ギャラクシーエンジェルⅡ ~失われた英雄と心に傷を負った天使~ 作:ゼクス
因みに今回でカズヤのヒロインが明らかになります。
クロノスペース内をルクシオールは進んで行く。
そして一瞬輝いた瞬間、ルクシオールは通常空間へとシフトした。
「ドライブアウト完了。後続の艦隊もドライブアウトして来ます。予定通り陣の形成が始まりました」
「なら次は遠距離スキャンだ。敵の陣形を解析しろ」
「了解」
艦長席に座るレスターの指示に、ブリッジ内のオペレーター達が慌ただしく動き出す。
その様子を見ていたカズヤは、送られてくる情報を整理しているレスターに思わず訪ねてしまう。
「あ、あの、クールダラス司令……」
「何だ、カズヤ?」
「やっぱりフォルテ教官とは戦う事になるんでしょうか?」
「先ずそうなるだろうな。アレだけ相手側はハッキング放送で宣戦布告したんだ。総大将としてフォルテを宛がっているのは、間違いあるまい」
「そうですか……」
フォルテの事情を知ってしまっただけに、カズヤはこれからの戦いに気が乗らずにいた。
「カズヤ。気が乗らないのは分かるが、これはフォルテを救う為の戦いだ。クラストブレイカーを破壊すれば、フォルテの事だ。奴らの側で暴れた上で戻って来るだろうさ」
「あっ! ……はい、フォルテ教官ならきっとそうですよね!」
レスターの言う光景が当たり前のように浮かんだのか、カズヤの顔色が明るくなった。
一緒にいたエンジェル隊のメンバーも顔色が良くなり、改めてこの戦いに対する熱意を抱く。
「スキャン完了しました。スクリーンに出します」
全員の目がスクリーンに向くと共に、画面に図が展開されてセルダールの前に無数の赤い光点が存在している事が示された。
「す、凄い数だ……」
「敵艦数は約700隻。更にスキャンを深めて、敵艦の種類と数も詳しく調べます」
「頼む……しかし、700か……」
(確かこっちの数は約500隻……数では負けている……でも、この艦隊の数は一体何処から?)
今更ながらカズヤは、一向に艦の数が減っている様子が見えないクーデター軍に疑問を覚えた。
最近までファントムシューターがゲリラ戦を仕掛けて、かなりの数の艦を破壊したにも関わらず、それでも尚700隻もの艦隊がセルダールには存在していた。
一体何故とカズヤだけではなく、ブリッジにいる面々は疑問を覚えずにはいられない。
「アルモ。この図にクラフトブレイカーの座標を表示してくれ」
「了解しました」
アルモがコンソールを操作すると、画面の丁度敵艦隊とセルダールの間の中央付近にクラストブレイカーがある事が示された。
「厄介な配置だ……」
僅かにレスターの顔に苦いものが浮かんだ。
先ず敵艦隊を迂回して回り込む事は現実的ではない。そんな動きをしてしまえば、明らかにクラストブレイカーの位置をルクシオール側が知っている事がバレて、フォルテの頑張りが無駄になってしまう。
その上にルクシオールはこれまでの戦いから敵側に警戒されている上に、敵の指揮官として動くフォルテが先ず見逃す筈がない。
(……お前ならばこうするだろうな)
この状況でレスターが思い浮かぶ策は一つだけ。
それはレスターのやり方ではなく、自身の親友ならばこうするだろうと言う考えに基づいた策。
「エンジェル隊はブリーフィングルームに移動。これより作戦会議を行なう」
『はい!』
「なのだ!」
「おう!」
それぞれ返事を返し、ブリーフィングルームへと移動した。
「さて、ルクシオールと友軍艦隊のこれからの作戦行動だが、事は単純だ。先ず最初に始まるのは間違いなく攻める側の此方と護る側の敵側との撃ちあいだ」
レスター達はセルダール解放の為にクラストブレイカーの破壊を最優先目的としているが、それを敵側に知られる訳にはいかない。
故に先ず最初はどうしても撃ち合いから戦端は開かれる。重要なのはその次の行動から。
スクリーンが展開され、ルクシオールを示す青い点と、まるでクラストブレイカーの前に立ち塞がる壁のようになっている無数の赤い点が表示された。その奥にクラストブレイカーがある事を示すように一際赤い点が示された。
「迂回してこの位置に向かっている事が知られるのは、フォルテの行為を無駄にする事になりかねない」
「序でに、こっちが知ってる事がバレたらすぐに落としかねねえって事だろう?」
「アジートの言う通りだ。だからこそ、敵の動揺を誘う為にも、ルクシオールは一点突破で敵陣を突き破る」
『っ!?』
全員がレスターが考えたとは思えない大胆な策に驚いた。
「俺らしくない策だと自分でも思うが、相手がフォルテの上に敵艦隊と此方側の友軍艦隊に差がある以上、短期決戦に持ち込む以外にこの戦いを終わらせる手段はない。それに時間が経てば敵軍の増援が来る可能性もあるからな」
「ああっ!」
「確かに、ファントムシューターがかなりの激戦を行なった筈なのに」
「700隻もの艦艇がセルダールに配置されていた以上、時間が経てば更なる増援が来る事は考えられますわね~」
「だから、短期決戦という事か。了解した、司令」
敵側は時間が経てば更なる増援を見込めるが、レスター達は違う。
今ルクシオールと共に来た約500隻の艦艇が全てだ。どちらにしても長時間の戦闘は難しい以上、短期決戦を仕掛けてクラストブレイカーを破壊し、無理やり従わされているフォルテを解放するしかない。
「では、作戦の詳細を説明するが、その前にカルーア?」
「はい~、何でしょうか~?」
「一応聞くが、敵艦がマジークの時のような『魔封結界』とやらを張れる可能性はあるか?」
「それは無理だと思います~。今のところ敵艦の配置は結界を張るものではありませんし~。今からでは位置に着くのは無理だと思います~。何よりも、『魔封結界』はディータさんクラスの魔女や魔法使いで無ければ、張れませんから~」
「そうか。これで、マジーク艦隊が無効化される事が無い事が分かったな」
敵側はどう言う訳か『魔封結界』というマジークにとって鬼門といえる結界を扱って来た。
それを再び使われてしまえば、一緒に来てくれたマジーク艦隊がただの的になってしまう。だが、カルーアの証言で、『魔封結界』が張られる可能性が少ないことが判明した。
だが、それも今のところ。時間を敵側に与えてしまえば、それだけ危険は増えてしまう。
(だから、クールダラス司令は短期決戦を挑もうとしているのか)
カズヤもこの戦いがどうあっても、短期決戦で挑むしかないと分かって来た。
そんな中レスターは手元のコンソールを操作し、カズヤ達に作戦を理解して貰う為に映像を映す。
「先ずルクシオールを囲むように防衛に優れたマジークの艦で逆円錐陣を組んで貰い、そのままクラストブレイカーがある位置に真っ直ぐに敵陣に突撃し、そのまま突破する。その後に『紋章機』を発進。そしてカズヤ」
「はい!」
「以前にも言ったが、今回の戦いは戦闘中にブレイブハートと『紋章機』の合体を何度か行なって貰う事になる。先ず最初に合体するのは予定通り、スペルキャスターとだ。そして索敵した情報をイーグルゲイザーに送ってくれ」
「了解しましたわ~、あむ……任せなさい!」
カルーアはテキーラへと変身を終えると共に力強く返事をした。
「リリィはブレイブハートと合体後に、遠距離からクラストブレイカーに備わっているブースターへの攻撃を行なってくれ。完全破壊が望ましいが、それに気を取られずにブースターの破損を優先してくれ」
「了解した、司令」
リリィも第一にクラストブレイカーがセルダールに向かって発射されない事が優先だと言うのを理解しているので指示に不満はなく、力強く返事を返した。
「そしてその次に合体する機体に関してはクロスキャリバーかレリックレイダーだが、どちらと合体するかの判断はカズヤに任せる」
「僕がですか?」
「ああ、そうだ。クロスキャリバーもレリックレイダーも破壊力がある機体だ。だが、クラストブレイカーがその時にどんな状態になっているかはその時になって見なければ分からん。だから、合体の判断はカズヤに一任するしかない」
共に大威力の火力を有しているクロスキャリバーとレリックレイダー。
クロスキャリバーならば、遠中距離からの強力無比な加粒子砲である『ハイパーブラスター』。
レリックレイダーならば、一定の周囲内を消滅させる小型の対消滅弾『ジェノサイドボンバー』。
どちらも強力ではあるが、『ハイパーブラスター』の方は真っ直ぐにしか撃てず、『ジェノサイドボンバー』の方は一定の距離に近づかなければならない。
確かに状況次第だとカズヤは理解して頷く。
「分かりました。リコとアニスもそれで良いかな?」
「私は構いません」
「俺もだ」
リコとアニスも、カズヤならば問題無いと判断して了承した。
その様子を見ていたレスターは、最後にナノナノに顔を向ける。
「ナノナノは、再合体の最中のブレイブハートの負担の軽減とその護衛だ。ナノマシンで出来るだけブレイブハートの負担の軽減をしてくれ」
「了解なのだ!」
自身の役割を理解し、ナノナノも力強く返事を返した。
エンジェル隊の全員のテンションには問題が無い事にレスターは満足したように頷く。
「では、エンジェル隊は各機体で待機! 作戦を必ず成功させる!」
『はい!』
「ええ!」
「おう!」
「なのだ!」
「了解した!」
ブリーフィングが終わると共にカズヤを含めたエンジェル隊の面々は、格納庫へと向かった。
それを確認したレスターもブリッジの方に戻り、ココの報告を聞く。
「司令。第2、第6隊、配置に着きました。初期隊列は完了です」
「そうか……ファントムシューターの方はどうだ?」
「格納庫からは、未だ何の連絡もありません」
(頼む。そのまま眠っていてくれ)
ココの報告にレスターは一瞬だけ目を閉じて祈った。
しかし、閉じた目は次の瞬間に力強く見開き、艦隊を指揮する司令官としてココに指示を出す。
「ココ。敵軍に呼びかけてみてくれ」
「了解しました………応答が来ました」
「アルモは発信源の解析を。ココは映像をスクリーンと各『紋章機』及びブレイブハートに繋げ」
指示に従ってココがコンソールを操作すると、画面にフォルテの姿が映し出された。
『やぁ、レスター。生きてて何よりだ。流石はアイツの片腕を務めていただけあるね』
「その辺りに関しては苦労させられたがな」
『フフッ、確かにそうだったね。そうそう、ところでリリィを知らないかい? 逃げられた上に余計な邪魔まで入って、完全に見失っちまってねぇ』
「此方で無事に保護した」
『ああ……そうかい……まぁ、代わりにずっと会いたくて仕方が無かった奴に、お灸をすえられたから良いんだけどね。ちっとは反省してくれたかねぇ?』
(今の言葉!?)
(フォルテさんもマイヤーズ司令に気が付いて!?)
何気ない言葉ではあるが、ココとアルモはその言葉の中に隠された意味を察した。
「アイツの事はお前も良く知ってるだろう? 俺の時と同じで反省などしてないさ」
『っ……そうかい。なら、次に機会があれば直々に指導してやらないとね』
「その機会があれば是非頼む」
『機会があればね……………』
「………………ココ。全艦攻撃開始だ!」
「っ! りょ、了解! 全艦攻撃開始!」
ココは指示に従い、艦隊に指示を送る。
同時にルクシオールの周囲の艦が次々とレーザー砲や砲弾を発射し、敵艦隊もそれを防ぎながら攻撃を開始して激しい撃ち合いが始まった。
「フォルテ! 悪いが此方にも事情がある! 全力で行かせて貰う!!!」
『ああ!! 受けて立つよ!! 掛かって来な!!』
ブゥンっとスクリーン画面からフォルテの姿が消えた。
レスターは即座に艦長席に座り直し、高速リンク式システムを起動して指揮を取り出す。
「攻撃の優先目標は突入ポイントだ! 其処に集中攻撃しろ! 陣形の形成も急がせろ!!」
「了解!!」
「クールダラス司令! フォルテさんが通信を送って来た位置の特定に成功しました!」
「其方はランファとヴァニラに送信しておけ! 二人ならば任せられる! 班長!」
『おう! 『紋章機』は全機準備完了だ! 何時でも発進出来るぜ、艦長!! それとファントムシューターの方はまだ反応がねぇ!!』
「よし! ルクシオール発進! 必ずカズヤ達を敵の裏側まで運ぶぞ!!」
『了解!!』
レスターの号令と共にルクシオールは、護衛をしてくれる艦隊と共に敵艦隊に向かって突撃したのだった。
無数の艦隊に中に護られるようにクーデター軍の旗艦はあった。
その艦のブリッジには当然ながらフォルテの姿もあり、その周囲には『
「連合艦隊本陣から分離した部隊があるな。速度を上げつつ、此方の陣に突入して来るようだぞ?」
「そう来たか。レスターらしくないけど、意表を突くには良い手だよ」
兵に答えながらフォルテはコンソールに映っている画面に目を向ける。
(この位置に攻め込むって事は、アレは伝わって言うようだね……)
瞬時にフォルテはレスター達の真の目的に気が付く。
ルクシオールが護衛艦隊に護られながら向かう先の艦隊の後方には、クラストブレイカーがある。
ちゃんとメッセージが伝わってくれている事を安堵しながらも、フォルテはレスターの作戦に違和感を感じた。
(何を焦ってるんだい、レスター? もしかしてちとせに何かあったのかい?)
先ほどの通信の時に映像の中に映っていたルクシオールのブリッジ内に、ちとせの姿が無い事にフォルテは気がついていた。
こんな重大な戦いにちとせが居ない筈がないのに、ルクシオールのオペレーター席に座っていたのはアルモだった。
(アルモがルクシオールにいるって事は、レスター達はヴェレルの事も知っていると見て間違いない……それにしてもちとせは何処に? あの映像を見て寝込んだとかは考えたくないんだけどねぇ……)
もしそうだとすれば、どうちとせに謝罪すればいいのかとフォルテが少し思い悩んでいると、自身の監視役でもある兵士が声を掛けて来る。
「接触ポイントへ、編成を集中させてはどうかな?」
「バカだねぇ。こっちはその場で判断できない無人艦隊なんだよ。隙間を詰めたら同士討ちになっちまうだろ? 接触ポイントに近い艦は、現在のポイントを維持だ。本陣外周部から50くらい見繕って待機させな」
「了解した……」
渋々と言う様子ながらも兵士は指示に従ってコンソールを操作し、無人艦を動かしていく。
敵艦隊の攻撃に晒されながらも、ルクシオールを中心とした艦隊による逆円錐形陣形は整い、真っ直ぐに敵陣営に向かって突き進む。
「司令! 突撃陣形が整いました! 突入ポイントまで距離5000!」
「突撃隊全艦、速度はルクシオールに同調! 被害状況は?」
「本艦は無傷ですが、先頭の艦には被害が出始めています」
「持ってくれ……」
「接触ポイントまで3500!」
その報告を聞いたレスターは、後方からついて来ている連合艦隊の旗艦に乗っているランファに通信を繋ぐ。
「ランファ! もう間もなく敵艦隊と接触するぞ!」
『了解よ! 後ろは私とヴァニラに任せなさい!』
「ああ、頼りにしてるぞ! 接触に備えて前方のシールドを強化! 攻撃の手は絶対に緩めるな!!」
号令と共にルクシオール及び艦隊から砲撃が放たれて、戦いは更に苛烈さを増していく。
「敵突入部隊が本陣と接触するぞ!」
迫りくるルクシオールを中心とした陣形を組んだ連合艦隊を、スクリーンに映る様子を見ているフォルテに兵士が報告する。
「待機させといた艦を移動させな。敵がこっちの陣に入ったら、入り口を塞いじまうんだよ」
「袋のネズミという訳か。フフフッ」
最早自分達の勝利を確信したかのように、報告した兵も含めたブリッジにいる『
彼らからすればこの戦いの勝利は自分達だと思っている。艦隊の総数では自分達の方が上で在り、先日にはずっと煩わしいと思っていたファントムシューターも破壊出来たと思っている。
その功績を上げたのが自分達ではなくフォルテの指揮によるものだと言う事も忘れて、彼らは浮かれていた。
「なに余裕かましてるんだい! 相手は歴戦の勇士なんだ! 舐めてかかると痛い目見るよ!!」
「はははっ、歴戦の勇士? 死んだ英雄とやらの腰巾着だった男だろう? その程度の相手に何をぐぅっ!!」
嘲るような言葉を発した兵の一人の首を、フォルテは無言で掴みあげた。もしも銃を所持していたら、その兵を有無を言わさずに射殺していたと思えるような据わった目をしながら口を開く。
「良いかい。良く聞きな? 相手はその英雄が隣を任せて、後を託す程に信頼している男なんだよ。次にふざけた事を言ったら……殺すよ」
「わ、分かった! ゆ、赦してくれ!」
本気の言葉だと察した兵は、涙目になりながら謝罪した。
ドサッと兵は尻もちをついて床に座る。最早小物には用が無いと言うようにフォルテは、他の兵に指示を出す。
「ボヤボヤしないで、さっさと指示通りに動きな!」
そう言いながらフォルテが見つめるスクリーンには、自らの陣営の中に艦隊と共に突入して来る、ルクシオールが映っていた。
「突撃隊全艦、敵布陣内に侵入! きゃあっ!」
ドォンっとシールドへの攻撃を受けたルクシオールが激しく揺れた。
敵陣の中に入り込んだ事で、これまで以上に苛烈な攻撃に晒され、ルクシオールだけではなく周囲で陣形を組んでくれていた護衛艦隊にも被害が出始めている。
更に後方では周り込んで来た敵艦隊が、突入した部分を塞ぐように陣取り始めた。
「敵艦隊再編! 突入部が塞がれました!」
「構わん! とにかく突っ切るぞ! 前方シールドにエネルギーを更に回せ!」
そうレスターが指示を出す中、機関室にいるステリーネからの緊急の通信が届く。
『ちょっとぉ!! 出力が臨界ギリギリだ!! もう少しセーブしないと危ないよぉ!!』
「分かった! 其方側でリミットを掛けても構わん! だが、速度だけは落とすな!!』
『分かった!』
ステリーネからの通信が切れた。四方八方からの砲撃の雨にルクシオールや他の艦は晒されていく。
そんな状況の中をルクシオールは真っ直ぐに進み、敵陣営の後方へ抜けようとする。
「敵陣終端まで距離19000です!」
「何としても抜けて、カズヤ達を送り届けるぞ!」
「おい! 第三陣まで到達されたぞ!! 突破されるんじゃないのか!!」
一向にルクシオールが沈まないどころか、かなり深いところまで入り込まれた事に兵の一人が慌て出す。
だが、それはフォルテの責任というよりも、寧ろルクシオールを包囲している無人艦隊の方にあった。
「ええい! 使えないねぇ! 自動操縦艦ってのは!?」
無人艦隊は自動で動くが故に、事前にプログラムされた行動以外は一々指示を送らなければならない。
その為にフォルテが最適な指示を送っても、無人艦がその動きをするのはどうしてもタイムラグが生じ、その隙にルクシオールや他の艦隊が動いてしまうので対応が間に合わないのだ。
(この前のゴーストの時は損害など気にせずに撃破しろって、ヴェレルの奴が言ったから気にせずにやれたけど……今はこいつらがそれを赦さないからね)
「仕方がない。第四陣の編成を崩して進路を塞ぐんだ! くれぐれも同士討ちには注意するんだよ!!」
「分かった……ん? これは……一隻の艦がスピードを上げて隊列を抜け出て来たぞ」
「何だって!? この加速のスピードは!? まさか、ルクシオール!?」
レーダーで状況を確認し直したフォルテは、無人艦が送って来る映像をスクリーンに映する。
すると、メインスクリーンについて来た艦隊に殿を任せて、猛スピードで進むルクシオールが映った。
「ははははっ! 何をしようというのだ! 愚かな!」
「愚かなのはお前だよ! バカたれ!! さっさと第五陣の艦を寄せ集めるんだよ!!」
「おいおい、これ以上隊列を崩す必要も無いだろう? 一隻がスピードを上げたところで、この密度を突破できる筈が……」
「おい! 突破されそうだぞ!」
「なにぃっ!?」
他の兵の言葉に慌ててレーダーを確認してみると、彼らの予想を超える速さでルクシオールが突き進み、自分達の艦隊を突破しようとしていた。
「ルクシオールを舐めるんじゃないよ! 『
「く、くそ!!!」
急いでフォルテの指示に従って無人艦隊を兵士は操作するが、時既に遅く、ルクシオールは損傷を負いながらも敵陣を突破した。
そしてルクシオールは、その内で大切に護っていた六つの閃光をセルダールを脅かすクラストブレイカーに向かって解き放った。
『行くわよ、シラナミ!!』
「うん! ブレイブハート合体!!」
ルクシオールから宇宙空間へと飛び出したブレイブハートは、すぐさまカズヤの操作に従って最初の合体相手であるスペルキャスターの下に向かい、変形して合体した。
合体を終えると同時にテキーラは移動をカズヤに任せてコンソールを操作し、自分達が破壊するクラストブレイカーの詳細を調べていく。
『此方、テキーラ!! 皆! 索敵の結果が出たわ! クラストブレイカーの数は全部で六つ! しかも厄介な事に戦艦並みの頑丈さと攻撃能力も持っている見たいよ!』
「ええっ!?」
『そんな!?』
『マジかよ!?』
『なのだ!?』
『くっ! 厄介な!?』
テキーラの報告にルーンエンジェル隊の面々は驚愕するしかなかった。
クラストブレイカーの正体がただの地上に向かって落下する爆弾ではなく、戦艦並みの攻撃力と頑丈さまで兼ね備えている兵器だと判明。並みの攻撃では破壊に時間が掛かってしまう事は明らか。
しかも反撃能力まで有しているとなれば、それはもうただの爆弾ではなく地上に向かって自爆特攻する戦艦だと考えなければならない。
『他にも悪い報告よ! 後方から高速艦がこっちに迫って来て、攻撃を開始しそうだわ。シャーベット! 詳細なデータは転送するから後を頼むわよ!』
『了解した!!』
『シラナミ!』
「うん!! 合体解除!!」
テキーラの指示に従い、カズヤはブレイブハートを操作してスペルキャスターと分離した。
同時にまるで当たれば良いと言うように、後方から迫って来ている高速艦が砲撃を放って来る。
ブレイブハートと分離したスペルキャスターは、すぐさま体勢を直して、イーグルゲイザーとブレイブハートを護るように後方に向かう。
『行きなさい! こっちは任せて!』
「テキーラ!! お願い!! ナノナノ!!」
『任せるのだ!!』
カズヤの言いたい事が分かると言うようにナノナノは、自らが操るファーストエイダーからナノマシンを散布する。
散布されたナノマシンを浴びたブレイブハートは一度目の合体で掛かっていた負担が軽減される。
機体に問題が無い事を確認したカズヤは操縦桿を操作して、先を飛んでいるイーグルゲイザーに接近する。
「リリィさん!!」
『此方はOKだ! 来い、カズヤ!』
「ブレイブハート! 合体!!」
再びブレイブハートは変形し、先を飛ぶイーグルゲイザーと合体して青い輝きを発した。
『OKだ!! カズヤ!! 移動操作を頼む!』
「はい!!」
カズヤが返事を返し、移動操作に集中すると共に、イーグルゲイザーは前方に向かって二門のレールキャノンの砲身を伸ばした。
そしてイーグルゲイザーのパイロット席に座っているリリィは一度深呼吸をすると、テキーラから送られて来た情報を基にクラストブレイカーに照準を合わせる。
同時に思うのはセルダールで囚われていた時の日々と、今日までのルクシオール内でのカズヤを含めたルーンエンジェル隊の面々との交流。そして自身が必ずセルダールを救うと言う騎士としての誓いが、リリィのテンションを最大にまで引き上げ、一気にイーグルゲイザーのエネルギー値が引き上がった。
『行くぞ! 穿て我が信念の輝き!! エクストリームランサー―!!!』
ドォンッという音と共に二門のレールキャノンから連続で弾丸が撃ち出され、六つのクラストブレイカーのブースターにそれぞれ直撃した。
戦艦並みの頑丈さのせいで撃破にこそ至れなかったが、損傷を負った六つのクラストブレイカーから煙が噴き上がる。
『よし! ブースターに直撃したぞ! カズヤ! 次だ!』
「はい!!」
瞬時にカズヤはコンソールを操作してイーグルゲイザーとの合体を解除した。
「よし! 次は!」
『シラナミ!! 避けなさい!』
「えっ!? わあっ!」
通信から聞こえたテキーラの声に慌ててカズヤが操縦桿を操作すると同時に、ブレイブハートの横を一条の閃光が過ぎった。
一体何がと思えば、何時の間にか高速艦だけではなく、後方から遠距離攻撃を主とした無人艦が何隻も攻撃して来ていた。
『不味い!? 敵は我々の狙いに気が付いたぞ!!』
「そんな!?」
ある程度は覚悟していたが、敵側に自分達の狙いがクラストブレイカーだと悟られてしまった事にカズヤは苦い顔を浮かべる。
『カズヤ! 私も後方の防衛に回る!』
「お願いします! それとナノナノ!」
『分かってるのだ! すぐにナノマシンで!』
「いや、ナノナノもリリィさんと一緒に後方の防衛に回って!」
『えっ!? それだとカズヤの方が!?』
「僕は大丈夫だから! 後一度の合体で終わらせる! アニス!!」
『おうよ!!』
カズヤが次の合体相手に選んだのは、アニスだった。
先ほどのリリィの『エクストリームランサー』で、損傷を負ったクラストブレイカーは今だ動く様子がない。ならば、近づかなければならないが一定の周囲を破壊できる『ジェノサイドボンバー』ならば、一掃できるとカズヤは判断したのだ。
後方から放たれる敵艦の遠距離攻撃を掻い潜りながら、カズヤはブレイブハートを操作してレリックレイダーに近づく。
「行くよ、アニス!!」
『おう! 待ちくたびれたぜ!』
やる気十分というアニスの声に惹かれるようにブレイブハートは変形し、レリックレイダーと合体して赤い輝きを発した。
『よっしゃ! 行くぜぇ!!』
「リコは僕達と一緒に来て、少しでもクラストブレイカーにダメージをお願い!!」
『はい!!」
ブレイブハートと合体を終えたレリックレイダーを、クロスキャリバーが遠距離誘導レーザーであるフレイルをクラストブレイカーに向かって放ちながら後を追う。
そしてレリックレイダーの特殊兵装である『ジェノサイドボンバー』の射程距離に入るまで後僅かになった瞬間に、六つのクラストブレイカーに備わっている砲塔が動き、レリックレイダーとクロスキャリバーに向かって攻撃をして来る。
『ちっ! 悪あがきしやがって!』
「後少しなのに!」
敵の攻撃を掻い潜りながらレリックレイダーとクロスキャリバーは、クラストブレイカーに接近しようとする。
そんな中、一機のクラストブレイカーのブースターが火を噴き、ゆっくりとだが前に進み出す。
「不味い! ブースターが動くのが残っていた!」
『構わねぇ! あんなとろい動きなら、充分に射程内だ!』
損傷を負っている事は確かなのか、動き出したクラストブレイカーの動きは遅かった。
これならば充分に射程内だとアニスは安堵し、コンソールを操作して機体中央下部に装備されている、『ジェノサイドボンバー』の発射管を六つのクラストブレイカーに向ける。
『コイツで終わりだ! ジェノサイドっ!?』
ブゥン……
「えっ!?」
発射の直前、突如としてレリックレイダーの出力が低下し出した。
それと同時に機体もガタガタと揺れ出し、照準が思うように定まらなくなる。
一体何故と思う中、カズヤの脳裏にクロワの言葉が浮かんだ。
『知らねぇぞ。肝心な時にガタが来ても』
(まさか、こんな時に!?)
ルクシオール内の『紋章機』の中で唯一、フルメンテを受けていなかったレリックレイダー。
その悪影響がこんな重大な時に出てしまったのだとカズヤだけではなく、アニスも気が付いた。
『ちくしょうぉぉぉっ!! せめてアレだけでも!! ジェノサイドボンバーー!!!』
最後の意地というようにレリックレイダーは『ジェノサイドボンバー』を、六つのクラストブレイカーに向かって照準が定まらないながらも発射した。
発射された『ジェノサイドボンバー』は真っ直ぐ進み、一定の距離に達した瞬間、大爆発を起こして周囲を呑み込んだ。
「クッ、クラストブレイカーは!?」
『ああっ!』
「っ!?」
悲鳴のようなリコの声に、爆発の影響が治まった事で画面が正常になったカズヤは見てしまった。
唯一、ブースターが不調ながらも動いていたクラストブレイカーが、真っ直ぐにセルダールに向かって落下していくのを。
「くそっ!! リコ!」
『は、はい!』
レリックレイダーが不調となってしまった以上、残るは遠距離兵装を備え、一緒について来てくれたクロスキャリバーとの再合体しかないとカズヤは判断し、即座にコンソールを操作して分離した。
(頼む! 持ってくれ! ブレイブハート!!)
幾度の合体によってブレイブハートの負担は限界寸前。
それでも此処で成功させなければと言う思いでカズヤはブレイブハートを操作し、リコのクロスキャリバーに向かう。
しかし、その途中で仲間達の悲鳴のような通信が届く。
『シラナミ!?』
『カズヤ!?』
『っ!?』
仲間の悲鳴のような声にリコとカズヤは気が付く。
後方から自分達に迫る一条の閃光に。既にブレイブハートはクロスキャリバーとの合体シークエンスに入り、クロスキャリバー側もその準備を進めていた。
(駄目だ! 避けられない!?)
来るであろう衝撃にリコとカズヤが思わず目を閉じた瞬間、閃光を阻むようにレリックレイダーが割り込んで来て盾になった。
「っ!? アニス!?」
『アニスさん!?』
爆発して煙を上げながら吹き飛んでいくレリックレイダーに向かって、カズヤとリコは叫んだ。
『……いけっ!』
「っ! リコォォォッ!!」
『はいっ!!』
ノイズ混じりながらも確かに聞こえたアニスの声に押されるように、クロスキャリバーとブレイブハートは合体して全速力でセルダールに向かう最後のクラストブレイカーを追いかける。
「おおおおおっ!!!」
『絶対に落とさせない!!』
二人の強い思いに惹かれるようにクロスキャリバーとブレイブハートが輝いて行く。
そして一瞬、ほんの一瞬だけクロスキャリバーの左右に白い光が輝いた。同時にクロスキャリバーのエネルギーゲージがMAXに達した。
「これで!!!」
『終わりです!! ハイパーブラスターーーー!!!!!』
クロスキャリバーの左右の砲門から加粒子砲が放たれ、セルダールに向かっていたクラストブレイカーを貫き破壊したのだった。
原作では『永劫乖離』まで無事だったレリックレイダーでしたが、早めの不調と成りました。
まぁ、早めにあの人を出したいと言う理由もありますが。
『無限回廊の鍵』で登場のロゼルの役割
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リコに接近
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ちとせに接近
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別ヒロインと結ばれる