仮面ライダーツルギ   作:大ちゃんネオ

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?+1ー13 交流

 一度学校へ戻り、美玲先輩は保健室で着替えのワイシャツを借りて着替えた。あのままでは風邪をひいてしまうだろうし当然だろう。

 射澄さんと美也さんの二人と合流し、人の少ない図書室へ。

 

「あの赤いライダー……ヘリオスは演劇部の人間と見て間違いないわ」

 

 先程戦ったライダー、ヘリオスについての情報を共有していた。

 

「もうどれだけいるのよライダーは……」

「アリスはかなりの数のライダーを用意しているはずよ。この学校だけで何人いることか」

「……それはそれとして、美玲さん。あなた、昼休みに仲間だと思わないでなんて言っておいて、なに普通の顔してここにいるんですか!」

「あら、貴女以外と細かいこと気にするのね。さっきはさっき。今は今よ」

 

 美玲先輩と美也さんの間で、火花が散っている気がする……。

 

「それより、相手が演劇部に所属してるってことが分かっている以上、攻めに行くのかい? 相手は今頃、焦っている頃合いだと思うけど」

「そうね、あいつは自分から情報をべらべらと喋っておいて私を仕留めきれなかった。私ならもう学校には来ないで隠れて闇討ちって作戦に切り替えるわね」

「それじゃあ、相手が引っ込む前に倒す……ってことですか?」

「そうでもしないと、安心は出来ないわね。顔を見られたかもしれないし、燐からは名前で呼ばれてしまったし」

 

 うっ……。

 確かに、美玲先輩の名前を叫んでしまった。

 この学校で美玲というと、まず美玲先輩の名前が上がるだろうし……。

 

「よし! それじゃあ今度は四人でボコボコにしましょう! 肉体言語です!」

 

 勢い良く立ち上がった美也さんがとんでもないことを言い出した。ちょっと色々とつっこませてほしい。

 

「美也さん、戦いを止めたいんじゃ……」

「戦いは止めるけど、そういう悪どい奴は痛い目見て懲らしめてやった方がいいの!」

 

 そう強く言い放った美也さんに若干圧倒される。

 なかなか過激なことを言うなぁ……。

 

「ま、およそ常人ならやらないことだよね。いくらライダーの力を手にしたからといって気に食わない人間を怪我させて、絶望する表情が見たいだっけ? これはとんだ変態に違いない」

 

 射澄さんの言葉には賛成だ。

 ヘリオスの変身者は俗に言うサイコパスっていうやつなのかもしれない。

 

「そんな人がこれまで普通に生活していたとなると…なんだか、恐ろしいですね……」

「……本当に普通に生活出来ていたのかな?」

「どういう意味、射澄」

「この手の輩が我慢出来るのかと思ってね。実在した猟奇的殺人犯という奴等は例えば動物を虐待していたりするんだけど、それがいつしか動物では満足出来ず……」

 

 人を標的にするようになった。

 なるほど、確かに聞く話ではある。

 しかし、この辺りでそんな動物虐待のようなニュースは聞かないが……まあ、上手いこと隠しているのかもしれない。

 

「それと、主役の選考に落ちた人ってだけでかなり絞られませんか?」

「そうね…演劇部に聞いてみましょう。……と言っても」

 

 そこで言葉を区切った美玲先輩。

 時計を見るともう6時。

 図書室が閉まる時間であった。

 

「……とりあえず、今日はここまでね」

 

 美玲先輩が今日はこれでお仕舞いと解散を口にした。

 しかし、もしかしたら明日になればヘリオスは学校を休んで隠れてしまうかもしれないというのに…。

 

「正直、色々と話したいことはたくさんあるんだけど、どうだろう。ここらでひとつ、皆の親睦を深める交流会をするというのは」

 

 唐突に射澄さんがそう提案した。

 それにしても、交流会とは。射澄さんが提案したのも意外である。

 

「交流会ですか! なんだか女子会みたいで楽しそうです!」

 

 ……女子じゃないのが一人いるんですが鏡華さん。

 

「いいですね! けど私、今月ちょっと厳しくて……」

「ふむ、それに関しては私が出すよ。美玲はどうする?」

「……興味ないわ」

 

 そう言った美玲先輩は帰り支度を始めた。

 相変わらずクールだ。

 

「そう。それじゃあ美玲は抜きにして場所はどうしようか……。いっそのこと屋戸岐町まで行ってみる?」

「いやぁ流石にそれは……。それにどこかお店っていうのもなんかくつろげないしなぁ……」

「ふむ。それじゃあ誰かの家というのはどうだろう? 店よりはくつろげるだろうし、お菓子でも持ち寄って」

「私、家まで5駅あるんで遠いんですよ……」

 

 それでは皆で集まるというのも辛いだろう。

 

「私も地下鉄で30分かかる」

 

 地下鉄……ちょっと高いので遠慮したい。

 

「私の家も歩くと30分ほどかかりますし……」

 

 鏡華さんの家にはこれまで何度かお邪魔してるから分かるけど、確かに歩くと遠い。

 自転車の距離だけど鏡華さんは毎日歩いて通学してるのですごいと思う。

 

「で、燐君は?」

「え、僕ですか? 歩いて15分ですけど…」

「よし、決まりだね」

 

 え。

 

「えぇっ!? ちょっと急にそんな!」

「よし、行こう行こう」

「行きましょう! コンビニ寄ってお菓子とか買いましょう!」

 

 僕はいいよともすんとも言っていないのに、なんて横暴だ!!!

 

「御剣君、大丈夫ですか? 急にお邪魔したらお家の方にも迷惑じゃ……」

 

 鏡華さんは僕の味方でいてくれた。

 あの傍若無人二人とはまるで違って嬉しい。

 

「駄目なのかい?」

「駄目っていうか急っていうか……」

「お父さんかお母さんに聞けばいいじゃないか。友達がこれから来るけど大丈夫?とね」

 

 それもそうだな。

 母さんに聞いて今からは無理よ~って言ってくれれば家に来ることはなくなるだろう。

 早速、アプリで聞いてみよう。

 

『え? 別にいいわよ』

『ちょうど今日餃子作り過ぎちゃって』

 

 …

 ……

 ………

 

「で、どうだった?」

「……いや~急にはちょっと無理だって……」

「ふーん……どれどれ」

 

 一瞬の出来事だった。

 射澄さんにスマホを奪われ、画面を見られてしまった。

 

「ほう、別にいいだそうだよ。それに、餃子を作り過ぎてしまったそうじゃないか。ええ? 燐君?」 

「えー! 今日ちょうど中華な気分だったんだよね! 御剣君ママナイスゥ!」

「御剣君……」

 

 鏡華さんが僕を慰めるために話しかけて……。

 

「餃子、ご馳走になります」

 

 目を輝かせて、言われてしまった。 

 もう、僕に逃げ場なんてものは……。

 

「待ちなさい」

 

 ここに救いの手が現れた。

 興味ないと帰り支度を済ませたが何故かまだ帰ってはいなかった美玲先輩である。

 やっぱり美玲先輩は頼りになるなぁ。

 

「私も行くわ」

 

 …………。

 もう、なんなの。

 

 

 

 

 

 

「た、ただいま~」

「あら、おかえりなさい。お友達は?」

 

 帰宅すると声を聞いてやって来た母さん。

 本当に、本当にいいんだな…。

 

「え、あ、うん……。外にいるよ……」

「そう。じゃあ早くお通ししてあげて。勝村君達でしょう?」

 

 そう言って母さんはキッチンへと戻っていった。

 あ、友達が来るとしか言ってないから勝村達だと思われてる……。

 ……もう、この際なんだっていいや。

 

「……どうぞ、上がってください」

 

 外にいる皆さんをご案内する。

 ……どうにでもなぁれ。

 

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

 

 こんな声が四つも響いたもんだから、リビングから母さんと美香が顔を覗かせた。

 

「すいません急にお邪魔してしまって……。私、咲洲美玲という者です。よろしくお願いします」

 

「あ、これはご丁寧にどうも……。燐の母です……」

 

「妹です……」

 

 ……なんか変な挨拶が始まっている。

 

「それじゃあ私達も挨拶を……」

「あーもういいですから! はいこっち! こっちです!」

「むう、なかなか強引だね。嫌いじゃないよ、そういうのは」

 

 変なことを言わないでもらえるだろうか射澄さん。

 思春期真っ盛りな妹に変な影響があったらどうするんだ。

 そんな感じで無理矢理四人を二階の僕の部屋に通して閉じ込める。

 これ以上、この人達を家族に関わらせるのは危険だ。

 

 

 

 燐が強引に全員を二階へ上げたあと、母と美香は呆然としていた。

 

「ねえ、お母さん」

「なに、美香?」

「みんな、女の人だったね」

「ええ、そうね……」

 

 二人は夢か幻を見せられた気分だった。

 実はあれは燐ではなく狸か狐が化かしているのやもとすら思っていた。

 しかし現実にそんなことはあり得ない。

 つまりはあの燐は本物であるということで……。

 

「お兄ちゃんにモテ期……キタァァァァァ!!!」

「そりゃそうよ! だってお父さんと私の息子よ! モテないはずないもの~!」

 

 盛り上がる二人。

 これまで浮いた話のなかった自身の息子、兄がよもや女子を四人も引き連れて我が家に凱旋するなどとても想像していなかったからである。

 

「ただいま……って、なんだ。やけに靴が多いな」

「お父さん聞いて聞いて! お兄ちゃんにモテ期到来だよ! 可愛い人に美人さんを四人も連れてきたんだよ!」

「ほう、それは……。母さん」

「なに?」

「飯」

「は~い」

 

 父は、いつも通りだった。

 

 

 

 

 

 

「いやーご飯が美味しい」

「ふぉんふぉ、ふぁひぃふぃふぅるぎふんのほはあしゃんへんしゃい……」

「影守さん、ちゃんと食べてから話しましょう……」

「……」(無言で美味しそうに食べる美玲先輩)

 

 ほんと、なんでこんなことになっているのだろう。

 まさかこんなことになるなんて、一時間前の自分に話しても絶対に信じてはくれないだろう。

 

「それにしても、同年代の男子の部屋というものには前から興味があったんだ。創作物ではよく出てくるけど、リアルではどうなのかとね。というわけでベッドの下を覗かせてもらおう」

「え!? ちょっと射澄さん駄目ですよ! プライベートなんですから!」

「……そう言いつつあなたもベッドの下を見てるじゃない」

「? ベッドの下になにかあるんですか、御剣君?」

「それはもちろんエr……」

「いや、なにもないよ」

 

 美也さんの口からそれを発せさせないように被せて言った。

 今時ベッドの下なんて場所に隠すものか。全国的に広まってしまったことにより、アレの隠し場所といえばベッドの下という風潮が出来上がった。故に、おいそれとアレをベッドの下に隠すことが出来なくなってしまったのだ。中には裏の裏をかいてベッドの下に隠す輩もいるらしいが、それは非常にリスクが高い。

 男は常に研究し、特殊部隊のスナイパーのような隠密性をアレに付与させるのである。

 

「ふむ……。やはりアレを隠すのにベッドの下というのは創作物の中だけなのか…?」

「そもそも燐がそれを持っているかどうかが重要よ。燐、持っているの?」

「美玲先輩までなんですか……。持ってないですよ」

「御剣君は何を持ってないんですか?」

「それはもちろんエr……」

「あー! はい、食べ終わったなら食器片付けますから!」

 

 美也さん意外と下ネタ好きなのか?

 まあそれはいいとして、食器を回収して……。

 

「部屋の中、あんまり弄くりまわさないでくださいね」

「分かってる分かってる」

 

 本当に分かっているのだろうか、この知識欲お化けは。一抹の不安を抱えながら、食器をまとめたお盆を持って部屋を後にした。

 

 

 

「なぁ、美玲」

「なに」

 

 燐が部屋を出たあと、静寂を破って射澄が美玲に話しかけた。

 

「燐君は本当に持っていないと思うかい? アレを」

「……検証に値するわ」

「ということは、まさか……」

「ああ、探そう。お団子君も手伝って」

「お団子君って言わないでください! それはそれとして手伝います!」

「えっと……。人の部屋を漁るのはよくないですよ!」

 

 女子三人が、アレの捜索に乗り出した。

 燐が戻ってくるのは恐らくすぐだろう。

 短時間でいかにアレを見つけだすか。そのために、三人は知恵を寄せた。

 

「ベッドの下でないとなると」

「机の引き出しの中?」

「確かに可能性はある。引き出しというものは家族であっても開けづらいものだからね。板の下に隠すなどしてカムフラージュしてる可能性もある」

 

 引き出しを勝手に開けるという行為は相手の内面を覗くようで罪悪感に襲われる。射澄と美也はあれを勝手に開けていいものかと悩む。

 だが、思わぬ意見が美玲の口から飛び出たのである。

 

「────本棚よ」

「その根拠は?」 

「木を隠すなら森。本を隠すなら本棚よ」

 

 自信溢れた様子でそう推理した美玲は早速本棚を観察した。本棚に本があることは当然のこと。その中にしれっとアレが混じって並べられていても違和感はない。

 何かを隠そうとすればそこに違和感が生じる。

 故に、何かを隠しているということがバレてしまうのだ。

 燐の本棚はなかなか大きい。

 壁の半分を占める面積にはびっしりと本が並んでいた。その大半は父からの御下がりであるが、燐はしっかりとそれらにも目を通していた。

 同年代と比べると読書量が多く、そしてジャンルが偏らない。少年らしく漫画もあれば、有名な文豪の名作もある。図鑑もあれば、自然を写した写真集もある。著名な作家のエッセイもあればなにやら聞いたこともないような作家のジャンルもよく分からない文庫本もある。

 実に多種多様な本の数々。

 この中なら、アレが混ざっていてもおかしくはない。

 

「図鑑?」

 

 美玲はとある図鑑に目を向けた。

 ファンタジー百科と背表紙に書かれ、カバーに入ったそれだが、妙に厚い。カバーが膨らんでいるのだ。

 これは、中に何か詰め込まれたのだろう。

 美玲は中身を確認しようとファンタジー百科へと手を伸ばし……。

 

「なにしてるんですか勝手に」

 

 燐が、戻ってきた。

 

「い、いや~本がいっぱいあるから何か面白そうな本がないかな~って……」

 

 美也が必死で誤魔化す。

 しかし、あからさまだった。

 

「……美也さんって、そういう人だったんですね。幻滅です」

 

 燐が目を細めた。

 軽蔑の視線である。

 

「ちょっと!? 私だけじゃないし! 最初にやろうって言ったのは射澄さんだよ!」

 

 美也はとにかく自分だけが悪いのではないと周りを巻き込み始めた。

 しかし、ここにいるのは一癖も二癖もある先輩である。

 

「おやおやお団子君。人のせいにするのかい? それも、先輩の」

 

「こんな時ばっかり先輩面しないでください! あとほら、美玲さんだって乗り気だったし」

「人のせいにするんじゃなくて自分の罪を認めたらどう?」

「実際に本棚を漁ったあなたの方が罪は大きいと思います!」

 

 美也は2ーD二大女子の前に弄ばれていた。

 片や「氷の女」と称されるクールビューティー。

 片や「図書室の番人」と称される変人。

 我の強い。いや、我の塊と言っていい二人に敵うほど美也の性格は悪くなかった。

 

「ま、まあまあ。影守さんが困ってますし……」

「うぅ……味方は鏡華ちゃんだけだよ……」

 

 鏡華に抱きつき慰められる美也。

 同級生からは姉のようだと言われる美也だが、流石にあの二人を同時に相手取るのは精神的に辛かった。

 

「それより、二人はなにしてたんですか?」

「燐、この本なんだけど、見てもいいかしら」

「? いいですけど美玲先輩、ファンタジーに興味なんてあったんですか?」

 

 平然と読むことの許可が降りたことに内心驚く美玲。

 顔には出ていないが。

 自身の推理が外れたのかと、カバーから本を取り出すとファンタジー百科と一緒に大量の写真が出てきて床に散らばった。

 

「わっ! なんだこれ、こんなところに写真なんて入れたっけ……?」 

 

 床に落ちた写真達を拾い集める燐。

 なんの写真だったかと見ると、それは燐が小学校に入学したばかりの頃の写真であった。

 

「あー! これ沼田のキャンプ場でキャンプした時の写真だ! こんなとこにあったんだ~」

「小さい時の御剣君可愛いわね……」

「今も可愛いんですよ。じょ……」

 

 鏡華は燐の女装のことを話そうとしたが、秘密だったことを思い出して口を押さえた。

 

「じょ?」

「じょ……女子の皆さんからも、かわいいって評判なんです。あはは……」

 

 なんとか誤魔化すことに成功してホッと息をついた。

 燐も同時に、隠れてホッとしていた。

 

「父さんが僕が小学校に入学したらキャンプに連れていくって約束してくれて……。懐かしいな~」

 

 思い出を噛み締める燐。

 写真一枚一枚を手に取り、懐かしむ。

 

「……燐、私達置き去りなのだけど」

「いいじゃないですか。思い出を懐かしむのはいいことですよ。……羨ましいです」

 

 最後にポツリと溢した言葉を射澄は聞き逃さなかった。好奇心の強い彼女は躊躇うことなく、鏡華を問い詰めた。

 

「羨ましいとは、どういうことだい? 思い出に浸ることは誰だって出来るだろう?」

「あ……」

 

 しまったと、鏡華は顔を背けた。

 だけど、この人達ならと鏡華は真っ直ぐと射澄を見つめてこれまで語らなかったことを謝罪した。

 

「実は私、記憶がないんです。幼い時の記憶が」

「……記憶喪失、ということかい?」 

「はい。ただ、記憶を失ったという感じではないんです。ある日、突然どこからか生えてきたみたいな、その時から記憶がスタートしてるみたいな感じで……」

 

 自身の始まりは病室。

 家が火事になり両親が死んだことを伝えられた。

 生き残ったのは自分と兄のみ。

 空っぽの自分に押し付けられた情報は、空っぽだからこそ素直に受け止めることが出来たのだろう。

 そして、記憶はなかったが兄は確かに自分の兄であるということは感じることが出来た。

 

「兄……宮原士郎ね」

「はい。そして、私達は父方の叔母のところに引き取られて、現在に至ります」

「まさか、鏡華さんが記憶喪失だったなんて……」

「記憶喪失といっても幼少の数年分程度ですからそんなに気にして……」

「うわぁぁぁん!!! 鏡華ちゃん! 無理しなくていいんだからね! いっぱい甘えていいからね!」

 

 さっきとは立場が逆転し、鏡華を抱く美也。

 よしよしと凄い勢いで頭を撫でて……。

 

「影守さん……その、恥ずかしいですから……」

「あーもう! 影守さんって呼ぶの禁止名字禁止! 美也って呼んで!」

 

「えー……じゃあ、美也、さん?」

 

「うん! それならよし!」

 

 美也さんと名前で呼ばれたことが嬉しくハイテンションになった美也は「鏡華ちゃーん」とハグし、頬擦りする。

 ……若干、鏡華が引いてるのは内緒である。

 

「……すごい勢いで距離を詰めてる」

 

 燐も引いていた。

 

「騒がしいわね……」

「美玲はこういうの嫌いかい?」

「……射澄はどうなのよ」

「悪くない。今まではこういうのとは無縁だったから、こういうものもあるのかと新たな知識、いや経験を吸収中だよ」

「……そう」

「で、どうなの?」

「……騒がしいのは嫌いよ」

「そう。ま、人それぞれだよ」

「ほら、御剣君……いや、燐君! 先輩方も!」

 

 バッと腕を開く美也を見た三人は顔を見合せ、意味分かる?と互いに訊ねた。

 しかし、誰も分からず再び美也に顔を向けた。

 

「円陣組みましょう円陣! これから皆で戦っていくんですから!」

「さっきの流れからどうしてそうなったの……」

「いいからいいから! 細かいことは気にしない!」

 

 美也に無理矢理引っ張られ、燐は肩を組まれた。

 

「ふむ、面白そうだ」

 

 射澄は好奇心から自ら肩を組んだ。

 

「……」

「美玲さん」

「……やらないわよ。前も言ったけど、別に仲間になったつもりは……」

「美玲先輩」

 

 燐に名前を呼ばれ、一瞬心臓が跳ねた美玲。

 燐を見ると、なんとも言い切れない表情をしていて……。

 

「もう、やっちゃった方がいいですよ?」

 

 それは、諦めだった。

 燐はもう逃れられぬ定めだと割り切り、「さっさとやってさっさと終わらせましょう」という方針に切り替えていたのだ。

 

「……仕方ないわね」

 

 ため息をつきながら、燐と射澄と肩を組む。

 もう、どうにでもなってしまえ。

 

「それじゃあみんなで……ライダーバトルを止めるぞ~!」

「おー」

「「「おー……」」」

 

「声が小さいよ~!!!」

「美也さんって、こんなキャラだっけ…?」

「多分これはあれだね、場酔いというやつだね。お祭りに行ったらテンション上がりすぎて盆踊りじゃなくてブレイクダンス踊りだすタイプだよ彼女は」

「美也さん。その、ここは御剣君のお家なのでお静かに。家族の方もいらっしゃいますし……」

 

 美也を鏡華が宥めるがしかし、事態はとんでもない方向へと進んでしまった。

 

「失礼~デザートのリンゴ持ってきたわよ~って、なになに? 円陣なんか組んじゃって、気合いでも入れてるの?」

 

「か、母さん……」

 

 よりにもよって、この人が来てしまった……。 

 そう燐は脳内で頭を抱えた。

 

「はいお母様! こう、皆の団結を高めようと」

 

「あらあらいいじゃない。ちょっと私も混ぜてよ」

 

「はい! どうぞどうぞ!」

 

 美也と鏡華の間に入る燐の母。

 どうして、どうしてこんなことにと燐はショックを受ける。燐の精神が、もたなくなってきていた。

 

「それじゃあお母様、音頭を」

「え? 私でいいの? それじゃあ……ファイト~……」

「「おー!」」

「おー」

「「「おー……」」」

「ちょっとちょっと皆テンション低いわよ~。円陣なんだから気合い入れないと気合い。燐は男の子なんだから特に入れなきゃ駄目でしょう」

「いや気合い入れるっていうか、なんのために入れるか分からないから気合いの入れようがないっていうか…」

「もうしょうがないわねぇ。お母さんがお手本見せてあげるから。ファイト~……お……痛ッ!?」

「何してるんだお前まで」

 

 父さんが母さんを丸めた新聞紙で軽く叩いた。

 いつの間に部屋に入ってきたのだろう。

 たまに父さんの能力が恐ろしい。

 

「なにってそりゃ若者達と一緒に遊んでたのよ」

「そんなことするな……。もう若くないんだから」

「なっ!? 失礼ね! これでも御剣さん若いですねぇってよく言われるんだから!」

「そういうことじゃなくてだな。ほら、いいから出ろ。すいませんね、こんな妻で」

「い、いえ……」

 

 父さんが申し訳なさそうに母さんを引き摺って部屋を出た。

 ……なんともまあ愉快な両親だなぁ。

 

「美也さん? どうかしましたか?」

 

 鏡華さんが美也さんにそう訊ねた。

 なんでそんなこと訊ねたのか気になって美也さんを見ると、確かに様子がおかしい。

 さっきまであんなにハイテンションだったのに、今はぼうっとしている。

 

「美也さん? もしもーし」

「……あ、燐君」

「どうしたの急に静かになって」

「いや、あのね……。燐君のお父さん。すごい、タイプ」

 

「「「「えっ」」」」




次回 仮面ライダーツルギ

「特別な喧嘩って、これのこと?」

「まだ耐えられるもんね!」

「喜多村……殴り合おうよ……!」

「私のことなんてどうせ家事をするだけの女としか思ってないんでしょう!?」

願いが、叫びをあげている────。

ADVENTCARD ARCHIVE
SWORD VENT(仮面ライダーヘリオス)
ダイナサーベル 2000AP

ダイナエレファスの牙を模した双剣。
湾曲した長い刃が特徴的。
岩を容易く砕くほどの破壊力を持ち、鋭利な切先での刺突を得意とする。

返り血など、この真紅の鎧の前には無意味。

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