エイリアン支配領域日本召喚   作:レシプロ至上主義者

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開戦

 中央暦1639年4月12日 09:45 クワ・トイネ公国 国境付近 第2日本帝国陸軍基地

 

 周囲を地雷原と鉄条網、コンクリート壁で固められた要塞の最深部で司令官の大和田利夫大将と副官の成田府佐和大佐が話していた。

 

 「では成田大佐、“上”の要望はあくまで正義の味方を演じることで良いのかな?」

 

 大和田の問いに成田は静かに答える。

 

 「はい。正確には極力、という但し書きがつきます。流石に戦場で正義の味方でいるのは不可能ですから」

 「まあ我が軍の兵士が全て機械ならまだしも人間だからな……。怒りもするし泣きもする、当然」

 「親しい者を殺した相手を憎みもする。まあ初期設定で感情を徹底的に排除すれば別ですが、それをやるわけにはいきませんからね」

 「不自然すぎるからな……。まあ人間を使った商売をするなら誰もが通る道だ。その点我々に課せられた要求はそう難しくない。ようは加減(、、)()戦争をしろということだからな」

 「第2次大戦時の米軍と同じくらい人道的にやれば、そうそう文句も来ないでしょう」

 

 成田が皮肉を言ったそのとき、緊急連絡用の固定電話が鳴る。

 

 「わしだ。何かあったのか? …………ほう、そうか。ああ、他の基地にも連絡しろ。装甲師団と機械化歩兵師団、それと装甲擲弾兵師団は全て動員する。海空軍には早急に航空支援と戦略爆撃の開始を要請しろ。急げ、のちに起きる戦いでは今日ほどのんびりできんぞ」

 

 電話に出た大和田が用件を知ると矢継ぎ早に指示を出す。

 

 「成田大佐、至急“上”に伝えろ。お望み通り、商売が始まったとな」

 「閣下、では先ほどの電話は」

 

 急かすように電話の内容を聞いてくる成田に大和田はニヤリと笑って教える。

 

 「そうだ。ロウリア王国が宣戦を布告した。既に国境に待機していた10万が越境し、ギムの町へ向かっている。……さあ急ぐぞ、ここで仕事をこなさなければ“廃棄”されかねんからな」

  

 

 

 

 

 「皆さん、ご存じの通り先ほどロウリア王国がクワ・トイネ公国へ侵攻を開始しました。既に第2日本軍が攻撃を開始しています」

 

 会議室に緊張が走る。命の危険は全くないが、プロジェクトの第一歩であるロウリア戦。否応なしに唾を飲み込んでしまう一同。

 

 「それで肝心の映像は撮れているのですか? 既にロウリアの侵攻軍全域に配置は完了してあるそうですが」

 「もちろん撮れていますよ、上級将校から末端の兵士まで。彼らの行動、その結果全てが我々の“主力商品”の素材となりうるのですから」

 

 得意げに話す映像関連、特に撮影に力を入れて担当したエイリアン。

 彼は自分の携わった仕事に絶対の自信を抱いていた。寝る間も惜しんでAIの力を借りつつ完成させた万全の撮影態勢。それが満足のいく画を撮れないはずがない、と。

 

 「そういえば統合知能が最近新たに発見した存在で、プロジェクトの邪魔になるラヴァーナル帝国という国家に対する対策案を提出してきましたが、皆さんご存じでしたか?」

 「……何ですか? その、ラヴァーナル帝国、という国家は?」

 「かつてこの惑星に存在したという国家ですな。なんでも上位者に挑み、滅ぼされそうになったため時空跳躍の類いで惑星から避難し、近々帰還するそうです」

  

 知らない国家名に困惑する議長役に別のエイリアンが説明する。

 

 「時空間技術を保有しているということは、少なくとも外宇宙への進出が可能な程度の技術レベルを有していると?」

 「いえ、どうもこの国に限らずこの惑星の国家は皆技術の発展具合がちぐはぐと言いますか、歪と言いますか……。とにかく彼らは一部の技術を除いて日本に劣る程度の技術レベルだそうです」

 「それは……なんというか、歪ですね」

 

 議長役の言葉はエイリアンたち全員共通の感想だった。時空間技術を保有しているのに全体で見れば日本にも劣る技術力、というのは一体どのような課程を経ればそのような発展を遂げるのかと、思わず首をかしげてしまう。

 

 「ラヴァーナル帝国とそれに関する資料。それと彼らに対するオプション一覧は全員に回しておきますので、それを見ながら議論を続けましょう」

 

 エイリアンたちの手元にパソコンのウィンドウページのようなものが浮かび上がる。そこには彼らの言語で今エイリアンが説明した内容が書かれていた。

 

「話を戻しますが、統合知能は『商業的には地球人類歴1号(西暦)における1945年までの兵器が望ましいが、ラヴァーナル帝国の存在を考慮すると2015年及び以後数年で実用化可能な兵器の使用が妥当である』とのことです」

 「それはつまり現在我々が第2日本に配備した兵器は役に立たないと?」

 「率直に言ってしまえば、そうですね。まあ、彼らが戻ってくるのは10年以上先の話ですし、現状気にすることではないでしょう」

 

 議長役の心配に気楽そうに返す隣のエイリアン。彼の言うとおり、回されたページには統合知能の見解として『ラヴァーナル帝国出現までに兵器の転換を行えば何の問題も無い』と書かれてあるため、他のエイリアンもさほど気にしてはいなかった。

 

 「ではラヴァーナル帝国についてはロウリアでの活動が終わってから、ということでよろしいですか?」

 「「「異議無し」」」

 

 

 

 

 

 同日11:00 ロウリア王国、クワ・トイネ公国国境 ギムの町

 

 ロウリア王国東方征伐軍10万。それを眼下に納めながらロウリア王国竜騎士モイ・ガジャはギムの町へ向かう。

 戦いで勝ったら戦利品は好きにして良いという訓示が下っているためにモイに限らずロウリア王国の兵は皆にやけた笑みを浮かべている。

 

 「くっくっくっ……クワ・トイネの亜人共は皆殺しだぁー!」

 

 モイは初めての実戦で頭に血が上っており、これから訓練の成果を存分に震えることを心の底から喜んでいた。

 竜騎士達の目にギムの町が見えてきたところで、ふとモイは妙な悪寒に襲われた。

 次の瞬間空からいくつもの光弾が降り注ぎモイの周囲に似たワイバーンとその乗り手を穴だらけにする。

 

 「な、な、な、なんだ!!?」

 

 慌てて相棒であるワイバーンを旋回させる。モイの視界に見慣れぬ飛行物体が写った。

 

 「あれは……?」

 

 ワイバーンと比べればトンボのように細く、薄い動かない翼。全身が金属質な輝きを有しており、鼻先に何か高速で回転する物体がある。

 

 「っ! ムーの飛行機戒!!?」

 

 モイは自身の知識の中で、目の前の敵の特徴に当てはまる存在の名を上げる。

 その“敵”はモイの事など気にも止めずに次々に光の石礫を浴びせて仲間達を撃ち落としていく。

 

 『助けてくれっ!!! 嫌だっ! いやだっ! い――!』

 『速い! 速すぎる! あんなのどうやって……ガッ!』

 『誰か! ケツにつかれた! 振り切れないっ!』

 

 魔信を通じて伝わってくるのはモイの仲間達の断末魔。1つ1つの声が1人の命が失われたことを意味する。それはまだ若く未熟なモイを激高させるのに充分な劇薬だった。

 

 「くっそおおおおおぉぉぉーーー!!!」

 

 がむしゃらにワイバーンを動かし、敵の背後に取り付こうとするが、敵は速度を活かした一撃離脱戦法で届かない場所へ逃げてしまう。格闘戦に応じる敵もいるが機動性でも敵に負けているためか、あっという間に攻撃位置についた敵に撃墜される。

 速度でも機動性でも負けていて、その上数でも負けている。それを補う練度もこれほど差がついていては意味が無い。

 

 「ちくしょおおおおおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!」

 

 悔しさのあまりに叫んだモイの頭上から彼の仲間達を殺した攻撃が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 ロウリア、クワ・トイネ国境上空におけるロデニウス大陸戦争最初の航空戦は第2日本帝国の圧勝で終わった。

 なおこの航空戦において撃墜されたロウリア王国竜騎士の1人、モイが捕虜として墜落現場に展開していた陸軍に拘束された。モイの名は本戦争初の捕虜として記録されることとなる。

 

 

 

 

 

 ワイバーンが一方的に撃墜される様は地上からも確認されていた。

 

 「ワイバーンが落とされてるぞ!」

 「あれは亜人共のワイバーンじゃないのか!?」

 「いや、国境の向こうから来たワイバーンはいねえ! ありゃ全部王国のワイバーンだ!」

 

 空で起きている味方の敗北にロウリア王国の兵士達は動揺する。そうこうしている間にワイバーンは一匹残らず撃墜された。

 空を舞うのが銀翼の飛行機戒のみとなったのを見計らったようにクワ・トイネの方角からさらに巨大な飛行機戒が現れる。空を覆い尽くすように見える数でロウリア軍へ向かっていく。

  

  「こ、今度はなにが……?」

 

 魔法も弓も届かない高度を悠々と飛ぶ敵を地上から見上げることしかできない。

 ロウリア王国の兵士達は第2日本帝国の爆撃機の編隊を前に身構える。

 

 

 

 

 

 100式中爆撃機銀河。現場では100式中爆と呼ばれる爆撃機の機首にて、搭乗員は爆撃照準器を覗きながら思う。

 

 (まさか、こんなに早く出番が来るとはな)

 

 製造(、、)されて1年もしないうちに仕事に駆り出されるとは思ってもみなかったが、そのことに不満はない。むしろ喜んでいた。仕事を果たし、自分自身の価値を証明できることを。

 喜びを胸に照準器に意識を向けると目盛りが爆弾投下に最適なタイミングまであと少しだと知らせる。

  

 『全機、投下まであと30秒前。手動操縦を自動操縦に切り替え』

 

 無線で後続の味方に爆撃準備に入らせ、自動操縦装置のスイッチを入れる。

こうすることで爆撃を成功させるために照準器が映し出す敵と、それに重なりつつある目盛りの動きに集中することができる。

 2500馬力の空冷発動機2基の音と振動に揺さぶられながら、爆撃照準器の中央に敵を捕らえる。すると照準器と連動して最適な爆撃位置に機体が動く。

 

 『3、2、1……全機、投下、投下ぁ!!!』

 

 編隊の先頭を行く先導機が投下したのを皮切りに82機の100式中爆がクラスター爆弾を投下する。途中で設計通りに分離し、多数の子弾を空中へ放り出しながら非装甲・軽装甲目標用の爆弾はロウリア王国軍に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 頭の中が不安と恐怖で満ちた彼らに頭上で敵が何かを落としていく。

  

 「糞でもしたのか?」

 「いや、それにしては多くないか?」

 

 地上のロウリア兵達は敵は何を落としたのか好き勝手に論じる。密集隊形をとっているため逃げられない彼らは自然と口が軽くなった。

 敵が落としたそれが細かく砕けながら、数人のロウリア兵の頭部と地面にぶつかったそのとき、ロウリア兵達を吹き飛ばした。

 

 「ぎゃあああっ!!!」

 「あああ……っ! 腕がぁ……! 俺の腕がぁぁぁ……!!!」

 

 何が起きたのか理解出来ないまま苦しむロウリア兵。最初の爆発で死ねなかった兵士は多くが重傷を負っている。

 幸運にも軽傷で済んだ兵士達も目の前で苦しむ戦友を前に恐怖が足を縛り付け、何も出来ずにいる。率先して動くべき指揮官も大半は死んだか重傷者として周囲に混乱を伝染させている。

 混乱の坩堝とかしたロウリア王国軍へ、金属が擦れるような奇怪な音と魔獣の咆哮の如き爆音を轟かせながら、ギムの町から新たな敵が迫ってきた。

 

 

 

 

   

 ロウリア王国、東方征伐軍。

 ロウリア王国によるロデニウス大陸統一の先駆けとなるはずだったこの軍団は既に壊滅していた。

   

 「ば、馬鹿な……」

  

 将軍アデムは地面に倒れ伏したまま呟く。

 何も負ける要素はなかったはずだった。パーパルディア皇国から支援を受けて用意した大軍団はロデニウス大陸を征服するのには全く不足のないものだった。第2日本帝国という国家が加わっても問題ないと判断できる程度には。

 だが現実は違った。敵はロウリア王国はおろかパーパルディア皇国ですら勝てないであろう力を持っていた。

 

 「い、急ぎあの方に報告しなければ……」

  

 クワ・トイネ公国侵略は完全に失敗した。それは眼前の光景で明白である。

 ならば雪辱の機会を窺うためにも、伝手を頼りパーパルディア皇国へ亡命するしかない。配下の魔獣軍団は全滅したが、また用意すればいい。

  

 「……? この音は?」

 

 遠くから聞こえる音にアデムは首をかしげる。複数の爆発音、それに重量のある物体の動き回る音にアデムは心当たりがあった。

 

 「日本か……、もうここまで来たのか」

 

 忌々しそうな顔でアデムは呟く。だが足に怪我を負っているために逃げられない。そのため死んだふりをしてやり過ごすことにする。

 目を閉じ、呼吸を押さえてジッとする。遠くから聞こえた戦いの音はいつしか止み、代わりに重量ある物体――日本の魔獣と思われるそれが近づくにつれて地面が揺れているような振動も感じるが、わき上がる恐怖を押し殺し、ただひたすら堪える。

 そろそろ日本の兵士が武器で自分を突くころだろうか? と考えたところで、何か頭を圧迫されるような感触を最後にアデムの意識は闇に消えた。

  

 

 

 

 

 ロウリア王国東方征伐軍は第2日本帝国空軍の100式中爆撃機銀河による空襲で混乱した隙をつかれて第1装甲師団、第4装甲擲弾兵師団の攻撃を受けて全滅した。

 なお戦闘終了後の死体回収のさいに将軍位と思われる頭部の潰れた死体に特異な反応が検知されたため、極秘裏に第2日本帝国まで移送された。

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