
「ちとせ! 下だ!」
「はい!」
誰よりも信頼するその声に従い、ちとせは操縦桿を操作する。
すると、今は現実では失われた機体であるシャープシューターのブースターが噴出し、直撃しようとしていた攻撃の嵐を下に落ちるような形で回避した。そのまま敵は追撃を行なうが、シャープシューターは危なげなく回避していく。
それはちとせ一人で、悪夢を見ていた時には出来なかった。当たり前だ。
『悪夢の呪い』は、その者の精神を壊す為に最も苦しい思い出を再現し、抗おうとする意思さえも折ろうとするためにより凶悪になって襲い掛かって来る。故にちとせがどんなに頑張ろうと、悪夢は変化する事が無い。
その悪夢の中に入り込んだイレギュラーがいなければ。
「いや~、何とか今の攻撃は回避出来たか」
「……タクトさん」
自身の隣に座っている一番大切な愛する人の声に、ちとせは涙が零れそうになるのを抑えるのが大変だった。
ちとせの隣に座っているのはトランスバール皇国軍の制服を身に纏い、マントを付けた黒髪黒目の男性。ずっとちとせが会いたかったタクト・マイヤーズが、本人の意思と姿でちとせの隣にいた。
「それにしても、やっぱり俺の指示なら今みたいに攻撃を回避できるんだな」
「はい。恐らくこれがカルーアさんとテキーラさんが言っていた、タクトさんなら私を悪夢から救えると言う意味だと思います……実際、こうしてタクトさん本人の意思が現れるまでは、ただ、あの時の状況を再現してソレを幾度も経験するだけでしたから……」
「そうか……ちとせ。こんなにも俺は君に苦しい思いをさせ続けていたんだな」
苦悩するようにタクトは伝わって来るちとせの気持ちと。忘れもしないタクトにとっても悪夢の光景を前にして思わず呟いてしまった。
ちとせだけを逃がした事にはタクトは後悔はしていない。もしそうしなければ、ちとせも『アナザースペース』に残ったまま、『ウィル』に捕らえられ、現実の自分と同じように肉体を失っていたかも知れない。
それを防げたのだから後悔はしない。だが、ずっと四年間、一人だけ『アナザースペース』から逃がされたちとせの気持ちを考えなかったのは、深く後悔していた。
(俺は自分が拒絶されてしまうかも知れない恐怖だけを考えて、ちとせがどんな気持ちで居るのか考えていなかった! 大馬鹿だ!)
「ちとせ、俺は……」
「良いんです……今なら私も……タクトさんが、どうして会いに来なかったのか分かっていますから」
タクトがちとせの気持ちを感じているように、ちとせもまたファントムシューターという現実で自らが乗り込んだ『禁断の紋章機』に乗った事で理解してしまった。
知らない知識が悪夢の中でも時間が経つ事に、脳裏に刻まれていくのをちとせは感じていた。
それはファントムシューターに搭載されている『
「『禁断の紋章機』……ファントムシューターは、タクトさんの言う通りだったんですね」
ちとせは知った。何故ファントムシューターに自分が乗る事を、タクトが頑なに拒絶していたのかを。
だが、最早手遅れ。古の時代より課せられた運命は、ちとせとタクトを選び、最早その目的を遂げる時まで決して二人を逃がさない。
「……ちとせ。俺は決めたよ」
だからこそ、タクトの心は決まった。
「タクトさん……まさか、駄目です!」
唯一運命から逃れる方法があるとすれば、それはファントムシューターに保護されている精神であるタクトが居なくなること。
しかし、タクトは現実で肉体を失ってしまっている。現状でファントムシューターから離れる事は、タクトの死を意味する。
「そ、それだけは止めて下さい! わ、私なら構いませんから!」
またタクトが居なくなってしまうかも知れない恐怖に駆られ、ちとせは目から涙を流して懇願した。
その声にタクトは困ったような顔をしながら、ちとせに告げる。
「あ~、ちとせ。勘違いしているみたいだけど、俺はファントムシューターから離れたりしないよ」
「えっ? あ、あの、では、決めたと言うのは?」
「ちとせと一緒に運命を乗り越える事さ!」
「ええっ!? ですが、ファントムシューターは!?」
「ああ、よく知ってるさ。あの子が止まらない事も、施されているシステムも完璧だって事も、俺は分かってる」
四年間ずっと共に過ごしていたからこそ、タクトは分かっている。
ファントムシューターは何があろうと『黒き月』同様に製作された目標を達する事を止めず、その為のシステムも完璧に構築されている。付け入る隙など全く無い。
だからこそ、タクトはちとせに会わないという手段しか取れなかった。だが、こうしてちとせはファントムシューターに乗ってしまった。まるで運命が逃がさないと言うように。
しかし、それでも尚、タクトは決めた。課せられた運命を乗り越える事も、
「ちとせ、やっぱり俺は君が好きだ」
「っ!?」
「四年間、ずっと離れていてフラれても仕方がないし、愛想をつかされてもおかしくないと思う。それでも改めて言うよ。俺は、ちとせの事が大好きだ。ずっと傍にいたい」
「…………」
「俺はずっと忘れていた。俺にとって一番大切な事は、ちとせの側に居る事だ。この先どうなるか分からないけど、全部が終わったら……俺と改めて付き合って欲しい」
「………」
「え~と、ちとせさん?」
急に顔を俯かせたちとせに、タクトは恐る恐る質問した。
やっぱり愛想をつかされてしまったかと不安にタクトが思っていると、急にちとせがバッと真っ赤に染めた顔を上げ口を開く。
「つ、付き合うじゃたりません!! け、結婚して下さい、タクトさん!?」
「ええええええっ!? け、結婚!?」
「そうです! もう四年です! 四年以上も私はタクトさんを待っていたんです! 告白して付き合ってすぐに、あんな事になって! それでもずっと会いたくて、仕方が無くて、タクトさんしか私には考えられないんです! タクトさんが側にいてくれないと私はもう駄目なんです! だから、私と結婚して下さいっ!!」
ビシッ!
ちとせが心の奥底からの気持ちを込めて告白した瞬間、空間に亀裂が走った。
同時にちとせの全身に禍々しい紋様が幾重にも浮かび上がり、次の瞬間、全ての紋様が弾けて消えた。
「こ、これは!? もしかして!?」
「の、呪いが解けた!?」
悪夢を振り払い、新たな未来を望む事を選んだちとせの想いに、ディータの施した呪いは敗れた。
タクトとちとせは思わず、顔を見合わせる。それと同時にエネルギー切れ寸前だったシャープシューターのエネルギー値がみるみる上がって行き、左右の両翼から吹き出すように二条の光が伸びて白銀の翼が広がった。
「……シャープシューター」
これが夢である事はちとせにも分かっている。
四年前に自らの愛機だったシャープシューターは『ウィル』の手によって大破し、もう二度と動かなくなってしまった。
それでも空間に開いた亀裂に向かって、白銀の翼を、エンジェルフェザーを広げたシャープシューターはちとせが操縦していないにも関わらずに進んで行く。
まるで再会したタクトとちとせを祝福するように。二人のこれからの道を照らすように。
「ありがとう、シャープシューター……必ずちとせは幸せにしてみせるよ」
「タ、タクトさん!?」
肩を抱き寄せられながらの告白に、自身も先ほど大胆な告白をしたにもかかわらず、湯気が出るほどに真っ赤に顔を染めてちとせは俯く。
懐かしく愛おしいちとせの姿と、今だけは感じることが出来るちとせの温かさを感じながら、タクトは口を開く。
「さあ、行こうか、ちとせ」
「は、はい! フォルテ先輩やミルフィー先輩を助ける為に! そしてタクトさんとの未来の為に! 烏丸ちとせ! 参ります!」
ちとせの意思に応じるように、シャープシューターは更に雄々しく白銀の翼を羽ばたかせて、空間の亀裂に向かって飛んで行ったのだった。
このまま目覚める勢いですが、まだファントムシューター側が最適化終わってないので起きるまで今しばらく時間が掛かります。
漸く覚悟が決まったタクトとちとせ。二人にはまだまだ苦難がありますが、それを乗り越える覚悟は出来ました。
因みに本作のちとせは四年間も耐えに耐えて、我慢し続けているのでタクトに関しては恥ずかしがりながらも大胆になります。
『無限回廊の鍵』で登場のロゼルの役割
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リコに接近
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ちとせに接近
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別ヒロインと結ばれる