仮面ライダーツルギ   作:大ちゃんネオ

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?+1ー20 奪われたもの

 ミラーワールド。

 全てが静止してしまったかのように思えるこの世界にはあの独特の環境音が鳴り響くのみ。

 そんな気味の悪いミラーワールドであるが、今日はいつもより不気味で、どろりとした粘度のあるような気持ち悪さが漂っている。

 ライドシューターを走らせ、鏡華ちゃんのお家近くを走りモンスターを探すがどこにもいない。

 公園に停車して射澄さんと作戦会議。

 

「モンスターはどこにいるんでしょう……」

「遠くに逃げた、か。しかしあれだけはっきりと音がしたんだ。近くにいたはず……」

 

 射澄さんの言う通り、あのミラーワールドの音ははっきりと鳴り響いていた。

 それならば必ず近くにモンスターはいる。

 だというのにこんなに探し回らなければいけないなんて……。

 

『ミ、ヤ……』

 

 背筋に冷たいものを感じた。

 今、誰かが私の名を呼んだ。

 そして、起こる異変。

 電灯がプツプツと点滅を繰り返し、一人でに割れた。

 それが一つだけでなく、この一帯にある全ての電灯が同じように壊れて光源が失くなり、夜の闇が濃くなる。

 

「なんだ……!?」

 

 咄嗟に身構える。

 どこから敵が現れてもいいように警戒する。

 最大限の集中……だが、それはすぐに途切れる。

 目の前の、闇の中。

 なにか、いる。

 ノイズがかかったかのように空間が歪んだような気がした。

 まるで、脳があれを見るなと拒絶しているようだ。

 

「あれは、なんだ……?」

 

 射澄さんにも()()は見えている。

 あれは、モンスターではない。

 そして、ライダーでもない。

 あれは……闇。

 

「みや……ミヤ……美也……」

 

 夜の闇の中で闇が蠢く。

 闇が私の名を囁くのを確かに聞いた。

 雲に隠れていた月が顔を出す。

 月光の青い光を浴びた闇ははっきりとその姿を現した。

 

「ライ、ダー……」

 

 その姿は全身漆黒のライダー。

 だが、あれはライダーではないと直感が訴える。

 まるで、生きている感じがしない。

 それを印象付けるようにあの黒い奴は下手くそな操り人形のように不自然な動きで一歩前へと踏み出す。

 踏み出すと同時に黒い泥のようなものが地面へと滴り落ちた。

 

「射澄さんこいつ……」

「ああ、分かってる。こいつはヤバいぞ……!」

 

 仮面の下で冷や汗が一筋流れる。

 バイザーである剣を握り直し構える。

 正眼の構え。

 相手の目に剣先を向ける一般的な構えである。

 

「ア……」

 

 私が構えたのを見た黒い奴は何か反応を示したようだった。

 

「み、や……美也ぁぁぁぁ!!!!!」

「ッ!?」

 

 黒い奴が私目掛けて飛び掛かってきた。

 それも私の名前を叫びながら。

 黒い奴は腰にぶら下げていた私と同じような剣型のバイザーを抜き、上段から振り下ろしてきた。

 バイザーで受け止め、つばぜり合う。

 

「ッ……!どこの誰か知らないけど、なんで私の名前をッ!でえぇぇぇぇいッ!!!」

 

 黒い奴を押し返し間合を離す。

 押し返された黒い奴はすぐに体勢を整えると再び踏み込んできて……ッ!?

 この、踏み込み方は……。

 そんな……。

 私の脳裏に蘇る一人の少女。

 

「あハ……!」

 

 一人の少女の幻影に集中力を欠いてしまった。

 胴に直撃。

 火花を散らし、アスファルトの上を転げた。

 

「痛……」

「大丈夫かお団子君!」

 

 駆け寄ってきた射澄さんに心配される。

 痛いは痛いが、それよりも気になることがある。

 

「射澄さん。私、あれを知ってるかもしれない……」

「なに……?」

 

 そうだ、私はあれを知っている。

 あれに変身しているかもしれない人物を知っている。

 そうだ、彼女は……。

 

 

 

 

 

 

 加藤陽咲(かとうひなた)

 聖山市内にある剣道場に通う門下生の一人。

 少々素行は悪いが、性格が悪いとかではなく単に一般的な反抗期というだけで悪人ではない。

 ただ、それでも剣道は続けた。

 髪を染めようと、家に帰らず遊び呆けても、剣道だけは続けた。

 勝ちたい人がいた。

 剣を交えていたい相手がいた。

 その人物こそ影守美也。

 同じ道場で、同い年で、女子同士で。

 稽古でも戦った、試合でも戦った。

 勝率は美也の方がちょっと上。

 どちらも優れた選手であった。

 だが……。

 

 影守美也は事故にあい、命に別状はなかったが右腕に後遺症が残った。

 竹刀をずっと持つことが出来なくなっていた。

 多少は持てる。

 だが、しばらく持てば腕が痺れて勝手に手が開く。

 最早、試合になど出られるような身体ではなかった。

 今でこそライダーとして戦っているがそれはスーツからのバックアップによって可能となったこと。

 仲間にも隠しているが、闘いが終わると、腕はジリジリと痛みに蝕まれる。

 

 そんな右腕を抱え、聖山高校に入学した美也は剣道部に入ることはせず、何か新しいことを始めようとしていた。

 しかし、どれもいまいちピンと来ないで一学期が終わりを迎えたすぐの頃である。

 

「美也。私が美也の腕治したげる」

  

 かつての同門で、同じく聖山高校に入学し剣道部期待の新人となっていた陽咲が突然そんなことを言い出した。

 

「どういうこと?お医者さんにでもなるの?」

「ん~まあ、そういうことにしといて」

「なにそれ?どういうこと?」

「いいからいいから。美也はただ待ってて。あ、そうだ。あんまり一人歩きとかしないでね。特に夜とか。じゃあね~」

 

 美也は陽咲が何を言っているか分からなかった。

 何か仕出かすつもりではないかと心配したが、最近は真面目に剣道に取り組んでいるという話を聞いていたのでそれは杞憂だと思い込んだ。

 

 そして数日後、加藤陽咲は行方不明となる……。

 

「何故なら陽咲ちゃんは女の子だらけのライダーバトルに参加するライダーの一人。仮面ライダー(エニシ)だったのです!縁はとても強く、貪欲に、そして気高く!ライダーとして戦ったのです。ですが……」

 

 

 

 

 

「ッ─────!あっ……ん……」

「いい様ねぇ。強かったみたいだけど、嬲られた後じゃ満足に戦えないわよねぇ?」

「ふざっ……ける、な……!」

「ああ、もったいないわ。今の貴女のその仮面の下の顔が見たいわぁ。さぞ、いい顔をしているでしょうから。姫好みのね……」

 

 とあるライダーの策略により陽咲は満足に戦えられずにいた。

 大きな喪失感と羞恥によって正常な判断力と真の実力を奪われた彼女はこのライダーの敵ではなかった。

 最早、玩具と成り果てた陽咲は弄ばれた後に……。

 哀れな肉塊となりましたとさ♪

 

「では、現在美也ちゃんと射澄ちゃんの前に現れたあれはなんなのか!皆さん気になりますよね?気にならないわけがないですよね?ここで、奉仕の精神に溢れたアリスちゃんから皆様に特別出血大サービス!あ、折角だからメイド服に着替えますか?けどそこまでしたら皆さんこれから私が言うことなんかよりも私のメイド服姿の方に見惚れて虜になっちゃいますもんね!ブヒブヒ鳴く豚さんになってしまうと話が理解出来なくなってしまうのでお預け!それではあれの正体について発表します!」

 

「──────鏡面存在(ミラーライダー)。かつて少女(ライダー)だった者の夢の跡。儚き残骸を私が丹精込めて練り上げ、再構築させて、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、エッセンスを加えた私のお人形さん。どうです?可愛らしいでしょう?愛くるしいでしょう?それでは、私は我が子の活躍を見ながらお仕事進めましょうかね……」 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な……。それじゃああれは君の友達だって言うのか?あれが?」

「分かりません……。だけど、私の名前を知っていて、あの踏み込み方は……。何度も見てきたから分かります。あれは、陽咲です……!」

 

 自分でそう言いつつ、内心は嵐のようだった。

 行方不明になっていた陽咲がいる。

 それが敵として襲いかかってきている。

 だがあれは本当に陽咲なのか?

 分からない。

 もうなにも分からない考えたくない。

 ただ、ひとつの真実は……。

 

「美也ッ!!!」

「くっ!!」

 

 陽咲は、私を攻撃してくる。

 つまりは、敵─────!

 

「ハアッ!!!」

 

 剣を私に向かって振り回す陽咲に横から射澄さんが槍型のバイザーで攻撃を仕掛ける。

 リーチでは射澄さんの有利。

 陽咲もそれを分かって距離を取った。

 

「おマえ、ジャま……!」

「つれないな。私も混ぜておくれ!」

 

 射澄さんが刺突を繰り出す。

 自身の優位を活かした攻撃に陽咲は、避けることしか出来ていない。

 このままいけば……!

 ……このままいけば?

 

「ッ!?射澄さん!一旦距離を置いて!!!」

 

 私が気付いてそう叫んだ。

 避けることしか出来ていないのではない。

 避けて、見ていたのだ。射澄さんの攻撃を。

 反撃の隙が出来る瞬間を見定めようとしていたのだ!

 

 そして、その時が訪れる。

 射澄さんが槍を突き出し、次の一手のために槍を引いた瞬間。

 踏み込む、陽咲。

 槍を突き出すことが出来ない距離まで詰めた陽咲は横に一閃。

 

「ガ────ッ!?!?」

「射澄さんッ!!!」

 

 吹き飛ばされた射澄さんは公園の管理所の壁に叩きつけられ意識を失ったようだった。

 名前を呼んでも反応はなく、動く気配がない。

 

「こレで、ジャまモノはイなくなッた……」

 

 だらりと刀を下ろした陽咲は私に向かってそう言い放った。

 

「陽咲……!」

「ふフ、ようヤく、なマえをイってクれた」

 

 やはり、この黒いのは陽咲であった。

 だが、陽咲はこんな子ではなかった。

 陽咲であって、陽咲ではない。

 

「陽咲、あなたどうして……」

「みや、わたシが美也ノうで、なお、す……!」

 

 月光を反射した刃が迫る。

 それを弾き返すが攻撃は終わらない。  

 ……そういえば、いつもこうだった。

 陽咲は果敢に攻めて自分のペースに持ち込むのが得意だった。

 そして、その猛攻を見極めて一撃を繰り出すのが私────!

 

「そこッ!!!」

 

 一瞬の隙。

 だが、確実に捉えた。

 斬り上げる。

 陽咲は回避しようと後退したが一歩遅かった。

 陽咲の胴体に下から縦へと切り裂く。

 だが、妙な感触。

 鎧を切ったとは思えない。

 まるで、ゴムを切ったかのような、そんな感触……。

 

「ッ!?陽咲、あんたそれ……」

 

 切り裂かれた箇所を抑える陽咲。

 そこからは、黒い泥のようなものが溢れ落ちていって……。

 

「なに……なんなの……」

「……シんだワたシにありスがちゃんスをクれたの。また、ライだーとしてタたかウチャンすをね……。ダから、()()()()()()()()()()()

 

 途轍もなく嫌な予感に襲われる。

 私の頭はどうやって逃げるか、その一点のみを考えていた。

 だが、それは間違いであった。

 逃げることを考えている暇があるのなら、何も考えずにただひたすらに逃げていればよかったのだ。

 

 陽咲から溢れ落ちた黒い泥が、私目掛けて迫ってきた。

 まったくの予想外に逃げることは出来ず、剣を振るって近付けさせまいとする。

 だが、粘度のあるそれは剣では切り裂けず、刃や腕にまとわりついて、動きが拘束される。

 

「なに、これ……!?」

「……美也。ラいダーバトるをトメタいって?だメだよモッタいない。セッかくのちゃンスナノに。ネガイのタメにタたかウきガないナラワたシが美也のカわりにタたかッテネガイをカナえル。美也のウデをわたシがナオす……!」

 

 陽咲の切り裂かれた痕から泥が飛び出す。

 やがて陽咲の形がなくなるほどの泥と化したそれが全身に絡み付いて、完全に身動き出来なくなってしまった。

 

「陽咲止めて!あなたに誰かの命を奪ってほしくない!」

 

 仮面の下から叫ぶ。

 陽咲にこんなことしてほしくない!

 

「美也……美也……。やくそく……美也のウデなおして……」

 

 陽咲の声が脳に響く。

 陽咲が、私の中に入ってきて……。

 

「やめ、て……陽咲……。中に、入って来ないで……」

 

 段々と内側が黒いものに染まっていく。

 意識が飲み込まれていく。

 黒く、黒く。

 飲まれるな、飲まれるな。

 意識を強く保て。

 

「美也……。私は美也のために死んだんだよ?」

「ッ!!!」

 

 そうだ、陽咲は私の腕を治すっていってライダーバトルに参加して……。

 そして……。

 

「私の、せい……」

 

 私のせいで、陽咲は死んだ。

 私のせいで、私の、せいで……。

 目の前が真っ黒に染まる。

 そして、私の意識までも闇の底へと堕ちていった……。

 

 

 

 

 

 ……痛みで目を覚ました。

 少し、気絶していたようだ。

 ……お団子君は!

 あの敵は私にトドメを刺すことはしなかったらしい。

 いや、お団子君が敵を引き受けてくれたか、いや、敵はお団子君に執着していたから私など無視されたか。

 とにかくお団子君と合流して……。

 いや、彼女はすぐ近くにいた。

 ……だが、何故変身を解いている?

 いつものお団子もほどいて髪を下ろしていた。 

 風に靡く髪が、どこか私を不安にさせる。

 

「お団子君……?」

 

 呼び掛けると、彼女はゆっくりとこちらを振り向いて……黒いもの渦巻く瞳が、私を捉えた。

 

「ああ、あんたのこと忘れてた。殺すね、()()()()の願いのために」

「ッ!?お前は……!」

 

 デッキを私に向けるお団子君。

 だが、そのデッキは彼女のデッキではない、黒いデッキ。金色のエンブレムは蜷局を巻く蛇を象っているよう。

 ベルトが巻かれると、右腕を私に向けて伸ばし、鷲掴みにするように手を握りしめ……。

 

「変身」

 

 虚像が重なり、実像として現れる。

 先程の黒い奴と形は同じ。

 だが、白いスーツに黒い鎧。

 剣道の防具を思わされるような印象で所々に蛇を思わされる装飾や鱗のようになっている部位があった。

 

「あぁ……久しぶりだねこの感じ……。やっぱりちゃんとした肉体があるって、いいねッ!!!」

 

 だらりと力の入っていない状態から一瞬で攻撃へと転じる。 

 ジグザグに走る姿が蛇を思わされる。

 片刃の剣を槍で受け止めるが……押し負けてしまいそうだ……!

 

「お前は、一体!?」

「私は加藤陽咲!仮面ライダー縁ッ!今は美也の身体を借りてるけどねッ!」

 

 脛に衝撃が走る。

 相手のローキックが私の脚を打ったようで、強烈な痛みが襲う。

 真っ直ぐに立っていられず、思わずよろける。

 その隙を見逃されるはずがなかった。

 

「やぁぁぁぁッ!!!!!」

 

 剣が振り回される。

 お団子君のような型にはまったものではない。

 トリッキーな剣閃は、見切るのが困難……!

 防御しきれず、あちこち切り裂かれていく。

 

「どうしたどうした!弱いよあんたぁッ!」

 

 相手は調子付く。

 これは、いけないな……。

 打開するため、思い切って近付く。 

 肩でタックルして刀の間合を潰した。

 よろけた加藤陽咲……縁から距離を取って、バイザーにカードを装填した。

 

「カードを使うの?じゃあ私も使うね」

 

【STRIKE VENT】

 

【SWORD VENT】

 

 右拳に装着された武装。

 相手をこれで殴打することも出来るが、これの本領は水流を放つことにある。

 近接戦特化の縁相手にアドバンテージを持って戦うことが出来る。

 対して縁は剣。

 片刃で、カッターのように折り目のようなものが刃に刻まれている以外は変わったところはない。

 だが、剣ではこの距離は戦えまい!

 駆けながら鏃型の水を発射していく。

 近付かせない。

 一方的な戦いを展開して、あとはお団子君を取り戻す手段を考える……。

 

「ちょこまかと逃げ回って……!けど……」

 

 仮面の下で、加藤陽咲が舌舐りしたのを幻視した。

 何か、不穏な気配がする……!

 

「そぉれ!!!」

 

 刀を大きく振った縁。

 間合になど入っていないが……。

 そして、その剣の本質を理解させられた。

 

「チッ!?こ、これは……!」

 

 蛇腹剣。

 数珠のように刃が連なったそれは現実の武器ではあり得ないが、ライダーの武器であれば可能……!

 刃が右腕に絡み付いて、自由に動けない。

 

「ほら、私の方においでよ!」

 

 ぐいと引っ張り、手繰り寄せる縁。

 そうはいかないと踏ん張るが、それは悪手であった。

 

「ぐっ!?刃が、締め付けて……」

 

 装備されたストライクベントに刃がギチギチと音を立てながらさながら牙のように突き刺さっていく。

 このままでは武装が壊れて……。

 もうこうなっては武器として機能しないだろう。

 思いきってこれは捨てることにする。

 右腕から切り離して、拘束から離脱。

 逃げ出すことは出来たが、アドバンテージを失ってしまったか……。

 それに、向こうの手札は不明。

 他にどんな攻撃手段を持っているか分からない現状で、手札を失うのは不利以外の何者でもない。

 

「逃がさない」

 

 蛇の目が光る。

 二枚目のカードを手札が切られる。

 それは、自身の契約モンスターを呼び出すカード。

 

【ADVENT】

 

『シャアァァァァァ!!!』

 

 現れる、白蛇。

 吉兆の印ともされるそれだが、今の私にとっては不吉の象徴。

 こちらも何か対応しなければ……。

 

「隙だらけ!」

 

 対応など考えている暇などない。

 敵は縁とこの白蛇の二体。

 状況は圧倒的不利……!

 カードを使う間もなく、どんどんと追い詰められていき……。

 

「はぁ……はぁ……」

「もう立ってるのもやっとな感じ?それじゃあさっさとトドメ」

 

 デッキから抜いたカード。

 こちらには裏面が向いているが、なんのカードかは予想するまでもない。

 私もとにかく生存のためにカードを切らなければ……。

 しかし、カードを抜こうとする右手は感覚が麻痺して言うことを聞かない。

 

「あはっ!いいよ、待ってあげる」

 

 くそ、調子に乗って……。

 だが、それが仇となったようだ。

 私は既に自分が取るべき行動を見つけている。

 それは……。

 

【SWIRL VENT】

 

 覚束ない手でなんとかカードを装填して、発動させたのはスワールベント。

 スワール。

 渦巻きを意味するそれは、この場に渦潮を発生させる能力を秘めたカード。

 相手の足止めには持ってこいである。

 

「厄介な!?」

「チャンスを与えてくれてありがとう加藤陽咲。というわけで、今日のところはトンズラさせてもらう。また皆でお団子君を取り戻しにやって来るよ。それじゃあね」

「チィッ!!!」

 

 奴の怨嗟がこれでもかと籠められた舌打ちを聞いて私はこの場を後にした。

 

 

 

 

 路駐してあった車からミラーワールドを出た。

 奴の前だからこそ虚勢を張ったが、緊張の糸が解れたからか今になってダメージが響いてきた。

 足がもつれて、前のめりに転んでしま……。

 いや、転びはしなかった。

 誰かに支えられてもらい、転ばず済んだのだ。

 

「す、すいません……」

 

 謝罪しながら、助けてくれた人物の顔を見ると、それは意外な人物であった。

 

「く、鐵宮生徒会長……」

「やあ、図書室の番人君。調子が悪いようだけど、大丈夫かい?」

 

 そう言って微笑みかける姿は正に優しさに溢れた全生徒の代表に足る人物のよう。

 だが、その次から紡がれた言葉は私の予想外のものであり、そして、最悪なものであった。

 

「大方、他のライダーにやられたのか?ええ、どうなんだい?神前射澄」

「なんで、ライダーのことをお前が……ッ!?」

 

 腹部に衝撃が走った。

 最後に見たのは、本性を現した恐ろしき獅子の顔だった……。




次回 仮面ライダーツルギ

「なんなの……。あいつ見てると気持ちが、悪い……!」

「おばさん!」

「ツルギに似てる?」

「────刃」

 願いが、叫びをあげている────

ADVENTCARD ARCHIVE
SWIRL VENT
2000AP

渦潮を発生させるカード。
足止めや防御、攻撃などに利用出来る万能なカードである。

それに飲み込まれたら、終わり。
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