「……そう。分かったわ。今後はそういう独断専行しないように。いい?」
『はい、すいません……』
電話越しに聞こえる燐の声は本気で反省しているようなのでこれ以上は言わない。
本当はもっと色々と言い聞かせて、首輪でもつけてライダーバトルに関わらせたくはないのだけれど仕方ない。
そんなことは、出来ない。
ひとまず燐の無事が確認出来たので今日は家に帰るとする。
と、言ってももうすぐそこが家であった。
荷物を置いて、制服から着替えてまた燐を探しに行く予定だったのだ。
しかし、私からの着信履歴を見た燐が折り返してきたのが今さっき。
まあ、無事ならいい。
無事ならいいが……。
ドアノブに手をかけると、鍵が開いていた。
いつも鍵を開ける前にドアノブを回して確認するのだが……。
まさか、泥棒?
いや、それよりも大分可能性が高いのは……。
「帰ってたのパパ」
「美玲か」
リビングにいたのはパパ。
仕事から帰ってきたばかりで、くたびれたシャツに、やつれた顔を浮かべている。
変わったことは老いたということ以外変わらない、あの日からのパパの顔……。
「今日は早いんだね。いまご飯準備するから……」
「いや、また行くからいらない」
「……そっか。いってらっしゃい」
「いってきます」という言葉は返ってこなかった。
静まる我が家には、冷たい空気がやはり漂っていた。
ミラーワールドを独り歩く影守美也。
いや、加藤陽咲は鏡華の自宅を目指していた。
『いいですか? あなたの目的はあの部屋にあるあの男が残した資料を確保すること。いいですね?』
「分かってるってば、
脳内の声。アリスの指令にそう返した陽咲。
すると、何が気に食わなかったのかアリスは陽咲を叱りつけた。
『私をお母様なんてそんな年増みたいな言い方しないでください~! 折角蘇ったのにまた死にたいんですか?』
「はいはいっと……。って、何あれ」
陽咲の前に、黒ツルギが立ち塞がった。
夜の闇の中から現れた黒き存在に陽咲は嫌悪感を露にする。
「なんなの……。あいつ見てると気持ちが、悪い……!」
『彼は貴女の仕事を邪魔する悪い人なんです。そして、貴女の兄でもあります』
「お兄さん? あんなのが? ……なるほど、同族嫌悪ってやつ? それじゃあ私を気持ち悪くさせる奴は殺さないとねッ!!!」
縁へと変身し、黒ツルギへと斬りかかる。
剣と刀が斬り結ぶ。
竜と蛇が、宵の世界を火花で彩らせた。
鏡華さんと学校で合流して、鏡華さんの家でミラーワールドに関わるもの……宮原士郎さんの残したものを探す美也さん達と合流するつもり、だったのだが……。
「きょ、きょ、きょきょ鏡華ちゃんが家に男の子を連れてくるなんてぇぇぇぇぇ!?!?!?!? 名前は? 鏡華ちゃんとはいつから? いつからなの!?」
「お、おばさん! 違います! 御剣君とはその、そういうあれではありませんから!」
……これはまたすごい人だなぁ。
いや、仲良さそうなのでいいのだが。
こう、パワフルというかなんというか。
「それで、君お名前は?」
「御剣燐、です……」
「リン君ね。かわいい名前……。あと結構私好みの可愛い顔してるじゃない……」
そう言いながら頬を撫でられて……。
「おばさん!」
珍しい光景だった。
鏡華さんが、怒った。
「御剣君をからかわないでください!」
「ご、ごめんなさい……」
鏡華さんのおばさんもその剣幕に押されているからきっと本当に珍しいんだろう。
「行きますよ御剣君!」
「は、はい……」
語気の強い鏡華さんの指示に従って行く。
そんな感じで僕と鏡華さんのおばさんとのファーストコンタクトは終わった。
……ファーストコンタクトなんて言っていいのかなぁ?
さて、二階の士郎さんの部屋なのだが……。
「あれ? 射澄さんと美也さんいないね」
「そうですね……。荷物はありますが……」
どうしたんだろうか?
もしかしたら……。
「モンスターが出たのかも。それで二人で倒しに行ったとか」
「それなら、いいですけど……」
不安げな表情を浮かべる鏡華さん。
そして、その予想は当たってしまったのかもしれない。
10分後。
射澄さんと美也さんは帰って来ない。
ミラーワールドに入られる時間は10分程。
僕らが来るよりも前からミラーワールドに行っていたとすれば帰って来ないのはおかしい。
いや、単に別の場所から
自分の荷物を置いて帰るなんてないだろうし。
だが……。
「美也さんと射澄さんは大丈夫でしょうか……」
やはり、鏡華さんは心配らしい。
ずっとそわそわと落ち着きがなくとても分かりやすかった。
……スマホぐらいなら持って行っているかな?
「鏡華さん、美也さんに電話してみて。僕は射澄さんにかけてみるからさ」
何かすれば不安も和らぐだろうと提案した。
頼むから出てくれよ……。
鏡華さんが電話をかけるとすぐ、部屋の中からバイブレーションが聞こえてきた。
美也さんのスマホはバッグの中のようだ。
射澄さんはどうだ……?
しばらく呼び出し音が聞こえるが、バイブレーションも着信音も鳴らないので恐らくスマホは持ち歩いているはずだが……。
僕まで不安になってきた。
二人に何かあったのではと思わずにいられない。
そうして不安を募らせると一秒が一分ほどに引き伸ばされたかのような感覚に陥り……。
『キィン!』
ふと、現実へと引き戻された。
音が、聞こえた。
刃と刃のぶつかる音。
そういう音だとすぐに理解した。
「御剣君……」
「鏡華さん。僕、行ってくる。二人に関係あることかもしれない」
窓ガラスに自身を写し、デッキを翳す。
ベルトが装着されると、居合のように腕を振るい、叫ぶ。
「変身!」
バックルにデッキを装填し、幾重にも虚像が重なり実像となることでツルギへの変身を完了する。
「気を付けてくださいね」
「うん。それじゃあ行ってくる」
鏡の中へと吸い込まれ、ライドシューターに乗り込みミラーワールドを目指す。
上下左右全てが鏡となっているこの道は反射された光で眩しい。
鏡の道を抜け、ミラーワールドに到達。
外に出てあの音の発信者達を探すと……いた。
近くの林の中で戦っていたのは二人の騎士。
夜の闇に浮かぶ白と夜の闇に溶けた黒の鎧を纏うライダーと……夜の闇の中に浮かぶ赤い鋭い眼光。
闇に染まった黒い、ツルギ……。
「黒の次は白? 双子?」
白黒のライダーが僕を見て言った。
その声にどこか覚えがあった。
聞いたことはあるが……。
だが、それよりもだ。
「お前、なんで他のライダーを……!」
黒ツルギに問いかける。
だが、答えはない。
無言のまま、僕と白黒のライダーに対峙していた。
「一応、だけどさ。私の仕事はそっちの黒いのを始末することだから白い君には今のところ興味はない。黒いのに因縁があるっていうんなら共闘するけど、どう?」
白黒のライダーがそう提案してきた。
だが、僕の答えは決まっている。
「因縁はないこともないけど……誰かを殺すというなら僕は許さない!」
「そう……。じゃあ、先に殺してやるよッ!!!」
ジグザグに駆ける白黒のライダー。
……速い。
片刃の刃が振るわれる。
スラッシュバイザーで受け止める、が……。
「重ッ……!」
想定外の重さに驚いた。
黒ツルギに次ぐ重さに思わず左手で刃を支えなければいけないなんて……。
「ほらほら! 押されてるよ!」
「チィッ!」
思わずを舌を打つ。
このままではやられてしまう……!
窮地ではあるが逆転の一手はまだいくらでも切れる。
なんせカードを一枚も使っていないし、まだ五体満足だから。
咄嗟に放ったローキックは相手を怯ませるのに充分だった。
力が抜けた瞬間一気に押し返して斬り返す。
刃は空を切ったが仕切り直しにはちょうどいい。
「黒ツルギ! なんなんだあいつ。お前を始末するって……」
案山子となっていた黒ツルギに問いかける。
狙われるとはどういうことだ?
「奴はライダーだったものの残滓、ミラーライダーだ。アリスが産み出したな。ライダーの姿をしているがモンスターと変わらん。殺せ」
「そんな……」
殺せと言われても……。
「はぁ……思ったよりはやるね。斬りごたえはありそうだ」
……あんな風に喋るような相手がモンスター?
言っていることは物騒だけど……それでも、やはり……。
「殺せないか? なら、そこで見ていろ」
黒ツルギが太刀を構え駆け出した。
始まる剣劇。
黒ツルギの漆黒の刃が闇と同化し、相手を切り裂いた。
「グァッ!?」
切り裂かれた胸部を抑え、後退する白黒のライダー。
抑えている白い装甲から、黒い泥のようなものが滴り落ちていた。
あれは……。
「あれが人間ではない証拠だ。まだ
存在強度?
さっきから専門用語ばっかり言われて脳が処理仕切れていない。
「ぐっ……変身が維持出来ないか……」
呟くと同時に白黒のライダーは変身が解けた。
そして、変身していた人物は予想もしていない人物であった。
「美也、さん……?」
お団子でまとめていた髪はほどけているが間違いない。
彼女は美也さんだ。
困惑している僕をよそに黒ツルギは美也さんへと迫っている。
何をしようとしているかすぐに分かった。
駆け出し、間に割って入る。
美也さんの首をはねようと振るわれた黒い太刀を受け止めた。
「何をしている邪魔だ」
「待ってくれ……この人は仲間なんだ。だから!」
「馬鹿なことを……。それが影守美也だというのかお前は」
意味も理解出来ずに困惑する。
だが、すぐに理解することとなった。
「どこの誰か知らないけどありがと。退かせてもらうよ」
そう言った美也さんは足下から湧いた黒い泥の中へと沈んでいった。
「な……!?」
もう、何がどうなっているのか分からなかった。
ミラーライダー?
ライダーだったものの残滓?
美也さんであって美也さんではない?
頭が、もう考えることを拒絶していた。
「ミラーライダーは人間に取り憑き、侵食し、その身体を乗っ取ることで蘇り、ライダーバトルにリトライする。だが、所詮は残り滓を集めただけの存在だ。蘇生するには足らない。その足りない分をアリスが補強することで歪んだ形で再生する」
太刀を下げた黒ツルギが聞いてもいないのに説明を始めた。
だが、今ので少しは彼女について理解することが出来た。
「じゃあ、美也さんは……」
「乗っ取られたようだな。もっともまだ生まれてすぐだ。まだ影守美也の存在自体は残っているだろう」
「それじゃあ、まだ助かる可能性が……」
「そんなものはない。取り憑かれたら最後、身体の持ち主であった人間の意識もミラーライダーに侵食されて食い尽くされる。もう影守美也は助からない」
そんな……。
「もうどうすることも出来ないって言うのか!」
「ああ。どうすることも出来ない。だから早いうちに殺しておきたかった。ミラーライダーはモンスターと近い性質を持つ。他の命を喰らい、強くなる。そしてミラーライダーにとって最大の馳走は……ライダーだ」
ライダーが、ご馳走……。
それじゃあ、あの美也さんはこれからライダー達を襲って喰らうことに……。
「影守美也はライダーバトルを止めるために戦っていた。ならば、自身の身体を使われて他のライダーを殺す様を見せつけられるようなことは嫌だろう。ならば、殺してやるべきだ」
非情な決断。
それが、必要な時もあると理解はしている。
だが……。
「絶対に美也さんを取り戻してみせる。だから、殺すのは待ってくれ。いや! 殺させない」
黒ツルギを真っ直ぐと見つめ、言い放った。
しばらく、睨み合いが続く。
仮面越しでも、分かる。
幾何かの後に、黒ツルギが僕に背を向けた。
「……そんな悠長なことを言っていられると良いがな」
「黒ツルギ……」
僕に、この一件を任せるということなのか?
「影守美也と一緒にいた神前射澄ならあいつに襲われはしたが逃げおおせたようだ。それから俺をそんな頓狂な名で呼ぶな」
「じゃあ、なんて呼べばいいのさ」
一瞬、間を置いた黒ツルギは自分の名を告げてこの場を後にした。
「────
ミラーワールドから戻って鏡華さんと合流。ミラーワールドで起こった一連のことを話した。
鏡華さんはショックを隠し切れずにいた。
当然のことだろう。
美也さんが……友達が、あんなことになってしまったのだから。
「美也さんは……美也さんは戻ってきますよね!」
涙を堪えた瞳で僕を見つめながらそう問われた。
「うん。絶対に美也さんを助けるよ」
確証なんてない。
だが、黒ツルギ……刃にもああ言ったし、助けたいのは僕だって同じだ。
きっと美也さんを助けてみせる。
一人では難しいだろうから、美玲先輩達と協力しないと……。
「そうだ、射澄さんはなんとか逃げ延びたらしいからそのうち荷物取りに戻ってくるよきっと」
「あ、そのことなんですが神前さんから連絡が来て明日荷物を受け取るから学校に持って来てくれだそうです。今はお家で休んでらっしゃると」
なるほど。
なんとか家まで辿り着いたのかそれなら安心だ。
だけど……美也さんはどうしよう。
家に戻るなんて真似はしないだろうから恐らく行方不明扱い……。
昨今のモンスターの被害によるものと、ライダーバトルの敗北者によって聖山市の10代少女の行方不明率は他の都市と比べて極めて高いものとなってしまった。
そのうちの一人として、美也さんは数えられてしまう……。
「……とりあえず、今日は帰るね」
美也さんのことを思うと、途端に自分の家族の顔が脳裏に浮かんでしまって。
心配をかけさせてしまったことを申し訳なく思って。
早く、家に帰ろうと、そう思ったのだ。
御剣君を見送ったあと、再び兄の部屋に戻った。
射澄さんと……美也さんの荷物を、私の部屋に運ぼうと思ったのです。
「? この封筒は……」
二人のバッグの傍らに置かれていた大きな茶封筒。
少し埃を被っているのでベッドの下とかにあったのかもしれない。
中には厚い書類が入っているようだったので取り出して見てみる。
「プロジェクト・ナイト……」
表紙に書かれた資料のタイトル。
ナイト、騎士。
仮面ライダー……。
とても、嫌な予感がする。
1ページずつ捲るごとに心臓の鼓動が早くなる。
書いてあることなんて私にはほとんど理解は出来ない。
それでも……。
私はこれを読み進めなければいけない。
知らなくてはならない。
兄が何を成そうとしたのか。
資料にはミラーワールドのこと、モンスターのこと、カードデッキのこと、ライダーのこと、様々なことが記されていた。
燐君の変身するツルギの姿も描かれていた。
これは設計図のようだった。
MRー01とナンバリングされている。
ツルギが一番最初に造られたということなのでしょうか?
いえ、それよりも……。
「どうして、御剣君の名前が……」
設計図のページを捲った時に目に入った。
何故、御剣君の名前が書かれているのか。
お兄ちゃんは御剣君のことを知っていた?
最初から御剣君をツルギにさせるつもりがあった?
考えれば考えるほどに分からなくなる。
一体お兄ちゃんは何をしようとしているのだろう。
ライダーバトルを仕組んだのもお兄ちゃんで、だからアリスという少女も私に似ていて……。
「きょ~かちゃ~ん! 一緒にお風呂入りましょ~!」
「きゃあ!?」
突然、後ろから抱き付いてきたおばさんに私はただただ驚いた。
「もうびっくりするじゃないですか!」
「あははごーめーん。そんなに怒らないでよ~。ところで、士郎君の部屋で何してたの?」
「それ、は……」
言えない。
おばさんにライダーのことは……。
「その、片付けようと思って。いつまでもこのままというのもあれですし……」
「そう、ね……。あ、そういえば本を探してるってあの子達言ってたけど見つかった?」
ほ、本?
本を探してなんて……。
あ、きっと射澄さんが誤魔化すのにそういうことでも言ったのだろう。
「えっと、片付けながら本を探そうと思いまして……」
「なるほどねぇ。あ、もしかしてその本ってあの絵本?」
絵本?
「覚えてない? 鏡華ちゃんが家に来た時、大事に持ってた絵本。ずっとそれを読んでてねぇ。その絵本の世界に入り込んでて話しかけるのを躊躇うぐらいだったのよ?」
「その絵本って、どんな絵本ですか!」
食い気味で訊ねる。
それはきっと私の記憶にも関する話。
それに、とても重要なものな気がするのです、その絵本は。
「そうねぇあんまり私には見せてくれなかったけど……。たしか、白い鎧と白い剣を持った騎士が出てくる話だったかしら」
白い鎧と白い剣の騎士。
それは、まるで……。
「ツルギ、御剣君……」
脳裏に浮かんだ騎士の名前を呟いた。
「ん? 御剣君がどうかしたの?」
「い、いえ。なんでもありません……」
「なんでもなくないでしょう。さあ、お風呂で色々聞かせてもらうわよ~」
無理矢理部屋から連れ出される。
このままではおばさんと一緒にお風呂の刑です。
広いお風呂ではありますが流石にこの歳で二人で入るというのは……。
「おばさん! お風呂ぐらい一人で入ってください! おばさん!」
しかしおばさんは聞く耳を持たず、いつも通りの強引さで私はお風呂場へと連行されたのでした。
家に帰ると、久しぶりに父さんからの大目玉であった。
別に怒鳴られるとかではないが、すごい冷静にグサグサと刺さる言葉を的確に言い放つので精神的に来る。
まあ、要約すれば『とにかく危ない事をするな』という話。
説教も終わり、食欲もないのでそのまま自室に籠る。
ベッドに寝転がり、天井を眺めた。
「心配、かけちゃったな……」
学校からも連絡が来たらしく父さんも会社を早退したらしい。
かなり探し回っていよいよ警察に連絡するかというところまで行ったらしいしあちこちに手伝ってもらったらしい。
「いろんな人に、迷惑かけちゃったな……」
ここで、思い出した。
美也さんのこと。
今頃、美也さんの家も大変なことになっているのだろう。
僕はこうして戻って来ることが出来たが、美也さんは……。
「燐。起きてる?」
「母さん?」
ドア越しから聞こえた母さんの声。
優しく、穏やかな声だった。
「入っていい?」
「もう入ってるよ母さん……」
いつものやり取りをして入ってきた母さんはお盆を持っていた。
お盆の上にはおにぎりが二つ。あと麦茶。
「お腹空いてると思ったから。ほら、食べて」
「いただきます……」
ベッドの隣に座った母さんに促されるので食べる。
食欲はないが、食べろと言われたら食べるしかない。
折角作ってもらったものでもあるし。
一口、食べる。
ただの塩むすび。
ちょうどいい塩加減。
一口食べたら、二口目、三口目と食べ進んでいくと自然に……。
「……ごめんなさい」
自然と出た言葉。
自分でも、素直過ぎて内心驚くほど。
「まったく心配したんだから。昨日の今日で燐に色々あったからお母さん達心配したのよ?」
「うん……。ごめんなさい……」
「もう誰に似たのやら……。おとなしい子だと思ってたら急にヤンチャになっちゃって……。いや、前にも毎日怪我して帰ってきてた頃があったっけ」
?
そんな頻繁に怪我したことなんてないぞ?
「僕そんな怪我してばっかな時なんてなかったよ」
「えぇ? 毎日怪我して帰ってきてた記憶があるんだけど……。おかしいわねぇデジャヴってやつかしら?」
「デジャヴじゃなくて思い違いでしょ。母さんももう若くな……」
「なぁに燐?」
ごめんなさいと謝り機嫌を取る。
若づくりに勤しむ母にこの言葉はいけなかった。
「まあ、燐の行動で女の子が助かったから勇敢な子で誇らしいと思わないでもないけど親っていうのはとにかく子供が心配なのよ。だから、ね。ちゃんとただいまって帰ってくること。いい?」
「うん……分かった」
とは言え、ライダーバトルのことなんて言えない。
言えないけど……。
それでも、理由が出来た。
この戦いで死ねないという理由。
家族を悲しませたくない。
この戦いを止めたい理由。
この戦いによって悲しむ人を出したくない。
ライダーになった人だけでない。
ライダーになってしまった人の家族も。
みんなを守る。
それが僕の……戦う理由だ。
「ありがとう、母さん」
「ん? 何か言った?」
「なにも言ってないよ」
「そう? あ、そういえば……」
何かを思い出したようで母さんは一度部屋から出た。
すぐに戻ってきたがまた何かを持ってきたようで……。
あれは、本?
「これ、覚えてる? 今朝二階の物置部屋の片付けしてた時に見つけたのよ懐かしいでしょ? 燐が好きだった絵本」
「絵本? って、これまだあったんだ……」
母さんから受け取った絵本。
それは幼い頃に僕が出会った少女から貰った絵本。
不思議なことにタイトルはない。
白い装丁で、内容は白い鎧と剣を持った騎士が悪い魔物から人間を守るという話。
騎士道物語を子供向けにしたものだなと今になって思うが……。
「ツルギに似てる?」
ふと、この物語に登場する騎士がツルギに似ているような気がした。
偶然の可能性の方が高いだろう。
白い鎧に白い剣と似た特徴を持っていれば当然似ていると感じるのだから。
「折角だし持ってなさい。もしかしたら燐に子供出来た時に使えるかもしれないし」
「何年先の話……」
「あら、分からないわよ。この間あんなに女の子連れてきたんだから。ぶっちゃけ、どの子がタイプなの? 実は隠してるだけで付き合ってる娘とかいたのあの中に?」
「い、いないよ別に」
ヒートアップする母さんについていけずそんな答えを返すとますます母さんはヒートアップしてあれこれ聞いてきた。
「えーなになに! お兄ちゃん付き合ってる人いるの!」
ここに妹まで参加してくるものだから更に始末が負えなくなった。
このあと、父さんがうるさいと注意しに来るまで僕への追及は続いた。
次回 仮面ライダーツルギ
「陽咲! こんなことは止めて!」
「銀髪……。喜多村か」
「今日こそは指導します!」
「女装男子って最近流行ってるからな」
願いが、叫びをあげている────。
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SWORD VENT (仮面ライダー縁)
蛇毒刃 2000AP
仮面ライダー縁のソードベント。
片刃で刃には均等に斜線が刻まれているがここから分割して蛇腹剣として機能するので見た目以上の射程距離を有する奇剣。
縁のトリッキーな剣術と相まって高い脅威となる。
蛇のごとき奇剣に翻弄されれば、あとは丸呑みされるのみ。