次もコツコツ書いているけど先になりそうです。
というか書いている間に原作で結構な魔法陣営にバフが入ってる……。デカいトカゲも空飛ぶ木造艦隊もWWⅡレベルだと戦力によっては苦戦しそうなのがなー。
中央暦1640年2月22日 デュロ
いたるところで黒煙が立ち上り、硝煙と焼けた人肉がブレンドされた臭気が満ちた市街地跡を1式中戦車が先陣切って進んでいく。
そのすぐ後ろから歩兵を乗せた2式歩兵戦闘車が続き、さらに後方にはトラック、各種自走砲が、先頭の速度に合わせてノロノロと追従する。
研究所まであと20kmほどの距離に達したとき、無線機が反応する。戦車長がスイッチを入れると、上空の100式回転翼機2型から連絡が入った。
『アホウドリ4から闘牛1へ。10時方向より地竜と敵歩兵、ならびに4時方向からも歩兵が接近中。4時の敵はこちらで対処する。貴隊は10時の敵に対処されたし』
「了解。攻撃を開始する」
戦車長の後方にいる2式歩兵戦闘車の砲塔が左へ旋回し、37mm機関砲が隠れて接近しているつもりのパーパルディア兵へ向けられる。
「撃て」
車長の指示に従って発射された37mm砲弾が、瓦礫ごと裏にいた歩兵を四散させる。
2式歩兵戦闘車の攻撃から、ほぼ間を置かずに100式回転翼機の12・7mm機銃により、じりじりと近づいてきていた歩兵が鉛で射抜かれ、地に伏せる。
未知の敵に挑まんとした勇敢な兵士たちを旧デュロ市街地を彩るアートに変えたことに、感傷もなにも感じぬまま土煙が晴れるのを待つ。
『闘牛隊、新たな敵影は確認できない。前進を再開されたし』
「了解した。引き続き、周辺監視を頼む。堕ちたら回収は必ずから安心してくれ」
『ハハハ、できればそうならないことを願いたいね』
100式回転翼機は鳶のように、闘牛隊の上空で円を描くように飛行する。
胴体左右から飛び出た鉄塔のようなブームの先に上向きに取り付けられたプロペラが甲高く咆哮し、ディーゼルエンジンの唸りを超えて鼓膜を叩く。
侵攻部隊が敵戦力の集まった拠点――研究所に近づくにつれて、パーパルディア側の死傷者は増えていった。
研究所
「おい! まだ準備は終わらないのか!?」
天幕で空からの監視から隠された広場。恰幅の良い体を震わせながら怒鳴るのは研究所の所長。
彼の指が指し示す先には、大量の配線が繋がれた機銃が鎮座している。
本当ならワイバーンが全滅した段階で発射準備に入っているはずだったのだが、敵飛行機械の銃撃で担当職員が負傷したことに加え、初めての実戦からくる緊張によるミスなどでここまで遅れてしまった。
そのおかげで、ここまで対空砲潰しの攻撃隊に発見されなかったのだから、一概に運が悪かったとは言えないが。
「魔力の充填にもう少し時間がかかります。ミリシアルの技術者は『充填はすぐ終わる』と言っていたのですが……」
「むう……我が国最先端の装置を用いてこれか……。流石は魔法先進国といったところか」
所長も技術者ゆえに職員の言い分が分かる。分かってしまう。世界最強の列強との差を、土壇場になって改めて思い知らされる。
……もっとも、その世界最強も異星人のテコ入れがなければ、メッキの塊だったのだが。
そんな世界の裏事情を知る由もない所長は純粋に神聖ミリシアル帝国の魔導技術に感嘆と畏怖の念を抱く。
「まあいい。充填が終わり次第、日本の飛行機械を攻撃する! 皇国の空を好きにはさせん!」
使命感を胸に彼らは準備を急ぐ。
散発的な襲撃を全て退け、デュロ侵攻部隊は研究所手前まで到達した。
あと少しで戦車砲の有効射程に入る。そのとき、研究所の一角より光弾の連なりが空へと打ち上げられた。
「敵の対空機関砲だ! 歩兵は戦車か装甲車の後ろに隠れろ!」
パーパルディアが輸入したミリシアルの対空砲の口径は20mm程度だと判明している。
それが分かっているからこそ、各隊の指揮官は生身の歩兵たちに対空砲からは絶対の安全圏となる場所への退避を命じたのだ。
その直後、不運にも光弾が直撃した100式回転翼機が左プロペラを吹き飛ばされた。
『メーデー! メーデー! アホウドリ4墜落する! 救助を――』
悲痛な叫びを無線で流しながら、くるくると独楽のように回転しながら墜落する。通信を終える前に地面との熱烈な抱擁を交わした100式回転翼機は、紅蓮の炎をまとう鉄くずとなった。
「……あれでは生存者はいないな……」
100式回転翼機2型の乗員は2名。つまりヘリコプター操縦技能を持つ兵士が2人死んだということだ。
遺族には戦死手当と戦死者遺族年金が支払われるだろう……そういう設定のクローンがいればだが。
『こちら水かけ屋、研究所から花火を確認した。ただ今より消火する』
今の発砲で対空砲の位置が分かったことで、対空砲潰しの彗星艦爆が動き出した。
長時間、滞空するために両翼下に増槽を積んでいるため、爆弾は胴体下にしかないが、彗星はこの場に全機で16機いる。対空砲1基相手なら16発もあれば十分だ。
光弾の発生地点へ向けて猛スピードで降下していく彗星艦爆。それに気が付いたのか光弾が慌てて彗星に向けられるも、既に彗星は投下高度に達していた。
爆弾が切り離され、風切り音とともに地上へ突っ込んでいく。一拍の後、爆発音とともに土砂が空へまき上がった。
1番機に続いて3機の彗星が投下した爆弾によって生じた土のカーテンの向こう側で、何かが爆発したような、激しい光が見えた。
研究所上空をしばらく飛び、対空砲のあった位置を確認して報告する。
『敵対空砲の撃破を確認。他に対空兵器は確認できず、これより帰投する』
『アホウドリ3より全地上部隊。研究所へ突入せよ。闘牛1、君たちが正面だ。アホウドリ4の敵を討て』
「了解した。これより正面の敵陣地を突破し、研究所へと突入する」
地上管制も担う回転翼機機長にしては感情的になっている。アホウドリ4と親しかったのだろうか?
無線でのやりとりから抱いた戦車長の疑問。憶えていれば後で聞こうと思っていたそれは、正面入り口のバリケードを主砲でこじ開けたとき、爆風に巻き込まれた敵兵のように消し飛んでしまった。
「これが日本の――世界最先端の戦争ですか」
前線から少し離れた空を飛ぶ100式回転翼機の後席で、ムーの観戦武官が震えた声で呟く。
前席で操縦している土方三郎大尉は観戦武官カスメラのもらした問いに律儀に答えた。
「ええ、これが我々の戦争です。参考になりましたか?」
「はい。陸海空が緊密に協力し合い、作戦目標を達成する――聞いてはいましたが、実際に見るとその効果が実感できます」
視線を下界へと向ける。そこには蟻のような黒点の列がいくつもうごめいている。蟻と違うのは、それらは空の目を通じて動いていることだ。
(本土を見ていないにも関わらず、文明圏外国家と下に見ることなく礼節を保ちつつ冷静に分析している……。ムーが自信をもって送り込んできただけのことはあるか)
ムーは世界各地の戦争に観戦武官を派遣している。綿密な事前調査の元、派遣した陣営がほぼ確実に勝利を収めることから「ムーが観戦武官を送ったほうが勝つ」というジンクスがあるほどだ。
エストシラント空襲にいてもおかしくないが、奇襲のためにムーを含めた各国に何の連絡もしていなかったために派遣できなかったのだ。第2日本とパーパルディアの衝突が確実視されていたため、派遣する人員の選定は進んでいたが。
そしてデュロ侵攻作戦に何とか間に合ったのが後ろにいる彼というわけだ。
「たった今連絡が入りました、研究所の制圧が始まったようです。あそこを落ちればデュロの敵拠点はなくなりますな」
「研究所へ飛ばしていただけますか? 日本がどのように敵拠点を攻略するのか、直接、目にしたいのです」
「ミリシアルの物と思われる対空砲があったそうです。1基しか確認されてませんが、まだ隠しているかもしれません。危険だと判断しますが」
「前線でその程度の危険を気にしていたら、観戦武官なんて務まりませんよ」
中央暦1640年3月17日
パーパルディアとの開戦以後、初となる日ム間での会談が行われた。
「戦艦の建造依頼ですか?」
「はい、我が国は貴国に戦艦建造を依頼します」
挨拶もそこそこに切り出されたのは、第2日本以外の国ではいまだ国威の象徴として崇拝されている艦種、戦艦を造ってほしいという依頼だった。
「……分かりました。では依頼する建造数と性能についてお伺いしても? それと、貴国でのライセンス生産については?」
「建造数は4隻。性能は主砲に46cmを最低でも6門搭載し、最大速力25ノット以上。対空火器と電子装備を改装で追加できる冗長性を求めます」
そこで一度区切り、胸の内の何かを飲み込むように目を伏せる。
「それとライセンス生産ですが……本国では望む声も多いのですが、恥ずかしながら我が国の技術力では困難だと、我々は判断しています」
「必要ならば工作機械の販売と技術指導員を派遣いたしますが? 貴国ならどちらも同盟国価格でご利用いただけます」
「ご厚意に感謝します。ですがそれらは銃火器に駆逐艦以下の軽量艦艇建造と、航空機・車両製造に充てたいのです」
曰く、ムー上層部(特に知日派)は自分たちの技術力では第2日本帝国水準の戦艦を造ることなど逆立ちしても不可能だと判断した。
だが何も学び取らなければムーはいつまでも第2日本の後追いのまま。ならば比較的、技術的ハードルの低いものから手を伸ばしていこう……最終的にそういった結論でムー上層部は合意した。
さらにもう1つ、ムーが頭を悩ませる問題がある。
「それに本国では、グラ・バルカス帝国とのいざこざが問題となっています。近日中に開戦とはならないでしょうが、5年以内には何かしらの問題が起きると考えています。その場合、駆逐艦はまだしも戦艦、空母のような大物は間に合いません」
列強レイフォルを下したグラ・バルカス帝国。帝国主義を体現した行動を繰り返しムー大陸以西で悪名を轟かせている。
国境付近の空でも容赦なく攻撃を仕掛けてくることから、ムーは友好関係構築は不可能と判断し、有事に備えて国力増強に乗り出したのだ。
「……貴国の事情は理解しました。先ほどのご要望についてですが、我が国は全面的に受け入れます」
「本当ですか!」
「我が国もグラ・バルカス帝国の噂は耳にしています。そのとき、矢面に立てるのは国力と地理からしてムーしかいないでしょう。ムー国は我が国にとって重要な貿易相手、失うわけにはいきませんから」
実際はエイリアン――より正確には統合知能によって作られた第2日本経済は不自然さに目をつむればいくらでも好景気にできる。
だが現時点では、エイリアンも人造人間たちもそのような設定を壊すようなまねをするつもりも、必要にも迫られていないので、表向き最大の貿易相手であるムーを支援することに外交官は同意したのだ。
……星海の船にいる上司たちが『そのほうがいい絵が撮れる』と判断したことも大きいが。
「それとですが、貴国の欲する技術に火薬関連がありましたよね?」
「? ええ、性能だけでなく工場の製造能力も足りていませんので製造法も含めて購入を打診していましたが、それが?」
「ああいえ、近々パーパルディアで新型爆薬を用いた爆弾の実戦試験があるので、火薬の交渉は観戦武官の報告を待ってからのほうがいいかと思いましてね」
「新型爆薬?」
新型の爆薬と言われても、火薬というものにそれほど造詣の深いわけではない彼らには、ピンと来なかった。
マイラスたち派遣組の誰かがいればまた違ったかもしれないが、彼らは大学や研究所を巡るのとレポート作成で忙しい。それゆえにわざわざ観戦武官がムー本国から派遣されたのだから。
「……差し支えなければ、いつ頃試験を行うのか教えていただけますか?」
「早ければ来月には」
「でしたら本国から火薬の専門家を呼びますので、試験に同行させてもらっても?」
「もちろんです。必要でしたら100式輸送機をお貸ししますので、お気軽にどうぞ」
「ははは……ありがとうございます」
ムーの外交官はひきつった笑みを浮かべながら感謝の言葉を述べる。
ラ・カオスを超える6基の発動機で飛翔する超々大型輸送機。大きさもさることながら、ラ・カオス100機分に相当する燃料を積み、第2日本とムーを無補給で往復できる航続力はムーの度肝を抜いた。
製造・維持費ともに巡洋艦並みの輸送機を、自転車を貸すような気楽さで用意する第2日本の国力に、恐怖よりも呆れてしまうムー交渉団だった。