仮面ライダーツルギ   作:大ちゃんネオ

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?+1ー25 白昼、火花散らす

 緑萌える春の終わり。

 夏の気配を強く感じた日であった。

 心地よい風が頬を撫でる。

 だが、そんなものは気にはならなかった。

 目の前に映る、絵画のような景色に較べたら。

 張り詰めた空気。

 一言も発してはいけない。そう注意されたわけではないが、この場を包む雰囲気が喋るなと言っているよう。

 だが、そんな雰囲気の中にいて一人、涼しげな人物がいた。

 その人物は同時にこの場で最も注目を集めている人物。

 凛として、この場で一番美しい。

 そう、思った。

 それに較べて自分は例えるならば空気だ。

 いるのだが、特別認識されるような存在ではない。

 空気は確かにあるものだ。

 だが、それを知ってはいても空気の存在なんてものを人はいちいち認識はしない。

 だから、彼女は自分のことなど認識しない。

 それでいいのだろう。

 それが普通だろう。

 だが、それでも。

 彼女の唯一になりたいと。

 この場で彼女が認識する唯一の人でありたいと。

 

 彼女が矢を放った。

 風を切り、的に当たった音と同時に気付く。

 ああ、これが、恋というものか────。

 

 

 

 

 

「……つ……! み……ぎく……! 御剣君!」

 

 ……あれ。

 なにをどうしてそんなに僕の名前が呼ばれて……。

 

「御剣。私の授業は子守唄じゃないのよ?」

「あ、あはは……」

「御剣君……」

 

 四限目は佐々木先生の授業であったがいつの間にか夢の世界にいたらしい。鏡華さんは僕のことを起こそうとしてくれたようだが意味はなく……。

 どんな夢を見ていたかはもう定かでないが、夢を見ていたということははっきりしている。

 だがまあそんなことは関係なしに怒られるわけだが。

 

 

 

 

 昼休みに入り弁当を広げていると教室のスピーカーから校内放送のオープニングが流れてきた。

 そうして、放送部の生徒のトークが始まるが……。

 

『みんな~! 今日も校内放送の時間がやってきたよ~! というわけで今日も私、みんなのお耳の恋人なっちゃんがお送りするよ~♪』

 

 スピーカーから流れてきた声を睨み付ける。

 昨晩、戦った相手。

 玄汐夏蜜柑。

 彼女の特徴的な声が響く。

 

「御剣も嫌いなの?」

 

 そう話しかけてきたのは乃愛さんであった。

 苦い顔をして僕と同じようにスピーカーを睨む。

 

「嫌いってわけではないけど……。まあ、ちょっとね」

「そう。あんまりこういうことは言いたくないんだけどさ、玄汐はあんまりいい噂なくて。援交してるとか。あと、単純に声がキーンと来る」

 

 最後のそれは個人的な理由であるが、その前の援交というものが気になった。

 

「その、援交っていうのは本当のことなの?」

 

 話題が話題だけに声量を抑えて訊ねた。

 こんな話は大っぴらにするものではない。

 

「まあ、噂だからなんともなんだけど、玄汐の家って貧乏らしいの。だけどあいつ、ブランド物の結構いいバッグとかブランド物の服来て歩いてるの見たってのが結構いてさ」

「バイトしたとかそういう……」

「だとしても、高校入って半年もしない間にそんな稼げる? 稼げたとしてどんなバイトだっていうの」

 

 それは、確かにそうだ。

 高額な物を一点ぐらいならまだしもそういった物を複数所持しているともなれば援交しているのではないかと勘ぐられるだろう。

 

「あとはあいつの態度とかそういうので女子からは嫌われてるね。モテない男子からは人気あるみたいだけど。御剣もああいうのに騙されないように」

「騙されないよ……。その、言っちゃ悪いけど好みじゃないし」

「ふーん……。で、その御剣の好みっていうのはどういう感じ?」

 

 急な話題の転換に困惑する。

 なんとも彼女好みの話題に話が移ってしまったようだ。

 まあ、嫌いなものの話をするよりかは好きなことの話をする方がいいとは思うが。

 

「お、なになに御剣君恋バナ?」

「二人だけとか水臭いぞ~」 

 

 恋の匂いを嗅ぎ付けたハイエナ達が集まってきた。

 女子だけでなく男子までである。

 こんな注目されるようなこと今までなかったというのに……。

 

「あの、皆さん何のお話をされているんですか?」

 

 声の主は鏡華さん。

 購買でパンを買って戻ってきたようだ。

 あ、あのサンドイッチ好きなんだよなぁ……。

 たまには僕も購買のパンを食べたいが今から行っても遅いだろう。

 

「いやー実は恋バナが始まるところでして~」

「恋バナ……。恋バナというのは、その、恋バナですか?」

「そうそう。御剣君が好きなタイプの発表をするところだったのだ!」

 

 ちょっと、色々と待ってほしい。

 そんな発表なんて大仰なことするつもりなんてないぞ!?

 というか途中から割り込んできたのに仕切るなんて!

 

「……その、私も参加していいですか恋バナ」

「オッケーオッケー誰でも強制参加(気軽に参加)するのが恋バナだからね!」

 

 なんだか恐ろしい響きな気がしたが。

 そんなことよりも大変なのはこれからだ。

 大勢の前で僕の好みのタイプを発表するというよく分からないイベントを乗り越えなければならないなんて……。

 いやけど別に好みのタイプを言うぐらいなら別にいいか……。

 

「それでは、ずばり! 好きな女性のタイプは!?」

 

 普段、新聞部で人に取材する側の人間なのだが珍しく取材される側になってしまった。

 変な緊張を覚えたがひとまず落ち着いて。

 

「僕の好きな女性のタイプは」

「タイプは?」

「タイプは……」

 

 あれ、こうして考えると言葉として表せない。

 好きなタイプ……。

 好きなタイプって、なに?

 好みの女性って、なんだろう。

 

「焦らすなよ~御剣~」

「いや、ちょっと考えてて……」

「考える必要なんてないだろ~。おっぱいデカイとかでいいんだからさ~」

「それは自分のことでしょ田村」  

 

 外界の声は聞こえているが聴こえてはいなかった。

 ふとした、この何気ない問いに僕は何か大きな意味があるような気がしてならなかった。

 

「……失礼するわ」

 

 その声だけは。

 その声だけは、外界のどんな音をも差し置いて僕の耳に入った。

 

「美玲先輩。どうしたんですか?」

「部活のことで話があるわ。悪いけど、借りていくわね」

「あ、はい……」

 

 そんな感じで美玲先輩にお借りされます。

 恋バナは僕抜きでやってねみんな。

 いや、話したかったけど部活の大事な話っていうなら仕方ないよねうん(棒読み)

 廊下に出て、美玲先輩の後ろを歩く。

 昼休みということもあり人が多い。

 そして、ちらちらと視線を感じる。だが、それは僕に向けられたものではなく美玲先輩に向けられているものだ。

 一年生の教室が並ぶ四階に二年生がいるというのもそうだが、なにより美玲先輩は顔が良いので目を引くのだ。

 あと、こちらの理由で見てくる人は一年生ではいないが美玲先輩は「氷の女」なる異名をつけられている。一年生で知ってる人はいないが二年、三年の先輩達の間ではそっちで有名なようだ。

 

「ところで美玲先輩。部活の話ってなんですか?」

 

 とりあえず、歩きながらでも用件を聞こうと思い、訊ねた。

 すると美玲先輩は急に足を止めて僕の方を向いた。

 

「まさか、本当に部活の話だと思ってたの」

「え、違うんですか」

 

 僕がそう言うと美玲先輩は額をおさえた。

 

「燐。今がどういう状況か分かってるんでしょうね。部活なんてやってる場合じゃないわ」

「え、それじゃあ……」

「ライダーのことよ」

 

 小声で美玲先輩は言った。

 まあ、確かに部活どころではないよな……。

 

「まったく……」

「すいません……。それで、何処に何しに行くんですか?」

「北が言ってたでしょう。確実性を上げるために仲間を増やせばいいって。そのためにこの学校にいるライダーに会うわ」

 

 この学校にいるライダー……。

 

「え! 美玲先輩、ライダーの知り合いがいるんですか!?」

「しっ! 声が大きい」

 

 すいませんと口をおさえる。

 もしこの場にライダーがいたら。それも、鐵宮側のがいたら不味いことになる。

 そういうことがあったからか美玲先輩はさっきよりも足早に歩く。

 果たして、美玲先輩の知り合いのライダーとは……。

 

 

 

 

 

 

 燐が美玲に連れていかれたあと、教室の中で盛り上がっていた生徒達は恋バナへの興味は失せ、それぞれの昼休みに戻っていった。

 

「追いかけなくていいの」

「えっ……」

 

 唐突に、中野乃愛が鏡華に声をかけた。

 追いかけなくていいの。

 その言葉の意味を理解するのに遅れ、鏡華は何も言えなかった。

 

「今の自分の顔見たら分かるよ。御剣のこと、追いかけたらいいじゃん」

「でも……。部活のことって、言ってましたし……」

「宮原も新聞部に仮入部中でしょ。手伝えることないかぐらい聞けっての」

「す、すいません……」

「謝んなし」 

「すいません……。あっ、すいません!」

 

 少々高圧的とも取れる乃愛の態度に気圧され何度も謝る。

 

「謝んなって言ってるでしょ。別に怒ってるわけじゃないし」

「はい……」

「もういいから行く! 追いかける!」

「は、はい!」

 

 乃愛の命令に従い、鏡華は駆け足で教室を出た。

 その様子はさながら軍隊のよう。

 

「乃愛~なにしてたの?」

「別に。それよりリナ、この間貸したマンガは?」

「あれヤバい。マジドはまりしたからもう一周させて」

 

 

 

 

 

 

 

 道中、出会ってしまった。

 北さんと。

 なにやら北さんの新たな被害者が生まれているようだ。

 南無三。

 

「やあ燐ちゃん! 素晴らしい昼下がりに君と出会えたことを嬉しく思うよ。そして是非とも共有したいのがこの才能ッ! 上谷さんの創作力ッ! 素晴らしいッ!!!! 脳細胞が刺激されて私の創作意欲も燃え上がっているッ!」

「そんなことはいいから早く返してください! かーえーしーてーくーだーさーいー!!!!」

 

 高身長な北さんにノートを奪われた低身長な上谷さん。

 まるで伝説のアイテムを手に入れたかのように、誇らしげにノートを掲げているため上谷さんの腕は空を掴むばかり。

 

「あの、とりあえず返してあげてください。かわいそうですよ」

「燐ちゃんが言うなら……」

 

 僕が言わなければ返さないつもりだったのか。

 全くこの人は……。

 

「はあ……よかった。ありがとうございます燐ちゃんさん。これは、その……大事なものなので」

「ああそうだとも大事なものだとも。これからの日本を代表する作品になるともこれは」

「あなたは黙っていてください」

 

 早速当たりが強い。

 仕方ない。

 だって北さんだもの。

 

「ところで二人で何をしているんだい? ライダー探し?」

「ちょっ! 北さん!」

「口縫いつけてやろうかしら……」

 

 二人で咎める。

 最近は特に、ライダーであることについて過敏になっていた。

 そんな僕らの肩に手を置き、北さんは小声で彼女に聞かれないように話した。

 

「まあまあそう言わなくてもいいだろう? 彼女がライダーに見えるかい?」

 

 北さんは上谷さんをライダーだとは思っていないらしい。

 確かに、ライダーになるような人ではないように見えるが……。

 

「あなたがライダーになってどれぐらいか知らないけれどね、ライダーになる人の大半は普通の少女よ。アリスに心の隙をつかれた普通の、ね……」

 

 普通の少女。

 普通とは、なんだろうか。

 普通というものは人によって違うものだ。 

 僕から見れば美玲先輩はすごい人だし、北さんは変な人だ。

 他の人達も変わっている人が多いと思う。

 だが、その人達にとってはそれが普通なのだろう。

 そして、多くの人間達の中に埋もれてしまえば変わっていると思う人も、普通という海の中に沈んでいく。

 普通とは、そういうことなのだろう。

 逆を言えば大勢の人の中にあっても埋もれることのない者こそが特別な人ということだろうか。

 特別な人。

 それは、有名人? 

 それもひとつの答えだろう。

 僕の場合は例えば、家族。

 きっと、大勢の人達の中からでも見つけ出すことが出来る。

 あとは……。

 

『燐』

『燐君』

 

 ふと、再生されるもの。

 大切な、特別な人達……。

 

「今のは……」

「どうかした?」

「いえ、なにも……」

 

 ふと、脳裏に浮かんだものはもう遠く靄に霞んで見えなくなった。

 

「あの~皆さん。何をこそこそしているんですか? 風紀を乱そうとしてませんか?」

「そんなことは……」

「ライダーと言っていましたが……まさかバイクに乗って!?」

「バイクの免許は16から取れるわ。別に問題ないでしょう」

「バイク通学……」

「徒歩ですよ徒歩……」

 

 風紀委員故か、僕達が怪しく見えているらしい。

 僕は健全だと胸を張って言えるが、こう怪しまれると何か悪いことをしたのではと思ってしまう。

 

「……北。ちょうど貴女を探していたところだったの」

「なんと!? 燐ちゃんが私を!?」

「……そういうことだから行くわよ」

 

 一瞬、美玲先輩が小さくため息をついたのを僕は見逃さなかった。

 

「もちろん! 燐ちゃんのためならどこへでも! というわけで上谷さん。また、魔法少女リンリンについて詳しく……」

「あー! 何も聞こえません! あー!!!!」

 

 魔法少女リンリン……?

 それが何かは分からないが、上谷さんにとってはあまり触れられたくないだろうものであることは理解出来た。

 

 

 

 

「へぇ。まさか生徒会長がライダーだったとはねぇ」

 

 学舎に似合わない携帯ゲーム機に集中したまま彼女、金草遥は美玲先輩の話に耳を傾けていた。

 

「ええ。貴女としてもあまり快くないんじゃないかしら?」

「んー別にそんなことないけど。基本ソロプレイだし私。そいつらが束になってかかってきても……私は勝つよ」

 

 その宣言と同じくして、彼女のゲーム画面もWINの文字が。  

 金草遥という少女は、かなりの自信家であると同時にそれに見合う実力を持っているだろうと思わされる。

 事実、美玲先輩がこうして協力を要請するほどなのだから。

 だが、彼女は先の言葉の通り協力に乗り気ではない。

 

「ところで、その子は?」

「……彼もライダーよ」

「そこの君もイレギュラーってやつだ。……昼休み、あと何分?」

 

 唐突にそんなことを聞くので、教室の時計を見て時間を教えた。

 

「あと10分ちょっとです」

「なるほど。ちょうどいいぐらいか。君さ、私と戦ってよ」

 

 急に何を言い出すのかと思い驚いていると北さんが僕の代わりに声を上げた。

 

「燐ちゃん、気にする必要はない。ここは私が」

「君とじゃ意味ないよ。イレギュラーと戦いたいんだよ私は。それに、殺そうとは思ってないよ。言っちゃえばゲームだよ」

「ゲーム?」

「そう。仲間になるかならないかのイベント戦。私が負けを認めたら、その、生徒会長退治に力を貸すよ。逆に君が負けを認めたらそうだな……私の奴隷になる。これでどう?」

 

 負けたら、奴隷……。

 

「燐ちゃん、構うことはない。咲洲さんも、彼女を仲間にしようだなんて考えは捨てるんだ。もし負けたら燐ちゃんがこんな廃人ゲーマーの奴隷になってしまう!」

 

 美玲先輩は黙っていた。

 どうするべきか悩んでいる様子だ。

 ……。

 

「……分かりました。その話に乗ります」

「そうこなくっちゃ」

 

 僕の言葉に美玲先輩も北さんも驚いた。

 北さんは止めてくるが仕方ない。

 仲間は多い方がいいと思うし、なにより負けるつもりなんてない。

 

「話が早い人は好きだよ。それじゃ、行こっか。最高に面白いゲームの世界に」

 

 黒いカードデッキをちらつかせ、彼女は戦いへ臨む。

 こんなところで、負けてはいられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさか、私の描いたマンガをあんな風に言ってくれる人がいるなんて。

 一人、校内を歩きながら先程の出来事に心を躍らせていた。

 彼女……北さんは私の描いた作品を素晴らしい作品だと言ってくれた。

 まだ、未完成も未完成なのに。

 そのことが嬉しくて、また本格的に再開しようかと思うがそれはすぐに嫌な記憶に押し潰される。

 

『なにこれ下手くそ過ぎない?』

『こんなんで漫画家目指そうとか思ってるなんてウケる』

『才能なし』

『漫画家になりたい? そんなものなれるわけがないだろう』

『もっとちゃんと将来のことについて考えなさい』

 

「ッ! ……やっぱり、もう、やめよう……」

 

 何の気なしに、また描こうと思って描いて、あんな風に言ってもらったがやはり私には無理だ。

 どうせまたあんな風に言われるだけ。

 そんな辛いことは嫌だ。

 だったらいっそ、夢なんてこのノートごと捨ててしまえば……。

 

『いいんですか? それ、大切なノートなんでしょう?』

 

 突然、私に向かって話しかける声がした。

 しかし、声の主は見えない。

 

「誰ですか! どこにいるんですか!」

『ここですよ、ここ』

 

 ここと言われ、声が聞こえた方を見てもそこにはだいぶ昔の卒業生が寄贈した大きな鏡があり自分の姿しか映っていない。

 幻聴?

 そう思っていると、鏡の中の私が姿を変えていく。

 鏡に映るものが、私ではない全く別人の少女へと変貌する。

 何が起こっているか分からず、呆然とその様子を眺めていると鏡の中の少女は、自己紹介を始めた。

 

『こんにちは。私はアリス。皆さんに夢を与えるものですよ♪ 以後、お見知りおきを。それにしても、とても綺麗な夢をお持ちのようですね。上谷真央さん』

「え、えっ……。どうして、私の名前を……」

『そんなことは重要ではありません。大事なのは、貴女が貴女自身の夢を叶えるチャンスというものを手放してしまうか、諦めず、泥臭くとも夢を叶えるか。そのどちらかです』

 

 夢を、叶えるチャンス……。

 もし、またちゃんとこの夢と向き合えたら……。

 けれど、こんな不可解な現象をそんなおいそれと信じるなんてのは……。

 

『貴女は夢を持っている。しかしそれは貴女の才能を妬んだ人達から潰されてしまい、貴女自身夢を持つということに対して臆病になってしまっている。残念な話です。有望な天才が将来の望み薄な凡人達によって翼をもがれてしまうなんて。悲しくって悲しくって涙が出てしまいます』

「ッ!」

 

 有望な、天才?

 私が?

 

『貴女の他に誰がいると言うんです? 貴女が今、捨ててしまおうと考えたそのノートも絶対に捨ててはいけません。それは財産なのですから』

 

 財産……。

 夢を捨てきれず、また描こうと思ったこれを捨てるということはつまり、夢を捨てることと同義。

 だからこそ捨てようと思った。

 だけど……。

 

「私には勇気がありません……。夢を叶えようとする。ううん、夢を持とうとする勇気すらも持てないんです……」

『だったら、私がその勇気を得るチャンスを与えましょう。いいですか? あくまでチャンスです。そのチャンスを掴めるかは真央ちゃんにかかってきます』

 

 勇気を得る、チャンス……。

 もしも、夢を持つ勇気を持てたら私は……。

 

『それでは、これを』

 

 少女……アリスが私に黒い箱のようなものを手渡してくる。

 黒い箱は鏡の中からこちら側へと現れて……私は、それを手にした。

 

『そのカードデッキは大切なものです。そしてその中に入っているメモリアカードも。どちらも失くさないように』

 

 箱はカードデッキというらしい。

 名の通り、カードが入っており一枚引くとこれがメモリアカードというものだろうか。

 

「DREAM……」

『夢こそが、貴女の願い。貴女の望み。叶うといいですね』

「これを使って、どうすればいいんですか……?」

 

 肝心なことを聞き忘れていた。

 これが、カードデッキがなんなのか。

 これで何をすればいいのか。

 

『ああ、そうでした。まだ使い方を教えてはいませんでした。それを使って仮面ライダーに変身するんです』

「仮面ライダー?」

『ええ。鏡の世界の騎士となって戦うんです』

 

 戦う!?

 そんなこと自分には無理だ。

 

『大丈夫です。変身すれば貴女も一躍スーパーヒーロー。いえ、スーパーヒロインと言えばいいですか。とにかく充分に戦える力を得ることが出来るのです。変身すれば、誰でも戦えます』

 

 変身すれば、誰でも……。

 けれど、戦いは怖い……。

 

『……まずは、自信をつけるところから始めましょうか』

「え……?」

 

 急に、カードデッキが輝きだすと私は鏡の中へと吸い込まれていった。

 そうして、私の身には灰色の鎧が纏われて……。

 

 

 

『ふふ。一名様ごあんな~い。ああいう娘見ちゃうとライダーにしたくなっちゃうんですよね~』

 

 また一人、アリスは微笑む。

 新たな玩具が手に入ったと。

 だが、全ては一つの望みのため。

 少女達は少女の掌の上で舞い踊る。

 この戦いの、行き着く先は……。

 

 

 

 

 

 

 藤花学園。

 聖山市内の数少ない女子高で礼節、伝統を重んじる格式高い学校であり、聖山市に住む多くの女子の憧れ。

 そんなところの目の前に私がいるなんて。 

 なんて場違い。

 たまたま、モンスターなりライダーなりを探している途中に通りがかっただけでここを目的地として来たわけではない。

 

「あいつが、通ってるところか……」

 

 あのバカがこんなお嬢様学校にいるなんて。

 堅苦しい雰囲気に苦労していそうだ。

 ……そんなことはいい。  

 道草食ってないで、また探しに歩こう。

 そう思ったのだが、どうやら向こうから来てくれたようだ。

 あの音が頭の中に響く。

 さっさと、この音を頭の中から消し去りたい。

 だから早く倒す。

 モンスターの相手ぐらいなら一瞬だ。

 

「────あなた、ライダーですか?」

 

 背後から響く声は鈴を転がしたような声だった。

 声の主は栗色の髪の少女。

 花弁の髪飾りを挿した、これまた藤女にいそうな気品溢れるお嬢様。

 

「そういうお前もライダーなんだろ」

 

 そう返すと少女はデッキを見せ付けてきた。

 

「そうこなくっちゃな……」

「悪いけど、倒させてもらいます。……いいえ、倒すわ」

 

 目付きが変わった。

 雰囲気も。

 可憐な少女だとばかり思っていたが、本性は違うようだ。

 最近、似たような奴と戦ったがあれに比べたらだいぶ分かりやすく、戦いやすいだろう。

 白昼の戦い。

 いや、戦いに時など関係ない。

 出会ったら、戦う。

 ただ、それだけである────。

 

 

 

 

 

 

 

 銃弾が鎧を掠める。

 金草遥が持ち掛けたゲームは彼女がずっと優勢であった。

 

「ほらほら。逃げてばっかじゃ勝てないよ」

 

 黒い銃を構える黒いライダー、カノン。

 白い剣を構える白いライダー、ツルギ。

 対照的な二人。

 廃工場の中を戦場としていたが、一向に距離は縮まらない。

 やはり、銃は剣に強かった。

 

「このまま時間切れになっても君の負けね。スポーツでもあるでしょ、消極的なプレーって。そういう感じね」

「勝手にルールを追加して!」

 

 そういうことならばまずい。

 なんとかして接近し、彼女に負けたと言わせなければならない。

 だが……。

 

 散る、火花。

 銃声と火花と着弾した音ばかり。

 打つ手はないのか……。

 

「ほらほら男なんだからもっと度胸見せな。逃げ回ってみみっちい戦いばっかするんじゃないぞ」

 

 そうは言っても……。

 ……男らしい、戦いか。

 ひとつ、思い付いた。

 

【SWORD VENT】

 

 工場の屋根を突き破り、その大剣は地面に深々と刺さった。

 

「わぉ、デカ。君あれ? ファンタジー系のゲーム好き?」

 

 飄々と訊ねながらも引き金は引く。

 だが……目にもの見せてやる。

 ドラグバスターソードを盾代わりにして……驀進。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

「マジで、か……!?」

 

 カノンはとにかく引き金を引く。

 だが、ドラグバスターソードには通用しない。

 急接近し、自身の間合に入る。

 もらった。

 ドラグバスターソードを遠心力を利用して振り上げ、カノンの首元で止める。

 互いに、睨み合う。

 正直、かなり腕にきているが参ったと言わせるまでは持ち続ける。

 そして……。

 

「参った。うん、参った。だからそいつを降ろしてほしいな」

 

 言われた通り、降ろす。

 不意打ちを警戒していたが、特にはなかった。

 

「ま、久しぶりに楽しめたかな。次はお互いに全力でヤろ」

「僕は殺し合いはしません。止めるために、戦います」

「……ふぅん。それで、生徒会長陣営と戦うだっけ? 向こうの勢力は分かってるの?」

「最低でも、生徒会長含めて四人。仲間には熊みたいやライダーと忍者みたいなライダーと……。あと、今はわけあって生徒会長側についてる僕らの味方がいます」

 

 射澄さん……。

 彼女のためにも、一刻も早く生徒会長から奪われたメモリアカードを取り戻さなければ。

 そして、美也さんも助け出して……。

 

「見つけた。仮面ライダー……!」

 

 蛇行する刃が走る。

 カノンと共に避け、攻撃してきた存在を見据えるがもう自分には正体が分かっていた。

 

「美也さん!」

「さぁて、この間の続きをしようか。ツルギィ!!!」




ADVENTCARD ARCHIVE
SHOOT VENT (仮面ライダーカノン)
テイルカノン 2000AP

仮面ライダーカノンの使用する狙撃銃。
闇夜に紛れ、遠距離から一撃で敵を仕留めることに長ける。
金草の射撃センスもあり高い命中精度を誇る。

標的は標的にされたことすら知らず、討ち取られる。

キャラクター原案
???・仮面ライダー???/タムタム様
上谷真央・仮面ライダー???/ちくわぶみん様
また名前が明かされた時に掲載いたします。

新作情報

二人の戦士が、世界の危機に立ち上がる。

仮面ライダーツルギ!
そして、仮面ライダーデュオル!
新たなる戦いがここに。
集え、ハーメルンジェネレーションズ。

仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE FIRST CROSS
大いなる戦いの序章────。

オリジナルライダー達が織り成すクロスオーバー企画「ハーメルンジェネレーションズ」遂に始動。
第1弾という大役、執筆致しました。
ツルギと合わせ、ハーメルンジェネレーションズそしてコラボしてくださったデュオルもよろしくお願いいたします。
リンク↓
ハージェネ
https://syosetu.org/novel/253025/

ハージェネの前にデュオルを読むという方はこちら
https://syosetu.org/novel/212211/

今後もハージェネは続いていきますのでそちらもよろしくお願いします!
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