ギャラクシーエンジェルⅡ ~失われた英雄と心に傷を負った天使~   作:ゼクス

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八章後半開始です。

区切りが良いので少し短めとなっています。


第8章後半 天使の休息・想いの芽生え
8-7


 ルクシオールのメインスクリーンに映っている光景を、カズヤは見つめていた。

 

(ちとせさんがファントムシューターに乗って、マイヤーズさんと一緒に『EDEN(エデン)』に)

 

 その事をカズヤ達、ルーンエンジェル隊のメンバーに伝えられたのはつい先ほどの事だった。

 いきなりの事でカズヤ達は驚いたが、『EDEN(エデン)』宇宙への今回の件の報告の必要性はすぐに分かった。

 『セントラルグロウブ』はヴェレルの支配下に置かれ、『クロノゲート』を唯一開放できるミルフィーユもヴェレルの手中にある。

 当然、『EDEN(エデン)』側の宇宙は今回の事態に関して未だ何も分からない状況下に置かれている。

 レスター達としても、フォルテの件など報告する事が山のようにある。それ故に、唯一『ABSOLUTE(アブソリュート)』を介さずに別宇宙に行けるファントムシューターを使い、事のあらましを『EDEN(エデン)』に連絡する事になった。

 ちとせが一緒に行くのは搭乗者に選ばれている事もあるが、ファントムシューターのみでは不審機の上に最悪の場合その場で捕獲されかねないのでレスター達も渋々ながら認めるしかなかった。

 そしてスクリーンには、ファントムシューターがエンジェルフェザーを展開して、自らが発生させた『アナザースペース』に繋がる穴の中に消え去る光景が映し出された。

 

「……大丈夫でしょうか? そのちとせさん」

 

 リコが何処となく不安そうにしながら、宇宙の闇しか映らなくなったスクリーンを見つめながら呟いた。

 それはアニスを除いたちとせの事情を知っているカルーア、ナノナノ、リリィも同じなのか不安を隠せない様子だった。

 

(もしも、リコや皆が不安に思っている通り、ちとせさんが任務を放棄して、『アナザースペース』の何処かにある筈のマイヤーズさんの身体を探し始めたりしたら)

 

 重要任務を任されているならば責任感がちとせが放棄する筈がない。

 だが、同時にリコ達は心身を削って『アナザースペース』の研究に勤しんでいたちとせを知っているだけに、どうしても不安を覚えずにはいられなかった。

 

「安心しなさい。今のちとせなら任せられるわよ」

 

「そうだね。リコ達が不安になるのは分かるさ。でも、安心しな。本当のちとせは人一倍責任感が強いからね」

 

「ええ、そうですわね。ああ、でも、久しぶりに出会えたタクトさんと二人っきりで過ごして羽目を外してイチャイチャはしそうですわね」

 

「それはあるかも知れません」

 

 しかし、不安に思うカズヤ達と違い、ランファ、フォルテ、ミント、ヴァニラはちとせが独断行動をしないと確信していた。

 

「という訳だ。ちとせに関しては俺も問題無いと思っているから安心しろ……さて、ルーンエンジェル隊に集まって貰ったのは、何もちとせの見送りの為だけではない。今後の俺達の行動に関してだ」

 

(来た!)

 

 昨日は話されなかった今後の自分達の行動。

 セルダールを解放した今、すぐにヴェレルを追いかけるのかとカズヤは考えていた。

 だが、レスターは先ずアニスに顔を向ける。

 

「その前にだ。アジート」

 

「な、何だよ? そんな真剣な顔をして?」

 

「……お前のルクシオール襲撃に関してだが、とあるお方が此方が被った被害の賠償を全てしてくれる事になってな。セルダール解放の功もあり、お前は無罪放免となった」

 

「……へっ?」

 

『えええええっ!?』

 

 いきなりの爆弾発言にアニスだけではなく、カズヤ、リコ、ナノナノ、カルーア、そしてリリィも驚愕の余り叫んでしまった。

 その間にレスターの横に移動していたミントが、アニスと交わした契約書を差し出しながら口を開く。

 

「アニスさん。この度は契約完了ご苦労様でした。お約束通り、これまで私どもの商会で重ねていた借金も全てチャラとなりましたので、ご安心下さい」

 

「い、いや、ちょっと待ってよ!! そりゃ借金チャラは嬉しいけどよぉ! 無罪放免ってマジなのか!?」

 

「本当だ。此方としても困惑しているのだが、既に損害に関しての補填も行なわれてる」

 

「マジかよ……」

 

 一体何が起きているのかアニス自身も訳が分からず、目を何度も瞬かせている。

 

「それとレリックレイダーに関してだが……何故事前に話さなかった?」

 

「ぐっ……」

 

 今度は何を指摘されたのか分かっているのか、アニスは息を詰まらせてレスターから顔を逸らした。

 

「あ、あの、どう言う事ですか?」

 

「レリックレイダーに何かあったんですか?」

 

「まさか~、直せないと言う事なのでしょうか~」

 

 質問の意味が分からなかったカズヤ達は疑問の声を上げて、レスターに質問した。

 その質問に対し、レスターは大きく溜め息を吐きながら整備班から届いたレリックレイダーに関する報告を説明し出す。

 

「先ずレリックレイダーだが、あの機体は改造機だった事が整備班の調査によって判明した」

 

「改造機?」

 

「それはつまり、私達の『紋章機』とレリックレイダーは違って、何処かに違いがあるっていう事ですか?」

 

「その通りだ。エンジン部を開けた整備班の面々が驚いていたぞ。搭載されているクロノ・ストリング・エンジンが独自の工作でカスタマイズされていたそうだ……だが、これによってレリックレイダーを以前の状態に戻す事は現状では不可能だと判明してしまった」

 

「……なるほど。独自のカスタマイズでエンジンが動いていたとすれば、我々の『紋章機』のクロノ・ストリング・エンジンを参考にして修理する事は出来ないという事か」

 

「ああっ! そうか!!」

 

 そもそも『紋章機』自体がロストテクロノジーという先文明遺物。

 それを何とか現代で解析し扱えるようにしているのが現状。しかし、レリックレイダーのエンジンは独自の工作によってカスタマイズされて動いていた。

 下手に弄れば完全に壊れてしまう可能性があり、他の『紋章機』のクロノ・ストリング・エンジンを参考にして修理すれば性能が下がってしまう恐れがある。

 

「先に報告しておいてくれれば、壊れる前に解析して修理出来ていたかも知れんのに」

 

 レスターが愚痴るように呟くのは無理もない。

 何せ事前に知っていれば、整備班の面々だけではなく、『EDEN(エデン)』一の科学者といえる人物の助手を務めていたちとせもいたのだから、解析して修理する事が出来ていた。

 しかし、レリックレイダーはアニス個人の所有物であるという事と、本人が頑なにレリックレイダーへの干渉を拒絶していたので詳しく解析できなかった。

 そんな状況の中で解析できていなかったレリックレイダーのエンジン部は先の戦闘で壊れてしまい、元の形が分からなくなってしまっている。

 

「これまでの功績もあるから、レリックレイダーを修理してやりたいところなのだが、肝心のエンジン部の壊れる前の状態が分からん以上、手の出しようがない」

 

「それじゃあ、やっぱり……」

 

「親分のレリックレイダーは直らないのだ?」

 

「……いや、改造機という事はつまりレリックレイダーを改造した人物がいる筈だ。その相手を連れて来れば、或いは……」

 

「ぜってぇ嫌だ!!」

 

『っ!?』

 

 突然のアニスの叫びに、カズヤ達は面をくらって驚く。

 

「あの野郎に頼るのはぜってぇ嫌だからな! それに通信チャンネルを知らねぇから連絡の取り様はねぇぜ!」

 

「なら、その人物がいる場所は何処だ? これまで動いていたという事は、頻度は少なくても改造した相手がメンテナンスをしてくれていたんだろう?」

 

「ぐっ………惑星……『アジート』だ」

 

(えっ? それって……アニスの名字と同じ名前?)

 

 アニスの名字と同じ名前の惑星名が出た事にカズヤは驚く。

 

「なるほど……お前は『アジート』の出身だったのか?」

 

「リリィさん! 知ってるんですか!? その星を!?」

 

「うむ。聞いた話ではあるが、惑星『アジート』は、嘗てはセルダールと同じように栄えていた惑星だったが、時空震以後に衰退し、今では荒野ばかりが広がる惑星だそうだ」

 

「……はぁ~、別の惑星に行っている暇は今回は残念ながらないぞ」

 

 先の戦闘でルクシオールも多少の損壊を負い、『紋章機』はブレイブハートを含めて全機修理中。

 その状況で遠く離れた惑星『アジート』に行っている余裕は、流石に無かった。

 

「アジート。レリックレイダーの修理に関してだが、その改造した人物に会えるようになるまで暫らくはこのままか。或いは他の『紋章機』と同じようにエンジン部を直すしか方法はない。ただ、後者の場合は以前のような性能が出るか分からないそうだ」

 

「なっ!?」

 

「曲がりなりにも今まで動いていて、アレだけの性能を発揮していたからな。内部が変われば変化するのは当たり前だ」

 

(確かに、アニスのレリックレイダーは凄かった)

 

 改造されて他の『紋章機』とエンジン部が違うと言うのに、レリックレイダーは他の『紋章機』に勝るとも劣らない活躍を見せていた。

 その性能が失われてしまうかも知れないとなれば、カズヤも惜しいとどうしても思ってしまう。

 そして聞かされたアニスの方は尚更であり、思い悩むような顔をしながら視線を彷徨わせる。

 

「……す、すぐに答えねぇといけねぇのかよ?」

 

「別にすぐに答えを出せとは言わん。どちらにしても俺達の方も艦隊の再編と修理が終わるまで暫らくはホッコリーで足止めだ」

 

「……分かった……考えとく」

 

 一先ずはレリックレイダーに関しては保留という事なり、アニスは考え込むような顔をして押し黙った。

 カズヤ達も、自身の愛機のことであるある以上、不用意な言葉をアニスには掛けられず心配そうに見つめるしかなかった。

 

「さて、レリックレイダーに関しては此処までだ。そしてエンジェル隊の今後に関してだが……お前達は暫らくの間完全休養で英気を養って貰う事になった」

 

「えええっ!?」

 

「それってつまり!?」

 

「お休みということなのですか~」

 

「やったのだ!!」

 

「うむ」

 

 休暇宣言にカズヤ達はそれぞれ驚いたり、喜んだりした。

 そしてレスターは懐から六枚のパスを取り出して、カズヤ、リコ、カルーア、ナノナノ、リリィ、そしてアニスに手渡していく。

 

「これは今回のクラストブレイカーの報酬として、セルダール政府からお前達に送られて来た物だ」

 

「ホッコリー全施設共通スペシャリティパス?」

 

「むっ!! これはまさか、ホッコリーの全施設を自由に使えるだけではなく、イベントにさえも最優先で参加できるというあの幻のパスか!?」

 

「そ、そんなに凄い物なんですか、リリィさん!?」

 

「ああ! 私も実物を見るのは初めてだ。しかも全て無料で使用可能だ!」

 

「まぁ~!!」

 

「す、凄いのだ!?」

 

「やったぜ!!」

 

 パスの効力を知ったルーンエンジェル隊の面々は、手渡されたパスを手に持って身体を震わせる。

 レリックレイダーの事で思い悩んでいたアニスも、良い気晴らしが出来たと言うように喜んだ。

 そのまま一先ずは解散となり、ルーンエンジェル隊の面々はブリッジから出て行ったのだった。

 意味深な視線をレスターがアニスに向けている事に気が付かずに。

 

 

 

 

 

「……という訳で、アジートの奴はレリックレイダーを改造した人物と連絡を取る事は出来ないそうです」

 

 カズヤ達と分かれた後、レスターはすぐさま自らの執務室に戻り、セルダールの重要人物と連絡を取っていた。

 

『うむ、そうか』

 

 通信先から聞こえて来たのは()()の声だった。

 

『アニス・アジート……彼女がまさかセルダールを救ってくれるとは、夢にも思っていなかった』

 

「貴方とアジートは知り合いだったのですか?」

 

『彼女は覚えていまい。私と彼女が出会ったのは、彼女が物心つく前の赤子の頃の事だからな』

 

「そうですか」

 

 その返答でアニスが何故通信先にいる相手に、思い至らなかったのかレスターは分かった。

 通信先にいる相手こそ、アニスが無罪放免になるように働きかけて来たセルダールの重要人物。その人物から連絡が直接来た時は、レスターも流石に言葉を失った。

 

『フォルテ・シュトーレンに対しても安心してくれ。対外的に処罰を与えなければならないが、決して彼女への不当な扱いはしないと約束しよう』

 

「ありがとうございます」

 

 仲間の安全を一先ず得られた事にレスターは喜び、深々と通信先にいる相手に向かって頭を下げた。

 

『それとレリックレイダーを改造した人物にも、私の方で心当たりがある。其方に関しても此方で手配しよう』

 

「それは……此方としては助かりますが、良いのですか?」

 

『うむ。アニス・アジートに関して、私は妥協する訳にはいかない。()()()()()がいなければ、私はあの日、命を落としていたのだから』

 

 何処か苦渋を滲ませような言葉を通信先にいる相手は発した。

 その様子にレスターは自身の想像以上に、アニスと通信先にいる相手とは深い事情がある事を察するが、其処にはこれ以上踏み込まない。

 何せこうして直接通信など本来ならば出来るような相手では無いのだ。相手側から望んだからこそ出来ているだけに過ぎない。

 それほどまでに通信先にいる相手は、セルダールにとって重要な人物なのだ。

 そして今行なわれている通信は秘匿通信。相手もレスターと通信先に相手しかいない。

 

『しかし、この時代で『禁断』が動くとは』

 

「やはり、何かしらの情報をお持ちなのでしょうか?」

 

『残念ながら深い情報は伝わっていない。時空震以後に、セルダールでも内戦などが勃発し、その戦いの中で情報を喪失してしまった。だが、恐らくではあるが、『禁断の予言』と呼ばれるものの在処に関しては覚えがある。代々セルダールに伝わっていた物。アレに掛かれている文こそが、『禁断の予言』なのかも知れん』

 

「なっ!? それは本当ですか!?」

 

 最早失われてしまったと諦めかけていた『禁断の予言』。

 それが現存している可能性をあると知らされ、レスターの顔に希望が浮かぶ。

 

『うむ……だが、アレは国内の事情もあり容易に手に入らぬ場所に在る。しかし、一部だけならばとある人物に預けてあるのだ』

 

「その一部を預けている人物というのは?」

 

『……これも数奇な運命だ。その一部を預けている者こそ、レリックレイダーを改造した者なのだ』

 

 告げられた事実にレスターは唖然とするのだった。

『無限回廊の鍵』で登場のロゼルの役割

  • リコに接近
  • ちとせに接近
  • 別ヒロインと結ばれる
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