ギャラクシーエンジェルⅡ ~失われた英雄と心に傷を負った天使~   作:ゼクス

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今回は永劫回帰のネタバレとキャラが登場します。
漸くあの人が出ます。


9-6

 ブリーフィングルーム。

 其処にはルーンエンジェル隊のメンバーがアニスを除いて集まっていた。

 しかし、ブリーフィングルーム内の空気は重くなっていた。その原因となっているのは、言うまでもなくリコとカズヤが発している。

 二人は互いに顔を逸らし、目を合わせないようにしていた。その二人の間に漂う空気に、カルーア、ナノナノ、リリィは顔を寄せ合う。

 

「リコちゃんとカズヤさん。一体どうされたのでしょうか?」

 

「分からないのだ。でも、この前ルクシオールが宇宙に上がる時に、リコたん。泣きながらナノナノにカズヤが部屋で怪我したからって伝えて来たのだ」

 

「う~む……訓練の為とは言え、アプリコット少尉に誤解させてしまったか」

 

『誤解?』

 

 リリィの発言に何か事情を知っていると思ったカルーアとナノナノは、詳しく話を聞こうとする。

 しかし、聞く前にブリーフィングルームの扉が開き、アニスを伴ったレスターが入室して来た。

 

「全員、待たせたな」

 

『…………』

 

「おい、何か空気重くねぇか? 特によぉ……」

 

 遅れて来たアニスも、ブリーフィングルームに漂う重苦しい空気を察してリコとカズヤに目を向けた。

 しかし、二人は何も答える様子が無く、アニスは困ったように眉を顰める。

 レスターは過去の経験からカズヤとリコの間に漂う空気の意味を察するが、下手に手出しは出来ない事も過去の経験から学んでいるので溜め息を吐きたい気持ちを堪えながら口を開く。

 

「さて、今日集まって貰ったのは他でもない。今後の俺達の行動に関する話に加え、此処にいるアニス・アジートの事だ」

 

 カズヤとリコを含めた全員の視線が、レスターの横に立つアニスに向けられた。

 これまで協力して戦って来たアニスだが、その立場は言うなれば傭兵に近い立場だった。しかし、セルダールが解放された事でミントとの契約は完了。

 ルクシオールを襲撃した罪に関しても、アニス本人さえ分からない理由で賠償が為されてしまったので無罪放免となった。

 そうなればアニスがルクシオールに留まる理由は、愛機であるレリックレイダーの修理のみ。

 遂に別れの時が来たのかとカズヤ達は覚悟する。特に親分と呼んでアニスを慕っていたナノナノは、今にも泣きそうな顔をしてしまう。

 

「……アニス・アジートだが、本人立っての希望もあり、『ルーンエンジェル隊への仮入隊』が決まった」

 

『……えっ?』

 

「聞こえなかったのか? アニス・アジートは今後、ルーンエンジェル隊へ仮入隊する事が決まった。ヴェレル討伐の功績次第では、そのままルーンエンジェル隊に入隊。階級は戦時下特権という事も少尉が約束される」

 

「つぅーわけだ。宜しくな」

 

 全員が呆然と固まる。だが、徐々に言葉の意味が分かって来たのか嬉しそうに笑顔が浮かび上がり、一番嬉しそうな笑顔を浮かべたナノナノがアニスに抱き着いた。

 

「親ぶ~ん!!! 良かったのだ~~!!! ずっと、ずっとこれからもルクシオールにいるのだ!! いなくならないのだ!!」

 

「ああ、居なくならねぇよぉ、ナノ」

 

「親ぶ~ん!!!」

 

「良かったですわ~」

 

「ああ、心強い仲間が増えた」

 

「アニス!」

 

「アニスさん!! 本当に良かった!」

 

 アニスがこれからもルクシオールに残る事に、ナノナノだけではなくカルーア、リリィ、そしてカズヤとリコも喜んだ。

 そんな中、レスターはアニスに向かって綺麗に畳まれた服を差し出す。

 

「アジート。これがお前のルーンエンジェル隊の制服だ」

 

「あ、ああ……って、何で制服があんだよ! 入隊するって言ったの、ついこの前だぞ!?」

 

 実を言えばアニスは休暇から出戻りした日に、レスターと個人で面談して伝えていた。

 だと言うのに、制服まで用意されていた。しかもアニスが着やすいように上着だけで。

 

「お前の事をことのほか気にしておられる方からの贈り物だ」

 

「いや、だから、それって誰なんだよ? 俺のやらかした事の補填をしてくれたり、レリックレイダーの修理に関してもソイツが口出して来たんだろう? 気になって仕方ねぇぜ」

 

「何れお会いになる機会もあるだろう。その時に相手が話してくれるかは、俺には分からんがな」

 

「本当に誰なんだソイツ? あの野郎じゃねぇのは確かなんだろうけど」

 

 言いながらアニスは渡された制服に袖を通した。

 同時にカズヤ達は、アニスのルーンエンジェル隊への仮入隊を祝福するように拍手をする。

 

「ルーンエンジェル隊へようこそアニス!」

 

「とても良くお似合いですわ~!」

 

「OKだ! 一体感が強まったぞ!」

 

「エンジェル隊って感じです!」

 

「親分! カッコいいのだ!!」

 

「そ、そうか……まぁ、何だ! これからも宜しくな!」

 

 カズヤを含めたルーンエンジェル隊の面々は、これからもアニスと共に戦える事を喜んだ。

 レスターだけでは、アニスの馴染むまでのやらかしの数々を思い浮かべて思い悩むような顔をしていたが、一先ずアニスの今後に関しては決まった。

 

「ですが~、レリックレイダーはどうなるのでしょうか~?」

 

「ああ、それな……正直信じらんねぇんだけど、あの野郎が此処に来るんだと」

 

「あの野郎? もしや、それはレリックレイダーを改造した人物か?」

 

「ああ、そうだぜ……まさかとは思ったけど、マジであの野郎が来るなんてなぁ」

 

 余程件の人物がルクシオールにやって来る事が信じられないのか、アニスは疑わしそうな顔をしながら答えた。

 

「その人物は後、一、二時間ほどでルクシオールにやって来る予定だ。全員気になるだろうが、他にも話があるから席に着け」

 

 そうレスターに促されたカズヤ達は、自身にあてがわれている席へと座って行く。

 

「さて、お前達にも色々とあった間に、セルダール、マジーク、『EDEN(エデン)』代表である俺との三者で何度か話し合いが行なわれた」

 

 セルダール解放の際、マジークの動きにピコを含めて同調した星々から派遣された艦隊もあったが、彼らからは今後もマジーク及びセルダールの方針に従うと言う事が告げられたので会談には参加していなかった。

 

「その結果、我々は正式に連合軍を結成する事になり、ヴェレル討伐を行なう事になった。そしてこのルクシオールは旗艦の役割を担う事になり、俺は今後連合軍の司令官を任される事になった訳だ」

 

「まぁ~……」

 

「セルダールにおいても実戦経験者は皆無……その点で言えばクールダラス司令を含め『EDEN(エデン)』の者達は実戦経験が豊富だ。論理的かつ適切な判断だな」

 

「そんで、これからどうすんだよ?」

 

「今後の方針としては、『ABSOLUTE(アブソリュート)』にいるミルフィーユを救出する為に、今後も敵と戦っていく事になる。今後、連合軍は全戦力を持って、ヴェレル軍の討伐にあたる。遂にヴェレルと本格的に開戦すると言う訳だ」

 

「うっしゃぁ!! 気合いが入るぜ!」

 

「退治するのだ!!」

 

 アニスとナノナノは気合いを入れるように叫び、カズヤ、リコ、カルーア、リリィも決意に満ちた顔で頷いた。

 神を名乗り、全平行宇宙の支配をヴェレルが目論んでいる上に、最初の標的は『NEUE(ノイエ)』宇宙。

 支配される気などない以上、ヴェレルに対して抗うのは当然であり、囚われているミルフィーユも救出しなければならない。

 誰もがやる気を滾らせる中、レスターは話を続ける。

 

「セルダール艦隊とマジーク艦隊、及びヴェレルへの反抗を決意した各惑星の艦隊を合わせればかなりの戦力になる。『EDEN(エデン)』正規軍ほどではないにしろこれだけの連合軍となればかなりの戦力だ」

 

「頼もしいですね!」

 

「ああ、まぁ、最もセルダール艦隊が無傷で残っていたのはフォルテのおかけだ。前回の戦闘の時にセルダール艦隊は戦列に加わっていなかった。おかげで殆ど無傷に艦隊が残っている。フォルテがあの手この手で、『EDEN(エデン)』排斥派連中を説得したようだ」

 

「流石はシュトーレン中佐だ」

 

 敵に利用されながらも、後に優位になれるような手を打っていたフォルテの手腕にリリィを初め全員が感心したように頷いた。

 そんな中、カズヤはフォルテが自分とリコをホッコリーに送ってくれた後に、何処に向かったのか思い出す。

 

「あっ! そう言えば……・そのフォルテ教官ですけど……セルダールに行ったみたいなんです。何だかヤボ用って言ってましたけど、司令はどんな用なのか知ってるんですか?」

 

「その事か……」

 

 何処か重苦しそうな雰囲気をレスターは纏う。

 その様子に何か重要な話がされるのだとカズヤ達は察して、息を呑みながらレスターの言葉を待つ。

 

「全員落ち着いて聞け。セルダール政府からフォルテの正式な処分が下された」

 

「処分!?」

 

「そ、そんな……」

 

 カズヤは驚き、リコは悲し気な声を上げた。

 忘れてはいけない。フォルテは利用されていたとしても、『NEUE(ノイエ)』全土にクーデター軍の首魁とされていた人物。セルダールを支配下においた経緯もある以上、何らかの処罰は下さなければならない。

 

「フォルテがセルダールに向かったのは、自首をする為だ」

 

「ええっ!?」

 

「まっ、あれだけのことをしちまったんだからな……無罪放免って訳にゃ、いかねぇよなぁ……」

 

 この場で唯一フォルテとの親交が短いアニスは、客観的に判断しているのか納得したように頷いた。

 

「そ、それは! セルダールを護る為であって!」

 

「そうですわ~……この宙域の被害を最小限に抑える最良の選択だった筈です~」

 

「先生は悪くないのだ!!」

 

「落ち着け! 話はまだ終わってないぞ」

 

 慌て出す面々を落ち着かせるようにレスターは少し大きめな声を上げた。

 その声に冷静さを取り戻したカズヤ達は、静かにレスターの言葉を待つ。

 

「フォルテにセルダール政府が下した処分は、現状では問題はない。と言うよりも、その処分の執行が出来ないからだ」

 

「出来ないという事はどう言う事だろうか? 我が王は如何なる沙汰をシュトーレン中佐に下したのだ?」

 

「『『NEUE(ノイエ)』からの追放』。これがフォルテに下された判決だ」

 

「つ、追放……」

 

「まぁ~……」

 

「そんなの酷いのだ!! も、もう、先生に、会えないのだ!? うぐ、ひくっ……」

 

「だから、泣くな! そもそもどうやってフォルテを『NEUE(ノイエ)』から追放するのか良く考えて見ろ」

 

「ふぇ……」

 

「あのなぁ、ナノ? どう考えてもその罰、すぐにゃ受けられねぇだろうが?」

 

「親分、どういう事なのだ? ぐす」

 

 理由が分からないナノナノは、縋るようにアニスに問いかけた。

 

「ゲートの開け閉めはブレル……ん? ヴェレルだっけか? まぁ、いいや。野郎が牛耳っちまったんだろう? だったら、フォルテの姉御を追い出そうにもできねえじゃんか」

 

「そ、そうか……」

 

 アニスの説明にカズヤは納得したように頷き、他のメンバーもハッとした顔で頷いた。

 『クロノゲート』の開閉が出来るミルフィーユがヴェレルの手の内にある以上、幾らセルダール政府がフォルテに『『NEUE(ノイエ)』追放』の沙汰を下しても、すぐにフォルテは『NEUE(ノイエ)』から出る事が出来ない。

 つまり、フォルテに下された判決は執行猶予付きのものなのだ。

 

「フォルテの刑は、この騒動が治まるまで保留。これが、ソルダム陛下の最終的な判決だ」

 

「び、微妙ですね? それにちとせさんとタクトさんが『EDEN(エデン)』からファントムシューターで帰還したら、すぐにフォルテさんは……」

 

「ファントムシューターが、セルダール政府の頼みを聞くと思うか?」

 

 そのレスターの問いに、カズヤ達は即座に首を横に振った。

 ファントムシューターは搭乗者であるちとせやタクトの全ての指示に従う訳ではない。あくまで今後の行動に関して有用だった場合のみ。しかもファントムシューターは勢力などに従う事は無い。

 レスター達に協力しているのは、それが一番ヴェレル討伐の可能性が高いからに過ぎない。

 そんなファントムシューターが『NEUE(ノイエ)』に帰還して来たのに、即座に『EDEN(エデン)』にフォルテを乗せて帰還しろと言われても、従う筈がない。搭乗者であるちとせとタクトにしても、フォルテの追放に協力する筈がない。

 

「じゃ、じゃあ先生には会えるのだ?」

 

「うん。ヴェレルをやっつけるまではね」

 

「いいえ~、ゲートが開放されたら何時でも会いに行けますわ~」

 

「そう考えると、刑もかなり軽い印象だな」

 

 一見重そうに見えたフォルテへの刑だが、見方を変えてみるとそれほど重い刑で無い事に気が付き一同は安堵した。

 

「良かった」

 

「良かったのだ~!! 先生とまた会えるのだ!!」

 

(フォルテ教官の事は、本当に良かった)

 

 尊敬していた教官が、一先ずは安全が保障された事にカズヤは心から安堵した。

 

「フォルテに関しては此処までだ。話は戻すが、長距離スキャンに寄ればヴェレルはどうやら『クロノゲート』に陣を張りつつあるようだ。その上、この敵陣は火を重ねるごとに数が増えて来ている」

 

「厄介な事だな。マイヤーズ殿が言っていた『影』と言う生産施設を用いて、艦隊を増やしていると事か」

 

「そう言う事だ」

 

「あのよぉ? その『影』とか言う生産場所は、『NEUE(ノイエ)』に出てこれるのか?」

 

「それは不可能だそうだ。タクトの話では、『影』は『クロノゲート』よりも遥かに大きな生産施設らしく、『ABSOLUTE(アブソリュート)』から『クロノゲート』を通って出て来るのは不可能らしい」

 

「そんな巨大な物が、『ABSOLUTE(アブソリュート)』に在っただなんて」

 

「あらゆるセンサーを無効化し、光学映像でしか捉えられない施設。にわかに信じ難かったが、ヴェレルがこうも艦隊を送って来ている事から考えれば、事実と認めるしかあるまい」

 

 一同は改めて、ヴェレルの保有している『影』とタクトが呼んでいた巨大な生産施設の力に戦慄するしかなかった。

 

「そう言う訳で此方としても急ぎ鎮圧に向かいたいところだが……まだ前回の戦闘で負った被害の影響で、マジーク艦隊と連合艦隊の修復は終わっていない」

 

「レリックレイダーも、これからだしなぁ」

 

 ヴェレルに時間を与えるのは危険だが、残念ながらレスター達も未だ先の戦闘での傷が癒えていなかった。

 

(その上に……)

 

 レスターはカズヤとリコの間に漂う重い気配に気付いていた。

 その重い空気をレスターは知っている。カズヤとリコの間に漂う気配は、嘗てタクトとちとせの間にも発生していた。

 そしてその気配が発生している時は、必ずと言って良いほど、『紋章機』の調子が悪くなるのだ。

 

(また、恋愛絡みか)

 

 もう自分の前では起きないだろうと思っていた事が、カズヤとリコの間で起きている事にレスターは頭痛を感じずにはいられなかった。

 

(かと言って、俺が間に入っても良くなるわけがあるまい……どうしたものか)

 

 ルーンエンジェル隊の中で発生している不和。

 それを解消しなければ今後の戦いには勝てない。だが、それが分かっていても上官とは言え、部外者であるレスターが介入出来る問題ではなく、どうすればいいのかと悩んでいるとブリッジから通信が届く。

 

――ピピッ!

 

『ブリッジよりクールダラス司令へ』

 

「俺だ、どうした、アルモ?」

 

『間もなくセルダールのシャトルが本艦に到着します』

 

「分かった」

 

 レスターはアルモとの通信を切り、自身に目を向けているルーンエンジェル隊の面々の顔を見回す。

 

「例の客が来た。ミーティングは終了とする。各自まだ暫らくは英気を養っておけ。アジート。お前は俺と一緒に来い」

 

「へ~い……まぁ、仕方ねぇか」

 

 嫌そうな顔をしながらも文句は言わずにアニスは椅子から立ち上がった。

 

「親分が行くなら、ナノナノも行くのだ!!」

 

「私も~、アニスさんの『紋章機』を改造した方に興味がありますわ~」

 

「セルダールのシャトルで来るとわ。私もどのような人物なのか気になる」

 

「じゃあ、僕も……」

 

 ナノナノ、カルーア、リリィが一緒について行くことを表明したのでカズヤも椅子から立ち上がった。

 だが、残されたリコだけは椅子から立ち上がると、レスターに声を掛けた。

 

「あ、あの、倉庫の在庫チェックに向かって良いですか? 実はランティさんから頼まれていたんです」

 

「構わないが、今はエンジェル隊は休暇中だぞ」

 

「い、良いんです……何かをしていた方が落ち着きますから」

 

「そうか……分かった。行ってこい」

 

「失礼します!」

 

 他のメンバーよりも一足早くリコは、ブリーフィングルームから足早に出て行った。

 その後ろ姿をカズヤは複雑そうな顔で見つめる。

 

「追わないのか?」

 

 カズヤの様子に気が付いたリリィが、小声で問いかけた。

 その問いにカズヤは力なく首を横に振りながら答える。

 

「いえ、僕はリコに近づかない方が良いですから」

 

「いや、それは違うと思うが……やはり私から例の特訓の事を改めて桜葉少尉に説明した方が……」

 

「それも……良いです。きっと説明しても……リコはもう僕に近づきたくないでしょうから」

 

「そ、そうか……」

 

 落ち込んで暗い顔をしながら言うカズヤに、リリィはそれ以上何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 ルクシオールの格納庫のシャトルの発着場。

 其処にセルダールから来た一機のシャトルが降り立った。

 そしてセルダールの騎士らしき人物に護衛された小柄な老人が、シャトルから降りて来る。

 出迎えに来たレスターに護衛して来てくれた騎士が敬礼を行なう。

 

「クールダラス殿! お連れ致しました!」

 

「護衛ご苦労。それでそちらの方が?」

 

「はっ! お連れしたお方です!」

 

「んっ」

 

 騎士が横に移動すると共に、小柄な老人がレスターの前に立った。

 

「『ケルビン・グレープ』じゃ」

 

(あ、あの人がレリックレイダーを改造した人!?)

 

 少し離れた位置で様子を見ていたカズヤは、『ケルビン・グレープ』と名乗った老人を見つめる。

 それからアニスの方に目を向けると、アニスが複雑そうな顔をしてケルビンを見つめていた。

 

「マジで来やがった……」

 

(アニス……)

 

 本当に来るとは思っていなかったと言う様子で、アニスは様々な感情が入り混じった顔をしてケルビンを見ていた。

 そしてレスターについて来るようにケルビンはカズヤ達の前に来て、アニスに顔を向けた。

 

「よぉ……」

 

「ん……イカれたそうじゃな」

 

「ああ……」

 

(な、何だか凄く険悪そうな様子だ。だ、大丈夫なのかな?)

 

 アニスとケルビンの余人には迂闊に踏み込めない気配に、カズヤ達は気押される。

 

「セルダールを救ったそうじゃな?」

 

「成り行きでな……」

 

「そうか……良く頑張った」

 

「っ!? テメエに褒められる事じゃねぇ!!」

 

「分かっとる……それじゃあ、司令官殿。レリックレイダーのところに案内しとくれ」

 

「此方へ」

 

「ああ、それとじゃ……」

 

 ケルビンは懐に手を入れて、何かの柄のような物をレスターに差し出した。

 

「あのお方に渡すように頼まれた物じゃ」

 

「此れが例の!?」

 

 ケルビンから差し出された柄を、レスターは受け取り注意深く見つめる。

 事情が分からないカズヤ達はレスターの様子に疑問を覚える。しかし、レスターは構わずに柄のような物を調べ、何らかの文字が彫られている事に気が付く。

 

「まさか、この文字の内容が『禁断の予言』!!」

 

『ええっ!?』

 

 レスターの発した言葉にカズヤ達は目を見開いて叫んだ。

 遥か昔にマジークで『全ての終焉』が起こる事を暗示した『禁断の予言』

 しかし、昔、マジークで起きた政変によって『禁断の予言』は消失してしまった。最早『禁断の予言』の内容を知る事は出来ないと誰もが諦めかけていたが……。

 

(『禁断の予言』は残っていたんだ!?)

 

 マジークではなく、別の星に。

 しかも、それがアニスの知り合いの手にあるなど誰も想像だにしていなかった。

 

「おい! マジでこれに書かれてる文字の内容が『禁断の予言』なのかよ!!」

 

 流石にケルビンに複雑な感情があっても、黙っていられる話では無いと思ったアニスがレスターの持つ柄のような物を指差しながら質問した。

 

「……知らん」

 

「ああん!? 知らんって、お前が持っていたんだろうが!?」

 

「儂はただとある方に解読を依頼されていただけじゃ。しかも結局解読出来ずじまいで終わった」

 

「何だそりゃ?」

 

 ケルビンの答えに一同の視線がレスターの持つ古い柄のような物に向いた。

 

「……ん? あの形、何処かで……っ!? いや、まさか!?」

 

 柄を見ていたリリィは、何かに気が付いたようにすぐさまレスターの傍に近寄った。

 

「クールダラス司令!! それを少し見せて頂きたい!!」

 

「構わないが、何か覚えがあるのか?」

 

「それを確認する為です」

 

「分かった」

 

 レスターはリリィの手にケルビンから渡された柄のような物を渡した。

 渡されたリリィは大切に受け取り、注意深く柄を確認していく。

 

「う~む……やはりこれは……だが、コレがもしそうだとすれば……ケルビン殿? もしや貴方にこの柄に掘られた文字の解読を依頼したお方は……」

 

「悪いがその方の名前は言えん。例えお前さんがセルダールの騎士だとしてもじゃ」

 

「……分かりました。これ以上はお聞きしません」

 

 硬く決意が籠もったケルビンの声に、リリィもそれ以上は問いかけずに引いた。

 その様子を見ていたレスターは、話を戻す意味も込めてリリィに問いかける。

 

「それでリリィ。お前はその柄のような物の正体を知っているのか?」

 

「無論。これは複製品のようですが、これと同じ物を私はセルダール城で見た事があります。これは紛れもなくセルダールに伝わる伝説の剣……『紅蓮の剣』の柄の部分です!!」




アニスとケルビンの仲違い解消はまだずっと先です。

『無限回廊の鍵』で登場のロゼルの役割

  • リコに接近
  • ちとせに接近
  • 別ヒロインと結ばれる
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