仮面ライダーツルギ   作:大ちゃんネオ

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オリジナルライダー募集は突然ではありますが終了とさせていただきました。
詳しくはこちらの活動報告をご確認ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=253666&uid=270502
たくさんのご応募ありがとうございました。


?+1ー19 形を得た闇

 放課後。

 射澄さんと共に鏡華ちゃんのお家へ。叔母さんと二人で暮らしるけど今はその叔母さんが海外出張のためいないとか。そのため、その家の人がいないのにお宅にあがるというなんともこう……微妙に罪悪感がある。

 しかし射澄さんはそんなこと気にせずに鍵を開けてずかずかとお家の中へと入っていった。大丈夫かな……鏡華ちゃんの見られて恥ずかしいものとかありませんように……。

 そう願いながら出来る限り視線を逸らさず真っ直ぐと前だけを、射澄さんの背中を見つめて鏡華ちゃんに言われた通りに家の中を進む。

 寄り道なんてしてる場合じゃ……。

 

「この皿……これは有田焼では?」

「ああこら射澄さん! 寄り道しない!」

「むう。少しぐらいいいだろうに……」

 

 鏡華ちゃんのお家はお金持ちのため色々と射澄さんの興味をそそる物がたくさんある。

 そのためあちこちで「あれは!」とか「これは!」と立ち止まる射澄さんの背中を押して前へと進ませた。

 そして、なんとか鏡華ちゃんのお兄さんの部屋へとたどり着いたが……。

 

「うわー本当に本だらけ。床にも積まれてるしすごいなこれ」

 

 とにかく本だらけ。

 本の森に迷いこんだかのように思われる。

 この本の山の中で鏡華ちゃんのお兄さん……宮原士郎さんがミラーワールドに関わっていた証拠を見つけなければならない。

 これは骨が折れそうだ。

 

「これは大変そうですね射澄さん。……射澄さん?」

 

 返事がなく、どうしたものかと射澄さんを見ると……。

 

「あぁ……! 素晴らしい……!」

 

 恍惚の表情を浮かべていた。

 どこか扇情的にすら感じられた表情を浮かべたまま射澄さんは部屋の中へと足を進めるとあれだこれだと本を手に取り、ばぁーっとページをめくり、本の匂いを嗅ぎ、本を抱きしめて……。

 

「ちょっと射澄さん!? 目的! 目的忘れてませんか!?」

「あぁ……お団子君……。私はしばらくここに住むよ……」

 

 あぁもう駄目だこの読書馬鹿先輩。

 しかししばらく住み込みで射澄さんに探してもらうというのは悪くないかもしれない。

 速読も得意だと言っていたし時短になる……。

 

「……」

 

 あっ、駄目っぽい。

 めっちゃ一字一句逃さないように読んでる。

 どうにかして正気に戻さないと……。

 正気に戻す方法を思案していると、耳が微かな音を拾った。

 足音。

 鏡華ちゃんが来たのだろうか?

 そう思ったのだが、足音の人物の声がそれを否定した。

 

「鏡華ちゃーん? 帰ってるの~?」

 

 誰だ誰だ!?

 あ、あれか!

 まさか出張に行っていた叔母さんが帰ってきたのか!?

 

「どどどうしましょう射澄さん!? 鏡華ちゃんのおばさん帰って来ちゃいましたよ!?」

「どうするもこうするも別にないだろう。私達は別に泥棒じゃないし。鏡華君のお友達ですとでも言えばいいだろう」

「そりゃ泥棒じゃないですけど! 鏡華ちゃんがいないのに私達がいるってなったら怪しまれますよ!」

「やれやれ仕方ないな。ではそこの窓からお暇しよう。カーテンを結んでロープ代わりにして……」

「それこそ泥棒って思われるじゃないですかー!」

 

 まったくこの人は……。

 

「あの、貴女達、誰?」

「あっ……」

 

 そうこうしているうちに、暫定鏡華ちゃんのおばさんに見つかってしまった。

 悪いことはしてないはずなのだけれど、とても気まずい雰囲気が部屋の中を支配する。

 そんな中でも気にせず本に目を通す射澄さんは流石だなって……。

 

 

 

「なんだ~鏡華ちゃんのお友達だったのね~!」

 

 鏡華ちゃんのおばさんに事情を話すとリビングに通されて紅茶とクッキーをご馳走された。

 事情を話すといってもライダーのこととかは伏せてではあるが。

 鏡華ちゃんのおばさんは思っていたよりも若く、恐らく30代というところ。

 名前は藤上響(ふじがみひびき)さん。

 大手アパレル会社に勤務するバリバリのキャリアウーマン。独身。好きな男性のタイプは可愛い子。好きな女性のタイプも可愛い子。どっちもいける。

 私もお誘いいただいたが丁重にお断りした。

 

「それにしても鏡華ちゃんのお友達が家に来るなんて初めてだわ~」

 

 響さん自身のお話が一区切りつくと、嬉しそうにそう呟いた。

 その言葉は私にとって意外なものだった。

 鏡華ちゃんは友達が多いからお家に招くことぐらいしていると思っていたのに……。

 

「鏡華ちゃんから話は聞いてると思うけど、姉さんとお義兄さんが亡くなったから私が引き取ったんだけど……。私に遠慮しちゃってね~。打ち解けてくれるまでしばらくかかって……。それがこうしてお友達を連れて来るなんて……うぅ……ぐすっ! 感動の涙がぁ!!! うわぁぁぁぁん!!! ところで、鏡華ちゃんはまだ帰ってこないの?学校で何してるの?」

「鏡華ちゃんは部活……」

「部活!? 鏡華ちゃんが!? なんてこと……私が出張に行っている間に鏡華ちゃんが部活!? 可愛い子には旅をさせろって言葉は本当ね……。あ、旅をしてたのは私か~。あっはっはっ!!!」

 

 ……愉快な人だなぁ。

 それに引き換え射澄さんは静かに紅茶を飲んでるだけだし……。

 ……絵になるなぁ、なんか。

 中身は本のことしか頭にないような人なのに。

 

「お団子君。何か失礼なことを考えていないかい?」

「しっ、失礼なことなんてそんな……」

 

 察しまでいいので大変である。

 久しぶりに口を開いたことをきっかけに響さんが射澄さんに話しかけた。

 

「それにしても鏡華ちゃんに年上のお友達が出来るなんて~。鏡華ちゃん年上の人がちょっと苦手だから良かったわ~」

「そうだったんですか。そんな感じはまったくしませんでしたが……。それより響さん。少しお伺いしたいことがあるんですが」

「質問? いいわよ~。同じ女性同士特別大サービスでなんでも答えちゃうわよ。あ、けどいい女には秘密があるものだから質問は三つまでにしてね」

 

 得意気にウインクしながらそう語る響さん。

 その姿にどこか見覚えがあるような気がしたが気のせいだろう。 

 

「いえ、そこまで踏み込みはしません。聞きたいことはひとつ。……アリスという名の少女に心当たりは?」

 

 思わず、心臓が跳ねた。

 この人なんてことを……!

 

「アリス? 私の周りにはそんな女の子はいないけどなぁ。アリスと聞けば不思議の国のアリスぐらいしか思い浮かばないし」

「そうですか。申し訳ありません。変な質問をして」

 

 まったくだ。

 ライダーバトルに関わるような質問を関係ない人にまでしてこの人は何を考えているんだ。

 

「いやー面白い子ね~。鏡華ちゃんにバラエティ豊かなお友達が出来て嬉しいわ~」

 

 それをこんな風に返す響さんも響さんだと思うが……。

 

「さて、休憩はここまでにして私達は作業に戻ろうか」

「作業? そういえば君達、士郎君の部屋で何してたの?」

「あー……その、鏡華ちゃんから頼まれて……」

「頼まれて?」

 

 あ、あー。

 えっと、その……。

 どうにも私はこういう時にいい嘘が思い付かない。

 

「鏡華君から頼まれて、本に詳しい私と私の助手のお団子君である本を探してまして。直に鏡華君も帰ってくると思いますよ」

「あらそうなの。散らかってて大変だと思うけど頑張ってね」

「ありがとうございます。行くよお団子君」

「あぁ! 射澄さん待ってくださいよぉ!」

 

 すたすたと歩いて先に行ってしまう射澄さんを慌てて追いかける。

 まったくこの人は……。

 

「射澄さん! なんで響さんにアリスのことを」

「鏡華君とアリスの姿は似ているなんてものじゃない。それそのもの、鏡合わせと言ってもいい。なら何か関係があるやもと思ってね」

 

 確かに、鏡華ちゃんとアリスは瓜二つ。

 一体なぜアリスが鏡華ちゃんと同じ姿をしているのかは謎である。

 そこに親族である響さんが何か関係あるかもしれないという憶測を射澄さんは立てたようだが……。

 

「まあ、仮に響さんが関係者だとして話すとも思わないけどね」

「はあ……。急にあんなこと言うからびっくりしたじゃないですか。それに……」

「それに?」

 

 立ち止まり、私に顔を向ける射澄さん。

 その澄ました顔に言い放ってやる。

 

「私は助手じゃありません」

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室という教室は用件がなければ入ることもない教室だろう。

 それ故に、人に聞かれたくない話をするのにちょうどいい場所。

 

「はいこれ。頼まれてたやつ」

 

 ファイルを鐵宮に手渡す。

 無言で受け取った彼はページをざっと捲り、大まかに目を通すと机の上に置いた。

 

「黒峰君のこれと、佐竹副会長の情報。二つを合わせることでより正確な情報となる。それにしても、よくもまあこんなにいるものだ。ライダーというものは」

 

 その言葉には同意する。

 あのファイルにはこの学校の生徒でライダーバトルに参加している人物。参加している可能性の高い人物をリストアップしていったのだがこれが多いこと多いこと。

 これが更に市内全体と考えると……。

 

「アリスは……本当に戦いを終わらせるつもりがあるんでしょうか?」

 

 鐵宮の傍らに立っていた副会長。佐竹日奈子が呟いた。

 自分と同じようにライダーの情報を集めていた彼女なら自分と同じ考えに至ると思っていたが正しくその通り。

 多い。

 余りにも敵の数が多い。

 これではいつ戦いが終わるか分かったものではない。

 そして恐らく今もアリスはライダーを増やして……。

 

「その、アリスというやつだが」 

「はい?」

「会ったことないのだよ、そのアリスという少女に。まだね」

 

 それは、意外だった。

 あのアリスと出会っていないとは。

 ライダーになった経緯は聞いたが、それでもまだアリスはこの男の前に現れていない?

 少女のみが参加出来ると謳っておいて男が参入しているこの状況をアリスはなんとも思っていないというのか?

 あいつ、やはり何を考えているか分からない……。

 

「そういえば、佐竹副会長の情報の中に面白いものがあったな。その件のアリスという少女に瓜二つの生徒がこの学校にいると」

「はい。一年生にアリスと同一人物と言っても過言ではないほどの生徒が。名前は宮原鏡華」

「宮原、鏡華……」

「会長もお会いしましたよ。先週、新聞部の取材に来たあの女子生徒です」

「ああ、覚えているとも。そして、黒峰君の情報によると彼女と共に来たあの男子生徒。彼が私と同じイレギュラー……仮面ライダー、ツルギ」

 

 鐵宮がファイルを開くと仮面ライダーツルギと思われる男子生徒。御剣燐の写真と彼について簡単に調べた情報が記載されたページが現れる。

 

「彼は他のライダーと組んでいるようだが、戦いを止めるために動いている。そうなのか?」

「……多分。いや、きっとそう。戦いを止めるために戦うなんてほざいてる奴と一緒にいるんだから」

「なるほど……」

 

 立ち上がり、窓の前に立つ鐵宮。

 外を見ているのか、それとも、鏡の中を見ているのか。

 

「困るのだよ、戦いを止められては。君だって困るだろう?」

 

 当たり前のことだ。

 私だけでなく、他のライダー達だってライダーバトルを止められてしまっては願いを叶える機会を失くすというもの。

 それではライダーになった意味がない。

 だって、あたしはもう……。

 

「とにかく、邪魔をするものは潰す。私の覇道に転がる石ころは蹴飛ばす。……だが、それでは面白くはない」

 

 面白くは、ない?

 

「……なにをする気?」

「少々遊びたくなったのでな。まあ見ていたまえ。あぁ、それと次の仕事なんだが」

「……なに」

「咲洲美玲と接触してほしい。彼女が本当に戦いを止めようと思っているのか、それを聞き出してくるんだ」

 

 咲洲美玲。

 この学校の有名人の一人。

 冷厳な雰囲気を持ち、近寄りがたい雰囲気を持つことから『氷の女』なんて呼ばれているとかなんとか。

 他にも『氷の女』たる由縁があるようだが詳しくは知らない。

 確かにそんな『氷の女』が戦いを止めようなんて思うかは疑問である。

 

「分かった。軽く聞き出してくる」

「あぁ、頼むよ。さて、そろそろ盛り上げて行こうか。このライダーバトルという祭典を……」

 

 不敵な笑みを浮かべる鐵宮。

 その姿に私は、獅子を幻視した。

 獰猛で、狡猾な、百獣の王の姿を────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めたら、知らない天井。

 というのは数日前にもあったが、今日見上げた天井は古い木造家屋のものだった。

 独特の、古い家の匂いが鼻腔を擽る。

 布団に寝かされていたので、とりあえず身体を起こして部屋の中を見渡すと、女性物の下着が干されていたので慌てて目線を逸らす。

 妹がいるから見慣れてはいるが他人の物を見るのは流石に躊躇われる。

 ここで、思い出した。

 他人。

 自分をここに連れ込んだ存在。

 

 あの、銀髪の少女────。  

 

「あ、起きた?」

 

 唐突に声をかけられた。

 さっきまで殺し合いをした相手にかけるような声ではない。

 知り合いに声をかける時のような気軽さ。

 

「おいおいそんなに身構えないでよー。別にとって食う気はないからさー」

「……なんで、僕を連れて来たんですか?」

 

 疑問を投げ掛ける。

 なんで、僕を連れて来たのか。

 なんで、僕を生かしたのか。

 僕にはこの人の思考が分からなかった。

 そして、その疑問を投げ掛けられた銀髪の少女……不良さんは布団のすぐ隣に胡座を書いて座ると質問に答えた。

 

「ちょっとお話しようと思ってね。色々と気になっちゃったからさ」

 

 微笑みながらそう言った彼女から視線を落とすと右の太ももに包帯が巻かれていた。

 そうだ、その傷は自分がつけたもの……。

 

「あ……」

「ん? あぁこの傷? 大丈夫大丈夫気にしないで。綺麗な傷だから治りも早いみたいでさ~」

「そんなすぐ治るわけ……」

「知らない? なんかライダーになると傷の治りが速くなるの。ほら、もう大分治って……」

 

 そう言いながら包帯を取って見せようとする彼女を慌てて止める。

 目に毒という言い方は正しくはないが、思春期の少年にはある意味目に毒なのだ。

 

「いいのかい? 見なくていいのかい?」

「か、からかわないでください!」

 

 ニヤニヤしながら問いかける不良さんに対してきっぱりと否定する。

 しかしそれが返って逆効果だったようで「ほれほれ~」など言いながら僕に対してセクハラしてくる少女。

 これ、男女逆だったら大問題だぞ。

 いや、逆じゃなくても問題なんだけれど。

 

「そんなことより! なんで僕を連れてきたんですか!」

「なんでって……なんでだろう?なんでだと思う?」

 

 いや、問いかけていたのはこっちなのだが。

 

「ウソウソ。冗談だよ冗談。君を連れてきたのは気になったから。ちゃんと腹割って話したくなったのさ」

「話……?」

「そう、お話」

 

 そう言うと不良さんは「ムフフ~」と特徴的な笑みを浮かべた。

 

「君は、なんのために戦っているの?」

「僕は、守るために……」

「なにを守るの?」

「人を……」

「なんで人を守るの?」

「それ、は……」

 

 答えられない。

 理由が出てこない。

 なぜ人を守るのか。

 分からない。

 

「じゃあ今度は君の番。私に質問してよ。君にしたのと同じ質問」

「それになんの意味が……」

「いいからいいから。さあ、ばっちこい!」

「えっと、それじゃあ……あなたはなんのために戦っているんですか?」

「闘うことが好きだから」

 

 さも当然のことのように。

 

「た、闘うことが好き……?」

「そ、私は闘うことが生き甲斐なのさ~。って、さっきも言ったよね?」

 

 たしかに、そう言っていた。

 しかしただただそれだけで戦うというのか?

 

「闘うことが好き。だから闘う。それだけ。いたってシンプルでしょ」

「……なんで、闘うことが好きなんですか?」

「闘うことが好きだから闘うことが好きなんだよ」

「え?」

「だから闘うことが好きだから闘うことが好きで……。んん? えーとちょっと待ってね今頑張って纏めるから……」

 

 こめかみに指を当てて考える不良さん。

 かなり悩んでいるようだが、そこに苦しさは感じられなかった。

 そんな最中、床が軋む音がした。

 誰かが、近付いてきている。

 

「やっほ遊~。遊びに来たぞ……!?」

 

 不良さんのお友達と思われる、聖高の制服を来た女子ががらりと襖を開けて現れた。

 

「あ、佳奈やっほー」

「やっほーじゃない! 遊あんた男連れ込んでる時はポストに新聞入れとく約束だったでしょ!」

「えーそんな約束したっけ? それに、この子はそういうんじゃないし」

「本当? 無理矢理連れて来たんじゃないの? ねえ君。このゴリラになんか変なことされてない? というか寝かされてるけど大丈夫? なんかあった?」

 

 矢継ぎ早に質問してくるカナという少女に圧倒されながら僕は真実を話すことにした。

 

「えっと、その……そこの人に殴られて目が覚めたらここにいて……」

「はあ!? 遊! あんた堅気さんには手を出さないと言っておきながらこんな子を!」

 

 怒って不良さんに詰め寄るカナさん。

 なんというか、お母さん。

 いや、母ちゃんって言った方がいいかもしれない。

 

「ま、待ってよ佳奈! 私そんなこと……したなぁ、うん」

「遊……あんたって奴は……!」

「待って待って佳奈!もっとちゃんと話をだね。喧嘩ふっかけたのはそもそも……私だ」

「遊! 見損なったよ!!!」

 

 怒るカナさん。

 弁明する不良さん。

 国民的アニメに登場するガキ大将が母親に叱られているようだ。

 ……僕、いる意味あるのかなぁ?

 

「あの、僕帰ります」

 

 喧嘩。いや、説教中の二人に聞いているか分からないがそう言ってこの家を出ようとした。

 すると説教の真っ最中だった不良さんが僕に「待って」と声をかけてきた。

 これまでとは違う真面目な顔で。

 

「とりあえずこれだけは言わせて。───迷っていたら、君の願いは遠ざかる。守りたいものも守れなくなる。迷うのはいい。だけど、迷いは早く振り切った方がいい」

「願いが、遠ざかる……」

 

 言葉が重くのし掛かる。

 しかし、これは受け止めなければならない重さだろう。

 

「少し、いい顔になったね……痛たたたぁ!? ほっぺはりゃめぇ!」

「うっさい! 変なこと言って……このバカの言ってることは気にしないでね。このバカゴリラには私からきつく言って聞かせるから」

「は、はぁ……。とにかく、お邪魔しました」

 

 一礼して、足早に不良さんの家を出た。

 部屋から出るとすぐ玄関が見えたので迷わず外に出ることが出来た。

 外は薄暗い。

 日が落ちるのが早くなってきている。

 夏はもう早足で去りつつある。

 秋がすぐそこまでやって来ていた。

 

 

 

 

 

 

「宮原さん帰らないの?」

 

 同じクラスの中野さんが話しかけてきた。

 中野さんはこれから帰りのよう。

 

「はい。ちょっと人を待ってまして……」

「あー。もしかして御剣?」

「な、なんで分かったんですか!」

 

 まさか言い当てられるとは思わず、驚いて大声を出してしまった。

 

「最近御剣と絡むこと多くなってたし。それにさ、御剣と話してる時の宮原さんなんだかすごく楽しそうだったから。付き合って……はまだないよね? 片想い中かなとは思ってたんだけど」

「い、いえ! そんな、片想いだなんて……」

「ふーん。まだ、そんな感じか。ひとつ言っておくけど、取られてからじゃ遅いよ」

 

 取られて、からじゃ……。

 

「別に、私は……」

「ま、なんでもいいけどさ。よくいるんだよね、取られた~って愚痴る子。私、嫌いなんだよねそういうの。付き合いたいならさっさと告ればいい。それでOKならそれでいい。フラれたならまあ諦めもつく。けど、何もせずにそうやってぐちぐち言うの本当に嫌。恋は攻めてこそって私のモットーだけど……。まあ、いいや。もう遅いし帰るね」

 

 そう言って踵を返した中野さんを私は呼び止めた。

 どうしても、聞きたいことがあったからだ。 

 

「あの、どうして私にそんなことを……」

「んー……。さっきも言ったけど、私、何もせずに取られたってぐちぐちされるの嫌だからさ。なんていうか、その、背中押してあげたいんだ」

「そう、でしたか……。その、ありがとうございました!」

「ん。じゃあ、また明日。御剣、来るといいね」

 

 そうして中野さんは教室を立ち去った。

 中野さんが言っていた「恋は攻めてこそ」という言葉には何故か聞き覚えがあり、それでいて胸にチクリと刺さるものがあった……。

 

 

 

 

 

 家に帰ろうと思ったが、荷物が学校にあることを思い出したので一度学校に戻る。

 「荷物忘れて帰ってきちゃった♪」なんて母さんに言おうものなら怪しまれるどころではない。

 この時間ならまだ部活に勤しむ生徒もいる。特に文化祭前というのもあって文化部の多くが残っているのだ。

 だから荷物を取りに戻ってもなんの問題もない。

 以前、部長から教えてもらった近道を歩く。

 細い路地、おばあちゃんがやってる団子屋さんの前を通り過ぎ、石段を登って古ぼけた名前も知らない神社の横を通り過ぎ、神社の真裏の石と木の根で出来た自然の階段を下ると聖高の裏。教職員の駐車場に出る。

 普通のルートで行くと大きく回らないといけないので15分はかかるがこのルートならその半分以下の時間で学校に着く。

 しかし褒められるような経路ではないので見つからないように学校へと侵入。

 昇降口で上履きを履いてから教室へ。

 

 夕焼けと夜空の間、赤と青が入り交じる教室の中には、乙女がいた。

 心臓が一際大きく跳ねる。

 そして、鷲掴みにされたよう。

 見惚れて、棒立ちで突っ立ていると乙女は僕の存在に気付いた。

 

「御剣君……! 今までどこに行っていたんですか! 心配したんですよ!!」

「あ……。ごめん、なさい……」

 

 乙女……宮原鏡華が大きな瞳に涙を浮かべながら僕に詰め寄る。

 その瞳に、吸い込まれてしまう幻覚を僕は見た。

 

「待ってたんですよ。御剣君を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、待ってるんですよ燐君。あなたを手にする瞬間を……」

 

 アリスはそう呟くと大きな瞳を開いた。

 大きく背伸びをして、さて、お仕事お仕事と意気込んだ。

 

「まずはゲームの邪魔をする悪~い人達の排除とイレギュラーへの聞き取りっと……。最近忙しくてアリス大変です。なので……ちょっと、お手伝いさんでも造りましょうかね」

 

 爪先で影をつんと突く。

 すると影が蠢き、湧水のように湧き上がっていき……。

 

 

 

 

 

 

 本棚を漁っていると、反対側の本棚を漁っていた射澄さんが突然漁るのを止めるとベッド近くの床にあった本を退かし始めた。

 

「射澄さんなにを……」

「この間、燐君の部屋に行った時にビニ本を探しただろう? その時のことを思い出してね。男性が隠すのはベッドの下が多いんだろう?」

「まあ、そう言いますけど……」

「あ、あった」

「そうですかありましたか……あった!?」

 

 いやいやそんな簡単にあるようなものではないだろう。

 しかし射澄さんの手には埃を被った大きな紙封筒があった。

 埃を叩いて落とすと封筒の中身を取り出すと射澄さんは目を大きく見開いた。

 

「これは……!」

「何が、出てきたんですか……」

 

 恐る恐る訊ねると射澄さんは束ねられた資料の表紙を私に見せつけた。

 その表紙に書かれていたのは……。

 

「プロジェクト、ナイト……?」

「ああ……。どうやら、宮原士郎という男は私達が思っている以上に重要人物らしい。……これを見て」

 

 資料をめくり私に見せたページにあったのは、仮面ライダー。

 仮面ライダーの設計図のようだ。  

 そして、その仮面ライダーはツルギであった。

 

「まさか、鏡華ちゃんのお兄さんがライダーの生みの親だったなんて……ッ!?」

 

 射澄さんから資料を受け取ってめくっているとある文字を見つけてしまった。

 そんな、これは……。

 

「どうした、お団子君?」

「これ……」

「装着者、御剣燐……!」

 

 資料は印刷されたものだったがこれだけは手書きで後から書き足したようだった。

 けれど、燐君がライダーになったのは私とそう変わらないつい最近のこと。

 それが何故埃を被るほど前からあるものに名前が記されている……?

 

『キィィィィン……キィィィィン……』

 

「こんな時にか……。まあいい。二人でかかれば余裕だろう?」

「そうですね! 行きましょう!」

 

「「変身!」」

 

 並び立つ朱と蒼。

 窓ガラスから鏡の世界へと踏み込む二人を待つものとは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おイで……美也……ふフ……ハハは……」

 

 宵闇に溶ける黒。

 黒い泥のようなものが刀を持つ手からどろりと落ちる。 

 かつて戦いによって命を散らした少女が、歪みを携えいま産み出された。

 

「さあ、戦いなさい。特別にチャンスをあげるのですから」

「アりガトう、アりす……」

「ええ、ええ。私に感謝してくださいね。なのでまずはそのお礼にあの二人を倒す……まではいかなくていいです。ちょっとばかし痛めつけてあげてください」

「わカッた……」

「それじゃあご健闘を。私は忙しいので行きますね~」

 

 さようなら!と言って影の中へと消えていったアリス。一人、夜の校庭に残った黒いライダーは夜の闇の中でグリムとヴァールの二人を待つ。

 闘いの足音は、次第にボリュームを上げて近付いている。

 

「おイで、美也。わたシガ、美也ノうデ、ヲ……」




次回 仮面ライダーツルギ

「みや……ミヤ……美也……」

「美也ッ!!!」

「──────鏡面存在」

「あれは、なんだ……?」

願いが、叫びをあげている────。


ADVENTCARD ARCHIVE
ADVENT (仮面ライダーグリム)
グランゲーター 5000AP

朱色のワニ型モンスター。
仮面ライダーグリムと契約している。
大顎による噛みつきは非常に強力。

その凶暴な大顎は、濁流と共に現れる。


仮面ライダーツルギ・スピンオフ!

仮面ライダーレイダー/喜多村遊の物語

仮面ライダーツルギ・スピンオフ/ドキュメント・レイダー
https://syosetu.org/novel/241588/(マフ30様作)

仮面ライダーウィドゥ/氷梨麗美・瑠美の物語

仮面ライダーツルギ・ANOTHER RIDERS
https://syosetu.org/novel/242584/(黒井福様作)

仮面ライダー甲賀/黒峰樹の物語

仮面ライダーツルギ・外伝 ~甲賀、見参~
https://syosetu.org/novel/242795/(ロンギヌス様作)

こちらの三作品もチェック!

新作情報

時は幕末────。
動乱の京都を影ながら守護する者達……



音撃戦士譚 護神鬼
https://syosetu.org/novel/246950/

動乱の時代、清めの音が鳴り響く────。
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