ギャラクシーエンジェルⅡ ~失われた英雄と心に傷を負った天使~   作:ゼクス

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二話目の投稿です。
長くなっていますが、次話で多分七章は終わります。


7-10

 未だ発見されていないが、確かに存在している新たな平行宇宙の存在がタクトによって明かされる中、ブリーフィングは続けられた。

 

「では、次は私だ」

 

 次に手を挙げたのはリリィだった。

 

「『RA-002 イーグルゲイザー』のパイロットを務めているリリィ・C・シャーベットだ。暫定だが、ルーンエンジェル隊の隊長も務めさせて貰っている。そして改めて礼を言わせて貰う。セルダール脱出の際に救援と情報提供をして貰ったおかげで無事にルクシオールに合流できた。深く感謝している」

 

『ああ、君があの時の……無事で良かったよ。セルダール近辺を張っていたのは正解だった』

 

「此方こそ。だが、何故危険を犯してまでセルダール近辺の調査を?」

 

 助けられた事には感謝しかないが、それでもタイミングが良すぎた事と執拗なまでにヴェレルに狙われる状況にありながら、セルダール近辺に接近していたファントムシューターの行動が気になり、リリィは質問した。

 

『例のハッキング放送は俺とファントムシューターも確認してね。フォルテがヴェレルに与してクーデターなんてことをする筈がない。なら、やらざるを得ない何か。人質か何かを捕られているんじゃないかと考えて、セルダールを探っていたんだ』

 

「タクト……」

 

 自分を信じて行動してくれていた事を知って、フォルテは微かに微笑んだ。

 

『そんな時に君の『紋章機』の反応がセルダールから遠ざかっているのを感知、クーデター軍に襲われているのを見てこれは何か重要な情報を握ってると思って援護したんだ。まぁ、その後、フォルテとやり合う事になるとは予想外だったけどね』

 

「あたしは中々楽しかったよ。まっ、アンタが背後にいるなら逃げおおせると思ったから、容赦なくやらせて貰ったけどね」

 

『いや~、結構ギリギリだったけどね』

 

(す、凄い信頼だ)

 

 ファントムシューターに精神が宿っているタクトは、危うく命を落としかねない状況だったにも掛からわず、フォルテを責める様子が無い。

 フォルテの方もタクトならば必ず逃げ切ると確信して戦い、そしてタクトはファントムシューターが損傷を負いながらもそれを成し遂げた。

 長い間離れていたにも関わらず、それでも確かにある二人の間の信頼関係にカズヤは呆然とし、リリィは口元を綻ばせる。

 

「流石は歴戦の勇士だ。では、私の質問だが、私もクールダラス司令に聞きたい」

 

「ん? お前もか?」

 

「クールダラス司令はセルダール政府と連絡を取ったそうだが、王は息災なのだろうか!? 是非とも聞きたい!!」

 

 セルダール出身で近衛騎士を務めていたリリィが最も気になっていたのは、セルダールの王である『ソルダム・セルダール』の安否。

 それを一刻も早く知りたいと、リリィはレスターに強い視線を向けながら質問した。

 

「それについては安心してくれ。セルダール政府の者と話したが、ソルダム陛下はご無事だそうだ。王宮関係にも被害は一切ないそうだ」

 

「………うぐふぅっ!! ふぐっ! うぐぅっ!!」

 

「な、泣いてます。どうやら」

 

 急に泣き出して言葉を発せなくなったリリィの代わりに、カズヤが答えた。

 

「へ、陛下!! よ、よくぞご無事で!! うごふぅぅぅっ!!」

 

「やれやれ」

 

(しかし、セルダール政府は何故アジートの安否を気にしていたんだ?)

 

 まだ、この場にいる誰にも話していないが、実はセルダール政府との通信での会談の際に、レスターは頻りにレリックレイダーとそのパイロットであるアニスの安否に関して尋ねられていた。

 どうやら連合軍とセルダール軍の戦闘の様子は、セルダール中に放送されていたらしく、その中で何故か件のソルダム自身からレリックレイダーとアニスの安否を尋ねるようにと命令された事が通信を担当した者から告げられた。

 訝しみながらもセルダールのトップであるソルダムの頼みならば答えない訳にもいかず、レスターはアニスの安否とレリックレイダーに関して全て伝えたのだった。

 

「ん? 何だよ?」

 

「いや、何でもない」

 

 自分がレスターに見つめられている事に気付いたアニスが質問してきたが、レスターは何でもないように答えた。

 

『え~と、それじゃあ他に質問がある人はいるかな?』

 

 嬉しさの余り泣き止まないリリィは質問を続けられそうにないので、タクトは次の質問に進める事にした。

 

「ハイなのだ!」

 

 手を挙げたのはナノナノだった。

 明るい声だが、何処か強い決意を感じさせるような眼差しでペンダントを見つめていた。

 

『君は……』

 

 ナノナノを確認したタクトは、何処か声を詰まらせるように声を発しなくなった。

 その様子を見たナノナノと、そして母親と慕われているヴァニラは察した。

 タクトが、自分達の知らないナノナノやその姉妹達の秘密を知っている事に。

 

「ど、どうしても聞きたいのだ。フェムトにいるナノナノの姉妹達を起こせるのかどうかを、聞かせて欲しいのだ」

 

 それはずっとナノナノが知りたいと願っていた事。

 何故自分だけが培養カプセルから目覚める事が出来たのか。何故他の姉妹は目覚めず、そしてファントムシューターはその目覚めない筈の姉妹を起こす事が出来るのか。

 それは事情を知っている全員が気になっている事であり、タクトの答えを全員が待つ。

 

『……ごめん。今は君の姉妹達を()()()()()()()()()()()

 

「っ!? やっぱり起こせるのだ!? だったら、どうして皆を眠らせたままに!? ファントムシューターがそうしてるのだ!? 答えるのだ!?」

 

『…………』

 

「何で何も答えないのだ!?」

 

 バンっとナノナノがテーブルを叩いた。

 その威力にペンダントが浮き上がり、ちとせは慌てて手で掴み自身の胸元で護るように抱き締める。

 

「ナノちゃん……お願いです。タクトさんを責めないで下さい」

 

「っ!?」

 

「……ちとせさん。もしかして貴女も」

 

 その様子からちとせも事情を知っていると察したナノナノは目を見開き、ヴァニラが質問した。

 

「はい……どうしてタクトさんがナノちゃん達の姉妹を()()()()()()()()()と告げたのか知っています。そしてもう一つ。ナノちゃん。貴女は決して()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ?」

 

『君は、ファントムシューターが怖いんじゃないのかな?』

 

「っ!? ど、どうしてソレを!?」

 

 誰にも、母親として慕っているヴァニラにさえ伝えていない秘密を指摘されたナノナノは動揺する。

 

「それは警告です。ナノちゃんの製作者。いえ、DNA提供者がナノちゃんを護る為に残した危険信号です」

 

「えっ? えっ? ナノナノを護る為? どう言う事なのだ?」

 

『混乱するのは仕方が無いと思う。でも、これだけはハッキリ言える。君は愛されて生まれて来たんだ』

 

「そしてその想いは悠久の時を超えて、ヴァニラ先輩に受け継がれています」

 

 ゆっくりとちとせはペンダントを置き、ファントムシューターの残した記憶の中で数少ない嬉しい情報をナノナノとヴァニラに説明する。

 

「フェムトで唯一ナノちゃんが目覚めた理由。それはヴァニラ先輩の遺伝子とナノちゃんの構成遺伝子の一致が97パーセント以上一致していた為にロックが解除されたからです」

 

「ヴァニラさんと……」

 

「ナノちゃんの……」

 

「遺伝子が~」

 

「97パーセント以上も……」

 

「一致してるって事は!?」

 

「血が繋がっていると言う事なのだ!?」

 

 ちとせの説明を聞いたルーンエンジェル隊の面々が顔を見合わせて驚く。

 

「ほ、本当なのかい、ちとせ!? タクト!?」

 

「私とナノナノの遺伝子情報が……」

 

 話を聞いていたフォルテと、当人であるヴァニラも信じられないと言うように声を上げた。

 

「はい。これは間違いありません」

 

『さっきフェムトにヴァニラが来たって言うのを話しただろう。その時に君が入っていた培養カプセルが空になっている事をファントムシューターが知って、システムを確認した結果から出た事だ。俺もその結果を知った時は驚いたよ。まさか、ヴァニラの先祖がフェムトの施設に関わっているなんてね』

 

 情報の出所がフェムトの施設を扱えるファントムシューターである以上、間違いようがない事実。

 そう認識したナノナノは、恐る恐るヴァニラに顔を向ける。

 

「ママと……ナノナノが……」

 

 まだ信じ切れていないと言う様子でナノナノは頷く。

 ヴァニラも突然の情報に困惑するが、他ならぬちとせとタクトから伝えられた事実。

 それを信じたい気持ちとナノナノを大切に想う気持ちがヴァニラの中で合わさり、優しくナノナノに向かって微笑む。

 

「改めて宜しく、ナノナノ」

 

「っ…………ううぅ……うっ……うくっ……嬉しいのだ……」

 

「ええ、私もとても嬉しいです」

 

「うぅっ……あ、ありがとうなのだ……ひくっ……こんな……嬉しい事を教えてくれて……」

 

 ナノナノは涙を溢しながらタクトとちとせに礼を言った。

 ちとせは優しく微笑み、タクトも声だけだが確かな優しさを伝える口調で語る。

 

『君の姉妹達に関してはもう少しだけ待って欲しい。あの子達が起きた時、君がこの宇宙の素晴らしさを伝えるんだ』

 

「きっと、あの子達もその時を待っています。ナノちゃんの声はきっとあの子達に届きますから」

 

「わ、分かったのだ……うくっ……その時には絶対に……皆に伝えるのだ……」

 

 ナノナノは知らない。この時にタクトとちとせに、人知れず、そしてファントムシューターに気付かれる事なく託された事を。

 今はただ湧き上がる嬉しさからの涙をナノナノはヴァニラに優しく抱き締めながら拭かれ、他の面々も喜び、或いはもらい泣きするのだった。

 

『さてと……色々と話していたら結構時間が経っちゃったなあ』

 

「そうだな。流石にこれ以上は今後に支障が出る」

 

 漸く場は落ち着いたが、時間はかなり経過してしまった。

 そうなるとこれ以上は差し支える事になるので、一先ずはこの場をお開きにしようとするが……。

 

「まだよ」

 

「ええ、まだですわね」

 

 それを遮るように二人の声が響いた。

 全員が其方に目を向けるとティーラウンジ内にランファと、そして何故かミントまで入って来ていた。

 

「ランファ()()に、ミント()()!!」

 

『っ……』

 

 一瞬、ちとせの呼び方にランファとミントの肩が震えた。

 二人もまたちとせが本当の意味で帰って来た事を瞬時に察するが、今はそれよりもやるべき事があると言うように皆が集まっているテーブルに近づく。

 

「レスター。予定通り艦隊はセルダールの第二衛星に移動する事になったわ」

 

「そうか」

 

「私はセルダールが解放されるこのチャンスを見逃せる筈がありませんもの。後、アニスさんとの契約にありますし」

 

「けっ。ちゃっかりしてやがるぜ」

 

 商魂逞しく早々とミントがやって来たのだとアニスは察して呟いた。

 近づいて来たランファとミントは、ちとせが大切そうに抱えているペンダントを睨みつける。

 

『や、やぁ……ランファ、ミント……』

 

 恐る恐ると言うようにタクトは、ランファとミントに返事を返した。

 センサーを介さずとも分かる程に、二人が怒っているのは明らか。

 

「ふぅ~ん、そのペンダントでファントムシューターの中にいるバカタクトと話せる訳ね」

 

「ええ、そのようですわね……ですが、本当にそれはタクトさんなのでしょうか?」

 

「何が言いたいんだい、ミント?」

 

 ランファとミントが何かを企んでいる事を察したフォルテは、相乗りするように話しかけた。

 

「いえいえ、もしかしたら実はファントムシューターがタクトさんのフリをして話しかけているのではないかと思いまして」

 

「お、お二人とも!? それは違います! このペンダントで話せるのはタクトさんだけです!」

 

 庇うようにちとせはランファとミントに告げた。

 

「ちとせ。アンタが言うのは信じたいわ」

 

「ですが、ファントムシューターは『禁断の紋章機』とタクトさん自身が告げた機体ですわ」

 

『……分かった。つまり、二人は俺本人だと確証するだけの証拠が欲しいわけか』

 

「話が早いわね。タクト本人とちとせ、そして私達しか知らない事をこれから質問するわ」

 

「それにお答え下さるのならば、このペンダントで話しているのはタクトさん本人と認めて差し上げます」

 

『分かった! 何でも聞いてくれ!』

 

 これで疑いが晴れるのならばとタクトは覚悟を決めて返事をした。

 ……返事をしてしまった。

 ニッコリとランファとミントは微笑んで、質問の内容を口にする。

 

「じゃあ、質問よ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を答えなさい」

 

『分かった! 俺がちとせに宛てたラブレターの内容は……えっ?』

 

 質問の内容を理解したタクトは固まった。

 それはちとせも同じであり、慌てて顔を真っ赤にしながらランファに質問する。

 

「ラララ、ランファ先輩!? いいい、いきなり何を!? 仰って!?」

 

「あら、これ以上に無い質問だと思うわよ。ねっ、ミント?」

 

「ええ、ランファさんの仰る通りですわ」

 

 ニッコリとランファとミントは微笑んだ。

 その瞬間、タクトは自身が嵌められたことを察するが、時すでに遅い。

 

「ほら、さっさと答えなさいよ?」

 

「何でも聞いてくれと仰いましたよね?」

 

(マ、マイヤーズさん、ご愁傷さまです!!)

 

 この場で恋人に宛てたラブレターを自ら喋らないといけない状況に追い込まれたタクトに、カズヤは冥福を祈った。

 因みにルーンエンジェル隊の面々は、状況が良く分かっていないナノナノを除き、興味津々という様子で成り行きを見守っている。

 

「因みに、アンタが宛てたラブレターはちとせの宝物になってるからね」

 

「ど、どうしてソレをご存知なのですか!?」

 

 ちとせは驚いた様子でランファに質問した。

 

「そんなの丸わかりに決まってるでしょう」

 

「タクトさんを思い焦がれ、心身を削って頑張っていたちとせさんが、あのラブレターを大切にしない筈がありませんもの」

 

『ぐっ……』

 

「なに? まさかと思うけど、アンタ、あのラブレターの内容を忘れたの?」

 

「えっ? そんなまさか……」

 

 ランファの指摘にちとせの顔が悲しみで曇ってしまう。

 それをセンサーで確認したタクトは、沸き上がる罪悪感も合わさり、そしてちとせを悲しませないために覚悟を決めた。

 

『ああっ! もう言うよ! ちとせを悲しませるぐらいなら言ってやるさ!!俺がちとせに宛てた手紙の内容は、『前略、烏丸ちとせ様。ずっと伝えたい事がありました。俺は、ずっとちとせの事が大好きでした。今でも、大好きです。だから、ちとせ。君にはいつでも笑顔でいて欲しいと思っています』! これでどうだ! ランファ!! ミント!!』

 

「……ふにぃっ」

 

 タクトの告白と共に、ちとせが顔を真っ赤にして目をグルグルさせながら床に倒れ伏した。

 

『わぁ~~!! ちとせ~~!!』

 

 恥ずかしさと嬉しさのあまり気絶したちとせに、慌ててタクトは叫んだ。

 その様子を見ていたランファとミントは肩を震わせて、目尻に浮かんだ涙をぬぐいながら微笑む。

 

「ああ、これよこれ! もう懐かしくて涙が出ちゃうわ!」

 

「ええ! またこの光景を見られるなんて夢のようですわ!」

 

「良いもん見せて貰ったよ、タクト、ちとせ」

 

「はい。懐かしくて嬉しいです」

 

『だぁあああっ!! そんな事よりもちとせを早く起こしてくれ!!』

 

 懐かしい光景に喜ぶランファ、ミント、フォルテ、ヴァニラに向かってタクトは叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 ブリーフィングルーム内。

 あの後、ルーエンジェル隊の面々には休息をレスターが命じ、残りのメンバーは後から来たランファ、ミントも含めてブリーフィングルームに移動していた。

 その中には当然恥ずかしさと嬉しさで未だに顔を真っ赤にしているちとせと、ラブレターの内容を暴露させられたタクトの意思を伝えるペンダントもあった。

 

『シクシク……皆、酷い』

 

「酷いのはアンタ。四年間も音沙汰なしでいた事を、こっちは忘れてないんだからね」

 

「ええ、全くですわ。その間ちとせさんがどれだけ心身を削ったのか。見ていた私達の気持ちも察して欲しいですわ」

 

『ぐぐぅっ……』

 

 其処を突かれると何も言えないタクトは、呻く事しか出来なかった。

 その様子を見ていたレスターが話を進める意味もあって、口を開く。

 

「それでタクト。お前には色々と聞きたい事が多すぎるぐらいだが、先ずは『ウィル』に関して話せ」

 

『連中の事か……』

 

 神妙な様子でタクトは声を発した。

 恥ずかしがっていたちとせも顔を上げ、他の面々もペンダントに目を向ける。

 

『俺とちとせを『アナザースペース』で襲った『ウィル』の事だけど、実は俺も連中に関して何も分かっていないに等しいんだ』

 

「なに? お前とファントムシューターは『アナザースペース』に行けるんだろう?」

 

「だったら、連中の事は調べなかったのかい?」

 

 予想外の返答にちとせを除いた全員が驚きで目を見張った。

 ファントムシューターという優れたステルス性能を持った機体と共にタクトはいたのに、自身とちとせを襲った『ウィル』に関して何も知らないに等しいと言う予想外過ぎる返答。

 

「そもそもよ! 何でアンタ肉体を失ってるのよ! その……まさかと思うけど……アンタ、やっぱり『アナザースペース』で『ウィル』の奴らに……」

 

 出来れば、その可能性は口にしたくないと言うようにランファが言い淀んだ。

 他の面々もその可能性に至っているのか顔を暗くする。そんな中、この場で一番落ち込みそうなちとせだけが決意に満ちた顔で口を開く。

 

「いえ! タクトさんは死んだわけではありません! 『ウィル』に奪われた身体を取り戻せばきっと!」

 

「ちとせ、アンタ……話してくれるかい、タクト。ちとせが『アナザースペース』から帰還した後、アンタに何があったのかをさ」

 

『ああ、勿論だ』

 

 フォルテに返答すると、タクトは話し出す。自分に何が起きたのかを。

 

『ちとせがシャープシューターと一緒に俺の前から消えた後、俺は『ウィル』の『パルフェ』って言う奴に捕まった。アイツはちとせが逃げた事に凄く怒っていたよ。『よくも『器』を逃がしたな』って言って、倒れていた俺を引きずり起こした』

 

「『器』ですか?」

 

 明らかに何らかの目的を持ってちとせを狙ったような発言に、ヴァニラが呟いた。

 

『その言葉で俺は『ウィル』からちとせを逃がせてよかったと確信した。そしてそのまま俺は殺されるかと思ったけど、『パルフェ』は急にそれを止めたんだ』

 

「止めたと言うのは、もしやその『パルフェ』よりも上の者が?」

 

『うん、そうだと思うんだけど、その相手の姿を俺は見ていないんだ。そして誰かに告げられた『パルフェ』は俺にこう言ったんだ』

 

『喜びなさい。貴方の肉体は一時『器』として、神に召し上げられる事になりました。しかし、その精神は不要だと見做され、罰を与えます。貴方はもう誰にも触れることが出来ない。貴方は誰にも認識されない。未来永劫、永久の孤独に苛まれる罰を与えましょう』

 

『って言われた後に意識を失って、気がつけば肉体が無くなっていて精神だけで『アナザースペース』に俺は浮いていたんだ』

 

「つまり、その意識を失っている間に何らかの処置をタクトさんは施されて、精神と肉体が別れたと言う事なのですね」

 

『多分ね。それからは前に話した通り、ファントムシューターが俺を見つけてくれて保護してくれたんだ』

 

「其処だけを見りゃ、完全にファントムシューターはアンタの恩人だね」

 

「でも……アンタは私達のところに戻って来なかった……それは……」

 

「私の為です」

 

 ランファの言葉に続くようにちとせが告げた。

 それはこの場にいる誰もが、もう分かっていた。タクトが戻って来なかった理由が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだという事を。

 

「まぁ、もうちとせが乗らなければ良い話だしね」

 

「だね。幾ら『紋章機』とは言え、『黒き月』の思想が基になった機体になんて危なっかしくて乗せられないよ」

 

「『EDEN(エデン)』に戻り次第、『白き月』に運んで封印しながら研究すべきでしょうね」

 

「ちとせさんの安全が最優先です。タクトさんには申し訳ありませんが」

 

「暫らくの間はペンダントを介して会話すれば良いだろう。『黒き月』が関わっているならばノアが全力で研究する筈だからな」

 

 まだ、間に合う筈。

 ランファ、フォルテ、ミント、ヴァニラ、そしてレスターは願うように自分達の考えを告げた。

 だが、その願いは……。

 

『……もう遅いんだ』

 

「はい、今後私は一定期間ファントムシューターに乗らなければ……()()()()

 

 無情にも叶わない。

 古に課せられた残酷な運命は、決して選ばれてしまったタクトとちとせを逃さない。

 その運命の結末が訪れるその時まで。

『無限回廊の鍵』で登場のロゼルの役割

  • リコに接近
  • ちとせに接近
  • 別ヒロインと結ばれる
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